コラム
公開 2022.10.21 更新 2023.04.05

ずっと別居していながら離婚しないメリット・デメリットは?弁護士がわかりやすく解説

離婚_アイキャッチ_333

ずっと別居状態にありながら、離婚しない夫婦の形も存在します。

では、別居をしつつ離婚しない場合と離婚した場合とでは、どのような違いが存在するのでしょうか?
今回は、別居状態のまま離婚をしないメリットなどのほか、離婚に至った場合の注意点などについて解説します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

ずっと別居状態と離婚との主な違い

長年別居状態にあるままで、離婚をしない夫婦も存在します。
では、離婚をした状態と、ずっと別居状態にあるまま離婚をしない状態とでは、どのような違いがあるのでしょうか?
主な違いは、次のとおりです。

相互扶助義務があるかどうか

夫婦である以上、たとえ別居状態にあっても、原則として相互扶助義務を負っています。

相互扶助義務とは、互いに協力して扶助(生活を助け合う)義務のことです。
相互扶助義務がある以上、相手に対して金銭面の援助をしなければならなくなることもあります。

一方、正式に離婚をすることにより、相互扶助義務はなくなります。

児童扶養手当などの公的補助を受けられるかどうか

児童扶養手当(「父子手当」「母子手当」と呼ばれることもある)などの公的補助は、原則として正式に離婚が成立していなければ受給することができません。
この点も、単なる別居と離婚とでは大きく異なるところです。

ただし、児童扶養手当はたとえ正式に離婚が成立していなくても、DVや相手による子の遺棄など一定の事情がある場合には受給できる可能性があります。
受給できるかどうかを知りたい場合には、市区町村役場へ問い合わせるとよいでしょう。

東京都福祉保健局:児童扶養手当

税務上の扶養に入れるかどうか

税務上の扶養に入ることができるのは、婚姻関係にある配偶者のみです。

別居していても扶養の事実があれば税務上の扶養に入れることができる一方で、離婚の成立後は扶養に入れることができません。

相続権があるかどうか

夫婦の一方が亡くなった場合、法律上の配偶者には相続権が発生します。
これは、たとえ長年別居状態にあったとしても同様です。

これとは反対に、たとえ長年同居して夫婦同然の暮らしをしていたとしても、婚姻はしない内縁関係であれば相続権はありません。

こうしたことから、ずっと別居をしていたとしても、離婚をしていない以上は相手から相続を受ける権利がある一方で、正式に離婚をした場合には相続の権利がない点が大きな違いの一つです。

ずっと別居しつつ離婚しないメリット

素材_ポイント
長年別居状態でありながら離婚をしないメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?
考えられる主なメリットは、次のとおりです。

適度な距離を保つことで円満な関係を続けられる

夫婦によっては、別居をして適度な距離を保つことで、円満な関係を続けられる場合もあることでしょう。
この場合には、婚姻関係を維持するための手段として、別居を選択することとなります。

離婚よりも世間体を保ちやすい

今や3組に1組の夫婦は離婚をするといわれており、離婚は決して珍しいことではありません。
離婚に対してマイナスのイメージを持つ人も、少なくなっていることでしょう。

しかし、職業や置かれている状況などによっては、離婚をしたことを周囲に知られたくない場合もあるかと思います。
この場合には、離婚をせず別居状態を続けることも、選択肢の一つとなるでしょう。

修復の可能性が残る

夫婦の関係性が悪化したとしても、離婚をしないまま別居状態を続けることで、将来的に関係を修復できる可能性が残ります。

そのため、いずれ復縁を望む場合にはあえて離婚まではせず、別居を続ける場合もあることでしょう。

婚姻費用を受け取れる

たとえ別居をしていても離婚が成立していない以上は、お互いの収入や子の監護状況により、相手から婚姻費用(いわゆる「生活費」)を受け取ることができます。

夫婦には、上で解説をした「相互扶助義務」があるためです。

関連記事

子への影響を軽減しやすい

離婚は、子の精神状態へ大きな影響を与えてしまいかねません。
そこで、正式に離婚をせず別居状態を続けることで、離婚と比べて子への影響を軽減できるとの考えもあります。

また、別居状態であっても離婚をしない場合には、子の名字が変わらないこともメリットの一つといえるでしょう。

なお、離婚後も婚姻時の姓を名乗り続けることは可能です。

離婚に向けた面倒な話し合いを先送りできる

正式に離婚をしようとすれば、婚姻時期や養育費、親権、財産分与など、さまざまな話し合いをしなければなりません。
こうした話し合いを避けたいという消極的な理由から、離婚をしないまま長年にわたる別居状態を続けている場合もあるでしょう。

ずっと別居しつつ離婚しないデメリット

ずっと別居状態でありながら離婚をしないことには、デメリットも存在します。
主なデメリットは、次のとおりです。

夫婦である以上はお互いに扶助する義務を負う

メリットで挙げた「婚姻費用を受け取れる」の反面として、婚姻費用を支払う側にとっては、相互扶助義務を負うことがデメリットとなります。

また、たとえ現在は相手より収入が少なく扶助を受ける側であったとしても、相手が病気になり収入が途絶えた場合などには、相手の生活を支えなければなりません。

再婚できない

ずっと別居状態にあったとしても、婚姻している以上は、他の人と再婚することができません。

また、再婚をしたい相手が現れたことをきっかけに、先延ばしにしていた離婚へ向けた話し合いを始めた場合には、相手が離婚を拒絶するなどしてトラブルとなる場合があります。

経済的な負担が大きくなる

別居状態のまま婚姻関係を続けるということは、少なくとも2つの生活拠点が必要になるということです。
そのため、家族が1つの家でまとまって暮らしている場合と比較して、経済的な負担が大きくなる傾向にあるでしょう。

相手から離婚を切り出される可能性がある

別居期間が長くなると、相手から突然離婚を切り出される可能性があります。
また、たとえ一方が離婚はしたくないと考えていても、別居期間が長ければ長いほど、離婚調停や離婚訴訟において、離婚をする方向での判断がなされる可能性が高くなるでしょう。

お互いに離婚の意思があればよいですが、いずれ関係を再構築したいと考えている場合や、別居のまま離婚せずにいる状態が心地よいと考えている場合には、この点もデメリットであるといえます。

別居が長期間続いた後で離婚をする場合の注意点

素材_ポイント_注意点
別居期間が長期にわたって続いた後で離婚をする場合には、次の点に注意が必要です。

財産分与の対象額が少なくなる可能性がある

財産分与とは、婚姻期間中に築いた夫婦の財産を、離婚にともなって清算する手続きです。

婚姻期間中に夫婦の協力で築かれた財産は、原則としてすべて財産分与の対象となり、たとえ名義が一方のものであったとしても、財産分与の対象から除外されるわけではありません。

また、仮に夫婦の一方のみが外部からの収入を得ており、もう一方が専業主婦(夫)であった場合でも、財産分与の割合は原則として2分の1ずつとされます。
相手の内助の功があったからこそ、外部から収入を得て財産を形成できたものと考えられるためです。

しかし、別居をしていた期間中に築いた財産は、原則として財産分与の対象外となる点に注意しましょう。
長年別居をしていた以上、夫婦の協力で財産が形成されたとは考えにくいためです。

財産分与において相手の財産を調査しづらい

別居期間中に増えた財産は財産分与の対象にならない可能性が高いとしても、同居していた期間分に増加した財産についてなど、財産分与が発生するケースは存在します。

しかし、長年別居をした状態では相手の財産を調査することは困難です。
そのため、仮に相手が財産分与の対象となる財産を隠したとしても、その証拠を掴むことが難しいケースが多いでしょう。

不貞行為をされても慰謝料請求ができない可能性がある

別居期間が長期にわたった場合には、たとえ相手が不貞行為をした場合であったとしても、不貞行為が別居期間中になされたものであれば、慰謝料請求ができない可能性があります。

不貞行為が原因で夫婦関係が破綻したのではなく、不貞行為の前にそもそも夫婦関係が破綻していたと判断される可能性が高いためです。

関連記事

不貞行為などの証拠が集めづらい

別居状態にあるものの、その時点で夫婦関係は破綻していなかったと判断されれば、不貞行為は慰謝料請求の対象となり得ます。

しかし、その場合であったとしても、別居をした状態で不貞行為の証拠を掴むことは容易ではないでしょう。

まとめ

ずっと別居状態を続けながら離婚しないままでいることには、すぐに離婚をする場合とは異なるメリットとデメリットがそれぞれ存在します。
ひとまず別居をするか離婚をするか悩ましい場合には、メリットやデメリットのほか、将来離婚に至った場合に注意点なども踏まえたうえで慎重に検討するとよいでしょう。

Authense法律事務所には、夫婦問題や離婚問題にくわしい弁護士が多数在籍しております。
離婚や別居でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。