コラム
公開 2023.03.13 更新 2023.03.14

年収400万円の場合の養育費の相場は?具体例を弁護士がわかりやすく解説

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養育費とは、未成熟子の監護や教育にかかる費用です。
子どもの親である夫婦の離婚後は、親権を持った側の親に対して、親権を持たなかった側の親が定期的に支払う形で負担することが一般的です。

では、養育費の相場は、どの程度なのでしょうか?
今回は、養育費を支払う側(義務者)の年収が400万円である場合における養育費の相場について、弁護士がくわしく解説します。

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養育費とは

養育費とは、未成熟子の監護や教育にかかる費用です。夫婦が離婚をした場合には、以後夫婦の財布は別々となります。
そのため、離婚後はどちらがいくら養育費を負担するのかについて、取り決めを行うことが必要です。

そもそも、夫婦が離婚をしたからといって、どちらかが子どもの親でなくなるわけではありません。
子どもの監護や養育、財産管理などをする親権者はいずれか一方に定めるものの、親権を持たなかった側が親でなくなるわけではないのです。
そのため、親権を持った側の親はもちろん、親権を持たなかった側の親も、引き続き親としての責任をまっとうすることが求められます。

なお、養育費は一般的に親権を持たなかった側の親から親権を持った側の親に対して支払う形がとられるため、親権を持たなかった側の親だけが負担しているように感じるかもしれません。
しかし、実際には夫婦の年収などから算定した子どもにかかる養育費を、年収に応じて双方が負担する形となっています。

離婚に伴い発生する主な金銭請求一覧

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離婚をするにあたっては、さまざまな金銭請求が発生します。
しばしば養育費とその他の請求が混同されているケースが見受けられるため、ここで整理しておきましょう。

養育費

先ほど解説したように、養育費は未成熟子の養育にかかる費用です。
一般的には、親権を持たなかった側の親が、親権を持った側の親に支払う形で負担します。

財産分与

財産分与とは、離婚に伴い、婚姻期間中に積みあがった夫婦の財産を清算する制度です。

たとえば、夫のみが外部から収入を得ており、妻が専業主婦であった場合などには、夫名義の財産が多い一方で、妻名義の財産がほとんどないという場合もあるでしょう。
離婚時には、これを、原則として2分の1ずつで分割します。
なぜなら、相手の内助の功があったからこそ、もう一方が外部から収入を得られたと考えられるためです。

慰謝料

慰謝料とは、離婚原因を作った側がもう一方に対して支払う、精神的苦痛への賠償です。
例えば、不貞行為が原因で離婚をする場合などには慰謝料請求の対象となります。

養育費相場の確認方法

養育費は、夫婦の双方が合意するのであれば、いくらであっても構いません。
しかし、相場となる額がわからなければ、相手に提示された額が適正かどうか、判断が難しいことでしょう。

養育費の目安は、裁判所が公表している算定表で確認することが可能です。※1
養育費を確認する手順は次のとおりです。

ステップ1:子どもの人数と年齢から使用する算定表を選択する

裁判所のホームページでは、表1から表9の9つの算定表が公表されています。
はじめに、子どもの人数と年齢から、使用する算定表を選択しましょう。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

ステップ2:算定表から「義務者」の年収を探す

算定表を開くと、縦軸に義務者の年収、横軸に権利者の年収が記載されています。
養育費を支払う側の人を「義務者」、養育費を受け取る側の人を「権利者」といいます。

給与所得か自営業かに応じて、表の中から相手の年収を探します。

(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)

義務者の年収を見つけたら、その年収が書かれた欄から右にマーカーなどの印をつけておきましょう。

ステップ3:算定表から「権利者」の年収を探す

次に、同じ表の横軸から、権利者の年収を探します。
こちらも、給与所得と自営業とで見る欄が異なることに注意しましょう。

表の中から権利者の年収を見つけたら、そこから上にマーカーなどの線を延ばします。
線が交差する欄に書かれている金額が、そのケースにおける養育費の目安となります。

養育費の相場はいくら?相手の年収が400万円(給与)の場合

ここからは、より具体的なケースで解説していきましょう。

養育費の支払い義務者が給与所得者であり、年収が400万円と仮定します。
また、養育費を受け取る権利者も給与所得者であり、年収は200万円の場合と600万円の場合とを紹介します。

この場合における養育費の目安となる金額は、それぞれ次のとおりです。

0~14歳の子どもが1人の場合

0~14歳の子どもが1人である場合、参照する算定表は次のものとなります。

(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)

義務者の年収が400万円である場合、この場合における養育費の適正額は、それぞれ次のとおりです。

  • 権利者の年収が200万円の場合:2~4万円
  • 権利者の年収が600万円の場合:2~4万円

0~14歳の子どもが2人の場合

0~14歳の子どもが2人である場合、参照する算定表は次のものとなります。

(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)

義務者の年収が400万円である場合、この場合における養育費の適正額は、それぞれ次のとおりです。

  • 権利者の年収が200万円の場合:4~6万円
  • 権利者の年収が600万円の場合:2~4万円

0~14歳の子どもが1人、15歳以上の子どもが1人の場合

0~14歳の子どもが1人、15歳以上の子どもが1人である場合、参照する算定表は次のものとなります。
(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)

義務者の年収が400万円である場合、この場合における養育費の適正額は、それぞれ次のとおりです。

  • 権利者の年収が200万円の場合:4~6万円
  • 権利者の年収が600万円の場合:4~6万円

15歳以上の子どもが2人の場合

15歳以上の子どもが2人である場合、参照する算定表は次のものとなります。

(表5)養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)

義務者の年収が400万円である場合、この場合における養育費の適正額は、それぞれ次のとおりです。

  • 権利者の年収が200万円の場合:4~6万円
  • 権利者の年収が600万円の場合:4~6万円

養育費を取り決める際の注意点

素材_ポイント_注意点
養育費を取り決める際には、次の点に注意しましょう。

算定表が必ずしも適正額とは限らない

上で紹介をした養育費の算定表は、あくまでも目安となる金額を示したものに過ぎません。
実際にかかる養育費は家庭の事情などによって異なっており、養育費で算定された額が実態とそぐわない場合もあるでしょう。

たとえば、子どもが私立学校に通っている場合や費用のかかる習い事をしている場合などには、算定表の金額が実態と乖離する可能性があります。
また、夫が長男を養育して妻が長女と二女を養育するなど複数の子どもの親権者を分ける場合や、未成年の子どもの数が4人以上の場合には、養育費算定表は使用できません。

このようなケースでは算定表は参考程度にとどめ、個別事情に応じて別途養育費を算定する必要があります。

公正証書にしておくことが望ましい

養育費の額について夫婦間で合意ができたら、必ず合意内容を書面に残しておきましょう。
また、できれば公正証書として作成することをおすすめします。

公正証書とは、私人(個人や会社など)からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。※2
最寄りの公証役場へ出向き、戸籍謄本などの必要書類とともに取り決めの内容を伝えることで、合意内容を公正証書とすることができます。※3

養育費の取り決めを公正証書としておく最大のメリットは、万が一養育費の支払いが滞った際、強制執行が容易になる点です。
強制執行とは、金銭の支払いなどの約束を守らない相手の財産や給与などの債権を差し押さえることで、強制的に義務を履行させる手続きのことです。

せっかく養育費について合意をしても公正証書としていなければ、いきなり強制執行をすることはできません。
この場合には、改めて調停や裁判などを提起して、養育費の支払い義務があるとの結論を得ることが必要です。
そのうえで、ようやく強制執行手続きに進むことができます。

一方、養育費の支払いについて公正証書としておくと、滞納をされた段階ですぐに強制執行手続きに進むことが可能です。
また、給与などの差押えによって勤務先に養育費トラブルを知られたくないという意識が働きやすく、滞納を未然に防ぐ効果も期待できるでしょう。

そのため、養育費を受け取る側が積極的に働きかけ、合意内容を公正証書にしておくことをおすすめします。

合意後の変更は容易ではない

養育費はいったん取り決めをしてしまうと、以後の変更は容易ではありません。

取り決め後に大きく状況が変われば、養育費減額(増額)調停などで、金額を変更する余地がないわけではありません。
しかし、相当な理由が必要となるうえ、たとえば単に「後から相場よりも高いこと(安いこと)に気がついた」などの事情では金額の変更は困難です。
そのため、養育費を取り決める際にはその金額が適正であるかどうか、あらかじめよく確認したうえで合意しましょう。

養育費は一度きりの支払いではなく、継続的に授受が発生するものです。
また、養育費の額が不足してしまえば、子どもの教育や監護に不都合が生じるかもしれません。

相手の言い値などで合意してしまうのではなく、慎重に対応することをおすすめします。

あらかじめ弁護士へ相談する

養育費の取り決めをするにあたっては、あらかじめ離婚問題にくわしい弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士へ相談することで、そのケースに応じた養育費の適性額を知ることができるでしょう。

また、中には養育費の取り決めをしないまま離婚をしてしまうケースもあるようです。
しかし、養育費を受け取ることは子どもの正当な権利であり、仮にもらえるはずの養育費を請求しなければ、子どもの選択肢を狭めてしまいかねません。

離婚に至った事情によっては、一刻も早く離婚をしたいという場合や、相手と交渉をしたくないという場合もあるでしょう。
そのような際は、ぜひ弁護士へご依頼ください。
弁護士へ依頼することで弁護士が代理で交渉を行い、養育費の請求をすることが可能となります。

まとめ

相手の年収が400万円である場合を例に挙げ、養育費の相場を知る方法についてくわしく解説しました。
相手と養育費について交渉をする際に、参考とするとよいでしょう。

ただし、実際には必ずしも本文で紹介をした養育費算定表の結果が適当ではないケースや、養育費算定表を使用できないケースなども存在します。
また、相手と直接養育費について交渉をすることに、不安を感じる場合もあることでしょう。
そのような際には、弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所には離婚問題や男女問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、これまでも養育費にまつわるトラブルなどを多く解決してまいりました。
養育費の相場が知りたい場合や、養育費の取り決めについてお困りの場合などには、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
離婚に関する初回のご相談は、無料でお受けしております。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。離婚、相続を中心に家事事件を数多く取り扱う。交渉や調停、訴訟といった複数の選択肢から第三者的な目線でベストな解決への道筋を立てることを得意とし、子の連れ去りや面会交流が関わる複雑な離婚案件の解決など、豊富な取り扱い実績を有する。
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