熟年離婚を考えているけれど、離婚後、そして老後の生活に不安があってなかなか踏み切れないという方は少なくないのではないでしょうか。
熟年離婚をする場合は、離婚後や老後の生活が困窮しないようにしっかりと準備をしておくことが大切です。
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退職金は財産分与の対象になる
退職金は給与の後払いとして考えられているので、結婚後に夫婦で築いた共同の財産として考慮されます。そのため、退職金は財産分与の対象となります。
ただすでに退職金が支払われているのか、そうでないかで対象になるかどうかが変わってくるので、まずはその点を確認しましょう。
退職金をすでに受け取っている場合
退職金がすでに支払われていて手元にあるのであれば、ほとんどの場合財産分与の対象になります。
ただ就職して退職するまでの全期間が婚姻期間に該当しない場合は、婚姻期間分のみが財産分与の対象です。
また婚姻中に別居期間があった場合、その期間は婚姻期間としては含まれません。
退職金がまだ支払われていない場合
退職金がまだ支払われていない場合は、退職金が支払われることがほぼ確実な場合のみ、財産分与の対象となります。
ほぼ確実に支払われるという状況を決めるのは、
- ・会社に退職金の規定がある
- ・会社の経営状況
- ・退職金が支払われるまでの期間
- ・頻繁な転職がないかどうか
などです。
会社に退職金の規定がない場合は、支払われないものと見なされるケースがほとんどですし、退職金の規定があってもまだ30代や40代で退職までかなりの期間がある場合は、財産分与の対象とみなされないことがほとんどです。
退職金が財産分与の対象になる場合の計算方法
退職金が財産分与の対象となる場合でも、退職金全額が財産分与の対象となることはほとんどありません。
ここでは、財産分与として扱われる退職金額の算出方法を紹介します。
退職金をすでに受け取っている場合
すでに退職金を受け取っている場合、婚姻期間を考慮して財産分与扱いの退職金の金額を決めます。財産分与として扱われる退職金の計算は、
「退職金の額 ÷ 勤続期間× 婚姻期間」
で求められます。
婚姻期間が長ければ財産分与扱いになる退職金の金額も比例して高くなります。
基本的に別居期間は含まれませんが、転勤による単身赴任での別居は婚姻期間として扱われるケースが多いでしょう。
退職金がまだ支払われていない場合
まだ退職金は支払われていないが、近々支払われることが確定している場合は、2つの計算方法があります。
現時点で退職したと仮定した場合の計算方法
離婚する時点、もしくは離婚に向けて別居を開始する時点で退職したと仮定して、財産分与扱いになる退職金を計算する方法です。
この場合は”現時点で退職した場合の退職金の額 ÷ 勤続期間× 婚姻期間”で計算します。
定年退職時に受け取る予定の退職金をベースにして計算する方法
定年退職した時に受け取る予定の退職金を算出し、そこから計算する方法もあります。
この場合は”(定年退職時にもらえる予定の退職金 ÷ 勤続期間× 婚姻期間) − 中間利息”で、財産分与扱いの退職金を割り出せます。
中間利息というのは、「早くもらった分だけ発生する利息」のことです。
中間利息の控除額は、ライプニッツ係数という数値を使って算出します。
夫婦の一方の厚生年金を分割する年金分割制度
年金分割制度とは、離婚する場合に夫婦の一方の厚生年金を分割し、もう一方の将来的な年金をサポートする制度です。分割される割合は婚姻期間に基づいて割り出されます。
ただ厚生年金の全額が分割されるわけではなく、年金保険料算定の基礎である標準報酬分を分割する仕組みです。
保険料の納付実績の分割を受けるという制度ですので、将来元配偶者がもらえる年金の全額を分割する制度ではないことを覚えておきましょう。
年金制度は基礎となる国民年金と、厚生年金に分かれています。国民年金とは20歳以上になると国民全員が加入することになる年金制度で、専業主婦であっても加入している年金制度です。
厚生年金は国民年金に上乗せされる年金で、会社員を対象としている年金制度です。また個人事業主であっても、従業員が5人以上いれば、厚生年金の加入は強制となっています。
自営業の場合は年金分割制度の利用不可
年金分割制度を利用できるのは、元配偶者が厚生年金を支払っていた場合のみです。
元配偶者がサラリーマンなどの会社員の場合は、厚生年金を支払っていますから、この制度を利用できます。
しかし自営業や農家などの場合は、厚生年金を支払っていないので、年金分割制度は利用できません。
また、年金分割制度の対象になる場合であっても、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間の合計が25年以上ないと、年金受給資格が発生せず、結局年金を受け取れなくなってしまう可能性がありますので、注意が必要です。
さらに、必ずしも年金分割制度を利用するとメリットがあるというわけでもありません。
もしあなたが配偶者よりも厚生年金を多く支払っているのであれば、あなたが元配偶者に分割することになるでしょう。
年金分割の2つの種類
年金分割には分割方法が2つあります。
ここからはそれぞれの分割方法について説明していきます。
合意分割(離婚分割)
夫婦間の協議や裁判により、分割する年金の割合(按分)を決める方法です。按分は1/2を上限として定めます。
その按分に基づき、婚姻期間分の厚生年金の標準報酬分を分割し、受給できる仕組みです。
手続きは夫婦揃って行うか、受け取る側がひとりで手続きをするのであれば離婚公正証書を作成したり、調停での離婚の場合は調停条項に盛り込んだりしなければなりません。
3号分割
3号分割とは、第3号被保険者のみに適用される分割方法です。第3号被保険者とは、第2号被保険者(会社員など)に扶養されている20歳から60歳の被保険者を指しています。
会社員の夫の扶養に入っている場合などは、第3号被保険者です。
第3号被保険者は自動的に3号分割扱いになり、第3号被保険者期間に元配偶者が支払った厚生年金の標準報酬分1/2を受給できます。
この場合は元配偶者の承諾は必要ないので、分割を受ける人がひとりで手続きできます。
もらえる年金はいくら増える?
「厚生年金保険・国民年金事業の概況」を見てみると、年金分割制度を利用し、合意分割をした場合、分割を受ける人は平成29年度31,058円をプラスで受給しています。[注1]
過去5年を見ても31,000円台でわずかに変動しているだけですので、合意分割の場合に増える年金額は31,000円が相場と考えるといいでしょう。
3号分割のみを利用した場合は、平成29年度は4,713円プラスとなっています。前年度は5,000円を超えていますが、平成25年度は2,717円ともらえる額の増減は合意分割に比べると激しく、またもらえる額もかなり少ないことがわかります。
これは3号分割が平成20年以降の離婚に適用される規定で、分割対象となる期間がまだ短いことが原因です。今後時間が経てば、3号分割の対象となる人の婚姻期間も長くなるので、もらえる額も変動していくでしょう。
[注1]厚生労働省年金局:平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
https://www.mhlw.go.jp/content/000453010.pdf
年金分割の請求期限と方法
離婚したら年金分割はいつでも請求できるのでしょうか。
請求期限や請求する方法を解説します。
年金分割の請求期限
年金分割制度を利用するためには、離婚した日(離婚届を提出した日)の翌日から2年以内に請求を行わなければいけません。この期日を過ぎてしまうと、それ以降は年金分割請求ができなくなってしまうので注意が必要です。
離婚前も請求できませんので気をつけてください。
また年金分割請求を行う前に、「年金分割のための情報提供請求書」を管轄の年金事務所に送付することで、正確な年金額を把握できます。
合意分割の場合は、分割割合を話し合う前にこの請求書を送付して、情報を確認しておくほうがよいでしょう。
また、調停などの裁判手続きで年金分割の合意をする場合には、「年金分割のための情報通知書」という書類の提出を求められますので、年金事務所に上記の請求をしておく必要があります。
合意分割の場合の請求方法
合意分割を請求する場合、厚生年金を支払っていた人と、請求する人両方が社会保険庁もしくは年金事務所にて手続きを行わなければいけません。
この場合、請求する人の居住地の管轄となる社会保険庁もしくは年金事務所に行くことになります。
双方が出向くことが難しい場合は、離婚公正証書など離婚した事実を証明する公的な書類が必要となるので注意しましょう。
請求する際には、標準報酬改定請求書・請求する人の年金手帳もしくはマイナンバーカード・双方の戸籍謄本が必要です。
請求する人のみ手続きする場合は、これらに加えて合意分割の按分に双方が合意していることを記載した離婚公正証書もしくは家庭裁判所で発行される調停調書などの公的な書類を持参することになります。
標準報酬改定請求書には年金基礎番号もしくはマイナンバーを記入する欄があります。年金基礎番号を記入したのであれば年金手帳を、マイナンバーを記入したのであればマイナンバーカードが必要です。
戸籍謄本は入籍日と離婚した日が明記されているものを用意しましょう。
3号分割の場合の請求方法
3号分割を請求する場合は、請求する人のみで年金分割請求ができます。標準報酬改定請求書・請求する人の年金手帳もしくはマイナンバーカード・双方の戸籍謄本が必要な点は合意分割と変わりません。
3号分割は配偶者の同意は必要ないので、ひとりで現在の居住地の管轄の社会保険庁もしくは年金事務所に行って手続きをしてください。
まとめ
熟年離婚の場合、離婚後に自立して仕事をするとなっても、定年までの時間が限られています。そのため、財産分与や年金分割はその後の生活を支える大切な事項です。
離婚後、そして老後も安定した生活を維持できるようにするために、しっかり準備をして離婚を進めていきましょう。
財産分与や合意分割の割合を決める際には、弁護士などの専門家に相談することで、不利にならない解決方法を見つけられます。
迷ったり悩んだりした時には、専門家に相談するのがおすすめです。
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