コラム
公開 2020.08.13 更新 2021.08.18

貞操権とは?慰謝料請求できるケースとできないケース

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「独身と思って交際していたのに、実は相手が既婚者だった!」

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1.貞操権とは

貞操権とは、性的関係を結ぶかどうかを自分自身で決定する権利です。
誰と交際して性交渉をするかは本人が自分で決めるべき事柄で、人に強要されることではありません。それは誰にでも「貞操権」があるからです。他人に性行為を強要されたら貞操権侵害となります。

また他人にだまされて意に反して性交渉をさせられた場合にも貞操権侵害となる可能性があります。たとえば相手が本当は既婚者なのに「未婚」と言われ「結婚できる」と信じて性行為に応じた場合を考えてみて下さい。
「既婚と知っていたなら性交渉に応じなかった」「だまされて性行為をさせられた」といえるでしょう。よって、貞操権侵害が成立します。

貞操権侵害は、不法行為です。もしも既婚者にだまされて貞操権を侵害されたら、相手に損害賠償請求(慰謝料請求)ができます。

2.既婚者にだまされて貞操権侵害となる要件

交際相手にだまされたとき、貞操権侵害となるのは以下の要件を満たすケースです。

2-1.相手が未婚と説明していた

貞操権侵害が成立するには、相手が「未婚」「独身」と説明していたことが必要です。勝手に未婚と思い込んだ場合、貞操権侵害が成立しない可能性があります。

2-2.結婚の話をされていた

貞操権侵害といえるには、相手との結婚話が出ていた状況が必要です。結婚を前提にしていないなら相手が未婚でも既婚でも関係ないからです。ただし婚約までしている必要はありません。結婚をほのめかされて性関係となったら貞操権侵害が成立します。

2-3.肉体関係を持っていた

貞操権は性的な自由を守る権利です。既婚者からだまされても性関係を持たなければ侵害されたと言えません。プラトニックな関係では貞操権侵害が成立しないので慰謝料請求できません。

3.貞操権侵害で慰謝料請求できるケース

  • ・婚活アプリで知り合った相手と結婚を前提に交際することになって性関係をもったら、相手は既婚だった
  • ・婚活パーティで知り合った相手と交際して性関係になったが、相手には妻がいた
  • ・友人を介して紹介された男性から「独身」と聞かされて結婚を前提に交際し、性交渉したが実は既婚者だった

4.貞操権侵害で慰謝料請求できないケース

  • ・合コンで知り合った男性と交際して性交渉をしたが、結婚の話はしていない
  • ・相手を独身と思い込んで肉体関係をもったが、実は既婚者だった

5.貞操権侵害の慰謝料の相場

貞操権侵害の慰謝料の相場は100~300万円程度ですが、300万円になるのは相当悪質なケースです。
以下のような場合、慰謝料が高額になる傾向があります。

  • ・被害者が低年齢で判断能力が低いことに加害者がつけこんだ
  • ・加害者が交際や性交渉を強要した
  • ・加害者による嘘が巧みで悪質
  • ・被害者が妊娠、中絶あるいは出産した
  • ・交際を解消するとき、加害者が不誠実であった

6.貞操権侵害で必要となる証拠

貞操権侵害を受けたとき、慰謝料を請求するには「証拠」が必要です。以下のようなものを集めましょう。

6-1.相手が独身と説明していたことを示す証拠

  • ・相手が「独身です」「妻とは離婚した」などと説明しているLINEやメールのやり取り
  • ・婚活パーティに参加した際の資料
  • ・婚活アプリで知り合った際の記録
  • ・相手が「未婚」と説明している会話の録音記録

6-2.結婚の話しをされていたことを示す証拠

  • ・相手が「結婚したいね」などと発言しているLINEやメールのやり取り
  • ・婚活パーティに参加したときの資料
  • ・婚活アプリで知り合った際の記録
  • ・相手と結婚の話をしたときの会話の録音記録

6-3.肉体関係があったことを示す証拠

  • ・被害者の供述
  • ・旅行に行く約束をしたときのLINEなどの記録
  • ・旅行先での写真など
  • ・妊娠した場合、エコー写真や診断書

貞操権侵害の要件を満たしていても、証拠がなかったら相手に否定されるおそれがあるので、慰謝料請求前にしっかり証拠を集めましょう。

7.貞操権侵害で慰謝料請求するときの注意点

7-1.相手の妻から「不倫」の慰謝料を請求される可能性

貞操権侵害で既婚者に慰謝料請求するときには、相手の妻との関係に注意が必要です。被害者にとっては貞操権侵害でも、相手の妻からすると「不倫(不貞)」にみえてしまう可能性があるからです。貞操権侵害で慰謝料請求したことをきっかけに相手の妻に交際や性関係を知られると、「不倫相手」とみなされて慰謝料請求されるケースがあります。

7-2.貞操権侵害の場合、不貞にならないこともある

貞操権侵害の場合には「不貞」にならないことがあります。不貞とは、自由意思に基づき既婚者と肉体関係をもつことです。相手から騙されて性関係を持った場合、故意も過失もなければ不貞行為にはならず相手の妻に慰謝料を支払う必要はありません。

ただ相手の妻に「貞操権侵害であるから慰謝料支払い義務がない」と説明しても、納得しないケースがあり、場合によっては裁判を起こされる可能性もあります。
そういった危険性を考慮すると、できれば妻に知られないように慰謝料請求を行って解決するのが望ましいでしょう。また相手の男性にしてみても妻に知られると離婚トラブルになるリスクがあり、できれば避けたいと考えているものです。お互いに話し合ってできるだけ早めに解決しましょう。

7-3.相手の男性が不誠実な場合

ただし相手の男性が不誠実な場合、妥協する必要はありません。証拠があれば、訴訟を起こして裁判所から慰謝料支払い命令を出してもらうこともできます。また貞操権侵害の場合には不貞にならないケースもあるので、妻から慰謝料請求をされてもきちんと事情を説明し証拠を提示すれば排斥できることもあります。

このように、貞操権侵害で慰謝料請求をするときにはさまざまな点に配慮が必要で、状況に応じてとるべき対応も異なります。トラブルを避けてスムーズに解決するには弁護士に依頼するのが良いでしょう。

8.貞操権侵害で慰謝料請求する手順

貞操権侵害を受けて慰謝料請求するときには、以下の手順で進めましょう。

8-1.相手に慰謝料を支払うよう通知し、交渉する

まずはメールや電話などで相手に慰謝料を支払うよう通知しましょう。相手が了承すれば、金額や支払い方法、支払期限などを取り決めて合意書を作成します。約束通りに支払ってもらえたら、慰謝料トラブルを解決できます。

8-2.内容証明郵便で請求書を送る

相手が話し合いに応じない場合、内容証明郵便で請求書を送りましょう。相手がプレッシャーを感じ、支払いに応じる可能性があります。

8-3.弁護士を代理人として交渉する

自分で交渉するのが苦痛な場合や軽くあしらわれて話が進まない場合には、弁護士を代理人に立てて交渉してみましょう。弁護士が代理人として通知を送ると相手の態度が変わって支払いに応じるケースも多々あります。

8-4.訴訟を起こす

相手がどうしても支払いに応じない場合、訴訟を起こしてきちんと法的に正しい主張と立証を行えば、裁判所が相手に支払い命令を出してくれます。
「既婚者に騙されたのではないか?」「慰謝料請求できないのか?」とお悩みの方がおられましたら、一度弁護士までご相談下さい。慰謝料請求の可否やどの程度の慰謝料を請求できるのか、リスクの有無や内容など、状況に応じて弁護士がアドバイスいたします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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