親権者とは、子どもを養育監護し、財産を管理して教育やしつけなどを行う親をいいます。
婚姻時は両親とも親権者ですが、離婚すると一方しか親権者になれません。
親権者にならなかった親は、基本的に子供と一緒に住めず財産管理権も失います。
ただし監護権者と親権者を分けた場合、子どもの養育監護は監護権者が行います。
目次
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親権者とは
親権者とは、未成年の子どもの養育監護や財産管理、教育やしつけなどを行う親です。
親権者には以下のような権利や義務が認められます。
養育監護権
実際に子どもと一緒に住み、養育監護を行う権利です。
財産管理権
子ども名義の財産を管理する権利です。子どもを代理して契約を締結したり、子どもが勝手にした契約を取り消したりもできます。
教育に関する権利と義務
子どもに適した教育を受けさせる権利です。適切な教育を受けさせるのは親権者の義務でもあります。
しつけを行う権利
必要な範囲で子どもにしつけを行う権利もあります(懲戒権)。
*子どもの人権尊重の観点から、2022年5月現在、懲戒権を定めた民法の条項を削除する法改正の動きがあります。
仕事を許可する権利
未成年の子どもが仕事をするには親権者の許可が必要です。親権者には子どもに仕事を許可する権利が認められます。
居所を定める権利
親権者には子どもが住む場所を指定できる権利もあります。
離婚前の親権者と離婚後の親権者
婚姻中の夫婦に子どもが生まれた場合、どちらの親にも親権が認められます。
ただし離婚すると、一方の親にしか親権が認められません。
親権者が決まらないと協議離婚の離婚届も受け付けてもらえないので、必ずどちらか一方を親権者に指定する必要があります。
親権者と親権者にならなかった親の違い
離婚後に親権者になった場合とならなかった場合、どういった違いが生じてくるのかみてみましょう。
子どもと一緒に住めない、自由に会えない可能性がある
1つ目に、親権者(監護権者)にならなかった親は子どもと一緒に住めません。
同居親が協力しなければ、子どもと会えなくなる可能性もあります。
ただし親権者にならなかった別居親にも面会交流権が認められます。
面会交流権とは、子どもと会ったり電話やメールなどを利用したりして交流する権利です。
同居親が会わせてくれない場合には、家庭裁判所で面会交流調停を申し立てて面会を求めることができます。
子どもの教育方針を決められない
親権者にならなかった親は、子どもの教育方針を決められません。
親権者と話し合うことは可能ですが、最終的な決定権は親権者に認められます。
子どもの代理ができない、財産管理できない
親権者にならない場合、子どもの代わりに預金口座を作ったり子ども名義の証券口座を運用したり、子どもの代わりに契約を締結したりできなくなります。
親権者の決定方法
親権者の決定方法は、離婚手続きの種類によって異なります。
以下で協議離婚、調停離婚、裁判離婚それぞれにおける親権者の定め方をご紹介します。
協議離婚の場合
夫婦の離婚は、協議離婚の方法で行われるケースが多数です。
協議離婚の場合、夫婦が話し合って親権者を決めなければなりません。
合意ができたら離婚届に親権者を書き込み、役所へ提出します。
すると、戸籍に親権者が記載されて離婚後の親権者が決定します。
親権者が空欄の状態では離婚届を受け付けてもらえないので協議離婚はできません。
調停離婚の場合
調停離婚の場合、夫婦が調停委員を介して話し合い、どちらが離婚後の親権者になるか決めなければなりません。
合意ができれば調停調書に親権者が記載されます。
調停調書を役所に持参して離婚届を提出すると、調書に記載された親が親権者として戸籍に記載されます。
裁判離婚の場合
裁判離婚の場合、判決で裁判所が離婚後の親権者を指定します。
協議や調停とは異なり、両親の話し合いでは親権者が決まりません。
裁判所が一定の判断基準を適用して親権者を決めてしまいます。
判決が出たら判決書と確定証明書を役所へ持参して離婚届を提出します。
すると判決書に書かれている親が親権者として戸籍に記載されます。
親権者と監護権者の違いや分ける意味
親権者にならなかった場合には基本的に子どもの養育監護権が認められませんが、「親権者」と「監護権者」を分ける場合は例外です。
監護権者とは子どもと実際に一緒に住んで養育監護を行う人です。
親権者にならなかった親が監護権者になると、監護権者が子どもの養育監護を行います。
監護権がない場合、親権者であっても子どもと一緒に住まず、親権者は子どもの財産管理や教育方針の決定などのみを行います。
親権者と監護権者を分ける意味
親権者と看護権者を分ける動機として多いのは、両親の間の親権争いです。
どちらの親も親権を主張すると、話し合いでは親権者を決められません。
そこで親権者と監護権者を分けて、一方の親が親権者となり他方の親が監護権者となって妥協します。
たとえば父親が親権者となり、それまで主に養育に携わってきた母親が監護権者となる事案がよくあります(もちろん男女が反対でもかまいません)。
なお親権者と監護権者を分けた場合には親権者に面会交流権が認められます。
親権者の判断基準
相手と争っている場合に親権者になるには、裁判所の親権者判断基準を知っておくべきです。
最終的に裁判離婚となったときに有利に進める必要があるからです。
以下のような要素があると、親権の取得に有利になります。
- これまでの養育実績が高い
- 子どもとの関係が良好
- 子どもに対するDV(面前DV)など、相手に監護者として不適切な行動があると、相手はマイナス評価される
- 子どもの監護方針が明確で信頼性がある
- 居住環境が良い
- 経済力がある
- 心身共に健康
- 子どもが乳幼児なら母親が優先
- 子どもの年齢が高くなると子どもの希望を評価
- 離婚時に別居している場合、子どもと一緒に暮らしている親を優先(ただし子どもが落ち着いて問題なく暮らしている場合)
- 兄弟がいる場合、親権者は分離しない
- 離婚後の面会交流に積極的
ただし上記の要素は総合的に評価されるので、1つの要素があれば親権が認められるわけではありません。
反対に、不利な要素があっても親権が認められる可能性もあります。
親権を取得するための対応ポイント
最後に親権を取得するための対応ポイントをお伝えします。
子どもとの関係を良好にする
子どもとのコミュニケーションを増やす、宿題や習い事をみてあげる、一緒に遊ぶなど関わりを密にして、良好な関係を築きましょう。
育児に積極的に関わる
子どもが小さいなら積極的に育児を行いましょう。
ミルクを上げる、おむつをかえる、食事の世話をする、お風呂に入れるなどの作業を主にしている方へ親権が認められやすくなります。
子どもの養育監護に関する資料を集める
これまで自分がどのように育児に関わってきたのかがわかる資料を集めましょう。
母子手帳や保育園、幼稚園、学校のノート、連絡帳、写真、育児日記などが証拠となります。
父親の場合、子どもがある程度大きくなるまで離婚を待つ
子どもが乳幼児の場合、母親が優先されるのが通例です。
父親がどうしても親権者になりたいなら離婚時期を先にのばしましょう。
別居の際、子どもと離れない
離婚時に子どもと離れて生活していると、親権を取得しにくくなります。
離婚前に別居するなら子どもと離れないようにしましょう。
まとめ
親権者になれば子どもと一緒に暮らせますし、教育にも携わって子どもの成長をみていくことができます。
ただし離婚後に親権者になれるのは親のどちらか一方のみです。
相手と親権争いになりそうなら、早めに弁護士へ相談しましょう。
親権争いが生じない場合でも養育費や面会交流について定めなければなりません。
離婚問題に詳しい弁護士のアドバイスを受けておくと安心なので、まずは一度相談してみてください。
Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること
お子様の親権は、離婚協議においてもっとも対立することの多い事項の一つです。
親権の取得を目指される上では、上でご紹介した親権者決定の判断要素について、ご自身の強みを効果的に主張していくことが必要になります。
また、判断要素の中でも、これまでのお子様の監護実績は相当重視される項目です。
そのため、離婚とお子様の親権取得を意識された際には、できる限り早い時期に弁護士に相談されることをお勧めいたします。
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