コラム
公開 2019.07.01 更新 2023.04.06

浮気相手に慰謝料を請求する方法とは?

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配偶者の浮気が発覚した場合、今後、夫婦としてこのままの生活を続けるべきか、もしくは別れて互いに別々の道を行くかは、二人で話し合って決めるべき事柄です。
離婚もしくは修復の2つの結論、どちらに至ったとしても、一度は好きになって生涯を共にすると決めた以上、配偶者を憎むことはそう簡単ではないはずです。
一方で、浮気相手に対しては、単純に「許せない」と思うこと、それ自体、ごく自然な感情といえます。ただ、浮気した責任を浮気相手に追及したいと思っても、なかなかその方法が分からず実行に移せない場合もあるでしょう。
そこで、今回は、浮気相手への慰謝料の請求方法について、慰謝料が認められる要件などの基礎知識や実際の事例を挙げながらご説明します。

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浮気相手に慰謝料を請求できる?

まず、浮気相手に慰謝料を請求すること自体、可能なのでしょうか。そもそも、慰謝料とはどのようなものか、慰謝料が認められる条件から先にご説明します。

・慰謝料請求とは「不法行為による損害賠償請求」のこと

慰謝料請求とは、なにも浮気や不倫に限ってなされるものではありません。飲食店で従業員が食中毒を起こし、食事をした客に病気を発症させた場合や、会社で同僚にセクハラをして相手を精神的に傷つけた場合なども慰謝料が問題となります。
じつは、これらには共通した関係性があります。
それは、以下の3つの内容です。

  • ・相手側が意図的に(故意)もしくは不注意で(過失)不法な行為をしたこと
  • ・精神的、肉体的に傷つけられて損害があること
  • ・不法行為と損害の間に、原因と結果の関係があること(因果関係)

上記3つの事柄が認められれば、この傷つけた損害を償うためにお金が支払われます。このお金のことを慰謝料と呼びます。法律的用語でいえば「不法行為による損害賠償金」(民法709条)となります。

事例から読み解く「浮気相手への慰謝料請求の可否」

それでは、実際に配偶者と浮気をした相手に対して、慰謝料請求は認められるのでしょうか。
特に不法行為の内容について、事例を挙げながらご説明します。

・「配偶者と二人だけで飲みに行ったことに対して慰謝料請求をしたい!」Aさんの場合

Aさん夫婦は、まだ結婚して2年目の新婚夫婦です。Aさんは嫉妬深く、日頃から夫に「異性と二人だけで飲みに行くことが浮気」だと伝えていました。先日、夫のスマホをチェックしていた際に、取引先の女性と懇意になり二人だけで飲みに行ったことが発覚、現在、相手の女性に慰謝料を請求したいと考えています。

さて、このような場合に、Aさんの慰謝料請求は認められるのでしょうか。
まず、慰謝料が認められるためには、相手の不法行為が必要です。今回のケースのように、二人だけで飲みに行く行為が不法行為といえるかが、問題となります。

浮気の概念は、人それぞれです。しかし、法律上では、浮気や不倫として不法行為となるためには、不貞行為つまり、「相手が配偶者と自由な意思で肉体関係を持つこと」が必要です。
これは、夫婦には貞操義務があり、この貞操義務に反する行為であるため、不法行為となるわけです。
今回のケースのように、ただ二人だけで飲みに行くだけの行為は、残念ながら不貞行為とは認定されず、一般的に慰謝料請求は認められないでしょう。
ただ、判例の中には、愛情表現を含んだメールのやり取りに対して低額の慰謝料請求を認めたものもあります(東京地裁平成24年11月28日判例)。
ただし、極めてレアなケースであり、一方でメールだけに対して慰謝料請求が認められなかった判例もあります。一般的には、肉体関係があることが必要といえるため、該当しなければ慰謝料請求は認められないでしょう。

肉体関係を持っても慰謝料請求が認められない場合がある

なお、浮気相手と肉体関係を持ったとしても、慰謝料請求が認められない場合があります。具体的には、既に夫婦関係が破綻しており、夫婦が別居をした後に浮気がなされた場合などには、慰謝料請求は認められません。
既に夫婦関係が破綻しているため、保護する利益がないと考えられるからです。

・「浮気相手が配偶者を既婚者だと知らなくても慰謝料請求したい!」Bさんの場合

次にBさんのケースです。Bさんの夫は、結婚相談所主催の婚活パーティーで知り合った30歳OLと浮気をしていました。Bさんはこの30歳の女性に浮気による精神的損害の慰謝料を請求したいと考えています。直接話し合いをしたところ、なんと浮気相手自身が配偶者との肉体関係があったことを認めています。しかし、浮気相手の言い分では、「自分もBさんの配偶者に騙されており、既婚者とは知らずに肉体関係を持った」と主張しています。このような場合にも、Bさんの慰謝料請求は認められるのでしょうか。

慰謝料請求が認められるためには、意図的(故意)もしくは不注意(過失)による不法行為が必要です。というのも、故意や過失がなければ、相手を責めるべき事情がないといえるからです。
今回のケースのように、既婚者だと知らなかった場合に故意は認められません。
ただ、知らなかったことについて相手側に不注意があれば不貞行為と認められることになります。

Bさんのケースをみてみると、知り合ったきっかけが結婚相談所の婚活パーティーです。一般的に、結婚相談所では相手の身元を調査してから紹介していると考えられ、未婚者と考えることが不注意とはいえません。他にも、配偶者自身が日頃から未婚者を装っていたなどの事情があり、普通に注意しても見破れない場合には、不注意(過失)と認められにくいでしょう。そのため、Bさんのケースでも慰謝料請求は認められないといえます。
一方で、普通の人であれば必ず気付くなどの事情があれば、浮気相手の不注意(過失)が認定され、慰謝料請求が認められる可能性があります。

浮気相手への慰謝料請求方法

それでは、浮気相手へ慰謝料を請求するには、どのような方法があるのでしょうか。
基本的には、慰謝料請求の相手が配偶者であっても浮気相手であっても、慰謝料請求の流れは同じといえます。以下、ステップごとに説明していきます。

・浮気相手と交渉する

まずは、浮気相手との話し合いです。浮気相手との直接対決という形式にはなりますが、一番ストレートな方法といえるでしょう。
配偶者との浮気に対して、精神的損害を理由に慰謝料を請求します。
なお、このまま浮気相手が事実を認め、慰謝料を支払うとなった場合は、最終的に金額などの交渉をして、両者が合意に至れば確定します。
この場合、浮気相手から確実に慰謝料を回収できるように、公正証書を作成することをお勧めします。

ちなみに、浮気相手と顔を合わせるのが辛いなどの理由で、内容証明郵便での通知という方法も可能です。
内容証明郵便とは、郵便局がいつ、どのような内容の文書を誰から誰に差し出されたかを証明する制度です。相手から「そのような通知など届いていない」との言い逃れを封じるためのものですが、浮気相手が家族などと住んでいる場合は、周りに知れ渡る可能性もあります。そのため、総合的に判断して、どのような方法がよいかを検討してみてはいかがでしょうか。

・簡易裁判所へ調停の申し立て

浮気相手との話し合いがまとまらない場合は、簡易裁判所に調停の申し立てを行います。調停とは、調停委員の主導でなされる話し合いのことです。調停委員の助言やアドバイスを受け、解決案に両者が合意することを目的とした一連の手続きを指します。なお、配偶者に対しての慰謝料請求では家庭裁判所の「慰謝料請求調停」となりますが、浮気相手のみに対して慰謝料請求を行う場合には簡易裁判所の民事調停を利用することになります。

・裁判で浮気相手を訴える

調停で合意がなされた場合は調停証書が作成されます。
一方で、調停が不成立となった場合には、浮気相手に対しての慰謝料請求の裁判を提訴する流れになります。
慰謝料の金額が140万円以下の場合には簡易裁判所、慰謝料の金額が140万円以上の場合には地方裁判所に訴訟を提起します。金額により提訴する裁判所が異なるので注意が必要です。
裁判となれば、争いのある事実につき、両者の言い分と証拠を吟味して、裁判官が最終的に判断することになります。
なお、浮気相手への慰謝料を請求する場合には、必ずしも調停を先に行う必要はありません。当事者の話し相手で決着がつかなければ、調停のステップを飛ばして、裁判所に訴えることも可能です。

まとめ

浮気相手へ慰謝料を請求するポイントは、証拠の確保です。特に、浮気の証拠もなく感情の赴くままに訴えた場合は、逆に、浮気相手の方から名誉棄損などと訴えられる可能性もあります。
相手が言い逃れできないためにも、まずは、配偶者との浮気の確実な証拠を押さえてから行動することをお勧めします。
また、浮気相手との交渉では、弁護士などの第3者を交えた方がスムーズにことが運ぶ場合もあります。というのも、浮気相手と二人だけとなれば、感情を抑えきれずに、冷静に話し合いを進められないからです。
特に、正当な請求であっても、暴力や暴言で相手を傷つける行為、支払わなければ会社に公表するなどの脅す行為が伴えば犯罪となり、こちら側の請求が認められにくくなります。
浮気相手に請求するだけでなく、「どうすれば確実に支払わせることができるか」に焦点を当てれば、弁護士などの専門家に早期に相談をして、交渉場面でもサポートしてもらうことが近道ではないのでしょうか。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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