コラム
公開 2022.04.05 更新 2022.10.11

養育費の相場はいくらくらい?計算方法と年収別の具体例を弁護士がわかりやすく解説

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養育費の計算方法や年収ごとの適性額、養育費の支払いが生じる期間などについて弁護士がわかりやすく解説します。
義務者の年収が300万円、500万円、800万円、1,000万円、2,000万円の各ケースにおいて、権利者の年収が200万円の場合と600万円の場合を具体例として算出します。

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養育費とは

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことです。

そもそも、たとえ親が離婚をした場合であっても、子にとってはどちらも親であることに変わりありません。
そのため、親権を持った側の親も持たなかった側の親も引き続き子の扶養義務を負い、必要な養育費を支払う義務を負います。

婚姻関係にある夫婦であっても、養育費は子がいる以上は負担しているものですが、通常は家計費から必要な金額をその都度拠出していくため、負担割合などについて夫婦間で問題となることは少ないでしょう。
一方、養育対象である子の親が離婚をした場合には、養育費の問題が生じます。
離婚後は、婚姻期間中とは異なり、夫婦の家計が別になっているためです。

なお、離婚後の養育費は、あらかじめ夫婦間で取り決めた金額を、親権を持たなかった側の親から親権を持った側の親に対して毎月支払うことで負担することが一般的です。

ただし、養育費を支払う親だけが養育費を負担しているわけではありません。
実際には、かかる養育費を双方の収入に応じて按分して負担しています。

養育費の相場の目安

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養育費の相場は、どの程度なのでしょうか?
養育費は子の人数や離婚をした夫婦それぞれの収入などによって異なるため、一律の相場があるわけではありません。

ここでは、養育費の相場を知る方法を紹介します。

養育費算定表を参考にする

養育費の金額の目安を知るためにもっとも参考となるのは、裁判所が公表している「養育費算定表」です。
この算定表は離婚調停などでも参考とされるため、当事者間で話し合いがまとまらない場合には、最終的にこの算定表の金額を基準に決定されることが多いでしょう。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

養育費算定表は、子どもの数と子どもの年齢によって、9つの表に分けられています。
それぞれの表に、養育費を支払う側(「義務者」といいます)と養育費を受けとる側(「権利者」といいます)の年収をあてはめることで、養育費の額の目安がわかります。

たとえば、子どもが2人でともに「0~14歳」である場合の算定表は、次のとおりです。
(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
【引用:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)

これによると、義務者と権利者がともに給与所得者であり、義務者の年収が700万円、権利者の年収が300万円の場合の養育費月額の相場は、「8~10万円」となります。

年収と養育費の関係

養育費の金額は、支払い義務者の年収が高いほど高くなる傾向にあります。
ここでは、上で紹介をした裁判所による「養育費算定表」に当てはめて、義務者の年収別の養育費正額を見ていきましょう。

なお、いずれも次の条件のもとで解説します。

  • 子ども:2人(ともに「0~14歳」)
  • 収入形態:義務者も権利者もともに給与所得者
  • 権利者の年収:200万円の場合と600万円の場合で解説

なお、義務者の年収が同じでも、養育費を受けとる権利者の年収が高ければ高いほど養育費の額は少なくなる傾向があります。

義務者の年収が300万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 2~4万円
600万円

義務者の年収が500万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 6~8万円
600万円 4~6万円

義務者の年収が800万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 10~12万円
600万円 8~10万円

義務者の年収が1,000万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 14~16万円
600万円 10~12万円

義務者の年収が2,000万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 30~32万円
600万円 26~28万円

養育費が支払われる期間

養育費の支払い始期

本来であれば、離婚後すぐに養育費の支払いが開始されるべきです。
ただし、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合、実務の多くでは、「権利者が請求したとき」からの分しか請求できないと考えられています。
そのため、たとえば養育費請求調停を申し立てたときからの分しか、養育費が認められない可能性があります。
空白期間を作らないためにも、離婚時に養育費の取り決めをして継続的に支払いを受けるべきです。
もしも、離婚時に取り決めをしなかった場合は、早めに養育費請求調停を申し立てて支払いを開始してもらいましょう。

養育費の支払い終期

養育費の支払い終期は、「20歳まで」とすることが多いです。
ただし両親の話し合いにより延ばすことも可能です。
たとえば子どもが大学に進学する場合には、22歳に達した後の最初の3月まで(大学卒業時)としてもかまいませんし、留学や専門学校、大学院への進学を考慮して終期を定めてもかまいません。
状況に応じて柔軟に終期を決定しましょう。

養育費が相場より高くなる場合・低くなる場合

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養育費が相場よりも高くなりやすいケースと低くなりやすいケースは、それぞれ次のとおりです。

なお、養育費は双方で合意ができれば、相場から外れた金額であっても構いません。
一般的な相場ではなく、その子の状況に応じた必要金額を試算したうえで、双方でよく話し合って決めることをおすすめします。

相場より高くなりやすいケース

次の場合には、1人あたりの養育費が一般的な相場よりも高くなりやすいでしょう。

  • 子どもが習いごとなどをしている場合
  • 子どもが私立学校に通っている場合
  • 子どもに障害や病気などがあり医療費がかかる場合

子どもの養育に特に費用がかかる場合に、養育費が高くなりやすいといえます。

相場より低くなりやすいケース

義務者が病気により高額な医療費がかかっているなどの場合には、1人あたりの教育費が相場よりも低くなりやすいでしょう。

養育費は、子どもに自分と同程度の生活を送らせるために必要な費用負担です。
義務者が自分の生活さえもままならないような場合にまで、収入に見合わない高い養育費を負担させるものではありません。

養育費の金額を変更する方法

いったん取り決めた養育費の金額を変更するには、以下の手順で進めましょう。

相手と話し合って決め直す

まずは相手に連絡を入れて話し合い、養育費の金額を決め直すのが、最もスムーズです。
たとえば相手の収入が上がった場合、こちらの収入が低下した場合などには、相手にメールや電話で連絡してみるとよいでしょう。
合意ができたらあらためて合意内容を公正証書にまとめてください。
すると、新しい養育費の金額をもとに、相手が支払わないときにはすぐに強制執行をすることが可能となります。

養育費の増額(減額)調停を申し立てる

話し合いが難しい場合には、家庭裁判所で養育費増額(減額)調停を申し立てましょう。
裁判所で、調停委員を介して話し合い、適正な養育費の金額を決めていきます。
合意できない場合には、審判という手続きに移行します。この場合、裁判官が、養育費を変更する事情があるか判断し、妥当な養育費の金額を決めます。

養育費が支払われないときの対処方法

素材_弁護士相談
離婚後に養育費が払われない場合には、以下のように対応します。

公正証書や調停調書などがある場合

公正証書で養育費の約束をした場合や調停調書、判決書などの裁判所の書類がある場合、すぐに相手の資産を差し押さえられます。
ただしどういった資産があるのかは、債権者(請求する側)が特定しなければなりません。
調べるのが難しい場合は、弁護士照会などを利用できる可能性もありますので、弁護士に相談してみることをおすすめします。
給料や預金などを差し押さえて不払い分を回収しましょう。

公正証書や調停調書などがない場合

公正証書や調停調書、判決書などの書類がない場合、家庭裁判所で養育費請求調停をすることになります。
まずは、調停や審判で養育費の金額を決め、それでも相手が支払わなければ差し押さえに進むことができます。

まとめ

養育費の額は、年収などによって異なるため、一般的な金額はありません。
しかし、裁判所が公表している算定表を確認することで、目安となる金額を知ることが可能です。
相手と交渉をする前に、目安となる金額を把握しておくとよいでしょう。

また、離婚後、不払い期間を作らず、できるだけ確実に養育費の支払いを受けるには、離婚時に公正証書で養育費の取り決めをしておくべきです。
また、離婚後に、養育費の金額が変更できるケースもあります。
養育費や離婚条件の話し合いを自分たちで進めるのが難しい場合や、相手が養育費を支払わないので差し押さえをしたい場合には、弁護士へ相談しましょう。
代理交渉や調停、強制執行手続きを依頼できて、有利に解決できる可能性が高くなります。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

養育費の金額やその取り決め方について、弁護士にご相談いただくと、具体的にアドバイスをいたします。
弁護士は、代理人として、養育費などの離婚条件について、相手と交渉をすることができます。
取り決めた養育費について増額(減額)したいケースや、強制執行手続きを進めたいケースについても、弁護士に、相手との交渉やその手続きを依頼することができます。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。早稲田大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院法学研究科修了。一般民事、特に離婚事件に関する解決実績を数多く有する。離婚カウンセラーの資格を取得しており、法律的な問題を解決するのみならず、常に依頼者の方の心情に配慮し、不安や悩みに寄り添う対応を心掛けている。
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