コラム
公開 2021.06.04 更新 2022.08.16

離婚を切り出す前に要確認!財産状況の調べ方

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熟年離婚するとき、注意したいのが配偶者の財産隠しです。相手が所有している財産を正確に把握できないと、適切な財産分与を受けられない可能性が高まります。
この連載では、熟年離婚を考えている「オー美」さんのケースを例に、離婚時の財産調査や財産開示請求の方法や注意点を解説します。

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依頼者:オー美

結婚25年目、オー美の場合

私はオー美、夫との熟年離婚を考えている50歳です。
夫との関係は「つかず離れず」といったところでしたが、夫が単身赴任先で不倫したことをきっかけに一気に夫婦関係が悪化しました。
今はほとんど音信不通になっています。

そんなとき、夫の単身赴任が終わって家に帰ってくることに…。
この先、夫と生活していくことを想像できず、離婚を決意しました。
慣れないことばかりで不安ですが、財産分与や年金分割などについて学びながら、前進しているところです。

前回までのあらすじ

これまでに、熟年離婚で重要な年金分割や財産分与について知識を得てきました。
財産分与時に気をつけなければいけない税金のことや、夫から子どもに財産を贈与した場合についても調べてみました。子どもへの贈与には贈与税がかかりますが、妻への財産分与には贈与税はかからないと知りました。夫が素直に財産分与に応じるかどうかわからず不安ですが、がんばって交渉してみようと考えています。

次は夫がどのような財産を持っているかを確認して、どのくらい財産分与を受け取ることができるか、シミュレーションしなければ、と思っています。
離婚後の生活設計のためにも、財産分与で受け取れる金額を知りたいです。

夫の財産状況を調べるにはどうしたらいいの?

相手の扶養に入っていても2分の1の割合で財産分与を受けられると聞いて安心しましたが、今新たな問題に悩んでいます。
それは、夫の財産状況がわからないこと。
夫は長年単身赴任していたこともあり、私は彼がどこの金融機関に口座をもっているのかなど詳細がわかりません。
もしかして株式取引やFXなどもやっているかもしれません。
そういえば生命保険にも入っていたような気がしますが、果たしてどんな内容だったのかも定かでない状況です。

財産状況がわからないと、財産分与の請求はできないのでしょうか?
たとえば「どこの金融機関に口座があるか」「生命保険の内容」など、調査する方法はないのでしょうか?
このまま夫に離婚を切り出したら、財産を隠されてしまいそうで不安です。

弁護士が解説!離婚時の財産調査、相手方の隠し財産開示請求方法

相手方の財産隠しの防止が重要!

離婚時に十分な財産分与を受けるためには、相手方の財産隠しに注意したいところです。
財産分与の基礎となる財産が少なくなれば、当然受け取れる金額も少額になってしまうからです。

離婚後に財産隠しが判明して「相手から騙された」とわかれば、不足分を請求できる可能性もあります。
しかし現実には、離婚後に相手の財産状況を明らかにするのはかなり難しいでしょう。

離婚時に相手の財産調査をしっかり行い、確実に半額の分与を受けておく必要があります。

離婚時の財産調査方法

では具体的にどのようにして離婚時の財産調査を行えばよいのでしょうか?

まずは自分で調査する方法をみてみましょう。

自宅に保管されている資料を探す

まずは自宅内に保管されている財産関係の資料を探しましょう。
たとえば以下のようなものがあります。

  • ・預貯金通帳
  • ・生命保険証書
  • ・車検証
  • ・不動産売買契約書、不動産の全部事項証明書
  • ・給与明細書(社内積立や保険関係の記載がある)
  • ・株式や債券などに関する資料

上記のようなものが見つかったら、コピーをとったり、写真を撮って証拠化しましょう。

またタンスや棚の中などに現金が保管されているケースもあるので確認してみましょう。

郵便物を確認する

次に自宅へ届く郵便物にも注意を向けましょう。
預金や保険、証券取引などがあれば、金融機関や証券会社、信託銀行などから契約内容のお知らせやその他の連絡書が届くものです。
どこの金融機関や証券会社、生命保険会社と取引があるのかわかれば詳細を調査できる可能性があります。
郵便物のコピーをとったりメモを作成したりして、証拠化しましょう。

スマホやPCをチェックする

相手のスマホやPCを見られる環境であれば、一度のぞいてみる方法もあります。
たとえばネット銀行やネット証券のアプリを利用しているようであれば、それらの会社と取引している可能性が高いといえるでしょう。
画面を撮影したりメモをとったりして証拠化してください。

弁護士に財産調査や開示を依頼する

自分で相手方の財産調査をするのは簡単ではありません。
特にオー美さんのように夫と別居している場合、相手の預貯金通帳や生命保険証書などは自宅に保管されていないでしょう。
相手への郵便物や相手のスマホ、PCの調査も難しくなります。

自分で調べるのが難しい場合には、弁護士に財産調査を依頼しましょう。
弁護士は以下のような方法で財産調査を進められます。

弁護士法23条照会

弁護士は、「弁護士法23条」にもとづいて各種の機関へ情報照会できます。
たとえば金融機関から取引明細を取り寄せたり、生命保険会社や証券会社から契約内容の報告を受けたりできる可能性があります。

今は個人情報保護法なども適用されるため、たとえ配偶者であっても相手の契約内容の詳細は開示してもらえません。
しかし、弁護士法23条照会を利用すれば開示を受けられる可能性があるので、まずは試してみることをお勧めします。

ただし金融機関などは回答を拒否するケースもあるので、必ずしも情報を得られるとは限りません。
その場合、別の手段を検討する必要があります。

職権調査嘱託の申立

弁護士法23条照会を利用しても回答を得られなかった場合には、裁判所からの職権調査嘱託を利用して明らかにする方法があります。

職権調査嘱託とは、裁判所が審理に必要な情報を照会する手続きです。
弁護士法23条照会には応じない金融機関などであっても、通常裁判所からの照会には応じます。

ただし職権調査嘱託の申立は必ず認められるとは限りません。
まずは対象の金融機関や保険会社、証券会社などを特定する必要があります。
その上で裁判所が「必要」と認めた場合に調査嘱託が行われる流れです。

調停段階や訴訟になった段階など、時期を見ながら適切なタイミングで調査嘱託を申し立てましょう。

まとめ

離婚で損をしないためには、相手方の財産調査が重要です。
しかし、自分自身で調べようとしても個人情報保護法などが壁となり、限界があります。
より確実に財産調査を行うには弁護士法23条照会や職権調査嘱託をしなければならず、弁護士によるアドバイスやサポートが必要となるでしょう。

当事務所では離婚問題へ積極的に取り組んでおり、財産調査も多数執り行ってきた実績があります。
オー美さんのように熟年離婚、財産分与でお悩みの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

・相手方の財産資料の収集について、どのような資料を収集する必要があるか、どのような資料があれば財産情報の開示を受けられるかを適切にアドバイスいたします。
・相手方より任意に財産の開示がされない場合には、23条照会や調査嘱託の申し立てを行い、少しでも相手方の財産情報が開示されるように策を講じます。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、一橋大学大学院法務研究科修了。離婚、相続問題等の一般民事事件や刑事事件、少年事件、企業の顧問など、幅広い分野を取り扱う。
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