コラム
公開 2024.02.07

離婚後に養育費は請求できる?後から遡って請求することはできる?弁護士が解説!

養育費は、離婚後であっても請求することができるのでしょうか?
今回は、離婚後に養育費を請求する際のポイントや、取り決めをした養育費を滞納された場合の請求方法、養育費請求の時効などについて、弁護士がくわしく解説します。

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養育費とは

養育費とは、子どもの教育や監護のためにかかる費用です。

離婚によって、夫婦の関係は終了します。
しかし、離婚して自分が親権をとらなかったからといって、子どもが自分の子どもでなくなるわけではありません。
そのため、親として養育費の負担義務が引き続き残ります。

また、養育費は、親権を持たなかった側の親だけが負担するものではありません。
養育費は、子どもの養育にかかる費用を、離婚をした夫婦である父母が双方の支払い能力に応じてそれぞれ負担しています。

ただし、親権を持っている側の親が負担する養育費は、固定額を定期的に誰かに支払うものではなく、学校や塾、食材を購入するスーパーマーケットなどでその都度支払うものです。
そのため、親権を持っていない側の親からすれば、親権を持っている側の負担が見えづらいかもしれません。

また、養育費の支払いは、面会交流と引き換えに生じるものではない点にも注意が必要です。
思いどおりに面会交流ができていないから養育費など支払わないとの主張はしばしば見かけますが、面会交流していないことを理由に養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。

養育費はどう決まる?

素材_ポイント

離婚後の養育費は、どのように決まるのでしょうか?
養育費の主な決め方は次のとおりです。

話し合いで決める

養育費の額は、離婚をする夫婦間で話し合って決めることが原則です。

養育費を決める際には、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」が参考になるでしょう。※1

算定表は、子どもの人数と年齢(15歳未満か15歳以上か)別に、9つに分割されています。

たとえば、子どもが2名で、第一子が15歳以上、第二子が15歳未満である場合の算定表は、次のとおりです。

離婚_養育費算定表

この表の縦軸から養育費を支払う人(義務者)の年収を探して、そのまま右に伸ばします。
同様に、横軸から養育費を受け取る人(権利者)の年収を探し、上に伸ばしましょう。

それぞれの線がクロスする場所が示す金額が、養育費の目安となります。

この表に当てはめると、たとえば、夫婦双方とも給与所得者であり、養育費を支払う義務者の年収が700万円、権利者の年収が200万円の場合における養育費月額の目安は、「10~12万円」です。

なお、双方が合意さえするのであれば、必ずしもこの算定表に従って養育費を取り決める必要はありません。
ただし、次で解説する調停や審判へ進むと、原則としてこの算定表を目安として養育費が算定されます。
そのため、あらかじめ算定表上の金額を知ったうえで相手との交渉に臨むとよいでしょう。

調停で決める

当事者間で養育費についての話し合いがまとまらない場合には、調停へと移行します。
調停とは、調停委員立会いの下、家庭裁判所で行う話し合いのことです。

直接双方が話し合うわけではなく、調停委員が双方に順に話を聞き、話し合いを調整する形で進行していきます。

裁判所での手続きであるとはいえ、話し合いである以上、裁判所が一方的に結論を出してくれるわけではありません。
調停の成立には、双方の合意が必要です。

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審判で決めてもらう

調停を経てもなお、双方の意見がまとまらない場合には、原則として審判へと移行します。
審判では、諸般の事情を考慮したうえで、裁判所が養育費の金額などについて決断を下します。

養育費は後からでも請求できる?

離婚を急ぐ場合など、養育費について決めないままに離婚してしまう場合もあるかと思います。
では、養育費について何ら取り決めをしないままに離婚をした場合に、後から養育費を請求することはできるのでしょうか?

離婚後に養育費を請求することは可能

すでに離婚が成立していても、後から養育費を請求することは可能です。
離婚後には養育費の請求ができないなどという決まりはありませんので、諦めないようにしましょう。

支払い義務の発生は請求時点から

離婚時に取り決めていなかった養育費を離婚後に請求することはできるものの、請求前の分をさかのぼって請求することは原則として認められないことには注意しましょう。

そのため、養育費について取り決めのないまま離婚をしてしまった場合には、できるだけ早期に養育費の請求をすることをおすすめします。

離婚後に養育費の請求をする際のポイント

離婚後に養育費の請求をする際には、次のポイントを押さえたうえで行うとよいでしょう。

できるだけ早く請求する

1つ目のポイントは、養育費が請求できることに気づいたら、できるだけ早く請求手続きを進めることです。
なぜなら、先ほど解説したように、養育費の支払い義務は請求をした時点から発生することが原則であるためです。

離婚から請求までの期間が長くなれば長くなるほど、本来受け取ることができたはずの養育費のうち受け取ることができない金額が増えてしまうでしょう。

養育費の相場を知っておく

2つ目のポイントは、相手に養育費を請求したり相手と養育費の交渉をしたりする前に、その状況に応じた養育費の相場を知っておくことです。
なぜなら、養育費についていったん双方で合意をした後で、相場より安いことを知らなかったという理由のみで増額することは困難であるためです。

養育費の目安を知るには、先ほど触れた算定表が参考になります。
また、あらかじめ弁護士へ相談することで、個別事情を考慮した養育費の相場を把握しやすくなるでしょう。

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取り決めた内容は公正証書にする

3つ目のポイントは、養育費について合意ができたら、取り決めた内容を公正証書にしておくことです。
公正証書とは、公証人がその権限にもとづいて作成する文書を指します。

まず、養育費についての取り決めを口頭やSNS上などのみで行うことは避けたほうがよいでしょう。
いざ滞納となった際に合意の証拠がなかったり弱かったりすれば、相手から「そのような合意はしていない」などと主張されてしまう可能性があるためです。

また、公正証書ではなく任意の文書で作成するケースもありますが、滞納時の対応を考えると不安が残ります。
なぜなら、公正証書ではない文書では、万が一滞納されてしまった際にすぐに強制執行をすることができないためです。
強制執行をするためには、先に調停の申し立てなどをしなければなりません。

一方、公正証書でしっかりと合意ができていれば、仮に滞納されたとしても、スムーズに強制執行をすることができます。

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弁護士へ相談する

4つ目のポイントは、養育費請求について弁護士へ相談することです。
自分で請求をすることが難しくても、弁護士へ相談することで、正当な額の養育費を受け取れる可能性が高くなるためです。
また、弁護士が交渉を代理してくれるため、相手と直接話し合う必要がありません。

養育費について、相手と直接対峙することが億劫であったり、相手の支払い能力がないであろうと考えたりして、請求しないケースもあるでしょう。
また、相手の言い値を飲んでしまうケースもあるかと思います。

しかし、正当な金額の養育費を受け取ることは、子どもにとって当然の権利です。
養育費について取り決めないまま離婚をしてしまった場合には、早期に弁護士へ相談して、養育費の請求を行いましょう。

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相手が取り決めた養育費を支払わない場合の請求方法

養育費について取り決めをしたにもかかわらず、養育費を滞納されるケースは少なくありません。
では、養育費が滞納されたら、どのように対応すればよいのでしょうか?
主な対応方法は、次のとおりです。

内容証明郵便で請求する

養育費を滞納されたら、内容証明郵便で請求をしましょう。
内容証明郵便とは、どのような内容の郵便が誰から誰に送付されたのかということを、日本郵便株式会社が証明するサービスです。
通常、配達の記録が残る簡易書留などを付けますので、配達された日時の記録も残ります。

内容証明郵便は受け取り慣れていない人が多く、単に口頭や通常の文書で請求する場合と比較して、心理的なプレッシャーを与えられる可能性が高いでしょう。
また、仮にこれ以上滞納を続ければ裁判手続きに移行するとの強いメッセージともなります。

ただし、内容証明郵便で記した内容は記録がされるため、不用意なことを書いてしまうと送り手にとって不利な証拠を残してしまいかねません。
内容証明郵便を送る際には、弁護士に内容を確認してもらうか、弁護士に代理で作成してもらうとよいでしょう。

弁護士から請求してもらう

滞納分の養育費を自分で請求することに不安がある場合には、養育費など離婚問題にくわしい弁護士へ相談のうえ、弁護士から請求をしてもらうとよいでしょう。

弁護士から請求をすることで、これ以上滞納を継続すれば法的手続きに移行するとのプレッシャーを相手に与えることができるため、滞納の解消につながりやすくなります。

履行勧告

履行勧告とは、家庭裁判所の調停や審判などで決まった金銭の支払いなどの義務を守らない人に対して、家庭裁判所がその義務を履行するように勧告する手続きです。

履行勧告をしてもらうために、費用はかかりません。
ただし、仮に相手が履行勧告に従わなくても、支払いなどの履行を強制することはできない点に注意が必要です。

また、裁判所を介さずに養育費の取り決めをした場合には、履行勧告手続きは利用できません。

履行命令

履行命令とは、家庭裁判所の調停や審判などで決まった金銭の支払いなどの義務を守らない人に対して、家庭裁判所がその義務を履行するように命令する手続きです。※2

相手が正当な理由なく履行命令に従わないときは、過料の制裁に処せられることがある点で、履行勧告とは異なります。

また、履行命令をしてもらうために、費用はかかりません。
ただし、履行勧告と同じく、裁判所を介さずに養育費の取り決めをした場合には利用できない点に注意が必要です。

強制執行

相手が任意に養育費を支払わない場合の最終手段が、強制執行です。
強制執行とは、預貯金など相手の財産や給与などの債権を裁判所が差し押さえ、強制的に養育費を支払わせる手続きを指します。

給与の差押えがなされれば、手続きの過程で勤務先へ滞納の事実を知られることとなります。
そのため、これを避けたいと考える人は、差押えの可能性を感じた時点で自ら支払う可能性が高いでしょう。

なお、強制執行をすることができるのは、養育費について公正証書で取り決めた場合と、調停や審判など裁判所が関与する方法で取り決めた場合に限定されます。
公正証書ではない書面で養育費について取り決めていた場合などには、強制執行の前段階として、調停の申立てなどが必要です。

未払養育費の請求の時効

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相手が取り決めた養育費を滞納している場合には、できるだけ早く請求をしたほうがよいでしょう。
なぜなら、未払養育費の請求には時効があるためです。

未払養育費についての時効は次のとおりです。

離婚協議書や公正証書で養育費を取り決めた場合

養育費についての取り決めを公正証書で行った場合や、公正証書でもない任意の書面で行った場合などには、養育費は本来の支払期限から5年で時効にかかります。

令和2年(2020年)4月1日の民法改正で時効についての改正がなされましたが、養育費の時効については改正前後で特に変わりはありません。

調停や審判で養育費を取り決めた場合

養育費について、調停や審判など裁判所が関与をして取り決めた場合には、時効が5年ではなく、10年へ伸長されます。

ただし、時効が長いからといって、養育費滞納を長期間放置することはおすすめできません。
滞納された期間が長ければ、それだけ未払いとなっている金額も高額になる傾向にあり、仮に強制執行をしても取り立てられるだけの財産を相手が持っていない可能性が高くなるためです。

支払うだけの資力が相手になければ、いくら強制執行をしても支払ってもらうことはできません。

まとめ

たとえ離婚時に養育費の取り決めをしていなかったとしても、養育費の請求は、離婚後に行うことも可能です。

但し、離婚後に養育費を請求する場合、原則として、その請求を開始した日からの養育費しか認められないため、養育費の請求はできるだけ早く開始することが大切です。
養育費請求の手続きに不明な点がある場合や、当事者間だけでは話がまとまらないという場合は、離婚問題を取り扱っている弁護士に相談するとよいでしょう。

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Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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