コラム
公開 2021.04.16 更新 2022.08.16

財産分与とは。どんな財産が対象になる?

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熟年離婚するときには特に「財産分与」が重要な問題です。夫婦間で年収に差があったとしても、財産は2分の1ずつ分けることになります。
この連載では、結婚25年目で熟年離婚を考えている「オー美」のケースを例に、財産分与の仕組みを弁護士が解説します。

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依頼者:オー美

結婚25年目、オー美の場合

私はオー美、現在50歳です。夫は56歳。結婚して25年目になります。
子どもは2人いますが、息子は社会人で娘は大学生。子育ても終わりが見えてきました。
これからの人生について考えていたところ、長い間単身赴任していた夫が帰ってくることになりました。
夫は単身赴任先で不倫していて、私はそのことが許せません。これから一緒に暮らしていくのは難しいと感じています。
できれば離婚したいですが、そのためにはきちんと財産分与を受けておかないと心配です。
財産分与って、どのくらいもらえるものなんでしょうか?
何が財産分与の対象になるのでしょう?
住宅ローンがまだ残っているのですが、家はどうすればよいのかも気になります。

前回までのあらすじ

夫との熟年離婚を決意したものの、何から始めてよいか分からない状態でした。
調べてみると、熟年離婚するときには財産分与や年金分割などの「お金の問題」が重要とのこと。
私も一番不安に感じているのは、離婚後のお金のことです。
しっかりと財産分与を受けておきたいです。

また、離婚するまでの流れも把握しておきたいです。
調停にはせず、できれば夫と直接話し合って解決したいと思っています。
これからしっかり腰を据えて、夫と協議していこうと覚悟を決めているところです。

子どもたちとの関係を悪化させたくないので、離婚問題については2人にもきちんと話して理解を求めたいと思います。
後悔だけはしたくないので、離婚についての知識を持って進めていきたいところです。

熟年離婚の財産分与で損をしない方法は?

熟年離婚をするときに重要となる、財産分与。
夫に財産を隠されたり使い込まれたりして、きちんと支払いを受けられないケースもあると聞きます。
そんな事態を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか?

また不動産や住宅ローンなど、はっきり折半できない財産はどのように考えたらいいのでしょうか?

夫が財産分与に応じてくれない場合、強制的に支払わせることはできるのでしょうか?その場合は裁判になってしまうのですか?
財産分与を受けるための流れも知っておきたいです。

弁護士が解説!財産分与の対象、割合、財産の分け方について

財産分与の種類

財産分与には以下の3種類があります。

・清算的財産分与

婚姻中に形成した夫婦共有の財産を分ける財産分与です。もっとも基本的な財産分与の種類で、一般的に「財産分与」といわれてイメージするのがこの清算的財産分与です。

・扶養的財産分与

離婚後に夫婦どちらか一方が生活に困る場合に、扶養のために行う財産分与です。

・慰謝料的財産分与

一方に不倫などの有責行為があったとき、慰謝料代わりに支払う財産分与です。
金銭以外に、家や土地などを慰謝料の代わりに分与することもできます。
オー美さんの場合、夫が不倫をしていたという経緯から慰謝料的財産分与も受けられる可能性があります。

財産分与の対象

一般的な清算的財産分与における財産分与の対象をみてみましょう。

・夫婦共有財産

清算的財産分与の対象になるのは「夫婦共有財産」です。
共有財産とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産のことです。
独身時代から持っていた財産や、実家から相続・贈与された財産は「特有財産」となるので財産分与の対象になりません。

・財産分与の対象になる資産の種類

  • ・不動産
  • ・現金預貯金
  • ・株式や投資信託などの有価証券
  • ・自動車やバイク
  • ・価値のある家財道具や家電など
  • ・貴金属
  • ・保険
  • ・財形貯蓄などの積立金
  • ・退職金

特にオー美さんご夫婦のように、夫の定年退職が近づいている場合、退職金がどのくらい分与されるのか気になるでしょう。
といっても、夫が定年退職するのを待つ必要はありません。
将来、退職金が支払われる可能性が高い場合は、退職金が支払われる前でも分与の対象にできます。
計算方法はさまざまですが、(定年退職時に支給される退職金の予定額)×(勤続年数に占める婚姻期間の割合)×2分1で財産分与対象額を算定する方法もあります。

・負債について

夫婦が婚姻中に負った負債についても、その内容によっては分与の対象になります。
生活のための借り入れや住宅ローンなどです。
一方で、遊興費など個人的な娯楽のために負った負債は財産分与の対象にしません。

財産分与の割合

財産分与の割合は基本的に夫婦で2分の1ずつとします。
オー美さんのように夫の扶養に入っていたり、また専業主婦の方の場合でも、2分の1を受け取る権利があります。

住宅ローンつきの家がある場合

住宅ローンつきの家がある場合には、基本的に「家を売却した場合の価額」から「残ローン額」をマイナスして家の価値を算定します。
たとえば2,000万円で売れる家の残ローンが500万円であれば、家の価値は1,500万円です。
この1,500万円を夫婦で折半します。

家を売却して売却金を2分の1ずつにしてもかまいません。
どちらかが家に住み続けるなら、家の価額の半額を相手に支払って清算する必要があります。

財産分与の流れ

離婚時に財産分与を受けたいなら、まずは相手と話し合う必要があります。
合意ができたら「離婚協議書」を作成し、公正証書にしましょう。
話し合っても合意できない場合には、離婚調停をしなければなりません。
調停でも合意できなければ、離婚訴訟で裁判所に財産分与の方法や金額を決定してもらいます。

なお離婚時に財産分与の話し合いをしなかった場合でも、離婚後2年間は財産分与の請求ができます。
しかし離婚した後では財産資料を集めるのも大変になるので、できれば離婚時にしっかり取り決めておきましょう。

相手が財産を隠してしまったなどでお困りの際は弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

財産分与にはいくつか種類がありますが、特に「清算的財産分与」が重要です。
預貯金や株式、保険など、すべて明らかにして公平に折半しましょう。
相手の扶養に入っていたり、専業主婦であっても2分の1を受け取る権利があるので、遠慮する必要はありません。

財産分与については夫婦で話し合って決めるのが理想ですが、どうしても合意できない場合には離婚調停を考えましょう。
相手が財産を隠してしまった場合、調査するには弁護士によるサポートや裁判所での手続きが必要になることもあります。
困ったときにはオーセンスの弁護士にお気軽にご相談ください。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

・請求可能な財産分与の内容について、対象となる財産の範囲、不動産や退職金などを含めた分与額の計算の方法、協議開始前にご確認いただきたい情報や資料などを詳細にお伝えし、協議の準備段階からお客様をサポートいたします。

・相手との協議においては、相手は分与対象となる財産の範囲や価格の評価を争ってきますし、財産資料の開示に応じないことも多々あります。オーセンスの弁護士は、所属する多数の弁護士の知識経験や過去のデータを集約して双方の主張の成否を見極め、また、関係諸機関への照会などを駆使して相手の財産の把握を図り、お客様ができる限り多くの支払を受けられるよう手段を尽くします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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