一般的に、離婚時における子どもの親権争いは「妻が有利」と言われます。しかしときには、妻が家事も育児もせず放棄しているケースもあります。
毎日夜遊びをしていたり子どもの面倒を一切みなかったり、気分次第で子どもを怒鳴り付けたりたたいたりしている妻にも親権が認められてしまうのでしょうか?
目次
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1.親権者を判断する基準
裁判所が離婚時に親権者を判断する際に考慮する要素は、以下のようなものとなっています。
- ・これまでの養育実績
- ・今後の養育方針
- ・離婚後の生活で、子どもと一緒に過ごせる時間が長いかどうか
- ・子どもの親に対する愛着の度合い
- ・離婚時に子どもと同居している親が有利
- ・子どもが乳幼児なら母親が有利
- ・経済状況
- ・健康状態
- ・住環境
- ・離婚後の面会交流への対応方針
子どもが乳幼児であれば母親が有利になりますが、子どもが学童期に入ってくると父親にも親権が認められる事例が増えてきます。特に離婚時に妻と別居しており、子どもが父親と一緒に暮らしていて落ち着いて生活できているなら、そのまま父親に親権が認められるケースが多くなっています。
ただし父親には「養育実績」が少なかったり、「離婚後子どもと一緒に過ごせる時間」が短かったりするので、不利になりがちなのも事実です。
2.妻が家事や育児をしないことがどのように評価されるのか
では、妻が「家事や育児をしない」という事情があれば、父親が有利になるのでしょうか?
先ほどの基準に照らし合わせると「育児をしない」妻の場合には「これまでの養育実績」が少なくなっているはずです。そして、その分夫がカバーしてきたでしょうから、夫の方の養育実績が高くなっているはずです。
またこれまで育児をしてこなかった妻が、離婚後突然心を入れ替えて育児に熱心になるとは考えにくいです。一方これまで主として養育を担ってきた夫であれば、離婚後も積極的に養育を行っていくでしょう。
こうした諸事情が評価されれば、夫にも親権が認められる可能性が十分にあります。
3.家事をしなくても親権を認められる可能性がある
ここで注意しなければならないのは「家事」と「育児」が別だということです。
世の中では、よく「家事育児」とまとめて議論されますが、子どもの親権についていうと「家事」より「育児」が重要です。
たとえば共働きで夫婦のどちらも忙しく料理をしないので、いつも冷凍食品を食べている家庭があるでしょう。ゴミ出しや掃除なども夫が行っているケースがあります。
その場合、妻は「家事をしない」と評価されるかもしれません。
しかし妻が主として「育児」を行ってきたのであれば、たとえ家事をあまりしていなくても親権が認められる可能性があります。
また妻が家事をしていない場合でも、夫も家事をしていないなら夫が有利になることはありません。
夫が親権を獲得したいなら、家事よりも育児に関する事情を積極的に主張・立証していく必要があります。
4.妻が育児を放棄していれば夫が親権を獲得できる
妻が育児を放棄しているなら、夫が親権を獲得できる可能性が高くなってきます。
たとえば、以下のような事情です。
- ・子どもが小さい頃から、おむつを替えたりお風呂に入れたり食事の世話をしたりしてきたのは全部父親だった
- ・子どもの宿題を見てあげたり習い事のおけいこにつきあったりしているのは父親
- ・休日には、子どもは一日中父親と過ごしている
- ・平日も、母親は働いていて家にいない
- ・幼稚園や学校との連絡も父親が行っている
- ・母親はゲームやネットにはまっていたり不倫したりしていて子どもに関心がない
- ・母親が子どもに暴力を振るっている
- ・子どもがお腹を空かしていても、母親は子どもに食べ物を与えていない
5.夫が親権を獲得する方法
5-1.妻の育児放棄を立証する必要がある
妻が家事や育児を放棄していても、夫が親権を獲得するのは簡単ではありません。なぜなら、妻の育児放棄を「立証」しなければならないからです。
妻がすんなり親権を譲ってくれれば良いのですが、現実はそう簡単ではありません。
夫が親権を主張すると、これまで育児放棄してきた妻でも必死で親権を取ろうとするケースが多数です。そのときには、妻の方も「これまで養育を主として行ってきたのは自分だ」と主張します。
妻側は母子手帳や子どもが小さい頃の育児日記、幼稚園や小学校との連絡帳、子どもと一緒に写っている写真などの資料もたくさんもっているものです。
裁判にもっともらしい資料を提出され「母親がこれまで養育を行ってきた」と主張されたら、裁判所は妻の言い分を信用して親権者として指定してしまう可能性も高くなります。
それを防ぐには、夫側がしっかり「妻の育児放棄」と「父親が親権者として適切な事情」を立証する必要があります。
5-2.夫が親権を獲得するための資料
夫が親権を獲得するには、以下のような資料を集めましょう。
- ・妻の生活状況を示す写真(妻が家でゴロ寝しているものなど)
- ・妻の生活状況を示す日記帳などの記録(妻が家を出て帰宅するまでの時間などを夫が毎日つけたもの)
- ・夫がサインしている連絡帳(小学校や幼稚園とのやり取りについて)
- ・夫がつけている家計簿
- ・夫がつけている育児日記
- ・夫が所持している子どもの学校の行事予定表などの資料
- ・夫と子どもが一緒に写っている写真
- ・妻から来たメール(私には育児は向いていない、できない、子どものご飯も作りたくない、などと書いてあるもの)
- ・事情を知る人の陳述書(夫の親や親族でない第三者によるもの)
- ・妻が浮気している資料
上記のようなものがあれば、「夫が主として養育を担ってきた」と認定され、親権者として指定されやすくなります。
6.離婚後に親権者の変更が認められる可能性について
離婚時にはいったん妻を親権者としたものの「離婚後に妻が育児放棄していることが発覚したので親権者を変更してもらいたい」と希望される父親がいます。
親権者の変更は可能なのでしょうか?
6-1.親権者の変更が認められるケース
離婚後に親権者の変更が認められるケースはあります。ただしいったん親権を定めた以上、よほどの事情がないと変更は認められません。頻繁に親権者が変わると子どもに対する影響が大きくなるからです。具体的には親権者を変更する必要性と離婚時からの事情変更が必要です。
夫が「妻が育児放棄している」と主張しても、離婚時とそう変わった事情がない場合には、親権者の変更を主張しても認められないでしょう。
一方、離婚時には育児をきちんとしていたはずなのに、離婚後に男性ができるなどの事情があって育児をしなくなってしまった場合、離婚後に妻が育児に疲れて育児放棄してしまった場合などには、親権者の変更が認められる可能性があります。
6-2.親権者の変更を求める手順
親権者変更を求めるには、家庭裁判所で親権者変更調停を申し立てる必要があります。しかし調停の場では相手は変更に応じず「きちんと面倒を見ているので、変更には応じられない」と主張する可能性が高いです。
そこで親権者を父親に変更するには「妻が育児放棄している証拠」が必要です。離れて居住している夫が育児放棄の証拠を集めるのはかなりの困難を伴います。お一人で対応するのは難しいでしょうから、専門家に相談してみてください。
まとめ
育児放棄している妻に子どもを任せると、離婚後に子どもがネグレクトされたり身体的な暴力を受けたりして、大きな被害につながるケースもあります。近年では、母親の内縁の夫や再婚相手による児童虐待の事例も相次いでいます。そのような悲しい結果は、防がねばなりません。父親が親権を獲得したいなら、お早めに弁護士までご相談ください。
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