コラム
公開 2021.02.19 更新 2022.08.16

離婚時の財産分与や年金分割はどうなる?

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離婚時の財産分与では、清算的財産分与や扶養的財産分与、慰謝料的財産分与等の種類があります。
この連載では、離婚に悩んでいる「オー子」の日常を通じて、離婚に関する法律を弁護士が解説します。今回は、離婚時に知っておきたい財産分与の対象や年金分割の方法、流れについてご説明します。

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依頼者:オー子

こんにちは、オー子です

私、オー子は夫との関係に悩む40歳、専業主婦。小学生の子どもがいます。
夫の「モラハラ問題」と「風俗店通い」で別居を開始。さらに「不倫発覚」で離婚を決意、離婚に向けて行動を開始しました。今、一番不安なのは、「お金の問題」です。

前回までのあらすじ

突然、大きな声で怒鳴ったり、高圧的な態度で侮辱されたり。
「モラハラ傾向」のあるオー子の夫。
モラハラは離婚の理由にもなると知り、オー子は今後の夫婦生活について真剣に考え始めました。 そんな時に発覚した夫の風俗店通い。
生活費が心配で別居をするか迷っていましたが、別居中の夫に「婚姻費用」を請求することができると知り、別居を開始。さらに夫の不倫も発覚して、離婚することを決断しました。離婚の話を進める前に、離婚の流れや慰謝料請求について学び、離婚までのイメージが固まってきましたが、離婚に対して不安が尽きることはありません。

オー子の日々財産分与や年金分割が気になる…

私は現在、専業主婦のため現金収入がありません。
今、一番不安なのが、離婚後のお金の問題。
子どもの親権も私が取得するつもりなので、子どもに不自由な思いをさせたくない、というプレッシャーもあります。

財産分与の不安…

離婚後の生活で困らないように、離婚の際に夫からしっかり財産分与を受け取りたいと思います。
財産分与って、どうしたらいいのでしょう?
どこまでの財産が対象になるの?
私の預貯金も開示しなければならないの?
独身時代の貯金は?
夫が自分の財産を隠すかもしれない。
不安なことがたくさんあります。

年金分割のことがわからない!

夫は会社員で厚生年金に入っています。
「年金分割には2種類がある」って聞いたけれど、どういう意味なんだろう?
私の場合、どうやって年金保険料を分けてもらえばいいのか知りたいです。
夫が拒絶したら年金分割できなくなるの?
財産分与や年金分割のこと、教えてください!

弁護士が解説!財産分与と年金分割の基本知識

離婚するときには財産分与(清算的財産分与)や年金分割が問題となるケースが多々あります。
以下でそれぞれみていきましょう。

財産分与とは

財産分与とは、婚姻中に形成した夫婦共有財産を分け合うことです。
相手に有責性があってもなくても「共有財産」がある限り財産分与はできます。
夫婦共有財産になるのは「婚姻中に夫婦が協力して形成した財産」で、どちらかが独身時代から持っていた財産は対象外です。
また婚姻中に得た財産であっても「遺産相続」などで実家から取得した財産は「特有財産」となるので財産分与対象ではありません。
ただし、この「特有財産」に該当するということは証明をしなければならないため、共有財産と一緒にしてしまうと証明ができず特有財産と認められなくなってしまうリスクがありますので、特有財産は明確に区別して保管しておくことが必要です。
たとえば、預貯金であれば、相続したお金(特有財産)を共有財産である夫婦の生活費用の口座に移してしまうと、お金の区別がつかなくなってしまい、相続したお金が共有財産と判断されてしまうリスクが出てきます。

財産分与対象の例

  • ・預貯金
  • ・保険(生命保険、火災保険、学資保険など)
  • ・株式、投資信託、債券
  • ・車
  • ・不動産
  • ・貴金属や時計など価値のあるもの
  • ・退職金(離婚時期が近く支給の確実性が高い場合)
  • その他、企業年金、確定拠出年金、会社の持株会、財形貯蓄など

夫だけではなく妻名義の財産も対象になります。

財産分与の割合

財産分与の割合は、原則として「夫婦それぞれが2分の1ずつ」となります。
オー子さんのように専業主婦であっても減らされることは基本的にありません。

ただし夫が通常を大きく上回る高額所得者の場合には、割合が調整される可能性もあります。

財産隠しを防止するために

財産分与の際、相手が財産隠しをするケースも少なくありません。
財産隠しを防止するには、しっかり財産調査を行いましょう。
離婚協議を開始する前に、通帳や保険証書、証券口座の取引明細所などできるだけたくさんの資料を集める必要があります。

自分でどうしても調べられない場合には、弁護士に相談してみてください。

年金分割とは

夫婦の両方または片方が「厚生年金」に入っているときには年金分割もできます。
年金分割は、婚姻中に払い込んだ年金保険料を分割する手続きです。
年金分割しておけば、将来年金を受け取れる年齢になったときに年金額が調整されて、社会保険事務所から振り込まれます。
オー子さんのような専業主婦の場合、年金分割したら将来の年金額がアップするのでぜひ手続きを行うべきといえるでしょう。

年金分割には以下の2種類があります。

合意分割

夫婦の合意によって成立する年金分割です。
分割割合は0.5(2分の1)までの割合で任意に定められます。
下記で説明する「3号分割」ができないケースでの年金分割は、すべて合意分割となります。

ただし合意分割するには、被分割者の合意が必要なので、相手が納得しなければ手続きできません。
ただどうしても相手が納得しない場合、離婚後に「年金分割調停」を申し立てれば最終的には2分の1の割合で分割してもらえる可能性が極めて高い状況です。

3号分割

3号分割は、分割請求者が「3号被保険者」になっている場合の年金分割です。
3号被保険者とは、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者のことをいいます。
ただし適用されるのは「平成20年4月以降」の年金保険料なので、それ以前の場合には3号被保険者でも合意分割しなければなりません。

オー子さんの場合、専業主婦なので3号分割できる可能性が高いでしょう。
3号分割の場合、相手の合意は不要です。
離婚後に分割請求者が1人で社会保険事務所へ行って標準報酬改定請求書を提出すれば手続きできます。

まとめ

離婚するときには「財産分与」や「年金分割」の手続きを忘れてはなりません。
婚姻年数が長くなればなるほど、財産分与や年金分割のインパクトが大きくなってきます。
財産分与の対象資産は「婚姻中に夫婦が協力して形成した資産」で、夫名義か妻名義かを問いません。
ときには子ども名義の預貯金が対象になる可能性もあります。
財産分与割合は基本的に2分の1ずつになるので、公平に分けましょう。

離婚時に年金分割をしておくと、将来受け取れる年金額が調整されます。
合意分割と3号分割があり、合意分割の場合には相手(被分割者)の合意が必要です。
ただし離婚後に「年金分割調停」や「審判」を申し立てると、ほとんどのケースで2分の1ずつ(0.5の割合)に分割してもらえるので、相手が納得しなくても諦める必要はありません。

これから離婚を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

記事を監修した弁護士
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Authense法律事務所記事監修チーム
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