コラム
公開 2016.07.12 更新 2021.07.20

離婚の財産分与、婚前からの預貯金や残った住宅ローンは?

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離婚は結婚以上にエネルギーを使う、とよく言われます。それは、それまで夫婦として一つであったものを二つに分けることの難しさ、煩雑さが理由なのかもしれません。

そしてその最たるものが「離婚に伴う財産分与」でしょう。

結婚前に持っていた夫婦それぞれの財産と、離婚を決めた時点までに増えたり減ったりした二人の財産。

それをどのように分けたらよいのか、そのポイントについてご説明します。

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どんな財産が分与の対象になるのか?

一般的な感覚からすると、離婚時の財産分与のイメージは「二人で協力して作った財産を二人で分ける」というものでしょう。これは正しい解答で、実際の財産分与もこうした視点から行われます。

財産分与を行うには、まず二人が持っているすべての財産を洗い出すところから始まります。

普通預金や定期預金、株券などの有価証券。積立型の保険。土地家屋といった不動産。また土地や建物以外の動産であっても、それがある程度の経済的価値を持っているもの…たとえば自動車や美術品などは、忘れないようにしてください。

次にこれらの財産のうち、それが「夫婦二人の協力によって獲得・維持されたものかどうか」を確認します。

例えば夫が働き、妻が専業主婦というケースでは、夫側に「俺が働いて稼いできた財産だ」という意識がありがちです。ですが夫が存分に働けたのは、専業主婦である妻が家事をこなしてきたからです。つまり「夫婦二人の協力によって獲得」された財産と見ることができます。

ですから預貯金はもちろん、結婚後に購入した有価証券や不動産などは、基本的にはその名義にかかわらず夫婦の共有財産であり、分与の対象と見なされます。

またプラスの資産だけでなくマイナスの資産…負債についても分与の対象になります。

結婚後にマンションを買い、そのローンが残っているなら、現在のマンションの価格からローンの残額を差し引いた金額を分配することにより、夫婦それぞれにローンの残額を分与することになります。

分与の対象にならない財産もある?

夫婦それぞれが結婚する前から持っていた財産は、基本的に夫婦の共有財産とは見なされません。ですから独身時代にコツコツと貯めた預金などは、分与対象から外されます。

結婚後に得られた財産であっても、分与の対象とならないものがあります。

代表的な例が、相続によって得られた財産です。結婚後に親が亡くなり、土地を相続したような場合には、この土地は「夫婦の協力によって獲得」されたものではありません。ですからこれらは「特有財産」と呼ばれ、分与対象とはされないのが通例です。

また前項で「負債も財産分与の対象になる」と話しましたが、この負債も内容によっては対象外となることもあります。

たとえば夫婦のいずれかが個人的な趣味のために借金をしたようなケースでは、この借金は分与対象とされない可能性が高いでしょう。家を買うための借金や生活のための借金とは異なり、夫婦の共同生活のための借金ではないからです。

一方で、特有財産であっても分与対象となることもあります。たとえば妻が結婚前に貯えていた定期預金を「いざというときの備え」として、収入が少ないときには夫が結婚前に蓄えてきた預貯金を切り崩してしのいできた…という場合。

家を買うための借金や生活のための借金とは異なり、夫婦の共同生活のための借金ではないからです。こんなケースでは、妻の定期預金は「夫婦の協力によって維持されてきた」と見なすことができます。こうなると分与対象になる可能性もあるのです。

不動産や自動車などはどうやって分ける?

現金や預貯金、有価証券などは二人で簡単に分けることができますが、土地家屋といった不動産、自動車や美術品など、物理的に分けることができないものは、どのように分割すれば良いのでしょうか?

まず自動車や美術品などは財産そのものに執着が無いなら、適価で売却して現金に換えるのがいちばんシンプルな方法です。もしも一方が「手放したくない」ということであれば、夫婦いずれかの所有にしてもう一方に相当分の現金を支払う、というやり方もあります。

土地や建物といった不動産はどうでしょう?不動産は資産価値が高いものですから、いずれかの所有にするとなると、分与分の現金を用意するのが難しいものです。ですから他の動産と同様、適価で売却して現金を分配するのが現実的かもしれません。

なお財産分与を行う場合には、その内容をすべて文書にし、公正証書を作っておくと良いでしょう。

特に「一定の金銭を将来にわたって支払う」というような約束をする場合には、相手の経済状況によって支払いが滞ってしまうことも考えられます。そんなときにも公正証書があれば、払ってもらえない相手に対し、財産の差し押さえなどの手段を講じることができるのです。そして、強制執行認諾文言という文言を、公正証書に入れておけば、わざわざ裁判をすることなしに、差し押さえなどの手段に進むことができて便利です。

二人で築いた財産を二人で分ける。財産分与は、双方の話し合いだけで解決できれば、それに越したことはありません。ですが、もともと夫婦であればこそお金の話はしにくいでしょうし、どの財産が分与対象になるのか、見きわめることも難しいでしょう。

また、実際に財産分与をするとなると、財産の名義変更が必要になったり、それに伴い費用が発生したり、手続きも煩雑になることがあります。そんなときこそ専門家である弁護士を活用し、円満な解決を図っていただきたいと思います。

記事を監修した弁護士
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Authense法律事務所記事監修チーム
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