離婚調停における不利な発言や不利な行動にはどのようなものがあるのでしょうか?
できるだけ有利に交渉を進めるためには、どのようなことに注意したらよいでしょうか。
今回は、離婚問題に詳しい弁護士が、離婚調停における不利な発言などについて詳しく解説します。
目次
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離婚調停で不利な発言になりうる5つのパターン
離婚調停とは、離婚をするかどうかや離婚についての諸条件について当人同士では話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所に舞台を移して行う話し合いのことです。
調停での話し合いは、調停委員が当事者の言い分を交互に聞く形で行われます。
では、調停で不利になる発言にはどのようなものがあるのでしょうか?
自分の発言や提出資料と矛盾する発言
自分の以前の発言や提出をした資料と矛盾する発言をすると、調停で不利になる可能性があります。
このような発言があると、発言全体に対して信憑性が疑われてしまいかねないためです。
調停で嘘をつくことは論外ですが、慣れない場で緊張をしていると、一貫性のない発言をしてしまう場合もあるでしょう。
そうならないため、調停で主張する内容はあらかじめよく整理をしてから臨むことをおすすめします。
希望条件を簡単に譲歩する発言
調停委員は、常に調停で合意可能な条件を探りながら話を聞いています。
そのため、希望条件を簡単に譲歩するような発言をしてしまうと、こちらに譲歩させれば調停がまとまりやすいとの印象を与えてしまい、不利な条件で合意するよう促がされてしまうかもしれません。
また、はじめから「ダメ元」で希望条件を出しているとの印象を与えてしまう場合もあるでしょう。
そのため、簡単に譲歩するような発言は避けた方が無難です。
一方で、細かな点さえ一切譲らないというあまりにも強固な姿勢では、調停の成立は難しいと判断されてしまう可能性があります。
そのため、あらかじめ譲れない条件と譲ることのできる条件とを整理したうえで、調停に臨むことをおすすめします。
他に交際相手がいることをほのめかす発言
他に交際相手や交際したい相手がいる場合であっても、そのことは調停の場では伏せておいたほうが良いでしょう。
たとえば「夫からのモラハラ発言がひどいので離婚をしたい」と主張していても、交際相手がいるような発言をすると、夫婦関係の破綻はその交際が原因であると主張されかねません。
具体性に欠ける悪口や批判
相手への不満が溜まっている場合もあるかとは思いますが、具体性に欠ける相手の悪口や批判が協議を前進させることはほとんどないため、相手に非がある部分については、具体的に事実を述べるようにしましょう。
調停外で直接話し合いたいという主張
「調停ではらちが明かないので、直接本人と話します」など、当人同士で直接話し合いたいとの発言は避けた方が良いでしょう。
このような発言をすると、相手方や調停委員としては、調停が成立する見込みがないと考えてしまう可能性があるからです。
発言以外で不利になること
離婚調停において、次の行動は不利になる可能性があります。
このようなことは避けた方が良いでしょう。
調停を無断で欠席する
いくら話し合いが成立する見込みがないと考えたとしても、調停の無断欠席は避けた方がよいでしょう。
離婚調停の場合、欠席したとしてもただちに調停が終了するわけではなく、次回期日が設定されてまた裁判所から呼び出される可能性もあります。
また、後に改めて離婚条件を協議しようとしても、今度は相手が誠実に対応しない危険があります。
話し合いが成立する見込みがない、そもそも話し合いたくないという場合は、裁判所へ調停へは出席しない旨の連絡をしておいた方がよいでしょう。
子を連れ去る
自分の子であっても、勝手に連れ去るようなことはしてはなりません。
このような実力行使は、未成年者略取の罪に問われる可能性があります。
相手に対して嫌がらせや犯罪行為をする
相手を待ち伏せて脅したり、暴力をふるったりするなど嫌がらせや犯罪行為をすることは絶対に行わないでください。
このようなことをすれば、調停の成立は絶望的となる他、損害賠償を請求されたり、刑法上の罪に問われたりする可能性が高くなります。
離婚調停を有利に進めるコツは?
離婚調停を有利に進めるためには、上で解説をした不利となる発言をしないことなどに加え、次の点に注意をすると良いでしょう。
丁寧に接する
調停委員も人間なので、誠実に対応する当事者の印象は良くなります。
服装、髪型、入室したときの挨拶、話しているときの姿勢、態度など常識的な対応を心がけましょう。
たとえば入室したら必ず挨拶をする、感情的にならず冷静に受け答えする、などです。服装は特に決まりはありませんので、普段の服装で構いません。
「非常識」と思われなければ問題ありませんので、難しく考える必要はありません。
言いたいことははっきり主張する
調停を有利に進めるには「言いたいことをはっきり主張する」ことが非常に重要です。
おとなしい方や口下手な方は、どうしても自分の要望をうまく表現できずに黙ってしまいがちです。そうなると、調停委員に要望が伝わらず、話がどんどん相手方のペースになってしまう可能性があります。
できるだけ積極的に自分の要望を伝えましょう。その場でうまく話せるか不安な方は、事前に伝えたいことを紙に書いてまとめておくとよいでしょう。
訴訟になったときのことを想定する
調停が不調に終わった場合には、その後、訴訟などへと移行する場合があります。
そのため、訴訟になった場合を見据えて、譲歩できる範囲を自分の中で決めたうえで調停に臨むと良いでしょう。
たとえば、「養育費は最低月額50万円もらえないと納得しない」など、相手の収入に照らして不相当な主張をしても、訴訟や審判で認められる可能性は非常に小さいでしょう。
それであれば、算定表を基準に合意するなど一定の譲歩をした方が、無駄に争いを長引かせずに済むでしょう。
【一問一答】こんな行動、状況は不利?
このような行動をした場合やこのような状況である場合、離婚調停は不利になってしまうのでしょうか?
それぞれについて解説していきましょう。
離婚調停中に家を自ら出ていった
離婚が成立していないにもかかわらず、離婚調停中に家を出てしまえば、夫婦の同居義務違反として不利になる可能性があります。
特に、一家の収入の柱である側が一方的に家を出て生活費も負担していない場合には、同居義務違反が問われる可能性が高いでしょう。
ただし、実質的に夫婦関係が破綻していたり、相手からDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けているなど正当な理由があれば、特に不利にはなりません。
そもそも女性側に有利なのか
離婚調停の有利不利に、男性か女性かは関係がありません。
ただし、今の日本では出産などでキャリアを離れざるを得ないことの多い女性の方が収入の低いことが多いため、養育費などの面で男性が不利に感じることはあるかもしれません。
これは、養育費の額が子の人数などの他、双方それぞれの収入に応じて決まるためです。
また、一方が仕事をセーブして子育てをしてきた一方で、もう一方が独身時と同じように働いていたのであれば、子供と過ごす時間が長かった側の方が親権を取りやすいという側面はあるでしょう。
いずれにしても、男性か女性かで有利不利が変わるわけではありません。
他の異性と交際する
他離婚調停中に他の異性と交際することは、離婚調停が不利になる可能性が高いため、避けた方が良いでしょう。
なぜなら、たとえ婚姻関係が破綻した後で交際が始まったのだとしても、相手方からその相手との不倫が原因で夫婦関係が破綻したと主張される可能性があるためです。
離婚調停で聞かれることを事前に把握!
離婚調停では、争点にによって調停委員から聞かれる内容が異なります。
聞かれる内容は、主に次のとおりです。
離婚が争点の場合
離婚するかどうか自体が争点の場合には、次の事項について聞かれることが多いでしょう。
- 離婚をしたいと考える理由:具体的に話しましょう。
- 現在の夫婦関係について:同居か別居か、生活費はどうしているかなど。
- 夫婦関係が修復できる可能性があるかどうか。
- 離婚後の生活をどう考えているか:住まいや生活費をどうしようと考えているかなどです。具体的に示すことで、離婚に対する強い意志が伝わります。
親権・養育費が争点の場合
子の親権や養育費が争点である場合には、次の事項について聞かれることが多いでしょう。
- これまでの子との関わり
- 今後、子と関わる時間が取れるかどうか
- 子育てを手伝ってくれる人がいるかどうか:実家に頼れるような場合には、プラス要因として判断される可能性が高いでしょう。
- 今後の養育環境について:子が学生である場合、子の環境が一気に変わる遠方への引っ越しはマイナス要因となる可能性があります。
- 希望する養育費の額:標準的な金額から大きく外れれば成立の可能性が薄くなるため、あらかじめ裁判所が公表する算定表を確認しておきましょう。
慰謝料が争点の場合
慰謝料が争点である場合には、次の事項について聞かれることが多いでしょう。
- 夫婦関係が破綻した原因:相手の不倫やDVなど、破綻の原因を具体的に伝えましょう。
- 希望する慰謝料の額:一般的に100万円から300万円程度のことが多いといえますが、事情によって大きく変動します。あらかじめ弁護士と打ち合わせておくと良いでしょう。
財産分与が争点の場合
財産分与が争点である場合には、次の事項について聞かれることが多いでしょう。
- 双方の財産の状況について:どの財産がいくら程度あるのかなどです。
- 財産分与についての考え方:どの程度の財産分与を希望するのかなどです。
離婚調停の期間やステップ
離婚調停を申し立てると、申し立てから1ヶ月から2ヶ月後に第1回調停が開催されます。
1回の調停は2時間から3時間程度で、調停委員が双方から交互の話を聞く形で進行します。
1回の調停で話し合いがまとまれば、その場で調停が成立です。
まとまらない場合には、約1ヶ月後に第2回調停が開催され、その後は成立か不成立が決定するまで(もしくは、申し立て人が取下げをするまで)、おおむね1ヶ月ごとに、調停が開催されます。
離婚調停「成立後」の手続きについて
離婚調停が成立すると、裁判所によって調停調書が作成されますので、調停調書の謄本を請求します。
離婚する旨が書かれた調停調書の謄本があれば、相手の印がなくても離婚届を役所に提出することができます。離婚の申立てをした側が先に提出する必要があるため、申立人の場合には速やかに届出をしましょう。
併せて、年金や保険関係の手続き、年金分割がある場合にはその手続きの他、子の氏を変えるのであればその手続きなども行う必要があります。
離婚調停「不成立後」の手続きについて
離婚調停が不成立に終わった場合、引き続き離婚について争いたい場合には、裁判を起こす必要があります。
なお、審判という、調停の結果を踏まえて裁判所が離婚を命ずる手続きもありますが、相手から異議申し立てをされると効力を失うため、ほとんど利用されていません。
裁判は、諸般の事情を考慮の上、裁判所が離婚をするかどうかや離婚に関する諸条件を決定する手続きです。
依頼弁護士の性別で有利・不利はあるか
離婚について相談したい場合、弁護士の性別で、調停の有利不利に差はあるのでしょうか?
男性・女性の違いはある?
弁護士が男性であるか女性であるかによって、調停の有利不利に差はありません。
同性・異性の違いはある?
弁護士が自分と同性が良いか異性が良いかは、一概にいえるものではありません。
ただし、弁護士は長期にわたりともに戦っていくパートナーです。
「同性の方が話しやすい」「異性の方が話しやすい」など希望がある場合には、その希望に従って探すことは一つでしょう。
また、一般的に離婚のような男女問題においては、同性の方が共感を得やすい可能性は否定できません。
弁護士選びで性別よりも大切な観点
離婚調停をともに戦う弁護士を選ぶ際には、性別よりも、その弁護士との相性を大切にしてください。
また、離婚調停を有利に進めるためには、過去の事例の蓄積も重要です。
離婚問題に力を入れている事務所であれば多くの事例の蓄積がありますので、案件ごとの対応法を熟知している可能性が高いでしょう。
まとめ
離婚調停で調停委員と話をするときには、冷静な態度で自分の要望をわかりやすく伝える必要があります。弁護士を代理人に立てていると、調停を有利に進められる可能性が高くなります。
当事務所では離婚トラブルの解決に積極的に取り組んでおり、調停に必要な知識や対応ノウハウも蓄積しています。後悔しない離婚を実現するため、ぜひとも一度ご相談ください。
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