コラム
公開 2022.09.06 更新 2022.10.24

財産分与とは?離婚における財産分与の対象や弁護士費用を弁護士がわかりやすく解説

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財産分与とは、離婚に伴って夫婦の財産を清算する手続きです。
婚姻期間中に築いた財産は、原則としてすべて財産分与の対象となります。

今回は、財産分与の基本や弁護士へ交渉を依頼した場合の費用などについて詳しく解説します。

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離婚に伴う財産分与とは

離婚に伴う財産分与とは、離婚に伴って夫婦の財産を清算する手続きです。
離婚をした夫婦の一方が、もう一方の当事者に対して財産の分与を請求することができます。

法務省のホームページによれば、財産分与には次の3つの性質があるとされています。

  1. 夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配
  2. 離婚後の生活保障
  3. 離婚の原因を作ったことへの損害賠償

なかでも、このうち「1」が財産分与の基本となる性質です。

夫婦関係が円満であるうちは、生活している中で、どの財産がどちらのものなのかを意識する機会はそう多くはありません。
実際、夫婦には相互扶助義務がありますので、婚姻期間中は相手に自分と同等レベルの生活を送らせる義務があります。

しかし、離婚後はそれぞれ別の道を歩むこととなり相互扶助義務も解除されますので、夫婦の財産を清算して各自に割り振る手続きが必要となります。
これが、離婚に伴う財産分与です。

なお、財産分与は離婚の際に行うことが一般的ですが、財産分与をしないまま離婚をした場合には、離婚が成立してから2年以内であれば財産分与の請求をすることが可能です。

財産分与の対象となるもの、対象とならないもの

財産分与の対象となる財産と対象にならない財産は、それぞれ次のとおりです。

対象となるもの

婚姻期間中に取得した財産は、原則としてすべて夫婦の共有財産とされるため、財産分与の対象となります。

なお、財産分与の対象になるかどうかに、財産の名義は関係ありません。
つまり、夫婦の共有名義で購入した不動産が財産分与の対象になることはもちろん、各自の名義となっている預貯金や、一方のみの名義で購入した不動産なども財産分与の対象になるということです。

たとえ一方の名義であったとしても、婚姻期間中に築かれた財産であれば、それは夫婦の協力により築かれた財産であると考えられるためです。

対象とならないもの

次のものは、原則として財産分与の対象とはなりません。
なお、財産分与の対象とならない財産のことを「特有財産」といいます。

婚姻前から所有していた財産

婚姻する前から各自が所有していた財産は、原則として財産分与の対象とはなりません。
たとえば、独身時代に貯めた定期預金や、独身時代に購入をした不動産などがこれに該当します。

親から相続を受けた財産など夫婦の協力で築かれたとはいえない財産

たとえ婚姻期間中に得た財産であっても、夫婦の協力により築かれたとはいえない財産は、財産分与の対象外です。
たとえば、親からの相続で取得した預貯金や不動産などがこれに該当します。

離婚に伴う財産分与の割合はどれくらい?

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離婚に伴う財産分与の割合は、どの程度なのでしょうか?
原則と例外とに分けて解説します。

原則として財産分与は2分の1ずつ

財産分与の割合は、原則として2分の1ずつです。

たとえば、夫婦の一方のみが外部からの収入を得ており、もう一方が専業主婦(主夫)であった場合などには、自宅の土地建物や預貯金など多くの財産が収入を得ている側の名義であり、もう一方の配偶者名義の財産がほとんど存在しないというケースもあるでしょう。
この場合であっても、2分の1ずつの割合で財産分与を行うことが原則となります。

なぜなら、専業主婦(主夫)の支え、協力関係があったからこそ、それだけの財産を築くことができたものと考えられるためです。

なお、原則として、離婚原因によって財産分与の割合は変動しません。
たとえば、配偶者の不貞行為によって離婚をする場合であっても、財産分与の額が増額されるわけではないということです。

不貞など離婚原因となった行為については、財産分与とは別途、慰謝料の問題として検討することとなります。

例外的に財産分与が2分の1以外となる可能性があるケース

次の場合には、例外的に2分の1以外の割合で財産分与がされる可能性があります。

このような事情がある場合における財産分与の割合は一律に判断されるのではなく、状況に応じて個別的に判断されます。

一方の特殊な資格や能力で財産を形成していたケース

夫婦の一方が医師やスポーツ選手、多数の会社を経営する経営者などで、当該特殊な資格や能力をもとに多額の財産を形成していたケースなどでは、この点が加味され、財産分与の割合は2分の1とはされない可能性があります。

つまり、特殊なスキルで稼いできた側が取得する財産の割合が多くなる可能性があるということです。

一方が著しく浪費をしていたケース

夫婦の一方の浪費が激しく、婚姻期間中に多くの財産を浪費してきたケースなどでは、この点が加味され、財産分与の割合は2分の1とはされない可能性があります。

つまり、浪費をしてきた側が取得する財産の割合が少なくなる可能性があるということです。

財産分与の決め方

財産分与の割合や具体的にどの財産をどう分けるのかは、誰がどのように決めるのでしょうか?
一般的な財産分与の決め方は次のとおりです。

当事者同士で話しあう

財産分与については、離婚をする当事者同士で話し合って決めることが原則です。
当事者の合意がまとまるのであれば、必ずしも2分の1ずつで分ける必要はなく、これとは異なる割合で分けても構いません。

なお、単なる口約束では後から「言った・言わない」で問題となってしまう可能性がありますので、無事に合意ができた場合には合意した内容を書面で残しておくとよいでしょう。
特に、他に養育費など継続的な支払いを伴う合意をした場合には、万が一、支払いが滞った場合に備え、強制執行が可能な公正証書を作成しておくと安心です。

弁護士に代理交渉してもらう

当事者同士での話し合いがまとまらない場合や、一方が高圧的であるなど話し合いが難しい場合などには、弁護士に代理交渉してもらうことが選択肢の一つとなります。

弁護士に代理をしてもらうことで冷静な話し合いがしやすくなり、交渉がまとまりやすくなるでしょう。
また、相手から不利な条件で無理に丸め込まれてしまうリスクなどを防ぐことが可能となります。

離婚調停や財産分与請求調停で話しあう

当事者同士での話し合いがまとまらない場合や、相手方が話し合いを拒否している場合などには、調停を申し立てることになります。
調停とは、調停委員立ち合いのもと、裁判所で行う話し合いのことです。

調停では、調停委員が間に入って双方の主張を聞き、話し合いの仲裁を行います。
調停の場へ弁護士に同席してもらうことや、弁護士に代理してもらうことも可能です。

たとえ当事者同士のみでは話し合いがまとまらなかったとしても、調停の場で、調停委員が間に入って落ち着いて話し合うことで、調停で決着がつくケースが多くあります。

離婚審判や財産分与請求審判で決める

離婚審判や財産分与請求審判とは、調停では決着がつかないと判断された場合に、裁判所が離婚や財産分与など離婚の条件などについて判断を下す手続きです。

当事者に異議がなければ、裁判所が示した条件でそのまま離婚等が成立します。

ただし、2週間以内に一方の当事者が異議を申し立てると離婚審判が無効になってしまうため、離婚審判で離婚を決するケースは、さほど多くありません。財産分与請求については、調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行し、裁判所が財産分与の判断をします。

離婚裁判で決める

離婚裁判とは、裁判所に離婚をするかどうかや離婚の諸条件について決めてもらう手続きです。
離婚をする旨や離婚に関する諸条件についての判決の言い渡しを受けることによって、その内容で離婚が成立します。
離婚調停が不成立となった場合、それでも離婚したいときには離婚訴訟を提起することになります。離婚時にあわせて財産分与をする場合には、財産分与についても離婚訴訟で決めることになります。

財産分与を弁護士へ依頼した場合の費用相場

財産分与の交渉を弁護士へ依頼した場合に、費用はどのくらいかかるのでしょうか?
弁護士費用の一般的な相場は、次のとおりです。

ただし、依頼する弁護士によって費用が大きく異なる場合もあります。
費用をより正確に知りたい場合には、依頼を検討している弁護士事務所へあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

初回相談料

財産分与に関する弁護士への初回相談料は、1時間1万円程度が相場です。
また、中には初回のみ無料で相談ができる事務所も存在します。

なお、初回相談のみで問題が解決するケースはほとんどありません。
初回相談はあくまでも、事務所や弁護士との相性を見るための「お試し相談」であると考えておくとよいでしょう。

着手金

財産分与についての交渉を弁護士へ依頼した場合には、着手金と次で解説をする成功報酬(報酬金)がかかることが一般的です。

着手金はその業務に取り掛かってもらう段階で支払う報酬で、結果を問わず支払うべき報酬です。

財産分与事件について弁護士へ支払うべき着手金は、おおむね20万円から30万円程度であることが多いでしょう。

成功報酬

無事に財産分与についての交渉がまとまった際には、成功報酬として報酬金の支払いが必要となることが一般的です。
報酬金は、得た経済的利益のおおむね10%から20%程度であることが多いでしょう。

ただし、任意の話し合いで交渉がまとまらず調停へ移行した場合などには増額となる可能性がありますので、この点についても事前に確認しておくとよいでしょう。

財産分与の交渉を弁護士へ依頼するメリット

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財産分与の交渉は無理に自分で行わず、離婚問題に詳しい弁護士へ依頼されることをおすすめします。
弁護士へ財産分与の交渉を依頼する主なメリットは次のとおりです。

相手と直接交渉をしなくて済む

離婚を決めた相手と、財産分与の交渉を直接行いたくないケースは少なくないかと思います。
また、相手からのDV被害やモラハラ被害を受けていた場合などにおいては、直接交渉をすることに危険を伴うケースや、相手に言いくるめられてしまうケースもあることでしょう。

中には、相手と交渉することを避けるために、財産分与などの請求をしないまま離婚をしようと考える場合もあるかもしれません。

しかし、財産分与を受けることは正当な権利です。
弁護士へ依頼すれば、相手と直接交渉をする必要はありません。

交渉を有利に進められる可能性が高い

離婚を専門とする弁護士は、離婚に関する法律や裁判例を熟知している他、これまでの交渉による経験を蓄積しています。
そのため、弁護士へ代理で交渉してもらうことにより、財産分与に関する交渉を有利に進められる可能性が高くなるでしょう。

調停や裁判を見越した交渉ができる

弁護士は、後に調停や裁判などへ移行する可能性を踏まえて相手との交渉を行います。

そのため、不用意な発言などにより後の調停や裁判で不利となることなどを防ぐことが可能となる他、仮に調停や裁判となった際の最終的な落としどころを見越して交渉を行ってもらうことが可能です。

相手の財産隠しを防ぐことができる

財産分与にあたり、できるだけ財産分与の対象とする額を減らそうと財産を隠すケースが散見されます。
しかし、財産分与の交渉を自分で行った場合には、相手が財産隠しをしていることに気づけない可能性が高いでしょう。

一方、弁護士へ交渉を依頼することで必要に応じて相手の財産の調査が可能となるため、相手の財産隠しを防ぐことが可能となります。

まとめ

財産分与とは、離婚に伴い、これまで実質的に共有となっていた夫婦の財産を清算する手続きです。
一方が専業主婦(主夫)であったとしても原則として2分の1ずつの割合で分与をすることになりますので、この原則を知ったうえで相手との交渉に臨みましょう。

ただし、財産分与の交渉は、スムーズにまとまらないケースも少なくありません。
交渉を有利に、かつスムーズに進めるためには、弁護士へ相談されることをおすすめします。

Authense法律事務所には、離婚や財産分与問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、財産分与に関する交渉事例も多く蓄積しております。
財産分与についてお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院法学研究科修了。離婚、相続といった家事事件を中心に数多くの案件を取り扱う。依頼者の希望する解決に向けて、しっかりと依頼者の話を聞いて事実関係を整理し、証拠収集することを得意としており、先の見通しも踏まえた交渉力は依頼者からも高く評価されている。
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