コラム
公開 2021.01.25 更新 2021.10.04

慰謝料や養育費を確実に受け取るために~公正証書離婚の仕組みとメリット~

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離婚するときには養育費、財産分与、慰謝料などのお金を確実に受け取りたいものです。
しかし現実には相手方がきちんと約束を守ってくれないケースも少なくありません。特に支払い期間の長くなる「養育費」は、途中で支払われなくなるリスクが高いといえます。

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1.協議離婚とは

日本では、夫婦が自分たちで話し合って離婚する「協議離婚」が認められています。
協議離婚は役所に「離婚届」さえ出せば成立するので、細かい財産分与や養育費、慰謝料などの離婚条件を決める必要はありません。
ただ、それでは離婚後に「財産分与請求調停」や「養育費請求調停」、「慰謝料請求訴訟」などが起こされ、紛争が再発する可能性が高くなってしまいます。また、当事者だけで離婚協議書を作成しても、相手方が約束を守ってくれないときにはあらためて調停や裁判手続きを利用する必要があります。
これに対し、離婚の協議内容に関する公正証書を作成することにより、契約内容に法的な執行力を付与することができます。つまり、「公正証書」を作成することで、支払いが滞った際に相手方の給料や財産を差し押さえることができます。

協議離婚をするときに金銭を請求する場合には、公正証書を作成するとよいでしょう。

2.協議離婚で公正証書を作成するメリット

協議離婚の際に公正証書を作成すると、以下のようなメリットがあります。

2-1.相手方が金銭を支払わないときに差し押さえて取り立てができる

養育費や財産分与、慰謝料などの支払いを約束しても、離婚後にきちんと払われるかどうかは定かではありません。相手方が支払ってくれなければ、督促したり調停や訴訟をしたりしなければならず、手間も費用も時間もかかってしまいます。
公正証書に「強制執行認諾文言」を入れておけば、相手方が支払いを怠ったときに調停や訴訟なしに差押えができます。給料や預貯金を差し押さえることによって簡単かつスピーディに支払いを受けられるメリットは大きいでしょう。

2-2.約束した内容が守られやすい

協議離婚の際に公正証書を作成すると、相手方は「滞納すると給料を差し押さえられても文句を言えない」状態になります。給料が差し押さえられると会社に通知がされるので、給料が差し押さえられているという事実は会社にも知られます。
そのような事態に陥らないよう、通常、支払い義務者は滞納しないようにきっちり支払おうとします。公正証書を作成することによって約束が守られやすくなり、そもそも滞納が発生しにくくなります。

2-3.紛失や破棄などのおそれがない

当事者だけで養育費や財産分与などの取り決めをしても、合意書を紛失してしまう可能性があります。また、相手方と言い争いになったときなどに合意書を破られたり隠されたりする危険性も考えておかねばなりません。
公正証書の場合、原則として20年間は原本が公証役場で保存されます。そのため、写しを紛失してしまった場合でも、再発行してもらえますし、破棄・偽造・変造・隠匿を防ぐことが可能です。

このように、紛失や破棄・隠匿などのおそれがないのも離婚協議書を公正証書にしておく大きなメリットといえるでしょう。

2-4.「無効」と主張されるおそれが少ない

当事者だけで協議離婚書を作成すると、相手方が「自分が署名したのではない」「無理矢理署名させられた」などと言い出して「ここに書いてある約束は無効だ」と主張する可能性があります。
公正証書であれば、本人確認をした上で公証人が作成し当事者が署名押印するので「無効」とは主張しにくくなります。

2-5.年金分割の手続きが楽になる

離婚時に「合意分割」で年金分割を行う場合には、離婚後に当事者双方(元夫婦の2人)またはその代理人が年金事務所に行って手続きをしなければなりません。離婚後に相手方と関わりたくない場合や相手方が非協力的な場合には年金分割を受けることが困難になってしまうでしょう。
これに対し、公正証書で年金分割の合意をしておけば、年金分割を受ける一方当事者が1人で年金事務所に行き、手続きができます。年金分割の手続きが楽になるのも公正証書離婚のメリットの1つです。

このように、離婚協議書を公正証書にしておくと、将来約束したお金の支払いを受けやすくなりますし、年金分割手続きもしやすくなるというメリットがあります。離婚に際し、養育費、財産分与、慰謝料等の合意をする場合には公正証書を作成するとよいでしょう。

3.離婚の際に公正証書に記載すべきこと

離婚をする際に作成する公正証書には、以下のような事項を記載しましょう。

3-1.親権

未成年の子どもがいる場合、夫婦のどちらが親権者になるかを明記しなければ離婚届けは受理されません。父母のどちらが親権者となるのかを記載しましょう。

3-2.養育費

子どもの養育費は、基本的に「毎月定額」を支払います。父母の収入状況に応じて裁判所が参考にしている金額があるので、こちらを参考にしながら養育費の金額を決定しましょう。

裁判所:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

3-3.財産分与

財産分与をする場合には、分与する財産の内容や分与の方法等を記載します。財産分与の対象となる財産は、結婚後に夫婦で協力して築き上げた財産であり、預貯金や不動産、車や株式、保険などが挙げられます。
財産分与の割合は、夫婦それぞれの収入にかかわらず、原則として2分の1とされています。

3-4.慰謝料

夫婦どちらかの不倫やDV、モラハラなどが離婚原因となる場合、被害者は加害者へ慰謝料を請求することができます。慰謝料の支払い義務や金額、支払い方法についても公正証書に書き込みましょう。

3-5.年金分割

夫婦のどちらか一方や双方が「厚生年金(共済組合の組合員である期間を含みます。)」に加入している期間があれば、年金分割ができます。特に合意分割の場合には、公正証書に分割方法を定めておくことをおすすめします。
なお、老後の生活を保障するという厚生年金の趣旨に照らし、年金分割の按分割合の上限は50%となっています。

3-6.面会交流

未成年の子どもと非監護親との面会交流に関する事項についても公正証書で定めることができます。

3-7.未払いの婚姻費用の清算

婚姻期間中は、収入の少ない配偶者は多い配偶者へ「婚姻費用(生活費)」を請求できます。離婚前の婚姻費用に未払い分があれば離婚時に清算することもできるので、公正証書に金額や支払い方法を記入しましょう。

3-8.住居の使用に関する合意など

離婚後も相手方所有の家に住み続ける場合などには、住居の使用に関する合意内容を公正証書で定めておきましょう。たとえば、「子どもが大学を卒業するまでは母親が子どもと自宅に居住する」旨の合意をしておけば、安心して生活ができます。非監護親が監護親に対して養育費を支払う代わりに無償で住居の使用を認めるケースなどもあります。

離婚の際に持ち家をどうするのかについてはケースバイケースの対応が必要となりますので、迷ったときには弁護士にご相談ください。

4.公正証書を作成する方法

公正証書を作成するには、公証役場に申し込んで公証人に作成を依頼する必要があります。
全国どこの公証役場でも問題ありませんが、原則として公証役場に行って手続きをする必要があるので、ご都合の良い公証役場を選んで連絡をするとよいでしょう。

日本公証人連合会:公証役場一覧
http://www.koshonin.gr.jp/list

また公証人には「既に決まった離婚条件」を伝える必要があります。公証人が離婚条件の内容について相談に乗ってくれたり夫婦間の調整をしてくれるわけではないので、事前にきちんと相手方と話し合って条件を定めておきましょう。

公証人から指示された書類を提出し、指定された日に相手方とともに公証役場に行って署名押印すれば、公正証書が完成します。公正証書の正本又は謄本(写し)が交付されますので、大切に保管しておきましょう。原本は公証役場で保管され続けるので、写しをなくしたら公証役場で再交付を受けることができます。費用は当日現金で支払います。

まとめ

協議離婚の際には約束が守られやすい「公正証書離婚」をお勧めします。離婚条件の取り決めで相手方ともめてしまったとき、どのように離婚条件を定めて良いかわからないとき、離婚協議書や公正証書の作成方法がわからないときには、Authense法律事務所の弁護士がお力になりますのでお気軽にご相談下さい。

記事を監修した弁護士
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