「養育費について取り決めをせず離婚したものの、できれば今からでも養育費を払ってもらいたい」など、親権を持つ親が、離婚後に養育費請求をしたいと考えるケースは少なくありません。
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養育費の取り決めをしないまま離婚してしまった方の割合はかなり多い
離婚後に養育費を請求できるかどうか、その点について悩んでいる方は「そもそも離婚時に養育費の取り決めをしていなかった」という状態であることが多いです。
厚生労働省による「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」の結果報告によると、養育費の取り決めをしていないひとり親の割合は、下記のように高い割合です。[注1]
- 母子世帯:54.2%(養育費の取り決めをしている:42.9%、不詳:2.9%)
- 父子世帯:74.4%(養育費の取り決めをしている:20.8%、不詳:4.9%)
養育費の取り決めをしていない世帯が半数を超えていますが、平成23年度の前回調査に比べると改善しています。
平成23 年度の前回調査では、養育費の取り決めをしていない世帯は、下記のようにさらに高い割合でした。
- 母子世帯:60.1%(養育費の取り決めをしている:37.7%、不詳:2.2%)
- 父子世帯:79.1%(養育費の取り決めをしている:17.5%、不詳:3.4%)
離婚の大半は、何らかの理由で夫婦間にヒビが入ってしまっていたことが原因であるため、離婚に至るまでの流れはどうしても感情的になってしまうケースも少なくありません。
そのため、冷静に話し合えず養育費をどうするかも決めないままで離婚してしまったものの、離婚後の生活が苦しくなり、「子どもに生活の不自由をさせないためにも今からでも養育費を請求できないものか」と考える人が多いのも、無理のないことです。
しかし、そうなってくると気になるのが、離婚後でも養育費を請求できるのかどうか、という点です。
次はいよいよその本題に触れていきましょう。
[注1] 厚生労働省:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告[pdf]
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11923000-Kodomokateikyoku-Kateifukishika/0000190325.pdf
離婚後でも養育費を請求することは可能だがすぐにでも動くことが大切
結論からいうと、たとえ離婚時に養育費の取り決めをしていなかったとしても、離婚後に養育費を請求することは可能です。
なぜなら、養育費についての取り決めがなかったとしても、そのことが親権のない親の養育費支払い義務を免除する理由にはならないからです。
たとえ離婚しても子の親であるという立場には変わりなく、子どもを扶養する義務は両親どちらにもあります。そのため、離婚時に養育費についても取り決めをしていなくても、親権のない親は、養育費を支払う義務があります。
ただし、「離婚後でも養育費請求ができるのであれば安心。生活が落ち着いてから請求しよう」などとのんびり考えてしまってはいけません。離婚後の養育費請求は、早めに動くことが大切です。
なぜなら、離婚後の養育費請求のタイミングが遅くなればなるほど、大きな2つのデメリットがのしかかってくるからです。
その2つのデメリットについてご説明しましょう。
養育費請求が遅れるデメリット1.
過去にさかのぼっての養育費請求は原則として認められない
離婚後の養育費請求のタイミングが遅くなることのデメリットとしてはまず、過去にさかのぼっての養育費請求は原則としてできない、ということが挙げられます。
たとえば、平成30年10月1日に離婚が成立し、令和元年5月1日に養育費請求を開始した場合、相手に支払ってもらえる養育費は、原則として、養育費請求をスタートした令和元年5月1日からの分のみです。
つまりこのケースの場合、請求をしていなかった平成30年10月1日から平成31年4月30日までの期間の養育費はもらえないままです。
裁判所の裁量で、相当と認められる範囲で過去にさかのぼっての養育費支払いを命じたというケースもありますが、多くの裁判例では、過去にさかのぼった請求は、認められていません。
原則は、「請求後の期間のみ認められる」ものであると理解しておきましょう。
養育費請求が遅れるデメリット2.
養育費請求が遅くなっても養育費支払いが終わる時期は変わらない
離婚後の養育費請求のタイミングが遅くなることのデメリットとしてはもうひとつ、養育費をもらえる期間そのものが短くなってしまう、というのが挙げられます。
たとえば、「離婚してから5年間は養育費をもらわずに育てたので、その分、養育費の支払いが終わる時期を5年遅くしてもらう」ということはできません。
過去にさかのぼっての請求ができないだけでなく、請求してこなかったことを理由にしての期間延長もできません。
だからこそ、子供のためにもできるだけ早く請求をすることが非常に重要です。
さて、ここで「養育費を請求したとして、子どもが何歳になるまで払ってもらえるのか」という点が心配になる人もいるでしょう。この点についてもご説明いたします。
原則として、養育費の支払い義務は子どもが成人に達するまで=20歳になるまでが基本です。
しかし、養育費の終期として、離婚する夫婦の収入や学歴を踏まえた場合、子どもが大学を卒業するまでの養育費の支払いが適切と判断される場合もあります。
一方、たとえば子どもが18歳で就職した場合は、子どもはもう自立しているとみなされて養育費の支払い義務がなくなる場合もあります。
離婚後に養育費を請求する際の手順
離婚後に養育費を請求する際は、一般的に下記の手順で行います。もっとも、個別の事情により、進め方は異なりますので、一度弁護士に相談することをおすすめします。
- 1. メールや内容証明郵便などにより、養育費を支払ってもらいたい旨の連絡をする
- 2. 返事をもらえない、支払いや話し合いを拒否された場合は、裁判所に養育費請求の調停の申立てをする
元配偶者に対する養育費請求の最初の連絡手段はメールや内容証明郵便などがおすすめ
養育費請求の最初の段階である元配偶者への連絡手段は、電話などでの口頭連絡よりも、メールや内容証明郵便などを使うのがおすすめです。
なぜなら、先ほどもご説明したとおり、養育費はその請求をした日以降からしか受け取れないのが大原則となっているため「いつから養育費請求を開始したのか」がわかる状態にしておくことが非常に重要だからです。
メールや内容証明郵便などを使えば請求を開始した日時が文字として残りますが、口頭だけでの請求では、その日から養育費請求を開始したという証拠が残りません。この点はくれぐれも気をつけましょう。
まとめ
たとえ離婚時に養育費の取り決めをしていなかったとしても、養育費の請求は、離婚後に行うことも可能です。
但し、離婚後に養育費を請求する場合、原則として、その請求を開始した日からの養育費しか認められないため、養育費の請求はできるだけ早く開始することが大切です。
養育費請求の手続きに不明な点がある場合や、当事者間だけでは話がまとまらないという場合は、離婚問題を取り扱っている弁護士に相談するとよいでしょう。
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