コラム
公開 2019.02.05 更新 2023.04.06

離婚後の戸籍(謄本)はどうなるの?

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離婚すること自体に目が向いて、それに伴うさまざまな環境の変化は置き去りに…。離婚条件や離婚後にするべきことを、見落とすこともあるかもしれません。特に、離婚後の戸籍については、考えすら浮かばなかった人も多く、離婚届を記入する時点で初めて、「どういうこと?」と筆が止まる人もいらっしゃるとか。よく分からないまま選択して、あとで後悔することのないように、ここでは、離婚後の戸籍について、基礎知識、戸籍と関連してどの姓を名乗るか、子どもがいる場合の戸籍について、解説していきます。

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戸籍とは?

日本には古くから戸籍制度が存在しています。
戸籍制度とは、日本国民の証である国籍と、親族的身分関係(夫婦、親子、兄弟姉妹等)を、戸籍簿に登録して管理し、公証する制度のことをいいます。
実際に記載されているのは、個人の氏名や生年月日、父母との続柄や配偶者などで、夫婦と未婚の子どもを基本単位として作られています。

また、戸籍は、結婚や離婚など、身分関係の形成の際に関わる重要なものといえます。
実生活においてあまり関係のないものと思われがちですが、公証制度であるため、以下のような場合には、戸籍の取り寄せが必要となります。

  • ・相続手続き
  • ・遺言書の作成
  • ・パスポートの発給申請
  • ・生命保険の請求
  • ・年金の受給など

なお、戸籍の取り寄せには謄本(とうほん)か抄本(しょうほん)かの区別がされます。
戸籍謄本とは、戸籍内にある全ての事項(出生や結婚など)や人が記載されており、現在の電子化された戸籍では全部事項証明書と呼ばれています。
一方、戸籍抄本とは、戸籍内にある一部の人の事項のみ記載で、一部事項証明書と呼ばれています。

離婚後の戸籍は2つから選べる

それでは、離婚した場合の戸籍はどのようになるのでしょうか。

離婚をすると、それまで一つの戸籍の中に入っていたものが別々になり、筆頭者(戸籍の最初に記載され、もともとの姓を名乗っていた側)の戸籍はそのまま変わりません。筆頭者でなく姓を変えて戸籍に入った側は、その戸籍から抜けることになります。

そもそも結婚前は別々の戸籍で、結婚の際に新たに筆頭者の戸籍に入ってきたわけですから、単に結婚の前に戻すと言えばそれまでです。
ただ、戸籍から抜けた側は、再度、結婚前の戸籍に自動的に戻るのかというと、じつは、以下の2つより自分の意思で選択することができます。

  • ・結婚前の戸籍に戻る
  • ・新しい戸籍を作る(自分が筆頭者となる)

なお、結婚前の戸籍に戻るには、両親の戸籍がなければなりません。既に死亡している場合には結婚前の戸籍に戻ることができず、新しい戸籍を作るしかありません。

離婚後の姓はどうなるの?

それでは、離婚後に名乗る姓はどうなるのでしょうか。離婚後の姓と戸籍の関係をここでは説明します。

結婚前の戸籍に戻る場合は旧姓のみ

離婚後に名乗る姓は、離婚後に選択する戸籍と関係があります。
というのも、結婚前の戸籍に戻るのであれば、旧姓を名乗ることになるからです。
つまり、両親の戸籍に戻るわけですから、両親の姓、つまり旧姓を名乗るのは、当然といえば当然です。
なお、離婚届に「婚姻前の氏にもどる者の本籍」という欄があるため、旧姓に戻るにはこの欄に記載されている「もとの戸籍にもどる」を選択すれば、自動的に戸籍が結婚前の戸籍に戻って変更されることになります。追加で新しい手続きが必要となるわけではありません。

新しい戸籍を作る場合は2つの姓から選べる

一方、離婚後は「新しい戸籍を作って自分が筆頭者になる」と選択した人は、以下の2つの姓から選ぶことができます。

  • ・旧姓で新しい戸籍を作る
  • ・結婚時に名乗っていた姓で新しい戸籍を作る

このように、結婚時に名乗っていた姓を継続して使用するという選択肢もあるのです。
というのも、姓が変わると日常生活においてさまざまな支障が出ます。特に、仕事をしていれば、その影響は顕著です。結婚時の姓で実績を出した場合には、姓を変更すると同一人物だと判明しにくく、マイナスの影響が出る可能性があります。例えば、研究職など論文を発表した場合や、結婚時の姓での資格取得などです。また、姓が変わることで離婚の事実が公表されることを避けたいという希望もあります。このような背景もあって、結婚時に名乗っていた姓をそのまま継続することができる選択肢を用意しています。

ただ、ここで注意すべきは、結婚時の姓を継続して名乗る場合の手続きです。
旧姓で新しい戸籍を作る場合は、離婚届にある「婚姻前の氏にもどる者の本籍」という欄の中で、「新しい戸籍を作る」を選択すれば自動的に新しい戸籍が作られます。
しかし、結婚時の姓を継続する場合は、離婚届とともに、「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しなければなりません。
期限は、離婚から3ヵ月以内と制限されており、この期間内であれば、継続して名乗りたい理由や、元夫婦である相手の同意など聞かれることはありません。

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子どもの戸籍と姓は?

離婚する夫婦に子どもがいる場合、戸籍と姓はどうなるのでしょうか。

子どもの戸籍と姓はそのまま

離婚の場合、筆頭者ではない配偶者が結婚時の戸籍から抜けるだけで、それ以外に変更はありません。つまり、離婚に伴って子どもも同じく戸籍から抜けることはなく、筆頭者の戸籍には筆頭者とその子どもが記載されたままとなります。
これは、子どもの親権者がどちらであるかは一切関係がありません。
例えば、父親が筆頭者であった場合、母親だけが戸籍から抜け、子どもはそのままの状態です。
母親が親権者となり、子どもと一緒に暮らしていても、父親の戸籍に残ったままということになるのです。
また、もし、母親が離婚の際に、旧姓に戻っていれば、母親と一緒に暮らしている子どもは、戸籍も姓も母親と異なる状況になります。

子どもと同じ戸籍にするには?

それでは、結婚時の戸籍から抜けた親と、子どもが同じ戸籍に記載されるには、どうすればいいのでしょうか。

まず、子どもと同じ戸籍となる前提として、自分を筆頭者とする「新しい戸籍を作る」必要があります。この場合、姓はどちらでも構いません。

次に、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の申し立てを行います。
子どもの姓を母親の姓と同じように変更するためです。
なお、必要な書類は下記となります。

  • ・子の氏の変更許可申立書
  • ・子どもの戸籍謄本
  • ・自分を筆頭者として作った新しい戸籍謄本

家庭裁判所で審査を受け、変更許可を得た場合は「許可審判書」が交付されます。
この「許可審判書」と新しい戸籍に入る書類の「入籍届」を役場に提出すれば完了です。

結婚時の姓を継続して名乗って新しい戸籍を作った場合は?

離婚後、子どもと同じ戸籍にするには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を受けてから、入籍届と共に提出するとの流れでした。
それでは、そもそも、離婚の際に、結婚時の姓を継続して名乗っていた場合は、子どもの姓と同じであるため、「子の氏の変更許可」が不要なのでは?という疑問がわきます。
確かに、姓だけをみれば、結婚時の姓と子どもの姓は同じなので、子どもの姓を変更する必要がないとも思われます。しかし、離婚してから名乗る「結婚時の姓」は、戸籍も異なり法律的に見れば同じではありません。ですから、形式的には同じ氏でも、実質的には全く同じ氏ではないため、「子の氏の変更許可」が必要になるのです。
結論的には、離婚後、旧姓か結婚時の姓かどちらを名乗ったとしても、子どもを同じ戸籍に入籍させる流れは変わらないということです。

なお、「子の氏の変更許可」の申し立てができるのは子ども自身であり、15歳未満の子どもであれば、親権者である法定代理人が申し立てを行うことになります。

子どもが生まれたときの戸籍に戻りたい場合は?

氏の変更をした子どもが未成年の場合、成人して1年以内であれば、子どもが入籍届を出して、生まれたときの戸籍に戻ることができます。
この場合は、家庭裁判所の許可は必要でなく、ただ入籍届を提出するだけになります。

あまり深く考えずに、離婚届に安易にチェックした後で、「まさかこんな意味だったとは…」とはならないために、離婚後の戸籍についてどのような選択肢があるのかを理解し、十分に検討した上で結論を出しましょう。

また、子どもがいる場合には、離婚後も戸籍にそのまま残るため、同じように戸籍から抜けるわけではありません。姓の変更もからめば、さらに分かりづらい部分もあり、注意が必要です。
少しでも疑問をもったり、自分の選択に自信がないような場合には、弁護士などの専門家に速やかに相談することをお勧めします。

なお、Authense法律事務所では、離婚に関する複雑な手続きや、多様な離婚トラブルに対応すべく、さまざまなニーズに対応する料金プランをご用意しております。
ぜひ一度ご覧ください。

記事を監修した弁護士
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