離婚することが決まれば、まず着手しなければならないのは、離婚後の生活の準備です。特に、「住環境の整備」は非常に重要になってきます。
子どもがいる場合は、子どもが通う学校のことも考えねばなりません。自分が働くとなれば、子育てを親族のサポートに頼ることもあるでしょう。どの場所に、どの住居に住むか。持ち家でなければ、家賃の捻出も必要です。
一方で、持ち家の場合はどうでしょうか。どちらの名義の家なのか、ローンを組んでいればどれくらいの残債務があるのかなど、事情によっては、売却も視野に入れなければなりません。
そこで、今回は、離婚後の住宅について、住宅ローンが組まれている場合の財産分与について、解説します。
ささいなお悩みもお気軽に
お問合せください初回相談45分無料※一部例外がございます。 詳しくはこちら
オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。
- 24時間受付、通話無料
- 24時間受付、簡単入力
離婚における財産分与の住宅の問題点
離婚時には、話し合いで夫婦共有の財産を分けることになるでしょう。そこで問題となるのが、住宅ローンです。
住宅の査定評価は、住宅ローンを差し引いて査定する
財産分与の前提として、まずは夫婦共有の財産を漏れなく把握しなくてはなりません。住宅ローンが設定されている住宅に関しては、適正に評価するためには、時価から住宅ローンを差し引くことが必要です。
Aさん夫婦は5年前に新築マンションを購入しました。現在住んでいる地域が再開発されるため、5年経った今でもマンションの価値は下がらず、時価は2000万円を維持しています。マンションの名義も住宅ローンも夫名義となっており、現在住宅ローンの残債務が1500万円となっています。このような状況で、夫の不倫が発覚、Aさん夫婦は話し合って離婚に合意し、現在、財産分与に向けて財産を整理しています。Aさんとしては、この住宅を財産分与で欲しいと考えています。さて、Aさんとしては、どのような選択肢があるのでしょうか。
まず、住宅の価値を実際の金額に査定しなければなりません。査定額の算出には、時価から住宅ローンの残債務の金額を引く必要があります。
Aさんのケースでは、住宅の時価が2000万円、住宅ローンの残高債務が1500万円であるため、
2000万円(時価)-1500万円(住宅ローン残高)=500万円
500万円のプラスの財産という評価になります。
つまり、住宅ローン残高が、時価を超えていないケースです(アンダーローン)。
住宅を売却するか、または差額を支払うか
このように、住宅ローンを差し引いても時価の方が高いアンダーローンの場合は、2つの方法で財産分与を行うことができます。
- ・住宅を売却して、その利益を2人で分ける
- ・ローン付きの住宅をそのまま取得して、自分の持ち分の金額との差額を支払う
Aさんのケースであれば、住宅を売却し、得た利益の500万円を、それぞれ250万円ずつに分けるという方法があります。また、Aさんの希望通りそのまま住み続けたいのであれば、住宅ローン付きのマンションを財産分与としてもらい、夫の持ち分との差額250万円を現金で支払うという方法です。
住宅や住宅ローンの名義と住居人が異なる場合はどうする?
さて、Aさんのように、住宅ローン付きの住宅を、財産分与としてもらう場合、次に問題となるのが、住宅や住宅ローンの名義人と住む人が異なる場合です。
ローン名義を変えることは難しい
住宅を売却せずに、住宅ローン付きのマンションを財産分与としてもらう場合です。住宅ローン付きの住宅を貰う場合、住宅ローンの名義を夫からAさんに変えてもらう必要があります。しかし、夫とAさんとで資力が異なる場合は、金融機関がローン名義の変更を承諾することは難しいでしょう。
そのため、Aさん自身が自分名義で他の金融機関からローン全額に当たる金額を借り入れ、まずは住宅ローンを全額返済するという方法があります。そうすれば、夫のローンは完済され、Aさん自身が新しく借り入れした自分名義の借金を返していくことになります。これで、実質ローンの名義が変更されたことになるでしょう。
ただ、このようなケースでは、Aさん自身が新しく借り入れができるほどの担保を保有していることが前提条件となるため、注意が必要です。資力がない場合は、借り入れができないため、Aさんが夫に家賃を払うなどの選択肢が考えられます。
相手がローンを支払い、自分が済み続ける場合も注意が必要
さて、Aさんの離婚原因は夫の不倫であるため、夫から慰謝料の意味も込めて、ローンを払い続けるとの申し出があった場合はどうでしょうか。このような場合は、ローン名義は夫でそのまま継続してローンを返済し、住み続けるのはAさんとなります。Aさんからすれば、ローンの負担を負わずに、住居を確保できたことになります。
しかし、喜ぶのはまだ早計です。現在は、相手が申し訳ないとの気持ちで住宅ローンの債務を支払っていますが、その気持ちが続くとは限りません。実際、不倫相手と新しい家庭を築くとなれば、返済の優先度合いは低くなります。支払えなかった場合、家が差し押さえを受けても、相手からすれば自分が住むマンションではないため、損害を被ることもありません。そのため、今後も相手がローンを支払うことが確実とはいえない状況となります。このようなケースでは、確実に住宅ローンの支払いがなされるように、別途、公正証書での文書を作成するなどの対策をお勧めします。
離婚後の住宅ローンの連帯保証から外れたい!どうすればいい?
これまで住宅名義とローン、実際の住居人との関係について解説してきました。いずれかが異なれば関係は複雑になりますが、全てが同じ場合であれば、問題はありません。
例えば、住宅の名義もローンの債務者も夫で、離婚後も継続して夫が住居人となるようなケースです。このような場合では、名義、ローンの債務者、住居人いずれも同じ人物となり、一見何の問題もないような気がします。ただ、以下のような特殊なケースがあります。
住宅ローンの連帯保証人を外れる方法は2つ
Bさん夫婦は結婚してから15年が経つ共働きの夫婦です。しかし、共に仕事が忙しくすれ違いとなり、離婚するに至りました。共に高収入の職業に就いており、10年前にマイホームを購入しています。購入時には25年の住宅ローンを組んでおり、繰り上げ返済をしながら、残りあと10年となりました。
Bさん夫婦は話し合いで、現在住んでいる家については、財産分与として夫がそのまま住み続けることになりました。名義もローンの債務者も、そして住居人も夫となります。ただ、ローンを組む際に、Bさんも高収入であったことから、夫の連帯保証人として銀行と契約をしています。このような場合に、Bさんは連帯保証人から外れることができるのでしょうか。
さて、結論からいえば、連帯保証人から外れることは容易ではありません。債権者である金融機関の承諾が必要ですが、難しいでしょう。
そもそも、連帯保証人は非常に重い責任を負っています。債務者とほぼ変わりなく、返済が滞った際に即時に連帯保証人に対してお金を支払うことを要求されても拒むことができません(催告の抗弁なし)。そのため、お金を貸した債権者側からすれば、貸したお金を確実に回収できる強力な担保となるわけです。よって、安易に連帯保証人から外すことに承諾をすることはほぼないでしょう。
一方で、連帯保証人側からすれば、離婚により配偶者との関係がなくなるため、連帯保証から外れたい気持ちは十分理解できます。しかし、連帯保証契約は、金融機関と連帯保証人が直接契約を行っており、離婚の事実により影響を受けず、交渉するにしても難しいといえます。
そこで、連帯保証から外れる方法としては以下の2つが考えられます。
・代わりの担保を差し出す
同じくらいの収入のある別の連帯保証人、もしくは所有する不動産を担保とすることが考えられます。
・住宅ローンの借り換え
他の金融機関からお金を借りて、現在の住宅ローンを一度完全に返済するという方法です。ローンが完済されれば、連帯保証人の債務もなくなるわけです。
ただ、上記2つの方法は、いずれも主債務者が一定以上の収入があり、担保を提供できるくらいの資力が備わっている必要があります。
残念ながら、現実には、なかなか連帯保証契約を解除できる可能性は低いといわざるを得ません。
まとめ
重要なことは、全ての事情を考慮して、離婚後の住居を考えなければならないということです。住宅ローン付きの住居を財産分与として渡されたとしても、住宅ローンの残債務が時価を超えるようなオーバーローンであれば、明らかに損をすることになります。逆に、自分が継続して住み、相手が住宅ローンだけを支払うにしても、支払いが滞れば、競売にかけられてしまいます。当然、知らない間に自分の住む家が他人所有になるかもしれません。
このような状況を避けるには、事実の一側面だけではなく、全ての事情を考慮して、さらにこれまでの経験則や知識からのアドバイスが必要となります。早めに弁護士などの専門家に相談をして、最善の方法を検討することをお勧めします。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら
ささいなお悩みもお気軽に
お問合せください初回相談45分無料※一部例外がございます。 詳しくはこちら
オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。
- 24時間受付、通話無料
- 24時間受付、簡単入力