コラム
公開 2019.07.11 更新 2024.05.01

離婚後すぐに再婚は可能?女性が注意すべきポイントを弁護士がわかりやすく解説

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離婚後すぐに再婚したい場合、これまでは再婚禁止期間が設けられていたことから、女性だけはすぐに再婚することができませんでした。
これは、生まれた子の父親に関する推定規定が、前婚と後婚とで重複していたことによるものです。

しかし、令和6年(2024年)4月1日に民法の改正法が施行され、女性の再婚禁止期間が撤廃されています。
改正後は、女性も男性と同じように、離婚後すぐに再婚することが可能です。

今回は、再婚禁止期間に関する改正を踏まえ、離婚後の再婚について弁護士がくわしく解説します。

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離婚後すぐに再婚できる?

離婚後、すぐに再婚することはできるのでしょうか?
はじめに、男女別にまとめて解説します。

男性の場合

男性には、もともと再婚禁止期間の制限はありません。
そのため、離婚後すぐにでも再婚することが可能です。

女性の場合

従来、女性には再婚禁止期間が設けられていました。
女性の再婚禁止期間は、平成28年(2016年)5月31日以前では6か月間でした。
その後短縮されたものの、離婚後100日間は原則として再婚できませんでした。

しかし、婚姻などについて定める民法が改正されたことにより、令和6年(2024年)4月1日以降は、女性も離婚後すぐに再婚することが可能となっています。

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女性に離婚後の再婚禁止期間が設けられていた理由

これまで女性に再婚禁止期間が設けられていた最大の理由は、子どもの嫡出推定の規定の重複を避けるためです。
「嫡出」について平たくいえば、「父親が誰であるか」ということです。

日本では代理出産は法制化されておらず、ある女性から生まれた子は、法律上も当然にその女性の子どもとして扱われます。
一方で、男性がある子どもの父であることを生物学的に証明しようとすると、DNA鑑定などをするほかありません。

しかし、DNA鑑定をしなければ父子関係が確定しないとなると、手続きが煩雑となるうえ、子どもの立場が不安定なものとなるおそれがあります。
また、DNA鑑定の精度が高まったのは最近のことであり、従来は今よりもハードルが高いうえ精度もさほど高くありませんでした。

そこで設けられているのが、嫡出推定規定です。
嫡出推定規定があることで、DNA鑑定などをしなくても生まれた子どもの父親を自動的に決めることが可能となり、子どもの権利が安定しやすくなります。
子どもの権利の安定を目的とする規定であるため、その趣旨に照らせば、父親の推定が重複する事態をできるだけ避ける必要があります。

そして、再婚禁止期間について、令和6年(2024年)3月31日までは次の規定が適用されていました。

  • 婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する
  • 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する

この規定に照らすと、仮にある女性が前夫Aと離婚し同日に別のBと再婚できてしまえば、子どもの父親の推定はそれぞれ次のようになります。

  1. Aとの婚姻前に懐胎(妊娠)し、Aとの婚姻後200日経過前に生まれた子:推定規定が働かない
  2. Aとの婚姻後、200日経過後に生まれた場合:Aの子と推定される
  3. Aとの離婚かつBとの再婚後、200日経過前に生まれた場合:Aの子と推定される
  4. Aとの離婚かつBとの再婚後、200日経過後300日以内に生まれた場合:Aの子であると推定され、同時にBの子であるとも推定される(推定の重複)
  5. Aとの離婚かつBとの再婚後、300日経過後に生まれた場合:Bの子と推定される

法律が特に問題とするのは、このうち「4」のケースです。
そこで、女性に再婚禁止期間を設け、このような推定の重複ができるだけ起きないよう調整されていました。

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【令和6年4月施行】離婚後の再婚禁止期間に関する主な改正内容

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冒頭で解説したように、令和6年(2024年)4月1日に施行された改正民法で、女性の再婚禁止期間が撤廃されています。
これに関連して、他にも改正がなされました。
ここでは、令和6年(2024年)4月1日に施行された主な改正点を解説します。

嫡出推定の規定が見直された

1つ目は、嫡出推定の見直しです。

先ほど解説したように、女性に再婚禁止期間が設けられていた最大の理由は、嫡出の推定を避けるためです。
嫡出推定の重複を避けるための見直しと再婚禁止期間の見直しは、表裏一体といえるでしょう。

令和6年(2024年)4月1日からは、嫡出推定の規定が次のとおりとされました(民法772条)。

  1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。
  2. 前項の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
  3. 第1項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に2以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。

整理すると、先ほど挙げた例と同じくある女性が前夫Aと離婚して同日に別のBと再婚した場合、子どもの父親の推定はそれぞれ次のようになります。

  1. Aとの婚姻前に懐胎(妊娠)し、Aとの婚姻後200日経過前に生まれた子:Aの子と推定される
  2. Aとの婚姻後、200日経過後に生まれた場合:Aの子と推定される
  3. Aとの離婚かつBとの再婚後、200日経過前に生まれた場合:B(出生の直近による夫)の子と推定される
  4. Aとの離婚かつBとの再婚後、200日経過後300日以内に生まれた場合:B(出生の直近による夫)の子と推定される
  5. Aとの離婚かつBとの再婚後、300日経過後に生まれた場合:Bの子と推定される

このように、嫡出推定が重複しないよう規定が調整されました。
特に、「1」の場合と「3」「4」の場合で取り扱いが大きく異なることとなるため、従前の取り扱いと比較して確認しておくとよいでしょう。

女性の再婚禁止期間が撤廃された

2つ目は、再婚禁止期間の撤廃です。

改正により、女性の再婚禁止期間に関する規定が丸ごと削除されました。
これにより、令和6年(2024年)4月1日以後は女性も男性と同じく、離婚後すぐに再婚することが可能となっています。

嫡出否認制度が見直された

3つ目は、嫡出否認制度の見直しです。

嫡出否認制度とは、嫡出の推定を否認する制度です。
先ほど解説したように、嫡出推定規定は、生物学上の父子関係に関わらず出生の時期と婚姻の関係から自動的に父子関係を推定するものです。
推定規定を働かせるためには、夫婦の実態の有無などは問われません。

そのため、たとえば「離婚はしていないものの夫婦が長年別居して会ってもいない期間に、妻が婚姻外のパートナーの子どもを懐胎し出生した」ような場合であっても、その子どもは法律上の夫の子であると推定されます。

しかし、法律上の父となれば、子どもの扶養義務が生じるほか、相続権なども発生します。
そのため、「嫡出推定規定によって子どもの父と推定されたが、実際には自分は子どもの父ではない」という場合に、嫡出否認調停を申し立てることができるほか、調停がまとまらない場合には裁判所に訴えを提起することで親子関係を否定することができます。
これが嫡出否認制度です。

これまで、この嫡出否認に関する調停の申立てや、調停がまとまらなかった場合の訴えの提起は、その子どもの父と推定された夫にだけ認められていました。
さらに、子どもの立場を安定させるため、嫡出否認調停の申立てができるのは、夫が子どもの出生を知ったときから1年以内に限定されていました。

しかし、先ほどの例のように明らかに夫の子ではない場合であっても、夫がさまざまな理由から嫡出を否認しない場合があります。
この場合であっても、子どもを出生した母や子ども自身は、嫡出否認調停の申立てや嫡出否認の訴えの提起をすることができませんでした。

そこで、今回の改正により、子どもを生んだ母や子ども自身も嫡出否認調停の申立てや訴えの提起をすることが可能となりました。
また、一定の場合には、その子どもの父と推定されなかった前夫も嫡出否認の調停や訴えを提起することができます。
併せて、嫡出否認調停の申立てができる期間が、子の出生を知ったときから原則として3年間へと伸長されました。

なお、改正法は原則として施行日である令和6年(2024年)4月1日以降に生まれた子どもに適用されます。
ただし、施行日より前に生まれた子どもであっても、施行日から1年間に限り、子どもやその母が嫡出否認調停の申立てや訴えの提起ができることとされました。
施行日より前に生まれた子どもの嫡出推定規定でお困りの際は、お早めに弁護士へご相談ください。

女性に離婚後の再婚禁止期間が撤廃された主な理由

再婚禁止期間が撤廃に関する一連の改正がなされた最大の理由は、無戸籍問題の解消です。

従前の規定の場合、前夫との離婚から300日以内に生まれた子どもは、たとえ出生時点で女性が再婚していても前夫の子であると推定されていました。
さらに、この子どもの嫡出推定を否定できるのは前夫だけであり、明らかに前夫の子どもではない場合であっても、子どもの母などは嫡出を否認することができませんでした。

前夫が嫡出否認調停や訴えを提起すればよいものの、前夫が何らかの理由で元妻との関係性を維持したいと考えている場合や、法律上の子どもが欲しいと考えている場合は、あえて嫡出否認を主張しない事態も十分に想定されます。
特に前夫からDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害に遭っていた場合などには、子どもが前夫の子どもと推定される事態は恐怖でしかないでしょう。

そのため、生まれた子どもが前夫の子どもであると推定される事態を避けるため、子どもを出生しても出生届を出さない事態が散見されていました。
この場合、生まれた子どもは無戸籍となり、原則として住民票やパスポートが作れないなど生活のさまざまな場面で多大な不利益が生じます。

このような事態を避けることを主目的として、嫡出推定規定や嫡出否認制度の見直しがなされました。
嫡出推定が重複することがなくなったことから再婚禁止期間を設ける実益がなくなり、再婚禁止期間が撤廃されています。

離婚後の親権者の再婚は子どもにどう影響する?

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最後に、少し視点を変えて、離婚後の再婚が子どもに与える法律上の影響について解説します。
ここでは、離婚によって妻が未成年の子どもの親権者となり、その後妻が再婚した場合を前提とします。

再婚だけを理由に親権が奪われることはない

親権者が再婚をしても、再婚だけを理由として親権が元夫に変更されることはありません。
反対に、再婚したことだけを理由として、子どもの親権を放棄することなども不可能です。

何らかの事情で子の利益のために必要がある場合は親権者の変更が認められることもありますが、家庭裁判所による許可が必要です。

再婚だけでは養育費は減額されない

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要となる費用です。
養育費の負担は親としての義務であり、親権を持たなかった側の親から親権者に対し、毎月など定期的に支払う形で養育費がやり取りされることが一般的です。

この養育費は、親権者が再婚をしたことだけを理由に減額されるものではありません。
親権者の再婚は、子どもの扶養義務に影響するものではないためです。

一方で、子どもが再婚相手の養子となった場合は、養育費が減額されたり支払いが免除されたりする可能性が高いでしょう。
なぜなら、子どもが再婚相手の養子となった場合、子どもの扶養義務は、養親となった再婚相手が実親である元夫に優先すると解されているためです。

ただし、この場合であっても一方的な減額や滞納が許されるわけではありません。
養育費の減額や免除は、支払い義務者である元夫と親権者である元妻が合意するか、家庭裁判所の調停や審判で決する必要があります。

まとめ

令和6年(2024年)4月1日から再婚禁止期間が撤廃され、女性であっても離婚後すぐに再婚できることとなりました。
これは、嫡出推定規定が見直され、離婚や再婚前後でも嫡出推定が重複しないよう整理されたことによるものです。

再婚禁止期間のほか離婚や再婚前後での嫡出推定規定が大きく改正されているため、離婚や再婚前後での出産を予定している際は、改正後の規定に注意しましょう。
また、今後は子どもの母などからであっても、嫡出否認の訴えができることとなっています。

なお、施行日である令和6年(2024年)4月1日から1年間に限り、施行日より前に生まれた子どもであっても、子どもを生んだ母親や子ども自身などによる嫡出否認調停の申立てやの訴えの提起が可能です。
子どもの嫡出推定でお困りの際は、早期に弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所では離婚や男女トラブルの解決に力を入れており、多くのサポート実績があります。
離婚後の再婚や嫡出推定、嫡出否認などでお困りの際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。同志社大学法学部法律学科卒業、同志社大学法科大学院修了。離婚・相続といった家事事件や、不動産法務、企業法務など幅広く取り扱うほか、労働問題にも注力。弁護士として少年の更生の一助となることを志向しており、少年事件にも意欲的である。法的トラブルを客観的に捉えた的確なアドバイスの提供を得意としている。
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