コラム

公開 2019.10.16 更新 2022.10.17

自己適合宣言登録制度

自己適合宣言登録制度

2019年2月より、内部通報制度認証である、「自己適合宣言登録制度」の登録申請が開始されました。本日現在すでに登録を受けた企業が10社ほどあるようです。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(東京弁護士会)
東北大学法学部卒業。旧司法試験第59期。上場会社のインハウス経験を活かし、企業法務に関するアドバイス、法務部立ち上げや運営のコンサルティング、上場に向けたコンプライアンス体制構築や運営の支援等を行う。IT・情報関連法務、著作権など知的財産権法務、知的財産権を活用した企業運営・管理等のコンサルティングを行う。
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内部通報制度認証とは

内部通報制度認証とは、内部通報制度を評価し、基準に適合している場合に所定の認証を行う制度で、自己適合宣言登録制度と第三者認証制度からなります。
自己適合宣言登録制度とは、事業者が自らの内部通報制度を評価し、認証基準に適合している場合に、所定のWCMSマークの使用が許諾される制度をいいます。
第三者認証制度とは、中立公正な第三者機関が事業者の内部通報制度を審査・認証する制度です。自己適合宣言登録制度の運用を踏まえ実施される予定です。

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自己適合宣言登録制度の認証基準について

自己適合宣言登録制度の認証基準は、「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(平成28 年12 月9日消費者庁)に基づき作成されたものです。認証基準は、内部通報制度のPDCAサイクルを示したものであり、その審査項目は38項目に上ります。

下記に審査項目を抜き出しました。各項目については必須項目と任意項目があり、それぞれについて、PDCAサイクルのP(Plan)、D(Do)について、取組内容の記載、取組内容の裏付が必要となります。

内部通報制度は、事業者のコンプライアンス経営を推進し、 安全・安心な製品・サービスを提供することによって企業価値の向上を図るという、 企業の内部統制およびコーポレートガバナンスの重要な要素です。
また、東京証券取引所が実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」においても内部通報にかかる適切な体制整備等が掲げられています。
自己適合宣言登録制度認証は、かかるコーポレートガバナンスにおける信頼を獲得するものであり、今後積極的に活用することが望まれます。幣所でも審査レビューを行っておりますので、ご活用ください。

No. 必須項目 審査項目 内容
1 内部通報制度の意義・目的の明確化 内部通報制度の根本的な意義・目的を組織として明確にすることにより、経営上のリスクに係る情報を、従業員等から可及的早期に受信して、企業価値の維持を図るための基本的な環境を整備すること。
2 経営トップによるメッセージの発信 経営上のリスクに係る情報を、従業員等から可及的早期に受信して企業価値の維持・向上を図るためには、従業員等が安心して内部通報制度を利用できる環境を確保する必要があるが、そのために、コンプライアンス経営推進における内部通報制度の意義・重要性等に対する経営トップの本気度を従業員等に明確に示すこと。
3 経営トップの責務及び役割の明確化 内部通報制度の実効性の確保は、経営トップが担うべき経営上の重要課題であることを明確にすることによって、従業員等からの信頼を確保し、経営上のリスクに係る情報を可及的早期に把握する可能性を高めること。
4 通報窓口の整備及び利用方法の明確化 従業員等が安心して内部通報制度を利用できる環境を整備するため、内部通報制度の利用方法を文書で明確にすること。
5 通報窓口の利用しやすさの向上 利用者にとって使い勝手が良く、かつ安心して利用できる信頼性の高い通報窓口を整備することによって、経営上のリスクに係る情報を可及的早期に把握する可能性を高めること。
6 通報窓口利用者・通報対象事項の範囲等の設定 通報窓口の利用者の範囲及び通報対象となる事項の範囲等を合理的に設定し、経営上のリスクに係る情報を可及的早期に把握する可能性を高めること。
7 内部規程の整備 一定の方針に基づく統一的、安定的、継続的かつ適切な内部通報制度の整備・運用を確保するための規程を整備することによって、従業員等からの信頼を確保し、経営上のリスクに係る情報を可及的早期に把握する可能性を高めること。
8 経営幹部から独立性を有する通報受付及び調査・是正の仕組みの整備 たとえ経営幹部に係る通報であっても、適切に調査・是正等の対応がなされ自浄作用が発揮される仕組みを整備することによって、従業員等からの信頼を高め、もって不正の未然防止、リスクの早期発見及び企業価値の維持・向上を図ること。
9 通報対応における利益相反関係の排除 通報対応における利益相反関係を排除する受付担当者、調査担当者その他通報対応に従事する者及び被通報者(その者が法令違反等を行った、行っている又は行おうとしていると通報された者をいう。以下同じ。)は、自らが関係する通報事案の調査・是正措置等に関与してはならないことを明らかにすることによって、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高め、リスク情報を従業員等から可及的早期に受信する可能性を高めること。
10 通報対応に係る業務を外部委託する場合における中立性・公正性等の確保 通報対応における中立性・公正性等を確保し、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高め、リスク情報を従業員等から可及的早期に受信する可能性を高めること。
11 内部通報制度に対する従業員の意見の把握 従業員等の意見等を可能な限り把握すること等により、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高め、リスク情報を従業員等から可及的早期に受信する可能性を高めること。
12 通報対応に関する質問・相談への対応 通報の取扱いや通報者保護の仕組み等に関する質問・相談に対応することにより、通報窓口利用者の疑問や不安を解消し、経営上のリスクに係る情報を、従業員等から可及的早期に受信するための環境を整備すること。
13 内部通報制度の運用実績を用いた信頼性の向上 内部通報制度が現実に機能していること等を、従業員等に対しエビデンスと共に示すことによって、内部通報制度の利用に対する不安を軽減し、リスク情報を従業員等から可及的早期に受信する可能性を高めること。
14 内部通報制度の実効的な運用のために必要な事項の周知・研修 経営幹部を含む全ての役職員が、内部通報制度のコンプライアンス経営推進における意義・重要性、関連法令の趣旨、通報者保護の重要性、秘密保持徹底の重要性等を正確に理解していることは、リスク情報を従業員等から可及的早期に受信するための環境整備の大前提となること、また、制度趣旨を誤解した不適切な通報等の防止にも資することから、経営幹部を含む全ての役職員に対して十分かつ継続的な周知・研修をすることによって制度の実効性を高めること。
15 経営トップが内部通報制度に関する理解を深めるための機会の確保 経営トップによるメッセージに対する従業員等からの真の信頼を獲得するためには、経営トップ自身がコンプライアンス経営推進における内部通報制度の意義・重要性、関連法令の趣旨、通報者保護及び秘密保持徹底の重要性等を真に理解している必要があることから、そのために必要な措置を講じること。
16 通報者等への通知 通報が到達したかどうか及び到達後に通報がどのように取り扱われているのか等が通報者にとって不明瞭な場合には、内部通報制度への信頼を損ない行政機関や報道機関等への通報に発展する可能性が高いこと等に鑑み、通報受付から調査・是正に至るまでの一連の通報対応の段階ごとに適切に通知に関する取組を行うことによって、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
17 通報受付や調査・是正等のために必要な体制の確保 通報受付や調査・是正等が適切行われない場合には、消費者の安全・安心、ステークホルダーからの信頼や企業価値を損なうおそれがあること、また、内部通報制度への信頼を損ない行政機関や報道機関等への通報にも発展する可能性があること等に鑑み、通報受付や調査・是正等の担当部署に対し必要な体制(例:権限、独立性、人員、予算等)を付与し、その実効性を確保すること。
18 調査協力の確保及び調査妨害の防止 実効的な調査・是正が実施されない場合には、内部通報制度は機能せず、従業員等からの信頼を損なうことから、調査協力の確保及び調査妨害の防止を図ること。
19 調査結果を踏まえた是正措置等の実施 調査結果を踏まえ、迅速かつ適切に、是正措置、再発防止策及び必要な処分等を行うことにより、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
20 内部通報制度の運用担当者に対する教育・研修 内部通報制度の実効的な運用を確保し、従業員等からの制度への信頼を高め、企業価値の維持・向上を図るためには、制度を担う担当者の役割が非常に重要であることから、担当者への十分かつ継続的な教育・研修を行うこと。
21 内部通報制度の運用担当者による貢献の評価 内部通報制度の実効的な運用を確保し、従業員等からの制度への信頼を高め、企業価値の維持・向上を図るためには、制度を担う担当者の役割が非常に重要であることから、担当者の顕著な貢献が認められた場合には、必要に応じ積極的に評価することによって(既存の人事評価制度や社員表彰制度等を用いることも考えられる)、担当者の意欲・士気の発揚を図り、もって内部通報制度の質の向上を図るとともに、内部通報制度の意義・重要性等に対する経営トップ等の本気度を従業員等に明確に示すこと。
22 通報者・調査協力者による貢献の評価 通報者・調査協力者による企業価値の維持・向上やコンプライアンス経営の推進に対する貢献を、必要に応じて、積極的に評価することによって(既存の人事評価制度や社員表彰制度等を用いることも考えられる)、内部通報制度を活用した適切な通報は、リスクの早期発見や企業価値の向上に資する正当な職務行為であることに関する経営トップ等の本気度を従業員等に明確に示し、もって内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
23 通報に係る秘密保持の徹底 通報者等の所属・氏名等をはじめとする通報に係る秘密保持の徹底を図るために必要な各種の措置を講じることにより、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
24 外部窓口の信頼性の確保 (外部窓口を利用する場合において)外部窓口に対する従業員等の信頼を高め、経営上のリスクに係る情報を可及的早期に把握する可能性を高めること。
25 通報に係る記録・資料の適切な管理の確保 通報事案に係る記録・資料(電磁的記録を含む)を適切に管理し、秘密保持の徹底を図ることで、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
26 通報者本人による適切な情報管理の確保 通報者本人が周囲に伝えた情報が原因となって通報者が特定されたり、通報に係るその他の情報が漏れることを防止するための措置(例:注意喚起や周知)を行うことによって、秘密保持の徹底を図り、内部通報制度に対する従業員等の信頼性を高めること。
27 調査実施における秘密保持 調査の過程で通報者が特定されたり、その他の情報が漏れる可能性が高いことに鑑み、特に、調査実施の際における秘密保持を徹底するために必要な措置を講じることによって、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
28 通報者等に対する不利益取扱いの禁止 通報者及び調査協力者の保護の徹底を図り(例:内部規程や公益通報者保護法の要件を満たす通報や調査に協力をしたことを理由として、通報者や協力者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと等)、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めることによって、経営上のリスクに係る情報を可及的早期に把握する可能性を高めること。
29 禁止される不利益取扱いの類型の具体化 禁止される不利益取扱いの類型の例を具体的に明らかにすることにより、不利益取扱いを抑止し、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
30 不利益取扱いが判明した場合の救済・回復措置 通報等をしたことを理由とする不利益取扱いが判明した場合に、経営幹部が責任を持って適切な救済・回復措置を講じることによって、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
31 通報者等に対し不利益取扱いを行った者に対する措置 通報者等に対し不利益取扱いを行った者に対し、懲戒処分その他適切な措置を講じることで、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
32 通報等に関する秘密を漏らした者に対する措置 通報等に関する秘密を漏らした者及び知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用した者に対し、懲戒処分その他適切な措置を講じることで、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
33 被通報者による不利益取扱いの防止 被通報者(その者が法令違反等を行った、行っている又は行おうとしていると通報された者をいう)に対し、必要に応じ注意喚起等の適切な措置を講じることより、被通報者による通報者等の探索や不利益な取扱い等を防止し、通報者等の保護を図り、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
34 法令違反等に関与した者による問題の早期発見・解決への協力の促進 一般に、法令違反等に関与した者自身が、最もその問題の早期解決に資する情報を持っていると考えられ、当該者による協力(例:自主的な通報や調査協力等)を促す為の措置を講じることによって、問題の早期発見・早期是正を図り、企業価値の維持・向上を図ること。
35 通報者等の保護のためのフォローアップ 通報者等に対し適切なフォローアップ(例:不利益取扱いが行われていないかを確認したり、不利益取扱いが認められる場合に必要な救済・回復を行う等)を実施することにより、通報者及び調査協力者の保護の徹底を図り、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めること。
36 是正措置及び再発防止策のフォローアップ 是正措置等に係る適切なフォローアップ(例:個々の是正措置及び再発防止策が機能しているかを事後的に確認し、確認結果に基づき必要に応じ適切な措置を講じること等)を行うことにより、内部通報制度に対する従業員等の信頼を高めるとともに、企業価値の維持・向上を図ること。
37 内部通報制度の整備・運用状況等のステークホルダーへの情報提供 内部通報制度の整備・運用状況、評価・改善の結果等を示すことによって、従業員等を含むステークホルダーからの信頼を高め、企業価値の維持・向上を図ること。
38 欠格事由:認証制度に関する違反等の状況 ア)過去2年以内に本認証制度の登録等を取り消されたことがないこと 。
イ)過去2年以内に本認証制度のマーク・呼称等の不正使用がないこと 。
ウ)反社会的勢力と関係を有しないこと。
エ)その他認証取得を不適当と認める問題がないこと。

(本稿は2019年6月30日のものです。)

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