コラム
公開 2019.06.20 更新 2023.04.06

モラハラで離婚を決意!離婚における公正証書は必須?

離婚_アイキャッチ_61

離婚経験者から、「公正証書」を作成した方がいいとのアドバイスを受けたものの、なぜ、依頼した弁護士が作成した「離婚協議書」ではいけないのか…?
離婚経験者からのアドバイスに疑問を持つ人もいるでしょう。ご存知の通り、弁護士は法律の専門家です。だからこそ、費用をかけて依頼し、「離婚協議書」まで作成してもらったはずです。しかし、それにもかかわらず、また公証役場で費用をかけて「公正証書」を作成するメリットはあるのでしょうか。
ここでは、離婚における「公正証書」の役割を中心に、中でも作成をおすすめしたい「モラハラによる離婚」にも触れながら、ご説明します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

離婚における「公正証書」の役割とは?

離婚に至る理由は様々ですが、中でも、モラハラが理由の協議離婚の場合には、「公正証書」を作成しておくことが無難でしょう。まずは、「公正証書」の内容に触れてから、どうして「公正証書」の作成が必要か、その理由をご説明します。

・公正証書とは

日本公証人連合会の定義によると、公正証書とは「公証人がその権限において作成する公文書」のことをいいます。
ここでいう、「公証人」とは公務員です。原則、判事や検事など法律実務の経験豊かな実績がある人や法曹有資格者に準ずる学識経験を持っている人の中で、公募から法務大臣により任命された人が公証人となります(公証人法13条、13条の2)。さらに、職務の性質上、中立・公正が公証人には要求されます。

そのため、公正な第3者である公証人が権限に基づいて作成した公正証書は、調停証書や判決調書と同様に、信頼性の高い文書といわれています。
つまり、署名・捺印をしている当事者の意思に基づいて作成されたと信頼できます。万が一、偽造であるなどと文書の正当性を争う場合は、自分で証明しない限り、この推定は覆りません。それほど、公正証書の持つ証明力は強いといえます。

・公正証書はどうして必要?

それでは、どうして、協議離婚の場合に、公正証書が必要といわれるのでしょうか。
離婚が成立する方法は、一つではありません。協議離婚のように、当事者の合意だけで比較的簡単に離婚が成立する場合もあれば、調停や裁判など裁判所の制度を利用して離婚が成立する場合もあります。

調停であれば調停調書、裁判であれば和解調書ないし判決書として、確定した離婚条件などの内容が記載されます。非常に信頼性の高い文書であり、約束事が守られなければ、この文書に従って、文書の内容を確実に履行するように求めることができます。
しかし、協議離婚の場合には、一般的に離婚協議書が作成されますが、公的な機関が作成した文書ではないため、信頼性が低いといえます。つまり、相手側が署名したにもかかわらず、「偽造された文書」だと争えば、裁判で決着をつけることになり、そのための時間がまた必要となるわけです。

協議離婚の際に、公務員である公証人が作成する公正証書を作成しておけば、仮に裁判となっても、公正証書の証明力が高いため、記載内容がそのまま認められるような裁判の結果になる可能性が高いといえます。
また、このような信頼性の高い文書だからこそ、相手としては言い逃れができません。一度署名した離婚条件を確実に履行しなければならないという心理的強制が働き、履行される可能性が高まるというメリットもあります。

そのため、離婚条件として合意した内容を確実に実現してもらいたいのであれば、離婚協議書を公正証書で作成することをおすすめします。

モラハラが理由の協議離婚の場合には公正証書の作成がおすすめ

モラハラが理由での離婚は、特に公正証書を作成する方が何かとスムーズでしょう。
というのも、相手がモラハラの加害者であれば、離婚についての再度の話し合いも難航すると考えられるからです。

・モラハラとは?

そもそも、モラハラとは「モラルハラスメント」を略した言葉で、一般的には、「言葉や態度、身振りなどにより、個人の人格や尊厳を傷つけ、精神的に追いつめて傷つけること」と定義されます。精神的暴力や精神的虐待ともいわれ、一方的に相手に対して言葉で攻撃するなどのケースもあります。

一般的に、モラハラの原因としては、自己愛が強い、自分が他者よりも優れている、相手をコントロールしたいなどが挙げられています。つまり、相手がモラハラ加害者の場合、離婚することや離婚の条件を話し合う際に、普通の人よりも自分の意見を譲歩する可能性が少ないといえます。特に自分からならまだしも、相手から離婚を切り出されることに対しては、許せないという思いが強く、なかなか思うようにこちらの希望する離婚条件で合意することは難しいと容易に想像できます。
そのため、遂に離婚や離婚条件について相手の合意を得たのであれば、何としてもそのまま離婚を成立させることを第一優先に考える必要があります。相手が思い直して後に覆す可能性もあることを念頭に置いて、行動をしなければなりません。

このようなリスクの対策として、離婚や離婚条件の合意を、特に信頼性の高い文書で作成をしておくことをおすすめします。費用や手間はかかりますが、公正証書で作成しておけば、安心して離婚後の生活をすすめることができるのではないのでしょうか。

・女性からのモラハラもある

なお、モラハラは男性から女性というイメージが強いですが、実際には女性から男性へのモラハラも存在します。
裁判所の司法統計によると、平成29年度の離婚調停の申し立て件数は、夫側から17,918件、妻側から47,807件です。この中で、離婚の申し立ての動機を詳細にみていくと、「精神的に虐待する」というモラハラの件数は、夫側から3,626件(全体の約20.2%)、妻側から12,093件(全体の約25.3%)との数字が発表され、割合だけみれば、思いのほか、大きな差はないといえます。

出典:司法統計「平成29年度 婚姻関係事件数 夫・妻の離婚調停申し立て動機」
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/024/010024.pdf

男性、女性など性別に限らず、相手がモラハラ加害者の場合、離婚の条件に合意がなされた時点で、早急に公正証書の作成をおすすめします。

協議離婚における公正証書の作成の注意点

それでは、実際に公正証書の作成の際に、気をつけなければいけないことはあるのでしょうか。

・「強制執行認諾文言付」公正証書がおすすめ

公正証書の内容として、お金を支払うことが記載されている場合があります。このような場合に、相手が約束通りにお金を支払わなければ、相手の給与などを差し押さえて、そこから強制的に支払いを受けることができます。これを強制執行といいます。
事前に、お金を支払わなければ強制執行に服するとの「強制執行認諾」の文言が記載された公正証書であれば、裁判所に訴えることなく直ちに強制執行をすることができる効力が認められ、後の手続きがスムーズとなります。
そのため、公正証書を作成するのであれば、「強制執行認諾文言付」公正証書をおすすめします。

・公正証書は具体的な内容で

注意すべきは、公正証書の内容です。せっかく、強制執行を可能とする「強制執行認諾文言付」公正証書を作成したにもかかわらず、直ちに強制執行がなされない場合があります。
それは、公正証書の内容が漠然としているため、強制執行ができないという理由です。
例えば、毎月の養育費の金額を、公正証書の内容として記載しても、具体的な金額がなければ相手方の給与を差し押さえることができません。
「毎月○○円」であれば可能ですが、「前月の支出の50%」「給与の20%」など、明確な金額でない記載であれば、強制執行はできないのです。
そのため、公正証書には具体的な内容を記載してもらう必要があります。公正証書を作成することも重要ですが、ただ作成するだけではなく、公正証書の内容にも注意すべきといえます。

まとめ

公正証書の作成費用について、たった1通の文書を作成するだけと考えれば、中には、費用が高いとためらわれる人もいるでしょう。
しかし、記載される文書の内容を考えるとそうでもありません。例えば子どもの養育費であれば、子ども1名につき毎月4万円、今後15年間の支払いと仮定すると、総額で720万円、子ども2名なら1,440万円となります。
これらの金額を確実に履行してもらえる担保として考えれば、費用対効果は決して悪くないといえるのではないでしょうか。
もっとも、記載内容が重要となってくるので、公正証書の内容については、法律の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。