コラム
公開 2022.12.08 更新 2023.04.05

「離婚したくない」と拒否し続けることはいつまで可能?離婚を切り出された際の対処法

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夫や妻から離婚を切り出されたものの、自分としては離婚をしたくない場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
この場合に対応を誤ってしまうと、関係の修復がより困難となる可能性があります。

今回は、離婚したくない場合の対応策や離婚したくない場合にやってはならないことなどについて、弁護士がくわしく解説します。

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離婚したくないときの対応策

相手から離婚を切り出されてしまったものの、自分としては離婚したくないと考えている場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
対応方法を間違うと、離婚の可能性が高まってしまうかもしれません。

離婚したくない場合の対応方法は、次のとおりです。

相手と冷静に話し合う

離婚したくない場合には、相手と冷静に話し合う場を持ちましょう。
この話し合いでは、できるだけ相手の聞き役に徹します。
理屈で相手を丸め込もうとしたり相手の非をあげつらったりすれば、相手がより離婚への意思を固くしてしまうことでしょう。

話し合いでは、相手が離婚したいと思うに至った理由を聞き出してください。
そのうえで、自分に非があれば誠心誠意謝罪し、以後の改善策を探ります。

なお、相手に離婚の意思が固い場合には、話し合いがすべて録音されている可能性もあります。
そのため、その場を丸く収めるために、実際にはしていない不貞行為をしたと認めるような言動や、実際には支払うつもりのない金額の慰謝料を支払うと約束するなどの言動は避けた方がよいでしょう。

心配であれば、あらかじめ弁護士へご相談ください。

離婚届不受理申出をする

離婚届不受理申出とは、仮に離婚届が役所に提出されたとしても、受理されてしまわないための届出です。

離婚届を提出するには、離婚をする夫婦双方の署名が必要です(捺印は任意となりました)。

しかし、明らかに同じ筆跡であればともかく多少筆跡を変えるなどの工夫がされていれば、必要項目の記載がされている以上、役所は受理してしまいます。
また、実際には離婚をする気はないものの記入済の離婚届を相手に預けている場合もあり、その場合にはこれが使われる可能性もあるでしょう。

加えて、必ずしも夫婦2人で役所へ持ち込む必要はなく、いずれか一方が届出をすれば構いません。
そのため、離婚をしたがっている側が勝手に離婚届を作成し、役所に届け出てしまうリスクがあります。

もちろん、相手の署名を偽造して離婚届を提出する行為は、私文書偽造等などの犯罪行為にあたります(159条)。
また、当事者の意思を欠いた離婚は無効であり、家庭裁判所に無効確認請求訴訟を提起することが可能です。

しかし、無効確認訴訟で無効を勝ち取ることは、容易ではありません。
また、仮に無効となったとしても、相手が強く離婚を望むのであれば、その後改めて離婚調停などが待ち構えています。

そのため、そもそも勝手に離婚届を出されてしまうことのないよう、あらかじめ本籍地の役所に対して離婚届不受理申出をしておくとよいでしょう。
離婚届不受理申出が出されている以上、不受理申出をした本人が役所へ出向いて取り下げない限り、離婚届は受理されません。

冷静に自分の気持ちと向き合う

相手から突然離婚を切り出された場合、その場では離婚したくないと感じることも少なくないかと思います。
その場合であっても、いったん冷静になって自分の気持ちと向き合い、自分はなぜ離婚したくないのかと考えてみるとよいでしょう。
じっくりと考えてみることで離婚に関する自分の考えが明確となるほか、相手の申し入れに応じて円満離婚をする選択肢が浮上する可能性もあります。

夫婦関係等調整調停を申し立てる

離婚をしたくない場合の話し合いは、弁護士などの第三者を交えず、まずは当事者同士で行うことが望ましいでしょう。
弁護士による代理交渉は、相手との関係修復という目的には向かない場合が少なくないためです。

しかし、直接話し合いをしようにも、相手が話し合いに応じない場合もあります。
その場合には、調停委員の立ち会いのもと、家庭裁判所で話し合いを行う「夫婦関係等調整調停」の利用が選択肢の一つとなるでしょう。

夫婦関係等調整調停には、「夫婦関係調整調停(円満)」と「夫婦関係調整調停(離婚)」の2つが存在します。
このうち「夫婦関係調整調停(円満)」は夫婦関係を円満な状態に戻すことを目指して行うものですので、離婚したくない場合にはこちらの利用を検討します。

ただし、夫婦関係等調整調停の利用は、あくまでも相手が話し合いに応じない場合の最終手段です。
まずは直接の話し合いでの解決を目指し、それが難しい場合に調停を利用するとよいでしょう。

離婚したくないときに絶対に避けるべき言動とは

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離婚したくない場合には、次のような言動は避けましょう。
このような言動は、離婚をしたい側にとって有利に働く可能性が高いためです。

離婚に同意してしまう

離婚をしたくないのであれば、その場を丸く収めるためであっても、離婚に同意するような言動はご法度です。
話し合いの際には、相手が録音をしている可能性を視野に入れておきましょう。

冷静ではない状態で話し合う

冷静ではない状態での話し合いは、避けた方がよいでしょう。
相手が既に離婚したいと考えるに至っている以上、感情をぶつけたところでプラスに転じる可能性は低いうえに、関係性のさらなる悪化につながるリスクが高いためです。

DVやモラハラで離婚を阻止しようとする

DVやモラハラなどで、相手を無理やり従わせて離婚を阻止しようとすることは避けましょう。
このような行為をすれば関係の修復はより困難となるうえ、訴訟において離婚が認められやすくなるためです。
また、内容によっては慰謝料請求の対象となる可能性もあります。

別居する

離婚をしたくないのであれば、勢いに任せて別居をすることはおすすめできません。

別居をしたからといって、その時点ですぐに離婚がしやすくなるわけではないものの、そのまま別居期間が長くなれば、離婚をしたい側にとって有利となる可能性が高いためです。

自分が離婚を拒否しても一方的に離婚される?

婚姻をする際には、一方当事者が婚姻したくないと考えている以上、たとえもう一方が強く婚姻を望んでも婚姻が成立することはありません。
では、離婚は、一方が離婚をしたくないと考えていても成立するものなのでしょうか?

協議や調停での離婚には双方の合意が必要

協議や調停で離婚するには、婚姻の場合と同様に、双方の合意が必要です。

一方当事者が離婚をしたいと望んでも、もう一方が離婚したくないと考えていれば協議や調停での離婚は成立しません。

一方的な意思で離婚できるケース

婚姻について定めている民法では、離婚の訴えを提起することができる事由を5つ定めています(770条)。
これらの事由に該当する場合には、たとえ一方が最後まで離婚に同意しなかったとしても、裁判などにより一方的な離婚が成立する可能性があります。

その事由とは、次のとおりです。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

不貞行為

不貞行為とは、いわゆる不倫のことです。
ただし、離婚事由となる不貞行為は、性的関係をともなう不倫に限定されます。

悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居義務や扶助義務などを放棄することです。
たとえば、一方的に家を出て別居することや、収入があるにもかかわらず相手に生活費を渡さないことなどがこれに該当します。

なお、単身赴任など正当な理由がある場合には、原則としてこれに該当しません。

3年以上の生死不明

相手が行方不明となり3年以上生死のわからない状態である場合には、離婚事由に該当します。
なお、電話やLINEを無視されていて自分は連絡が取れないものの友人とは連絡が取れているというような場合には生死不明とはいえないため、これには該当しません。

回復の見込みのない強度の精神病

相手が回復の見込みのない重度の精神病となり、相手が夫婦間の義務である相互扶助義務などを果たせないと見込まれる場合には、離婚事由に該当します。

ただし、この場合に離婚を認めることは相手にとって酷であるため、裁判所はこの事由を理由に離婚を認めることについては慎重になりやすいといえるでしょう。

その他婚姻を継続し難い重大な事由

上で挙げたもの以外であっても、裁判所が結婚を継続し難い重大な事由があると判断すれば、一方的な離婚が認められます。

たとえば、DVや異常な浪費癖などがこれに該当する可能性が高いでしょう。

相手に離婚の意思が強い場合の流れ

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協議離婚は、お互いが「離婚しよう」と合意して離婚届に署名をし、これを役所へ届け出ることで成立します。

では、相手が強く離婚を望んでいる一方で、ご自身が離婚を拒否し続けた場合、どのような展開となる可能性があるのでしょうか?
主な展開は、次のとおりです。

直接交渉

まずは、離婚について直接交渉を行います。
相手が強く離婚を望む場合には、あなたが拒否をしても、何度か離婚の交渉を持ちかけるでしょう。

ご自身が応じなければ、相手が弁護士へ依頼して、弁護士が代理で離婚を申し入れる可能性もあります。
ただし、この時点ではあくまでも交渉段階ですので、離婚に応じるかどうかはご自身次第です。

なお、遅くとも相手が弁護士を立てた時点では、ご自身側でも弁護士を立てた方がよいでしょう。
弁護士は離婚に関する手続や事例を熟知しているため、相手のみが弁護士を立てている状態ではご自身にとって不利になる可能性もあるためです。

離婚調停

直接交渉で離婚に応じない場合には、離婚調停を申し立てられる可能性があります。
離婚調停とは、家庭裁判所で行う離婚についての話し合いです。

話し合いといっても直接対峙するのではなく、裁判所の調停委員が夫婦の双方から交互に意見を聞く形で進行します。
また、調停の代理人として、弁護士を立てるケースもあります。

調停委員から離婚を進められる場合もありますが、調停委員の進言に応じなければならないわけではありません。
あくまでも話し合いの場ですので、離婚に応じるかどうかは、ご自身次第です。

離婚裁判

調停が不成立に終わった場合には、相手が離婚裁判を申し立てる可能性があります。
離婚裁判では、諸般の事情を考慮して、裁判所が離婚の可否や離婚の諸条件を決定します。

仮に裁判所の離婚すべきとの判決が確定したら、たとえご自身が離婚をしたくないと抵抗をしても、強制的に離婚が成立します。

なお、場合によっては、調停などで合意していた方が離婚の諸条件(財産分与や養育費、親権など)で有利となることがあります。
また、仮に裁判所が離婚を認めない旨の判決を下したからといって、離婚裁判までした相手と今後平穏に夫婦生活が送れるかどうかは、疑問の残るところです。
そのため、調停の段階など途中で離婚に応じることとするのか、それとも裁判まで移行して判決に委ねるのかは、一つの戦略となるでしょう。

まとめ

相手から離婚を切り出されたものの離婚をしたくない場合には、特に初動に注意しなければなりません。
対応を誤ると裁判などにまでもつれ込んだ際に不利となる可能性があるほか、関係の修復がより困難となる可能性が高いためです。

相手から離婚を切り出されたら、たとえ当初は弁護士が代理交渉にあたらないとしても、まずは早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

Authense法律事務所では、離婚問題や夫婦問題にくわしい弁護士が多数在籍しております。
離婚をしたいと切り出されてお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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