コラム
公開 2022.10.06 更新 2023.04.05

別居婚とは?メリットや手続き方法、離婚時の注意点を弁護士がわかりやすく解説

離婚_アイキャッチ_326

別居婚とは、夫婦が同居しない婚姻の形態です。
では、別居婚のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

今回は、別居婚のメリットや別居婚を始める際の手続き、仮に別居婚で離婚をすることとなった場合の注意点などについて弁護士が解説します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

別居婚とは

別居婚は法律用語ではなく、明確な定義があるわけではありません。
一般的には、夫婦が同居をしないまま入籍をする婚姻の形を指すことが多いでしょう。

そもそも、民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と明記されており、夫婦の同居義務が定められています。
この「同居、協力及び扶助の義務」は強行規定であるため、これに反する夫婦の契約は無効です。

ただし、単身赴任や出産時の里帰りなど、一時的なやむを得ない別居はこの条項に反しないとされています。

では、別居婚については、どのように考えればよいのでしょうか?
現実的には、この「同居、協力及び扶助の義務」は他者から強制される性質のものではありません。
そのため、夫婦がお互いに納得をして別居婚を選択しているうちは、問題は顕在化しないことが、多いでしょう。

一方、いくら入籍前に別居婚をする旨の契約を交わしたとしても、その契約は無効であるため、夫婦のいずれかが同居を希望した場合には、同居義務の履行を求める裁判を申し立てられる可能性があります。

別居婚を選択する場合には、法的にはこのような不安定な状態であることを知っておくべきでしょう。

別居婚をする主なケース

別居婚を選択する主な理由としては、次のものが考えられます。

結婚生活に縛られたくない場合

相手のことは大切だけれど、同居による結婚生活に縛られたくないという考えから別居婚を選択する場合があります。
お互いに打ち込みたい仕事や趣味があり、生活のペースを変えることなく婚姻をしたい場合などです。

新鮮な気持ちを保ちやすい場合

同居をすると相手の存在が生活の一部となりますので、新鮮な気持ちはどうしても薄れてしまいがちです。
そのような事態を避けるため、あえて新鮮な気持ちを保ちやすい別居婚を選択する場合があります。

子の福祉に配慮したい場合

たとえば、一方に以前の婚姻などで生まれた未成年の子がいる場合などには、子の生活環境を変えないようにするため、あえて別居婚を選択することがあります。
この場合には、たとえば「子が〇才になったら同居する」など、期限を区切って別居を選択することが多いでしょう。

離婚はせずいったん距離を置きたい場合

婚姻期間が長くなるなど何らかの事情でお互いに距離を取りたい場合に、離婚はしないままあえて別居をする選択肢を取る場合があります。
冷却期間を置くことでいずれ同居生活へ戻るケースもあれば、そのまま離婚へ至ってしまうケースもあるでしょう。

単身赴任や親の介護などやむを得ない事情がある場合

ここまで挙げた4つのケースとは異なり、一方の単身赴任や親の介護などやむを得ない事情で別居となる場合も存在します。
この場合の別居婚は一時的なものであり、その後の状況変化によって別居が解消される可能性が高いでしょう。

別居婚の形態

ひとくちに「別居婚」といっても、その形態にはさまざまなものがあります。
主な形態は、次のとおりです。

お互い実家に住み続ける

お互いが自分の実家に住み続けたまま、婚姻をするケースです。
比較的若いカップルが金銭的な事情などからこの形態を取る場合がある他、親の介護などやむを得ない事情からこの形態を取る場合も存在します。

遠距離

遠距離である場所に住み、定期的に会ったり連絡を取り合ったりする形態です。
単身赴任などやむを得ない事情で途中から遠距離になる場合の他、婚姻前からお互いの職場などが離れており、遠距離のままで婚姻をするケースなどがあります。

近所に住み週末は一緒に過ごす

同じマンションの別の部屋など比較的近い場所に住み、週末のみは一緒に過ごすなどの形態です。
子の福祉に配慮をするための別居婚や、新鮮な気持ちを保ちたいなどの理由による別居婚の場合には、この形態を取るケースが多いでしょう。

別居婚を選択する主なメリット

やむを得ない事情によらず、当事者があえて別居婚を選択することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットは、次のとおりです。

個々の趣味や仕事に専念しやすい

婚姻により同居生活が始まれば、どうしてもこれまでどおりに自分の趣味や仕事に割く時間は減ってしまいがちでしょう。

別居婚とすることで個々の生活ペースを変えないまま婚姻ができるため、引き続きそれぞれの趣味や仕事に専念しやすくなります。

新鮮な気持ちを保ちやすい

同居をすると相手が生活の一部となるため、いつまでも新鮮な気持ちを保つことは困難でしょう。
一方、別居婚を選択することで緊張感を保つことができ、新鮮な気持ちを長続きさせやすくなります。

お互いに自由でいられる

同居をすると、これまでどおり自分のペースだけで生活をすることは困難です。
一方、別居婚を選択することで、自由な生活を保ちやすくなるでしょう。

別居婚をはじめる際の手続き

素材_弁護士相談_サイン
これから婚姻をして別居婚を始めようとする場合に必要となる主な手続きは、次のとおりです。

婚姻届を提出する

別居をしたままであっても、婚姻をするのであれば、役所へ婚姻届を提出する必要があります。
婚姻届は一緒に提出しに行っても構いませんし、一方があらかじめ記入したものをもう一方が役所へ持っていく形で提出をしても構いません。
また、婚姻届の提出先は全国どこの市区町村役場であってもよいこととなっています。

婚姻届には夫婦それぞれの住所を記載する欄がありますが、別居婚の場合にはそれぞれの住所を記載します。
夫婦の住所が異なっても問題ありません。

また、「同居を始めたとき」の欄は、空欄のままで結構です。

別居をしたままであっても、婚姻届が無事に受理された時点で、2人は正式な夫婦となります。

住所を移すなら住民票を異動する

別居婚の開始に伴い、たとえば相手の住居近くに住所を移す場合などには、住民票の異動を行います。

引越し前後の市区町村が同じであれば、その市区町村役場へ転居届を提出するだけで構いません。
市区町村をまたいで引越しをする場合には、まず引越し前に市区町村役場に「転出届」を出して「転出証明書」を受け取ります。
その後、引っ越し後に新たな住所地となる市区町村役場に、この「転出証明書」と「転入届」を提出してください。

住所を変更した場合には、運転免許証やマイナンバーカードなどの住所変更も忘れずに行っておきましょう。

扶養に入るなら扶養控除申告書を提出する

別居婚であっても、収入などの要件を満たすのであれば、相手の扶養に入ることが可能です。

会社員が相手を扶養に入れる場合には、年末調整シーズンに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」へ相手を扶養対象の配偶者として記載をして、会社に提出しましょう。

自営業者などの場合には、確定申告の際に相手を扶養親族として申告します。

別居婚の課題やデメリット

別居婚には、課題やデメリットも存在します。
次の点を踏まえて、別居婚を選択するかどうかよく検討するとよいでしょう。

生活費がかさみやすい

一般的に、1つの家で二人暮らしをした場合の生活費は、それぞれが一人暮らしをした場合の合計額よりも小さくなります。
そのため、別居婚の場合には同居の場合と比較して、生活費がかさみやすいといえるでしょう。

離婚へのハードルが低くなりやすい

別居婚の場合には、仮に離婚をしたとしても生活は大きく変わりません。
そのため、通常の婚姻と比較して離婚へのハードルが低くなりやすいといえるでしょう。

また、同居よりは新鮮さを保ちやすいとはいえ、定期的に顔を合わせていれば、いつまでも新鮮さを保つことは困難です。
その際に夫婦関係を継続することができるかどうが、婚姻継続の一つのハードルとなる可能性があります。

不貞が起きやすい

別居婚における自由さの裏返しとして、不貞行為が起きやすいというデメリットが挙げられます。
同居している場合と比べて、自分は既婚者であるとの意識が低い可能性が高いうえ、不貞行為が発覚しにくいであろうこともその理由の一つです。

子供が生まれた場合に問題が起きやすい

自由さや新鮮さを求めて別居婚をしていた場合、夫婦の間に子供ができると問題が起きやすいでしょう。

妻側が実家で暮らしていて手厚い援助が受けられる場合などでない限り、別居をしたまま子を生んで育てることは非常に困難であるためです。
そのため、妊娠が発覚した時点で、妻側は同居を求める可能性が高いといえます。

この段階で夫側が考えを変えず、引き続き自由を謳歌したいなどと考えていては、夫婦関係を継続させることは困難でしょう。

周囲から反対される可能性がある

別居婚を選択する夫婦にはそれなりの事情や理由があるとはいえ、夫婦が離れて暮らすことが自然ではないと考える人は少なくありません。
単身赴任や子の福祉のためなどやむを得ない事情があるのであればまだしも、自由な生活を求めるためなどの理由による別居婚では、周囲の理解が得られない可能性があります。

理由を詮索されたり反対意見を述べられたりするなどして嫌な思いをする可能性があるため、ある程度の覚悟が必要となるでしょう。

別居婚を始める場合の注意点

別居婚を選択しようとする場合には、次の点に注意をしましょう。
なお、ここでは単身赴任などやむを得ない理由による一時的な別居婚ではなく、お互いの意思であえて別居婚を選択する場合を前提として解説します。

別居婚に納得できない場合は婚姻自体をよく考える

デメリットなどを踏まえ、お互いが納得したうえで別居婚を選択するのであればよいのですが、仮に一方の意見に押し切られる形で別居婚を選択するのであれば、立ち止まってよく考えるべきでしょう。

別居婚は、一般的な婚姻の形態とはいえません。
相手がなぜ別居婚にこだわるのか、別居婚でなければならない理由は何であるのかなど、長期的な視点でよく検討してください。

それでも婚姻をするのであれば、少なくとも別居婚をいつまで続けるのかは明確に定めておくことをおすすめします。
それさえも飲んでもらえない場合には、婚姻自体を見送ることも検討すべきでしょう。

理由がなくても定期的に会うなどルールを決める

別居婚は、非常に自由な婚姻の形態です。
そうであるが故に、何らルールを決めなければ、一方が相手に新鮮さを感じなくなったり他に親しい相手ができた途端に会えなくなったりするなど、自然消滅のような状態となってしまうリスクもあるでしょう。

そのため、たとえば理由がなくても定期的に会うことや定期的に電話をすることなど、最低限のルールは定めておくべきであるといえます。

生活費の負担について定期的に話し合う

特に自由さや新鮮さなどを求めて別居婚を選択する場合、その時点ではお互いが経済的に自立している場合が多いでしょう。

しかし、人生にはさまざまなリスクがあり、状況はいつ変化するかわかりません。
たとえば、一方の会社が倒産してしまったり事故に遭って動けなくなったりして、収入が途絶えてしまう可能性は否定できないでしょう。

そうでなくとも、たとえば妊娠や出産をした場合には、一時的に収入が減る可能性もあります。
また、子供が生まれれば、子の養育にかかる費用負担も必要です。

別居婚を選択する場合には、このような将来の状況変化を踏まえ、状況が変わった場合の生活費負担についてどう考えているのか話し合い、あらかじめ取り決めをしておくことをおすすめします。

別居婚をいつまで続けるかよく話し合う

別居婚を始める際には、いつまで別居婚を続けるのかについて、よく話し合っておくことをおすすめします。
たとえば、「前婚の子が中学校を卒業したら改めて同居を検討する」などです。

また、仮に夫婦間に子供ができた場合には同居を始めるかどうかなども、明確に取り決めておくべきでしょう。

別居婚の夫婦が離婚する場合における同居婚との主な違い

素材_電卓_書類
最後に、別居婚の夫婦が離婚をする場合における、同居婚の場合との違いについて解説をします。

慰謝料が減額される可能性がある

別居婚であっても、相手が不貞行為などをしたことによる離婚の慰謝料がただちに減額されるわけではありません。

しかし、たとえば夫婦関係が戸籍上の形ばかりとなりほとんど会っていないなど、仮に元々夫婦関係が破綻していると考えられる場合には、慰謝料が大きく減額される可能性があります。

財産分与がない可能性がある

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を、離婚に伴って分ける行為です。

同居をして共同生活を送っている夫婦であれば、たとえ収入や所有財産の額に偏りがあったとしても内助の功などがあると考えられるため、原則として2分の1ずつで財産を分与することとなります。

しかし、お互いが経済的に自立した状態での別居婚の場合には、財産分与がない可能性があるでしょう。
この場合には、そもそも夫婦の共有財産がないと判断されやすいためです。

まとめ

別居婚とは、夫婦が同居をしない婚姻の形態です。
別居婚を選択する理由は夫婦によってさまざまですが、別居婚にはリスクがあることも知ったうえで選択するようにしましょう。

Authense法律事務所には夫婦間のトラブルに詳しい弁護士が多数在籍しており、日々問題の解決に当たっています。
別居婚にまつわるトラブルで困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院法学研究科修了。離婚、相続といった家事事件を中心に数多くの案件を取り扱う。依頼者の希望する解決に向けて、しっかりと依頼者の話を聞いて事実関係を整理し、証拠収集することを得意としており、先の見通しも踏まえた交渉力は依頼者からも高く評価されている。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。