コラム

公開 2021.10.19 更新 2023.04.05

後悔しないために!熟年離婚で公正証書を作成すべき理由とは?

離婚_アイキャッチ_285

熟年離婚するなら、公正証書を作成することをお勧めします。

公正証書があると合意内容が明確になりますし、財産分与や慰謝料などのお金を確実に受け取りやすくなります。

公正証書の作成方法や熟年離婚で取り決めるべきポイントについてご説明します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

1.公正証書とは

熟年離婚する際には、離婚時の合意内容を公正証書にまとめましょう。
公正証書とは、公務員の一種である「公証人」に作成してもらう公文書です。民間人同士の契約も、公証人に依頼すれば公正証書にしてもらえます。

公正証書は公証人が法律に従って作成するので、民間人が作成する文書より高い信用性が認められます。原本が公証役場で保管されるので、なくしてしまうリスクもありません。
離婚時の合意内容や貸金の契約書、遺言書作成の際などにもよく公正証書が利用されています。

2.熟年離婚で公正証書を作成すべき理由

熟年離婚で公正証書を作成すべき理由

離婚するときには、財産分与や年金分割などさまざまな事項を取り決めなければなりません。そのとき、合意内容を「公正証書」にしておくと、以下のような大きなメリットを得られます。

2-1.合意内容が明確になる

公正証書を作成すると、合意内容が明確になります。相手から「そんな約束はしていない」「自分が作成したものではない」などといわれるリスクが軽減されるでしょう。

2-2.紛失や書き換えのリスクがなくなる

自分たちで協議離婚合意書を作成しても、紛失してしまう可能性があります。相手と口論になったら目の前で破られてしまうかもしれませんし、勝手に書き換えられるリスクも発生するでしょう。
公正証書の場合、公証役場で原本が保管されるので紛失や破棄、書き換えなどのリスクは発生しません。自分で保管するのに不安がある方にもメリットがあります。

2-3.滞納のリスクが軽減される

公正証書を作成する大きなメリットが「滞納リスクへの対策」です。
熟年離婚の場合、財産分与は高額になる傾向がありますし、慰謝料請求する方もおられるでしょう。
こういった金銭支払いの約束をするとき、自分たちで作成した協議離婚合意書があるだけでは不安が残ります。相手が滞納したら、別途調停や訴訟(裁判)をしなければ、差押えができません。

公正証書に「強制執行認諾条項」をつけておけば、相手が滞納したときに公正証書を使って、裁判手続きを経ずに差押えができます。万一、支払を受けられなくなった場合も安心といえるでしょう。
相手としても差押えを恐れて真面目に支払をする可能性が高くなり、滞納を防ぐ効果も期待できます。

2-4.年金分割が楽になる

熟年離婚では「年金分割」の合意をするケースもよくあります。年金分割とは、夫婦が婚姻中に払い込んだ年金保険料を分け合うことです。
会社員の夫と専業主婦の妻の離婚時に年金分割の手続きをしておくと、将来妻が年金を受け取れる年齢になったとき、婚姻期間中の年金について多めに年金を受け取ることができます。熟年離婚後の生活に困らないために、年金分割は非常に重要といえるでしょう。

ただし年金分割の中でも「合意分割」するには夫の同意が必要です。基本的には離婚後に夫と一緒に年金事務所へ行って手続きをしなければなりません。年金分割は、離婚した日の翌日から2年以内に行わなければならないという時間的制約もあるため、その点も注意が必要となります。

公正証書で年金分割の取り決めをしておけば、離婚後妻が一人で年金事務所へ行って手続きができます。夫が非協力的な場合や、夫かかわりたくない場合にも公正証書があれば助かるでしょう。

3.公正証書を作成する手順

熟年離婚で公正証書を作成するなら、次の手順で進めてください。

3-1.離婚条件を自分たちで取り決める

離婚公正証書を作成する際、離婚条件は事前に自分たちで話合って決めておかねばなりません。公証人は離婚の方法については相談に乗ってくれないので注意しましょう。
離婚条件について折り合いがつかないなら、弁護士に相談する必要があります。

3-2.公証役場へ申し込む

離婚条件について合意できたら、公証役場へ申し込みましょう。特に定められた管轄はないので、お近くの公証役場を利用してみてください。

3-3.公証人と打ち合わせをする

公証役場へ申し込みをすると、担当の公証人が決まります。どういった離婚条件にしたいのかを伝え、必要書類についての指示を受けましょう。

  • 戸籍謄本
  • 本人確認書類
  • 印鑑登録証明書
  • 財産についての資料

こういったものが必要となります。書類が揃わないと公正証書の作成ができないので、指示を受けたら早めに集めてください。

3-4.必要書類を持参して公証役場へ行く

必要書類をそろえたら、指定された日時に公証役場へ行きましょう。当日は公証人が公正証書の案を作成してくれています。内容を確認し、問題がなかったら署名押印して公正証書を完成させましょう。
当事者には公正証書の写し(正本や謄本)が交付されるので、大切に保管してください。

3-5.代理人に依頼できる

公正証書を自分で作成するのが手間だと感じる方は、代理人への依頼を検討しましょう。弁護士に代理を依頼すれば、公証人との連絡や公証役場への出頭など、すべて弁護士に任せられるので負担が大きく軽減されます。また公証人には、離婚の条件について公正証書の案文を提出したほうがスムーズに手続きが進められますので、弁護士に案文作成について依頼をすることでも、負担軽減となるでしょう。

忙しくて公証役場へ行く時間のない方、相手の顔を見たくない方などは、弁護士に手続きを依頼しましょう。

4.熟年離婚で取り決めておくべきポイント

熟年離婚で取り決めておくべきポイント

熟年離婚するなら、以下の3点は取り決めておきましょう。

4-1.財産分与

財産分与は、婚姻中に形成した財産を離婚時に分け合う手続きです。退職金も財産分与の対象になります。

熟年離婚の場合、婚姻期間が長いので財産分与の金額も多額になる傾向があります。離婚後の生活を維持するためにも、しっかり財産分与を受けましょう。

4-2.年金分割

年金分割は、婚姻中に払い込んだ年金保険料を分け合う手続きです。将来年金を受け取る年齢になったときのお互いの年金受給額が調整されます。

相手が厚生年金(旧共済年金を含む)に加入している場合に年金分割が可能となります。相手が自営業の場合、年金分割はできません。

熟年離婚の場合、婚姻年数が長いので年金分割の対象額が大きくなる傾向があります。離婚後の生活を守るため、年金分割の手続きを行いましょう。

平成20年3月以前から婚姻している場合には、年金分割に相手の合意が必要です(合意分割)。分割割合は0.5(2分の1)までの割合で任意に設定できますが、公平のためには0.5とするのが良いでしょう。なお、裁判所の手続きで決まる場合にも、0.5と決まるのが一般的です。公正証書作成前に相手の同意を取り付けておいてください。

4-3.慰謝料

相手が不倫していた、相手から暴力を振るわれていたなどの事情があれば、慰謝料請求も可能です。熟年離婚の場合、婚姻年数が長い分慰謝料も高額になる傾向がみられます。
金額の相場は100~500万円程度となるでしょう。公正証書作成前に相手と話し合って慰謝料についても取り決めておいてください。

まとめ

熟年離婚で後悔しないためには、離婚公正証書を作成しておくことが非常に重要です。
作成方法がわからない場合や相手と話し合っても合意できない場合には、早めに弁護士へ相談しましょう。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、一橋大学大学院法務研究科修了。離婚、相続問題等の一般民事事件や刑事事件、少年事件、企業の顧問など、幅広い分野を取り扱う。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。