「熟年」といわれる年齢となってから、別居婚や卒婚をするケースもあります。
別居婚や卒婚を熟年になってから決断することには、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか?
また、別居婚や卒婚はどのような流れで進めればよいのでしょうか?
今回は、熟年となってからの別居婚や卒婚について、弁護士が詳しく解説します。
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「別居婚」や「卒婚」とは
「別居婚」や「卒婚」をということばを目や耳にする機会が増えています。
これらはいずれも法律用語ではなく、明確な定義があるわけではありません。
では、これらは一般的にどのようなことを意味するのでしょうか?
はじめに、別居婚と卒婚の概要について解説します。
別居婚とは
別居婚とは、法律上の夫婦が同居せず、別居している状態を指します。
別居婚の形はさまざまであり、次のケースなどが想定されます。
- 同じマンションなど近所に居住し、頻繁に会う
- 週末のみ同居する
- 遠方に居住し、お互いのタイミングで会う
- お互いが実家に暮らしながら婚姻する
夫婦が別居するという点では、単身赴任や介護の都合などによる一時的な別居も「別居婚」といえるかもしれません。
しかし、「別居婚」という場合は、夫婦があえて別居を選択しているとのニュアンスが含まれていることが多いようです。
また、卒婚とは異なり卒業というニュアンスがないことから、熟年層に限られるものではなく、婚姻関係を提出する当初から別居婚を選択する夫婦も存在します。
卒婚とは
卒婚とは、婚姻関係はそのままに、夫婦がお互いに過度に干渉することなく自由を認め合い、ゆるやかなパートナーシップを築いていく夫婦の形を指します。
これは、ジャーナリストの杉山由美子氏が2004年に出版した著書、「卒婚のススメ」で提唱した造語です。
別居婚と卒婚とに明確な線引きがあるわけではありません。
ただし、年代を問わず選択されることがある別居婚とは異なり、「卒婚」は卒業というニュアンスが含まれていることから、子育てなどが一段落した熟年層を前提としている印象です。
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卒婚の3つの形
一口に「卒婚」といってもその形は一つではなく、夫婦によってさまざまな形があります。
ここでは、主な卒婚の形を3つ紹介します。
家庭内卒婚
1つ目は、「家庭内卒婚」です。
家庭内卒婚とは、引き続き同じ家に居住しながら卒婚をするパターンです。
話し合いによって家事を一切別とするなど、お互いに過度な干渉をしないための取り決めを行うことが多いようです。
中には家事を「仕事」として位置づけ、配偶者(仮に、夫)の家事を引き続きもう一方(仮に、妻)が担う代わりに、夫から妻に対して家事代行に準じた報酬を支払う形をとることもあります。
別居卒婚
2つ目は、「別居卒婚」です。
別居卒婚とは、その名称どおり別居を伴う卒婚です。
別居をするものの離婚はしないため世間体を保ちやすく、ほどよい距離感で夫婦関係を保ちやすくなります。
別居先は元の家の近くとする場合もある一方で、遠方を選択する場合も少なくありません。
たとえば、妻は引き続き都心での生活を希望する一方で夫が田舎暮らしを希望する場合などには、別居卒婚が有力な選択肢となるでしょう。
週末卒婚
3つ目は、「週末卒婚」です。
週末卒婚とは、平日は同居しつつも週末のみを別々に過ごすタイプの卒婚です。
週末は自由に過ごす一方で、平日はこれまでどおりの夫婦関係を維持することとなるため、配偶者にとっても受け入れやすい傾向にあります。
たとえば、週末のみはのんびりとホテルで過ごす場合や、週末のみを趣味を実現できる地域(釣りのできる川の近くや海の近く、田舎暮らしを実現できる農村など)に設けた別荘で暮らす場合などが想定されます。
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熟年になってから別居婚や卒婚をするメリット
別居婚をするくらいであれば、離婚をすればよいと考えることもあるかもしれません。
では、熟年になってから別居婚や卒婚をすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、離婚する場合と比較した主なメリットを4つ解説します。
世間体を保ちやすい
離婚ではなく別居婚や卒婚とすることで、世間体を保ちやすくなります。
最近では3組に1組が離婚するといわれており、離婚は決して珍しいものでもなければ世間から咎められるようなものでもありません。
しかし、中には離婚は世間体が悪いと感じたり、職業柄(結婚カウンセラーなど)離婚を避けたいと考えたりする場合もあるでしょう。
その場合であっても、別居婚や卒婚をすることで、世間体を保ちやすくなります。
相続関係が残る
離婚をすると、その後相手が亡くなった場合に配偶者として相続する権利がなくなります。
死亡時に誰が相続人となるかは民法で決められており、元配偶者は相続人に該当しないためです。
一方、別居婚や卒婚の場合は、婚姻関係が継続するため、相続関係が残ります。
そのため、別居婚期間中や卒婚期間中に相手が亡くなった場合は、配偶者として相続人となることが可能です。
この点はメリットとして挙げたものの、自身の遺産を配偶者に渡したくない人にとってはデメリットとなり得ます。
子どもへの影響が少ない
熟年となってからの離婚について、子どもから反対意見が寄せられることもあります。
また、仲がよいと思っていた両親が離婚することで、子どもが心を痛める可能性も否定できません。
一方、別居婚や卒婚の場合は離婚をするわけではないため、子どもへの影響が少なくなります。
場合によっては、別居婚や卒婚を子どもに伝えない選択肢もあるでしょう。
通常の婚姻関係に戻りやすい
いったん正式に離婚が成立すると、その後再婚などをしない限り従前の婚姻関係に戻ることは困難です。
一方、別居婚や卒婚であれば婚姻関係を終了させるわけではないため、元の婚姻関係に戻りやすくなります。
熟年であっても元気な場合は、これまでの反動で自由が欲しいと考えるかもしれません。
しかし、その後さらに年齢を重ねると、一緒に生活するパートナーが欲しいと改めて考え始める可能性があります。
そのため、離婚をして完全に関係を断ち切ってしまうのではなく、別居婚や卒婚でゆるやかに関係を維持することで、将来同居を前提とした関係に戻れる可能性が高くなります。
また、そもそも相手と離婚をしたいわけではなく、田舎暮らしや趣味三昧など理想の生活を実現したいといった動機の場合、離婚との比較とはならないでしょう。
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熟年での卒婚や別居婚のデメリット
熟年での卒婚や別居婚にはデメリットもあります。
卒婚や別居婚を始めてから後悔しないよう、あらかじめデメリットを理解しておく必要があるでしょう。
ここでは、別居婚や卒婚の主なデメリットを4つ解説します。
離婚につながる可能性がある
1つ目は、卒婚や別居婚を切り出したことをきっかけに、熟年離婚につながる可能性があることです。
卒婚や別居婚を切り出す側は、離婚よりも自分にとってのメリットが大きいと考えていることもあるでしょう。
たとえば、「離婚をしたいけど遺産は欲しいので、別居婚としたい」と考えている場合や、「離婚をしたいけど自分の職業柄世間体が悪いので卒婚の形をとりたい」と考えている場合などがこれに該当します。
しかし、自分のメリットだけを考えて卒婚や別居婚を提案すると、これは相手に伝わってしまうものです。
自身のメリットだけを追求して卒婚や別居婚を提案すると相手に失望されてしまい、離婚のきっかけとなるリスクがあります。
そのため、卒婚や別居婚はいきなり相手に切り出すのではなく、段階を踏んで相手の理解を求めるなどの工夫が必要となるでしょう。
相手が納得しない場合に無理に別居などを決行すると、「悪意の遺棄」として離婚原因となる可能性があります。
出費が増える可能性がある
2つ目は、出費が増える可能性があることです。
別居卒婚をするには、これまでの自宅とは別でもう一つ家が必要となります。
そのため、家もう1軒分の維持費を負担しなければなりません。
また、週末卒婚であっても週末を過ごす場所が必要となるため、出費がかさみやすくなります。
他にも、家庭内卒婚であってもそれぞれが個々で食事を用意するなどすることで家計の効率が悪くなり、出費が増える傾向にあります。
他の人と交際すれば慰謝料請求の原因となる
正式に離婚をした場合は、その後他の人との交際も自由となります。
一方、別居婚や卒婚では離婚をしたわけではないため、他の人と不貞行為に及んだ場合は配偶者から慰謝料を請求されたり離婚原因となったりする可能性があります。
他の人と再婚できない
別居婚や卒婚の場合では、他の人と再婚することはできません。
なぜなら、婚姻期間中に他の人との再婚(重婚)はできない旨、民法に規定があるからです。
他の人と再婚したい場合は、現在の配偶者と正式に離婚しなければなりません。
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熟年で別居婚や卒婚をする流れ
熟年になってから別居婚や卒婚をしたい場合、どのような流れで進めればよいのでしょうか?
最後に、別居婚や卒婚をするまでの一般的な流れについて解説します。
別居婚や卒婚は慎重に準備を行い、後悔しないよう注意しましょう。
別居婚や卒婚のリスクやデメリットを理解する
別居婚や卒婚をしたいと考える場合は、相手に話を切り出す前に、リスクやデメリットを十分理解しておくことをおすすめします。
デメリットなどを知らないまま相手に別居婚や卒婚を切り出してしまうと、取り返しのつかない事態となるおそれがあるためです。
別居婚や卒婚を希望する場合はインターネットで情報を調べるだけではなく、必要に応じて弁護士にご相談ください。
今後の生活費を確認する
別居婚や卒婚を希望する場合は、今後の生活費を確認しておきましょう。
先ほど解説したように、別居婚や卒婚には費用が掛かる傾向にあります。
そもそも資金に余裕がない場合は、別居を伴う卒婚や週末卒婚は難しいかもしれません。
それでも別居婚などを希望する場合は、必要な資金を稼ぐために新たに仕事を始めたり、仕事を増やしたりして資金を手当てする必要が生じます。
別居する場合は新居を探す
別居を伴う卒婚を希望する場合は、引っ越し先となる新居の目星をつけておくことをおすすめします。
新居を探すことで別居卒婚にかかる費用が把握しやすくなるほか、別居後の生活をイメージしやすくなるためです。
配偶者と別居婚や卒婚へ向けて話し合う
別居婚や卒婚に向けての準備が整い、自身の気持ちもまとまったら、配偶者に対して別居婚や卒婚に関する希望を伝えます。
熟年まで添い遂げた相手からいきなり別居婚や卒婚を切り出されると、相手は困惑し、怒りや悲しみを見せるかもしれません。
先ほど解説したように、別居婚や卒婚の切り出し方を誤ると、離婚の話が浮上するリスクもあります。
そのため、配偶者の性格などを踏まえて、別居婚や卒婚などの切り出し方を慎重に検討しておいてください。
たとえば、離婚をしたいわけではないことを強調して伝えたうえで、別居婚に応じることによる相手方のメリットに主眼を置いて希望を伝えることなどがあります。
卒婚や別居婚に関する話し合いが一度でまとまることは稀であるため、長期的な話し合いとなることも覚悟しておく必要があります。
いきなり別居婚を実現することが難しい場合は、週末卒婚や同居卒婚などを提案すると、受け入れてもらいやすいかもしれません。
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まとめ
別居婚や卒婚を、熟年になってから選択するケースが増えています。
別居婚と卒婚はいずれも、法律上の婚姻関係を維持したままで配偶者との距離を置く方法です。
完全に別居するケースのほか、週末だけ別居するケース、同居したまま独立した生活を送るケースなどがあります。
別居婚や卒婚のメリットは、世間体を保ちやすいことや子どもへの影響が少ないこと、そして相続権が残ることなどです。
一方、生活費がかさみやすくなることや、別居婚などを切り出したことをきっかけに離婚に至る可能性があるなど、リスクやデメリットも少なくありません。
そのため、熟年になってから別居婚や卒婚を希望する場合はデメリットやリスクを十分理解したうえで、特に配偶者への切り出し方に注意を払う必要があります。
Authense法律事務所では、男女問題や離婚問題に強い弁護士が多数在籍しており、別居婚や卒婚にまつわるご相談にも多くの解決実績があります。
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