離婚時に子どもを引き取って親権者となった場合、その後に「面会交流」の問題で頭を痛める方が多数おられます。
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1.別居親には子どもと面会する権利がある
そもそも、面会交流の約束をしていないのに相手が勝手に子どもと会うことはできるのでしょうか?
状況にもよりますが可能です。
そもそも、子どもと離れて暮らしている親には「面会交流権」が認められます。別居していても子どもの親であることには変わりないので、子どもと関わり続ける権利があるのです。
親子の関係が良好であれば、離婚後もわざわざ親同士で面会交流の方法を決めず、別居親と子どもがやり取りをして面会を行っているケースは少なくありません。
もしも離婚後、相手が子どもと面会しているとしても、そのことによって特段子どもの生活状況に不都合が生じていないなら、あえて目くじらを立てる必要がない可能性もあります。
2.無断の面会交流が問題になるパターン
しかし、ときには無断での面会交流によってトラブルが発生するケースがあります。
以下のような場合です。
● 相手が子どもをさらう場合
離婚時に親権問題で激しくもめたケースなどでは、離婚後に相手が親権をあきらめられず、面会の際に子どもを自宅へ連れて行こうとすることがあります。きちんと戻してもらえれば問題ありませんが、まれに帰してもらえない場合もあり、注意が必要です。
● 相手が子どもの生活に干渉してくる場合
相手が子どもに、今の生活について根掘り葉掘り聞いたりして干渉してくるケースです。母親の男性関係について聞き出そうとする元夫も少なくありません。
● 相手が子どもの都合を無視して無理に会おうとする場合
子どもにも、学校や習い事、塾などのさまざまな都合があるものです。そのような子どもの都合や生活を無視して自分の都合で無理矢理会おうとする親がいます。「毎日会いたい」「泊まりに来い」「親だからその権利がある」などと無理な理屈を押しつけられると、同居親も子どもも困ってしまいます。
● 相手が家の中に勝手に侵入してくる場合
離婚後も婚姻時と同じ家に住んでおり、鍵を変えていない場合には、相手が勝手に自宅に侵入してきて子どもと会おうとするパターンもあります。
3.それぞれの対処方法
上記のように無理な面会を求められると、子どもも同居親も困ってしまいます。そんなときには、以下のように対処しましょう。
3-1.子どもをさらわれる場合
子どもをさらわれるおそれが高いなら、子どもを会わせるべきではありません。相手に「面会交流調停」の申立を促して、家庭裁判所できちんと面会交流についての取り決めをしましょう。調停では、裁判所の調停委員が間に入って面会交流方法についての取り決めができます。それぞれの親に「面会交流とは何か」「面会交流の適切な進め方」などについて説明したビデオを見せるので、お互いが適切な面会交流のあり方を知ることが可能です。
最終的にきちんと面会交流の方法が決まったら、その後は定まった方法に従って面会を進められるので、さらわれる心配がなくなります。
もしも本当に子どもをさらわれてしまった場合、相手に「未成年者略取・誘拐罪」という犯罪が成立します(刑法224条)。相手には親権がないので、子どもをさらうと犯罪が成立するのです。すぐに相手に返還を求めるとともに、警察に被害申告をして捜査を開始してもらいましょう。
3-2.相手が生活に干渉してくる場合
相手が子どもを通じて今の生活に干渉してくるケースでは、どうしたら良いのでしょうか?
まずは相手に「面会交流の際、子どもに今の生活状況について聞きだそうとしないでほしい」と伝えましょう。それでも相手が干渉をやめない場合には、面会を一時停止してもかまいません。相手には「きちんと家庭裁判所で面会交流のルールを定めたい」と言って面会交流調停の申立を促しましょう。
面会交流において同居親の生活に干渉しようとすることは不当であると考えられています。調停をすれば、調停委員や裁判官などから相手に「子どもを通じて生活状況を聞き出そうとするのはやめるように」と注意してもらえます。
3-3.相手が子どもの都合を無視する場合
相手が、子どもの都合を無視して無理に面会交流を求めてくる場合にはどうしたら良いのでしょうか?
子どもにも学校や部活、塾などの生活があります。いくら親でもそういった都合を無視して無理に子どもと会う権利は認められません。まずはそのことを説明し、無理な要求ははっきり断りましょう。
それでもしつこい場合には「家庭裁判所で面会交流調停を申し立ててほしい。調停で決まった方法であれば会わせます」と伝え、以後の面会を停止します。
相手が面会交流調停を起こし、その中で月に1回や2回などの面会方法が決まれば、その後は無理なく面会を実施していくことができるでしょう。
3-4.家の中へ入られる場合
離婚後、相手が勝手に家の中に入ってきて子どもと会おうとする場合、犯罪が成立する可能性があります。
婚姻時に同居していたとしても、離婚時に財産分与によって家が妻のものとなっていたら、家は妻の所有物です。夫はすでに居住していないので、室内に立ち入る権利はありません。
賃貸住宅で契約名義人を妻に変更したケースも同様で、夫には立ち入る権利が失われます。
元夫が勝手に家の中に入る行為は不法侵入です。
まずは相手に「権利がないので立ち入らないように」と伝えましょう。相手が合鍵を持っているのであれば、早急に鍵を変えるべきです。
それでも窓から入ってくるなどの違法行為が続く場合、刑法上の「住居侵入罪(刑法130条前段)」が成立する可能性があるので、警察に相談に行って必要に応じて被害申告しましょう。
弁護士にご相談していただいたら、弁護士から警告することも可能です。
4.相手が面会交流調停を申し立てない場合の対処方法
離婚後の面会交流についてのトラブルは、たいてい「面会交流調停」によって解決できます。しかし、相手に「面会交流調停を申し立てるように」と言っても、なかなか申立をしないケースもあるでしょう。
そのようなときには「面会交流調停で決まるまでは子どもと会わせない」と告げて面会を停止しましょう。相手は「面会交流調停をしないと子どもに会えない」状態になるので、多くの場合には調停を申し立ててきます。
ただ、同居親が自分で相手に「子どもと会わせない」と告げても聞き入れられず、学校帰りに子どもを待ち伏せされるケースなどもあります。
そのときには、弁護士に対応を相談してください。弁護士から相手に内容証明郵便などで警告書を発すれば、多くの親は無理な面会を控えます。それでも無理に会おうとする場合や子どもをさらおうとする場合、暴力を振るうおそれがある場合などには、「接近禁止の仮処分」を申し立てて子どもに近づけないようにする方法などもあります。
相手が話し合いに応じる場合には、弁護士を介して面会交流方法についての取り決めができます。
当事務所では、離婚や子どもの問題に積極的に取り組んでおり、調停や交渉もお受けしています。離婚後、相手と子どもとの面会交流トラブルでお困りの方は、一人で悩まずにお早めに弁護士までご相談ください。
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