夫婦の形はさまざまであり、別居婚を選択する夫婦も少なからず存在します。
別居婚を始めるにあたっては、どのような手続きをする必要があるのでしょうか?
また、別居婚のメリットやデメリットはどのような点にあるのでしょうか?
今回は、別居婚を始める手続きや別居婚の注意点などについて弁護士が詳しく解説します。
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別居婚とは
別居婚とは法律用語ではないものの、一般的には夫婦が別居したままで婚姻関係を結ぶことを指します。
同じマンションの別の部屋など近所に住むケースや週末のみ同居するケース、お互いが実家で暮らしながら婚姻届のみを出すケースなど、別居婚にはさまざまなパターンがあります。
夫婦が別居するという点では、単身赴任や親の介護のための別居なども、別居婚の一つといえるかもしれません。
しかし、あえて「別居婚」と呼称する場合は、業務などの都合からやむを得ず一時的に別居する単身赴任などとは異なり、夫婦の意志であえて別居しているとのニュアンスが含まれていることが多いようです。
そのためこの記事でも、夫婦があえて別居を選んでいるとの前提で解説します。
別居婚を始める手続き
別居婚を始めるには、どのような手続きをする必要があるのでしょうか?
ここでは、別居婚の手続きについて解説します。
婚姻届を提出するだけ
別居婚において、特別な手続きは必要ありません。
通常の婚姻と同じく、市区町村役場の窓口に婚姻届を提出するだけです。
夫婦が別居するかどうかを問わず、婚姻届が受理されることで婚姻が成立します。
婚姻届は、全国どの自治体にも提出が可能ですが、以下を管轄する市区町村役場に提出する場合以外は、当事者の戸籍謄本が必要となります。
- 夫の本籍地
- 妻の本籍地
- 夫の所在地
- 妻の住所地
市区町村役場が開庁していない夜間や休日などであっても、届け出ることが可能です。
婚姻届の「同居を始めたとき」欄の書き方
婚姻届には、「同居を始めたとき」を記載する欄が設けられています。
別居婚の場合、この欄をどのように記載すべきか迷ってしまうことでしょう。
別居婚の場合はそもそも同居を始めていないため、この欄は空欄のままで構いません。
ここが空欄であることを理由に婚姻届が受理されないことはありません。
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別居婚のその他の手続きに関するその他のよくある疑問
別居婚に関する手続きには、他にもさまざまな疑問が湧くことでしょう。
ここでは、別居婚の手続きに関するよくある疑問とその回答を紹介します。
本籍地はどうなる?
別居婚であっても、夫婦である以上は、本籍地は同一となります。
戸籍法の規定において、「戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する」と定められているためです(戸籍法6条)。
そのため、日本人同士の夫婦が本籍を分けるためには、法律婚ではなく内縁関係(内縁)とするほかありません。
なお、本籍地は住所と同じである必要はなく、どこでもよいこととされています。
とはいえ、本籍地を夫婦のいずれもゆかりのない場所としてしまうと戸籍謄本の取得などで不便が生じる可能性があります。
そのため、実際は次のいずれかを本籍地とするケースが多いでしょう。
- 夫婦のいずれかの住所地
- 夫婦のいずれかの実家の所在地
婚姻届には夫婦の本籍地を記載する欄があるため、婚姻届を提出するまでに本籍地を決めておくことをおすすめします。
住民票はどうなる?
別居婚の場合、夫婦の住民票は別となることが原則です。
夫婦が戸籍を分けることができない一方で、別居している場合に住民票を分けることは問題ありません。
また、婚姻に伴って従前から夫婦がともに住所を異動しないのであれば、住民票の手続きは不要です。
なお、住民票では世帯主を定める必要がありますが、世帯主は同じ住民票に入っている人の中から一人を選定します。
そのため、住民票が分かれている夫を、妻の住民票の世帯主とすることはできません。
健康保険の扶養に入れる?
別居婚であるからといって、健康保険の扶養に入れなくなるわけではありません。
収入など他の要件を満たすことで、別居婚の配偶者を健康保険の扶養に入れることは可能です。
なお、健康保険とは会社員などが加入する医療保険であり、こちらには扶養という概念があります。
一方、自営業者などが加入する国民健康保険には扶養という概念がなく、たとえば夫が自営業で多くの収入を得ており妻が無収入であったとしても、妻の分の国民健康保険料も別途負担すべきなのが原則です。
国民健康保険料は、世帯全員分が世帯主に対して請求されます。
そのため、国民健康保険の被保険者である夫婦が別居婚で世帯が分かれている場合、一方に対してまとめて請求されるのではなく、夫と妻それぞれに対して国民健康保険料の納付義務が課されます。
所得税の配偶者控除の対象となる?
別居婚であるからといって、所得税の配偶者控除や配偶者特別控除の対象から外れるわけではありません。
別居婚であったとしても、収入などの要件を満たす場合は、配偶者控除や配偶者特別控除を受けることが可能です。
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別居婚のメリット
夫婦が同居せず別居婚を選択することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、別居婚を選択する夫婦が挙げることの多い主なメリットを2つ紹介します。
自由な暮らしを実現しやすい
1つ目は、夫婦がそれぞれ自由な暮らしを実現しやすいことです。
夫婦が同居すると、婚姻前のように自分だけのペースで生活することは困難です。
同居している家を自分の趣味の品で溢れさせるわけにもいかず、趣味が制限されることもあるでしょう。
同居によって家事の負担が増えれば、これまでのように仕事がしづらくなる可能性もあります。
新鮮な気持ちを保ちやすい
2つ目は、相手に対して新鮮な気持ちを維持しやすいことです。
結婚をして同じ家で生活すると相手が生活の一部となるうえ、見たくない部分までもが見えやすくなります。
そのため、いつまでも新鮮な気持ちを保つことは困難でしょう。
一方、別居婚であれば同居をしないため、恋人のような新鮮な気持ちを保ちやすくなります。
とはいえ、いくら別居婚であっても、いつまでも新鮮な気持ちを維持することは困難です。
同居している円満な夫婦は一緒に生活する中で恋愛感情から家族としての情愛に変わり、お互いをパートナーとして大切に思うフェーズへ自然に移行していきます。
一方、別居婚の場合は家族としての情愛を育む機会が少なくなりやすく、いざ恋愛感情が薄れた場合やいさかいがあった場合などに、連絡を取らなくなってしまうリスクがあります。
そのため、別居婚では連絡の頻度や合う頻度を取り決めておくなど、恋愛感情が薄れても関係が破綻しないための対策を講じることが必要です。
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別居婚のデメリットと注意点
別居婚には、デメリットも少なくありません。
ここでは、別居婚の主なデメリットと注意点を4つ紹介します。
別居婚を選択する際はメリットにばかり着目するのではなく、デメリットや注意点をよく理解したうえで行う必要があるでしょう。
生活費がかさみやすい
1つ目のデメリットは、生活費がかさみやすいことです。
一般的に、2人暮らしをした場合の生活費は、1人暮らしの2倍とはなりません。
たとえば、住居費だけを考えてみても、2人暮らし用の家を借りる家賃は、1人暮らし用の物件の2倍とはならないでしょう。
そのため、夫婦が別の家で生活をする別居婚では、生活費がかさむ傾向にあります。
なお、お互いが実家で暮らしたまま別居婚をする場合など、むしろ夫婦の生活費がかかりにくくなるケースもあります。
子どもができたときにトラブルとなりやすい
2つ目は、子どもができた際にトラブルとなる可能性があることです。
別居婚を貫こうとする夫婦は、子どもを設けない予定であることも少なくないでしょう。
しかし、夫婦である以上、子どもができる可能性をゼロとすることは困難です。
そこで、いざ子どもができた際に、子どもを産むかどうかや今後の生活について意見が相違し、トラブルとなる可能性が低くありません。
たとえば、妻が出産を希望する一方で、夫が堕胎を希望する場合などには、もはや夫婦間の溝を埋めることは困難です。
また、それまでは夫婦がそれぞれ独立した生活を送っていても、子どもができるとこれを貫くことは現実的ではないでしょう。
出産前後は妻が働けず収入が大きく減る可能性があるほか、体力面や精神面でのサポートを必要とすることも多いためです。
そうであるにもかかわらず、夫が引き続き自由を求め完全なる別居婚を希望する場合、妻としては結婚している意味がわからなくなってしまうかもしれません。
そのため、別居婚を始める場合は、あらかじめ次のことなどをよく話し合っておくとよいでしょう。
- いずれ子どもを設けるつもりがあるかどうか
- 子どもを設けるつもりがない場合、もし妻が懐妊したらどうするか
- 子どもができたら、同居するつもりはあるか・子育てに協力するつもりはあるか
- 妊娠中や出産後の生活費や子どもの養育資金はどうするか
そのうえで、相手と決定的な面で考え方が合わないと感じた場合は、婚姻自体を見送ることも一つの選択肢です。
相手の不倫に気付きにくい
3つ目は、相手の不倫に気付きにくいことです。
別居婚は自由が多い反面、相手が不倫に走るリスクも高くなります。
また、相手が不倫をしていても、気付きにくいといえるでしょう。
不倫相手と会った後に配偶者が待つ家に帰る必要がないうえ、詳細な帰宅時間なども把握しづらいためです。
相手の不倫を理由として離婚しようにも不貞行為の証拠がつかめず、慰謝料請求が難しくなる可能性も否定できません。
離婚時の財産分与が認められにくい
4つ目は、離婚時の財産分与が認められにくいことです。
財産分与とは、離婚に伴って夫婦の共有財産を清算する手続きです。
たとえば、夫が主に外部から収入を得ており、妻が専業主婦である場合、家の財産(自宅不動産や預貯金など)の大半が夫名義であり、妻名義の財産がほとんどないことも少なくないでしょう。
そこで、離婚時には婚姻期間中に積み上がった財産や維持してきた財産を原則として夫婦の「共有財産」ととらえ、原則としてこれを2分の1ずつに分ける財産分与をすることとなります。
夫が外部からまとまった収入を得ることができたのは、妻による内助の功があったためと考えられるためです。
同居して生活を営んでいた夫婦が離婚する場合は、この財産分与が認められるケースが多いといえます。
一方、別居婚の場合は、財産分与が受けられない可能性があります。
なぜなら、別居婚の場合は夫婦がそれぞれ独立した生活を営んでおり、内助の功が認められにくいためです。
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まとめ
別居婚とは、夫婦が同居しないままで法律上の夫婦となることです。
別居婚を始めるにあたって特別な手続きをする必要はなく、通常の婚姻と同じく婚姻届を住所地や本籍地などの市区町村役場に提出することで成立します。
また、別居婚であるからといって、健康保険の扶養に入れなくなったり所得税の配偶者控除などの適用が受けられなくなったりするわけではありません。
配偶者である以上、健康保険や税務上は同居の配偶者と同等に扱われることがほとんどです。
しかし、別居婚にはデメリットや注意点も少なくありません。
たとえば、財産分与を受けられない可能性があることや相手の不貞行為に気付きにくいこと、子どもができた際にトラブルとなりやすいことなどです。
そのため、別居婚を始めるにあたってはデメリットを十分に理解し、夫婦間でよく話し合っておくことをおすすめします。
別居婚に関してトラブルとなった場合は、早期に弁護士へご相談ください。
Authense法律事務所には夫婦間トラブルの解決に詳しい弁護士が多数在籍しており、別居婚にまつわるご相談も多く寄せられています。
別居婚を始めるにあたって夫婦間で取り決めをしておきたい場合や別居婚に関するデメリットを知りたい場合、別居婚の配偶者と離婚したい場合などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
夫婦関係や離婚にまつわる初回のご相談は、原則として初回60分間無料でお受けしています。
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