内縁とは婚姻届を提出していない事実上の夫婦です。実は内縁関係にある男女に子どもが生まれると、法律婚の場合とまったく異なる取扱いを受けます。
内縁関係にある当事者間に生まれたの子どもは、父の「認知」がない限り、「父親がいない」状態になってしまいます。
目次
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1.内縁の当事者間に子どもが生まれたときの戸籍や法律上の父子関係
内縁の当事者間に子どもが生まれたら、子どもの戸籍上・法律上の親は誰になるかご存知でしょうか?
法律婚の場合であれば、法律により、婚姻時に生まれた子どもは夫の子どもと推定されます。子どもは夫婦の戸籍に入り、夫婦が戸籍上の父母となります。
しかし内縁の場合には「内縁の夫の子ども」という推定は働きません。「母親が産んだ」事実しか明らかにならないので、子どもは母の戸籍に入ります。父は「いない」または「不明」な状態となります。
つまり内縁の当事者間に子どもが生まれたら、戸籍上は「父親がいない子ども」となってしまうのです。
また法律婚の場合には夫婦双方に親権が認められますが、内縁の場合には父母のいずれかが単独で親権を行使することとなっています。
2.内縁の当事者間に生まれた子に父子関係を成立させる「認知」とは
内縁関係でも、内縁の夫と子どもの間に法律上の父子関係を築きたいという方も多いでしょう。
その場合には父による「認知」が必要です。認知すれば法律上の父と子どもの関係になります。
内縁関係にあるパートナーとの間に子どもが生まれたときには出生届だけではなく、父に認知してもらい認知届も役所に提出するとよいでしょう。
なお、Authense法律事務所では、認知請求や養育費でお悩みの方に向けた「認知養育費交渉・調停プラン」をご用意しております。
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3.認知の効果
認知をすると、以下のような効果があります。
3-1.戸籍上・法律上の父子関係が成立する
内縁の場合の父と子は、父が子どもを認知しなければ、生物的には父子であっても法律上は全くの他人同士です。認知すれば戸籍上・法律上も「父子」であることが明らかになります。
3-2.相続権が発生する
内縁の場合、父が子どもを認知しなければ父子は他人同士の扱いになるので、お互いに遺産を相続する権利を持ちません。つまり、将来父が死亡したとき、子どもは父の遺産を相続できません。
これに対し、認知して父子関係を成立させておけば、お互いに遺産を相続する権利を取得します。父が亡くなったら子どもは遺産を相続できますし、子どもが先に死亡したら父も子どもの遺産を相続しえます。
3-3.扶養義務が発生する
認知せず父と子どもが他人同士の状態では、お互いに扶養する義務が発生しません。
たとえば内縁関係を解消したら一方当事者は相手方当事者に子どもの養育費を払ってほしいと考えるかもしれませんが、認知されていない場合には父に対して子どもの養育費を請求できません。
また将来父が介護を要する状態になったとき、子どもを認知していない場合には、法的には父は子どもに介護の負担を求めることができません。
3-4.父から面会交流を求められる
内縁関係を解消したら、母が子どもを引き取るケースが多数です。すると、父は子どもに会わせてもらえなくなる可能性もあります。
そのようなときでも、認知をして父子関係を成立させておけば、父には子どもと面会する権利(面会交流権)が認められます。母が拒絶する場合には家庭裁判所で「面会交流調停」を申し立てて子どもと会わせてもらえるように話し合うことが考えられます。調停で合意ができた場合や審判で面会が認められた場合には、子どもと面会ができるようになります。
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4.認知の方法
父が子どもを認知する方法は、以下のとおりです。
4-1.任意認知
父が自ら子どもを認知する方法です。父が役所で「認知届」を書いて提出すれば認知の手続きが完了します。内縁の場合、子どもの出生届を提出するときに認知届も同時に提出することもあります。
なお認知は子どもの出生前でも可能です。ただし出生前に認知する場合、母の同意が必要です。また子どもが成人してから認知をする場合には、子ども本人の承諾が必要です。
子どもが亡くなっている場合でも、子どもの子どもや孫(認知する父にとっては孫やひ孫)が生きていれば認知できます。
4-2.強制認知
強制認知は、裁判手続きを使って強制的に認知させる方法です。父が自ら認知手続きをしないときに、母や子ども本人から請求します。
まずは家庭裁判所で「認知調停」を申し立てて話し合います。当事者間で合意ができ、裁判所がその合意が正当であると認めれば、「審判」によって父子関係が生じることになります。
調停が不成立になった場合には、子ども側から父へ「認知の訴え」という裁判を起こします。訴訟でDNA鑑定などを行い父子関係が確認されれば、判決で認知が認められます。
4-3.死後認知
父の死亡後に認知を行う方法です。父が遺言によって「子どもを認知する」と書いておけば、遺言執行者が認知の手続きを行います。遺言で認知するには必ず遺言執行者が必要なので、遺言書で指定しておくと良いでしょう。
また死後に子どもの方から認知請求することも可能です。父が死亡している場合、父を裁判の相手にはできないので、検察官を相手に認知の訴えを起こすこととなります。
5.認知しても親権者は母のまま
内縁の場合、子どもの「親権者」にも注意が必要です。法律婚の夫婦なら、父母の両方が子どもの親権者になりますが、内縁の当事者間に生まれた子どもの親権者は「母親のみ」です。
認知していない状態では父と子は他人同士なので父に親権が認められないのは当然ですが、認知しても原則として母が単独親権者である状態が継続します。
父が親権を取得するには、父母の協議によって子どもの親権者を父と定める必要があります。協議が調わない場合には、家庭裁判所で親権者を変更するための審判を申し立てる必要があります。
6.子どもの氏(苗字)について
内縁の場合、戸籍が別々となっています。子どもはどちらの氏になるのでしょうか?
6-1.認知しても子どもの氏は母と同じ
内縁状態で子どもが生まれると子どもは母の戸籍に入るので、氏(苗字)も母と同じになります。父が認知しても父の氏になるわけではありません。父の氏を名乗らせたいときには、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可の申立て」をしなければなりません。子の氏の変更の許可が得られれば子どもは父の戸籍に入ることができるので、父の氏を名乗ることができるようになります。
6-2.氏の変更許可が認められても親権者は母のまま
ただし氏の変更の許可が得られることと親権者が変更されることはイコールではありません。
子どもが父の戸籍に入って父の姓を名乗るようになっても、親権者は母のままです。
すると「子どもは父親の戸籍に入り父親の姓を名乗っているけれども、親権者は母親」という複雑な状態になります。
まとめ
内縁の状態で子どもができると、認知しない限り法律上は「子どもに父親がいない」状態になってしまいます。また戸籍や親権者に関する扱いも法律婚とは大きく異なってきます。今回ご説明した内容を、今後のパートナーとの関係について内縁関係を選択するかどうかの指標としていただけましたら幸いです。ご不明な点がありましたら、お気軽にお近くの弁護士までご相談下さい。
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