コラム
公開 2024.01.15

別居婚は意味ない?離婚前に話し合うべきことを弁護士がわかりやすく解説

夫婦の形が多様化しており、別居婚を選択する夫婦もいます。

しかし、パートナーとの間で別居婚の話が浮上した際、別居婚には意味がないのではないかと感じる人もいることでしょう。
別居婚にはメリットもある一方で、デメリットや注意点も少なくないため、これらを理解しておくことが必要です。

今回は、別居婚のメリット・デメリットや別居婚を始めるにあたって取り決めておくべき事項などについて弁護士が詳しく解説します。

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別居婚とは

「別居婚」は法律用語ではなく、明確な定義はありません。
一般的には、同居をしないまま法律婚をする婚姻の形を指すことが多いでしょう。

単身赴任や介護での別居などとの違い

同居をしない婚姻の形が「別居婚」であるならば、単身赴任や介護などの都合から別居をしているケースも「別居婚」に当てはまりそうです。
先ほど解説したように、別居婚には明確な定義はないことから、単身赴任などのケースも含めて「別居婚」と呼ぶこともあります。
しかし、あえて「別居婚」と呼ぶ場合は、転勤などやむを得ない事情によるものではなく、主体的に別居しているニュアンスが含まれることが多いようです。

別居婚には意味がない?別居婚の主なメリット

婚姻していながら同居をせずに別居婚をすることには、意味があるのでしょうか?
ここでは、別居婚の主なメリットを3つ紹介します。

自分のペースで生活できる

1つ目のメリットは、自分のペースで生活しやすいことです。

配偶者と同居すると、自分のペースだけで生活をするわけにはいきません。
特に、食事の時間や寝起きする時間が相手と異なる場合は、同居生活がストレスとなる可能性があります。

仕事や趣味に集中しやすい

2つ目のメリットは、それぞれが自身の仕事や趣味に集中しやすいことです。

同居をしている場合は家事の分担などが生じ、仕事に集中しづらくなる可能性があります。
また、同じ屋根の下で生活する以上はよほど間取りに余裕のある家でない限り、部屋を自分の趣味の品で溢れさせるわけにもいきません。

新鮮な気持ちを維持しやすい

3つ目のメリットは、新鮮な気持ちを維持しやすいことです。

夫婦が同居すると相手が生活の一部となり、お互いに見たくない部分までが見えてしまいます。
そのため、恋人のような新鮮な気持ちを維持することは、容易ではありません。

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別居婚の主なデメリット

素材_デメリット
別居婚にはメリットがある一方で、デメリットも少なからず存在します。
パートナーから別居婚を提案された場合は、デメリットを十分理解したうえで決断するべきでしょう。

ここでは、別居婚の主なデメリットを4つ解説します。

生活費がかさみやすい

夫婦が同居する場合と比較して、別居婚では生活費がかさむ傾向にあります。
一般的に、夫婦が二人暮らしをする場合の生活費は、一人暮らしの生活費の2倍より少なくなることが多いためです。

ただし、中にはお互いが実家で暮らしたまま別居婚をする場合もあります。
この場合は、夫婦の生活費がかさむわけではありません。

不倫に気付きにくい

別居婚では、相手が不倫をしても気づきにくい傾向にあります。
相手の生活スタイルが掴みづらく、たとえ不倫相手と会って帰宅が遅くなったとしても、帰宅が遅いことにさえ気づけない可能性があるためです。

不倫をした側は、不倫相手と会った後で配偶者が待つ家に帰宅する必要がないため、別居婚は不倫をしやすい環境ともいえます。
また、不倫相手に既婚者であることを隠しやすいともいえるでしょう。

子どもができたときにトラブルとなりやすい

別居婚では、夫婦間に子供ができた際にトラブルとなる可能性が高くなります。
妊娠や出産をすると、夫婦がともに「自由な生活」を送ることは現実的ではなくなるためです。
妊娠中は体調の変化も大きいうえ収入が減る可能性もあり、妻としては夫と同居したいと考えることもあるでしょう。

そのため、別居婚の夫婦に子供ができると、その際の選択肢は次のいずれかとなります。

  1. 通常の同居婚に移行し、夫婦で協力して子育てをする
  2. 同居はしないが、金銭面でサポートする
  3. 別居婚を継続して一方はこれまでとほとんど変わらぬ生活を送ったまま、一方(妊娠できるのは妻のみであるため、主に妻)のみが妊娠や子育ての負担を負う
  4. 堕胎して別居婚を継続する

そこで、たとえば妻が「1」を希望する一方で、夫が「3」や「4」を求める場合、夫婦間の溝が修復できないほど大きくなる可能性があります。
特に、子供をも設けるつもりがないと話し合っていたものの、予期せず妊娠した場合はトラブルとなりやすいでしょう。

離婚時の財産分与が少なくなる可能性がある

別居婚では、離婚時の財産分与が少なくなる可能性があります。
財産分与とは、離婚に際して夫婦の財産を清算することです。

同居している夫婦の一方(仮に、夫)が外部からの収入を得ており、もう一方(仮に、妻)が専業主婦をしている場合、家の財産のほとんどが夫名義であることも少なくありません。
しかし、夫が財産を築くことができたのは妻による内助の功にもよるものと考えられます。

そのため、婚姻期間中に築いた財産は、たとえ名義こそ夫であっても潜在的には夫婦の共有財産であると考えられ、離婚に際して原則として2分の1ずつの割合で分けることとなります。

しかし、別居婚の場合はそれぞれが独立した生活を送っており、「内助の功」が認められにくい傾向にあります。
そのため、離婚時に財産分与を一切受けられなかったり、非常に少なくなったりする可能性があります。

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別居婚を開始する前に決めておくべきこと

ここまで解説したように、別居婚にはデメリットが少なくありません。
そのため、別居婚を始める場合はあらかじめパートナーとよく話し合い、さまざまな取り決めをしておくことをおすすめします。
取り決めによって別居婚のリスクを可能な限り回避しておくことは、安心に繋がります。

取り決めた内容は、可能な限り書面に残しておくとよいでしょう。
話し合いの過程で相手と相容れない部分が発覚したら、無理に別居婚に応じず同居婚を求めたり、その相手との婚姻自体を見送ったりすることも1つの手です。

ここでは、主に取り決めておくべき4つの項目を紹介します。

生活費の負担

1つ目は、生活費の負担についてです。

別居婚をする夫婦はともに収入が安定していることも多く、平常時はそれぞれが独立して生計を営むこともあるでしょう。

しかし、人生はいつ何が起きるかわかりません。
現在は収入が安定していても、病気やケガ、解雇などさまざまな事情から一方の収入が減る可能性もあります。
その際も引き続き独立した生活を送るのか、不測の事態が生じた際は扶養するつもりがあるのかなどについて話し合っておくことをおすすめします。

なお、別居であるか同居であるかを問わず夫婦は相互に扶助義務を負っており、原則として相手に自分と同程度の生活を送らせなければなりません。
話し合いをする際は、この点を念頭に置いておきましょう。

会う頻度や方法

2つ目は、会う頻度や方法についてです。

夫婦が同居している場合、たとえ新鮮な気持ちが薄れても、これに代わって家族としての信頼関係や情愛による結びつきを深めやすくなります。
一方、別居婚の場合は会う頻度が低いため家族としての情愛に移行しづらく、新鮮な気持ちが薄れた際にお互いに会わなくなってしまいかねません。

たとえ別居婚であっても、夫婦関係が長くなると、いつまでも新鮮な気持ちを維持することは困難です。
しかし、恋愛感情が薄れたからといって会わずにいると、事実上夫婦関係が破綻してしまいます。

そのような事態を避けるため、あらかじめ会う頻度や方法を取り決めておくことをおすすめします。

いつまで別居婚を続けるのか

3つ目は、別居婚を続ける期間です。

別居婚を続ける期間については夫婦間で食い違いが生じやすく、一方が別居婚を一時的なものと考えており、もう一方はどれだけ時間が経っても同居するつもりがないと考えている可能性があります。
別居婚を始める際は、別居婚をいつまで続けるのか意見のすり合わせをしておくことをおすすめします。

別居婚を続ける期間については、たとえば次のように決めることが考えられます。

  • 「〇年間」などの期間で定める
  • 「今進行中のプロジェクトが落ち着いたら」や「妊娠したら」などの条件で定める

子どもができたらどうするか

4つ目は、子供ができた場合の対応についてです。

先ほど解説したように、別居婚の夫婦は子供ができた際にトラブルとなることが少なくありません。
いざ子供ができてから別居婚を後悔しないよう、あらかじめお互いの考え方を確認しておくことをおすすめします。

具体的には、次のことについて話し合っておく必要があるでしょう。

  • 子供をもうけるつもりはあるか
  • 子供をもうけるつもりがない場合、もし妊娠したらどうするか
  • 子供ができたら同居するつもりはあるか
  • 子供ができたら協力して子育てをするつもりはあるか
  • 妊娠中や出産直後の生活費や、子供の養育費はどうするか

この点については、あらかじめしっかり話し合っておかないと、後に大きなトラブルに発展しかねません。
いざ妊娠をしてから堕胎か離婚かの選択を迫られるようなこととなれば、女性側が大きな不利益を被るリスクがあります。
そのため、特にしっかりと話し合っておくようにしてください。

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別居婚を始めるための手続きのよくある疑問とその回答

素材_悩んでいる人
別居婚を始めるにあたって、手続きはどうすればよいのでしょうか?
最後に、別居婚を始めるための手続きを紹介するとともに、別居婚に関するよくある疑問に回答します。

別居婚特有の手続きはある?

別居婚を始めるにあたって、別居婚に特有の手続きはありません。
通常の婚姻と同じく、市区町村役場に婚姻届を提出することで婚姻が成立します。

婚姻届には婚姻後の本籍地を書く欄があり、たとえ別居婚であっても本籍地は同一でなければなりません。
なぜなら、婚姻をした夫婦は1つの戸籍に入ることとなり、夫と妻の本籍地を分ける取り扱いはできないためです。

本籍地はどこであっても構いません。

また、日本では現在夫婦別姓は認められておらず、婚姻後は夫婦がともに夫か妻いずれかの姓に統一する必要があります。
婚姻によって姓を変えた側は、通常の婚姻と同様に運転免許証やマイナンバーカード、預貯金口座などの名義変更を忘れないように注意してください。

住民票はどうすればよい?

本籍地は夫婦で同一でなければならない一方で、住民票上の住所が夫と妻とで異なることはあり得ます。
そのため、婚姻に伴って引っ越しをしない場合は、住民票を異動させる必要はありません。

健康保険の扶養に入れる?

別居婚であっても、収入が一定額(原則として年間130万円)未満であれば、健康保険の扶養に入ることが可能です。
健康保険は、会社員などが加入している社会保険です。
別居婚の配偶者を扶養に入れたい場合は、勤務先に「扶養控除申告書」を提出して手続きを行います。

一方、会社員ではなく自営業者などであり「国民健康保険」に加入している場合は、たとえもう一方に収入がなかったとしても配偶者を扶養に入れることはできません。
健康保険とは異なり、国民健康保険には扶養という概念自体がないためです。

これは別居婚に特有のことではなく、同居していても同様です。
夫婦が同一世帯の場合、保険料の納付義務は世帯主がまとめて負いますが、別居して別世帯となっている場合は、それぞれの世帯主が保険料を納めなければなりません。

税務上の扶養に入れる?

税務上の扶養とは、配偶者について扶養控除(配偶者控除や配偶者特別控除)の適用を受けることです。
別居婚であっても収入などの要件を満たす場合は、配偶者について税務上の扶養控除の適用を受けることができます。

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まとめ

別居婚にはメリットもあり、意味がないわけではありません。
ただし、別居婚には少なからぬデメリットもあります。
そのため、パートナーから別居婚を提案されたら安易に提案に応じるのではなく、デメリットをよく理解し、パートナーとよく話し合いをしたうえで決断してください。

特に、子供ができた場合の対応については別居婚を始める前に決めておかないと、大きな後悔につながりかねません。
そのため、曖昧なまま婚姻届を出してしまうのではなく、しっかりと話し合っておくことをおすすめします。

Authense法律事務所では、男女問題や離婚問題に強い弁護士が多く在籍しており、多くのトラブル解決実績があります。
別居婚を始めるにあたってパートナーと取り決めておくべき事項を知りたい場合や別居婚の配偶者と離婚したい場合、相手から離婚を切り出されてお困りの際などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
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Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
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弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
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相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
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私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学法学部法務研究科を修了。これまで離婚、相続など個人の法律問題に関する案件を数多く取り扱い、依頼者の気持ちに寄り添った解決を目指すことを信条としている。複数当事者の利益が関わる調整や交渉を得意とする。現在は不動産法務に注力。
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