一度取り決めた養育費は減額可能なのか、金額はどのように計算すれば良いのか弁護士がわかりやすく解説します。
養育費を受け取る側の収入が増えたり、再婚して養子縁組したりした場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
目次
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養育費とは
養育費とは、子の監護や教育にかかる費用を指します。
親が離婚した場合、親権を持たなかった親から、親権を持った親に対して支払うことが一般的です。
養育費の相場はどのくらい?
養育費の相場は一律ではなく、それぞれの親の収入や子の人数などによって変動します。
詳しくは、下記のリンク先をご参照ください。
養育費の算出方法とは
養育費は、裁判所から公表されている算定表の範囲で決定されることが一般的です。
子の人数と年齢から表を選択し、「義務者の年収」と「権利者の年収」とがクロスする場所の金額が参考値となります。
詳しくは、次のリンク先をご参照ください。
養育費を支払わないとどうなるか
養育費の支払いは、親としての責務です。
また、離婚をして親権を持たなかったからといって、子の親であることに変わりはなく、親の義務は引き続き存続します。
離婚時に合意しなかったからといって養育費を支払わなければ、相手から養育費請求調停や養育費請求審判を申し立てられる可能性があるでしょう。
また、養育費について取り決めたにもかかわらず一方的に不払いとした場合には、相手から強制執行が申し立てられる可能性があります。
養育費は減額可能?
いったん取り決めた養育費を、減額することはできるのでしょうか。
減額が認められる場合と認められない場合、それぞれについて解説します。
減額が認められる場合
次の場合には、養育費の減額が認められる可能性が高いでしょう。
養育費を受け取る側が再婚して養子縁組した
養育費を受けている側の親が再婚し、さらに子が再婚相手の養子となった場合には、養育費の減額や免除が認められる可能性が高いでしょう。
ただし、再婚相手に十分な資力があり、養育費が減額ないし支払われなくなっても子の養育に支障がないと判断された場合に限定されます。
養育費を受け取る側の収入が増えた
養育費を受け取る側の収入が増えた場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費を支払う側の扶養家族が増えた
養育費の支払い義務者が再婚するなどして扶養家族が増えた場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
決まった大きさのパイを分けるイメージで、支払い義務者の扶養家族が増えた以上、子1人あたりにかけられる金額が小さくなるためです。
養育費を支払う側の収入が減った
養育費を支払う側がリストラに遭ったり降格されたりするなどして収入が減った場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
減額が認められない場合
次の場合には、養育費の減額は認められない可能性が高いでしょう。
合意した養育費が一般的な金額より高いと後から気が付いた
取り決めた養育費が一般的な金額より高額だとしても、双方がいったんその金額で合意をしたのであれば、その金額で支払う義務が生じます。
後から相場より高いことに気が付いたからといって、一方的に減額することは認められません。
面会交流が思い通りに実現しない
離婚に際しては、養育費と併せて面会交流についても定めることが多いでしょう。
しかし、養育費の支払いと面会交流は個別の取り決めであり、いわゆる交換条件ではありません。
そのため、面会交流が思い通りに実現しないからとの理由で養育費の減額を求めても、減額は認められない場合が多いでしょう。
養育費を支払う側の一方的な都合で収入が減った
養育費支払い義務者の収入が減った場合であっても、たとえば支払い義務者が中小企業の経営者である場合などには、自己の給与額を減らすことは容易です。
このように、一方的な都合で収入が減っただけである場合には、養育費の減額が認められない可能性が高いでしょう。
養育費を受け取る側が再婚したが養子縁組していない
養育費を受け取っている相手が再婚をしたものの、子が再婚相手と養子縁組をしていない場合には、養育費の減額請求が認められない可能性が高いでしょう。
養子縁組をしていない以上は、親が再婚しても、再婚相手が子に対して扶養義務を負うわけではないためです。
養育費の「減額」と「免除」の違いとは
養育費の減額とは、今後支払うべき月々の養育費の額を減らすことです。
一方、免除とは、今後養育費を支払わなくてよいとされることです。
一般的に、養育費を支払う側の再婚など支払い義務者側に事情の変化があった場合には、減額の判断がなされる場合が多いでしょう。
一方で、子が養育費を受け取る側の再婚相手と養子縁組をしたなどの場合には、免除の判断がされる場合が多いといえます。
ただし、最終的には再婚相手の収入や支払い義務者の収入、子の状況などから総合的に検討されるため、個別的な判断となります。
養育費が減額される金額の計算方法
養育費支払い義務者の再婚により養育費を減額する場合、減額後の養育費は次の4ステップで算定されます。
基礎収入を算定する
「基礎収入」とは、総収入から税金や特別経費を引いた金額です。
給与所得者の場合の基礎収入は総収入の54%から38%、自営業者の場合の基礎収入は総収入の61%から48%になるとされています。
給与収入(万円) | 割合(%) |
---|---|
0~75 | 54 |
~100 | 50 |
~125 | 46 |
~175 | 44 |
~275 | 43 |
~525 | 42 |
~725 | 41 |
~1,325 | 40 |
~1,475 | 39 |
~2,000 | 38 |
給与収入(万円) | 割合(%) |
---|---|
0~66 | 61 |
~82 | 60 |
~98 | 59 |
~256 | 58 |
~349 | 57 |
~392 | 56 |
~496 | 55 |
~563 | 54 |
~784 | 53 |
~942 | 52 |
~1,046 | 51 |
~1,179 | 50 |
~1,482 | 49 |
~1,567 | 48 |
たとえば、養育費支払い義務者が給与所得者で総収入が700万円の場合、基礎収入割合は41%であるため、基礎収入は287万円となります。
また、養育費を受け取る側が総収入300万円の給与所得者の場合、基礎収入割合は42%となり、基礎収入は126万円です。
生活費指数を確認する
次に、「生活費指数」を確認します。
生活費指数とは、大人を100とした場合にかかる生活費を指数で示したものです。
子の生活費指数は、それぞれの次のとおりです。
- 0歳から14歳:62
- 15歳以上:85
子の生活費を算出する
次に、子の生活費を次の式で算定します。
養育費支払い義務者の基礎収入が287万円、養育費対象の子が16歳、養育費支払い義務者の扶養義務者が2名(無収入の再婚相手と再婚相手との子0歳)である場合の子の生活費は、次のとおりです。
義務者が負担する養育費を算定する
養育費支払い対象の子の生活費は、全額を養育費支払い義務者が負担するわけではなく、養育費を受け取る側の親と共同で負担することとなります。
上で算定をした子の養育費のうち、養育費支払い義務者が負担すべき養育費は、次の式で算定します。
- 子の生活費:70万3025円
- 養育費支払い義務者の基礎収入:287万円
- 養育費を受け取る親の基礎収入:126万円
の場合に、支払うべき養育費額は、次のとおりです。
これは年額であるため、月々で負担すべき養育費は、これを12等分して計算します。
養育費減額請求の手続きと流れ
養育費の減額を請求したい場合には、次の流れで請求します。
養育費の減額には、お互いの合意が必要
養育費の減額をしたい場合には、まず、双方の話し合いにより合意を図ります。
合意ができたら、公正証書などの書面に残しておくとよいでしょう。
養育費減額請求調停
話し合いでは合意ができない場合、養育費減額調停で合意を図ります。
養育費減額調停とは、調停委員立ち合いのもと、養育費減額についての話し合いを図る場です。
詳しくは、下記リンク先をご参照ください。
なお、調停でも決着がつかない場合には、裁判所に決断を下してもらう審判へ移行します。
養育費の減額を成功させるために気をつけたいこと
養育費の減額を成功させるためには、次の点に注意しましょう。
勝手に減額をしない
養育費を減額するには、原則として双方の合意が不可欠です。
相手が減額に合意しないからといって、一方的に減額することは避けましょう。
勝手に減額をした場合には相手も強靭な態度を取り、強制執行などを申し立てられる可能性があります。
養育費の適正額を正しく把握する
養育費の減額を申し入れる前に、養育費の適性額を把握しましょう。
「なんとなく高い気がする」などあいまいな理由で減額請求をしても、認められない可能性が高いためです。
適性額は、上で紹介した計算式で算定することができます。
適切な方法で収入を把握する
養育費の適性額を把握するためには、基礎収入算定のベースとなる総収入額を適切に把握する必要があります。
収入額を把握する方法は、次のとおりです。
給与所得者
給与所得者の場合には、会社から発行される「源泉徴収票」を確認しましょう。
このうち、「支払金額」とある欄の数字を確認してください。
これが、給与所得者の「総収入額」です。
自営業
自営業者の場合には、確定申告書の第1表を確認しましょう。
このうち、右上にある「課税される所得金額」の欄をご確認ください。
これが、自営業者の養育費算定の基礎となる「総収入額」です。
ただし、「㉚課税される所得金額」に表示されている金額は所得税の計算上、さまざまな控除がなされた後の金額です。
そのため、実際の支出額とは異なる金額や実際にお金が出て行ったわけではない金額、養育費の支払いに優先するものではない金額を足し戻した後の金額で養育費を算定することが相当でしょう。
具体的には、確定申告書Bに次の金額が記載されていれば、この金額を加算します。
- ⑭小規模企業共済等掛金控除
- ⑮生命保険料控除
- ⑱寡婦、ひとり親控除
- ⑲~⑳勤労学生障害者控除
- ㉑~㉒配偶者(特別)控除
- ㉓扶養控除
- ㉔基礎控除
- ㉖雑損控除
- ㉗医療費控除
- ㉘寄付金控除
経営者
法人の経営者である場合には、給与所得者と同様に、源泉徴収票を確認しましょう。
ただし、経営者の場合には会社へ不動産の貸し付けがあるなど、会社からの役員報酬以外の収入もある場合が少なくありません。
役員報酬以外の収入は源泉徴収票には載りませんので、他にも収入がある場合には、確定申告書の確認も必要です。
特別支出を考慮する
養育費の減額を申し入れる際には、子に特別な支出が必要なタイミングにも注意しつつ申し入れましょう。
たとえば、高校進学や大学進学のタイミングなどです。
ただでさえまとまった支出が必要となる時期に養育費の減額を申し入れられては、相手が合意をする可能性が低くなってしまうでしょう。
養育費の減額を求められたら
相手から養育費の減額を求められたら、すぐに合意することはせず、次の事項を確認しましょう。
「やむを得ない事情」かどうか確認する
養育費の減額を申し入れられたからといって、当然ながら相手の要求どおりに減額に応じる必要はありません。
減額後の金額が適切であるのか、仮に審判まで移行した場合には減額請求が認められる理由なのかなど、よく調べたうえで回答するようにしましょう。
合意しない場合には、相手が養育費減額調停を申し立てる可能性がありますので、あらかじめ弁護士へ相談しておくと安心です。
養育費の減額を弁護士に相談するメリット
養育費の減額を希望する場合には、まず弁護士へ相談することをおすすめします。
適切な養育費の算定は容易ではありませんが、弁護士へ相談することで、減額後の適性額を把握したうえで交渉に臨むことが可能となります。
また、調停や審判へ移行する可能性も踏まえて交渉の作戦を練ることができるため、安心です。
Authenseの弁護士に依頼するメリット
Authense法律事務所には養育費減額について詳しい専門の弁護士が多数在籍しているため、これまで蓄積した事例を踏まえた対応が可能です。
養育費減額調停は、過去の事例の蓄積が勝敗を握ると言っても過言ではありませんので、ぜひ経験豊富なAuthense法律事務所までご相談ください。
まとめ
いったん取り決めた養育費は、状況によって減額できる可能性があります。
しかし、減額請求が認められるかどうかは減額をしたい事情によって異なりますので、いきなり相手方へ減額の申し入れをする前に、まずは離婚問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
養育費の減額をしたい場合には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
Authense法律事務所には養育費減額請求に詳しい弁護士が多数在籍しており、減額についての多数の実績をもと、ご依頼者様を総合力でサポート致します。
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