コラム
公開 2021.11.25 更新 2023.04.05

生活費に困らないために!熟年離婚を計画的に進めるための知識

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50代や60代で熟年離婚するときには、「生活費の確保」がポイントとなります。

離婚前の別居中の生活費、離婚後の生活費の両方を工面できなければ、離婚によって新たな問題を抱えてしまうことになります。

今回は熟年離婚で生活費に困らないためのポイントをご紹介します。

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1.熟年離婚前の生活費を用意する方法

女性が熟年離婚を検討するとき「離婚前の生活費」の確保がネックになるケースが多々あります。

一般的に、離婚前は夫婦仲が悪くなるので同居が苦痛となり、別居するご夫婦が多数です。しかし別居にはお金がかかります。「敷金や保証金、引っ越し費用などを用意できないのでは?」、「別居後の生活費を工面できないのでは?」と、別居や離婚を諦めてしまう方が少なくありません。

しかし別居中の生活費を理由に離婚を諦める必要はありません。

離婚前の生活費については、以下のような請求が可能です。

1-1.婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦がお互いに分担すべき生活費です。民法により、夫婦にはお互いに「生活保持義務」という扶養義務が課されています。これは、相手に「自分と同レベルの生活」をさせなければならない、という義務です。つまり、収入の高い側は低い側へ生活費を払わねばならないのです。

夫が充分な年金や給与などの収入を得ていて妻は無収入・低収入であれば、夫は別居中の妻へ婚姻費用を払わねばなりません。

1-2.婚姻費用の金額

婚姻費用は、毎月定額を支払うのが原則です。金額は協議で自由に取り決めることもできます。しかし、家庭裁判所が夫婦の収入状況に応じた婚姻費用の相場を公開しており、多くの場合は、この相場を基準にして婚姻費用を取り決めることになります。
この相場では、たとえば夫の年収が300万円、妻の年収が0円の場合には月額5、6万円程度となります。
こちらにケース別の金額がまとまっているので、お互いの収入をあてはめて計算してみてください。

裁判所:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

1-3.婚姻費用の請求方法

婚姻費用を払ってほしいときには、夫に対して口頭や書面で申し入れをしましょう。
相手が支払に応じるなら、話し合いをして毎月の支払額を取り決め、「婚姻費用支払いに関する合意書」を作成しておくことをお勧めします。

夫が支払いに応じない場合、家庭裁判所に「婚姻費用分担調停」を申し立てれば、裁判所を介して婚姻費用の取り決めが可能です。裁判所で決まった約束を相手が守らない場合、相手の給料や預貯金、保険の積立金などの差押えもできます。
それでも支払われない場合、離婚時に財産分与として清算する方法もあるので、多くのケースで最終的に支払を受けられるでしょう。

1-4.生活のため、夫婦の預金を使ってもかまわない

離婚前の別居時には、引っ越し代や賃貸物件の敷金、礼金なども必要になるでしょう。夫と婚姻費用の話し合いがまとまるまでの生活費もかかります。
そういったお金に関しては、夫婦の預貯金から支払ってかまいません。夫婦の預貯金は基本的に「夫婦共有」となるため、離婚前は相手名義の預金であっても基本的に使うことができます。
たとえば夫名義の預金口座に退職金などが入金されて多くの残高があるなら、そこからキャッシュカードで引き出して必要なお金を払うということも可能です。

ただし相手が嫌がらせで口座を閉じたり全額出金してしまったりするケースもあります。その前に生活資金として一部を出金し、手元に残しておきましょう。

以上のようにご自身の収入や貯金がない場合であっても、必ずしも「生活費がないから別居も離婚もできない」ということにはなりません。
相手との関係が悪化しているなら、婚姻費用の請求や夫婦の預金を利用した別居開始もご検討いただければと思います。

なお、Authense法律事務所では、離婚に関する複雑な手続きや、多様な離婚トラブルに対応すべく、さまざまなニーズに対応する料金プランをご用意しております。
ぜひ一度ご覧ください。

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2.熟年離婚後の生活費

熟年離婚後の生活費

次に、熟年離婚後の生活費をどのように工面するかが問題となります。
夫婦の生活保持義務は婚姻中にしか及ばないので、離婚後は生活費の請求ができません。
そこで以下のように対応しましょう。

2-1.財産分与

1つ目に、しっかりと離婚時の財産分与を行うことが大切です。
財産分与とは、婚姻時に積み立てた夫婦共有財産を離婚時に分け合うことです。夫婦の名義の預貯金や保険、不動産などを基本的に2分の1ずつに分割します。
熟年離婚の場合、婚姻期間も長くなっているので財産分与が多額になりやすい傾向があります。1,000万円、2,000万円などのまとまった資産の分与を受けられれば、離婚後の生活費についてもしばらくは安心できるでしょう。

2-2.慰謝料

相手に「有責性」があれば、離婚時に慰謝料も請求できます。有責性とは「婚姻関係を破綻させた責任」です。熟年離婚では婚姻期間が長いので、慰謝料も高額になりやすい傾向があります。相手が不倫したり暴力を振るったり生活費を入れてくれなかったりした場合には、離婚時に数百万円の慰謝料を請求できる可能性が高いといえるでしょう。

この慰謝料も生活費の足しにすることができます。

2-3.年金分割

熟年離婚する女性にとっては「年金分割」も重要です。年金分割とは、婚姻中に払い込んだ厚生年金保険料を分割し、元夫婦が将来受け取る年金額を調整する制度です。
夫が公務員やサラリーマンだった場合、年金分割を行うと月額数万円程度、将来の年金額があがるケースが多数です。

2008年3月以前から婚姻していたご夫婦の場合、婚姻の全期間の年金分割を行うには相手の合意が必要となります。また婚姻中に妻が働いていた場合にも、相手の合意がないと年金分割できない可能性があります。このように相手の合意が必要な年金分割を「合意分割」といいます。

合意分割のケースで相手が同意しない場合には、家庭裁判所での離婚調停の中で離婚条件の一つとして取り決めるか、「年金分割調停」を申し立てましょう。裁判所に年金分割を決定してもらえます。

2-4.子どもと一緒に住む

熟年離婚した女性は、離婚後に子どもと一緒に住むケースもよくあります。お子様とご一緒であれば家賃や光熱費などの基本的な生活費の負担が軽減されるでしょう。
自立できるまでのしばらくの間だけでも一緒に住めないか、相談してみてください。

2-5.自分で働く

婚姻時に専業主婦だった方は、「離婚後仕事を見つけるのに苦労するのでは?」と不安を抱えている方も多いでしょう。ただ、今はシニア世代の女性でも働いている方がたくさんいます。
年金や財産分与のお金が手元にあれば、仕事で得るお金はそう多くなくても生活できます。離婚する前に「どんな仕事があるのか、自分には何ができそうか」などを調べておくことも有益です。

まとめ

熟年離婚で後悔しないためには「計画的に離婚を進める」ことが大切です。
財産分与の資料を集めて「どのくらいの分与を受けられるのか」試算したり、離婚後の生活費を工面する方法についてシミュレーションしたりしましょう。
離婚前の生活費については夫としっかり話し合い、支払ってもらえないなら早めに家庭裁判所で「婚姻費用分担調停」を申し立てるようお勧めします。

とはいえ、おひとりで対応するとどうしても知識不足によって不利になりやすいリスクがあります。弁護士であれば、財産分与や慰謝料、婚姻費用や離婚後の生活設計に関して適切なアドバイスができますし、相手との交渉も可能です。
後悔のない熟年離婚を実現するため、熟年離婚を検討しておられるなら是非とも一度、弁護士までご相談ください。50代や60代で熟年離婚するときには、「生活費の確保」がポイントとなります。
離婚前の別居中の生活費、離婚後の生活費の両方を工面できなければ、離婚によって新たな問題を抱えてしまうことになります。
今回は熟年離婚で生活費に困らないためのポイントをご紹介します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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