コラム
公開 2019.01.10 更新 2023.04.07

離婚裁判は必ず公開になるの?離婚裁判のメリット・デメリットとは

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離婚する場合、まずは夫婦で話し合い、決着しなければ調停に進み、調停でも合意に至らなかった場合に、裁判に進むことになります。
日本では約9割の離婚が当事者同士の話し合いで離婚に至る協議離婚で、離婚裁判にまで進むケースは非常に少数ですが、離婚するかどうかや子どもの親権など離婚の条件でどうしても両者が譲らない場合には、裁判まで至ることも視野に入れなければなりません。
この記事では、離婚裁判の概要とメリット・デメリットについて解説します。

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離婚裁判の前に離婚調停

離婚裁判においては、原則的には夫婦関係調整調停、通称離婚調停の手続きを経てからでないと訴訟手続きを進めることができない、「調停前置主義」と呼ばれる原則があります。調停前置主義は、家庭内の争いはその後も子どもなどを介して当事者同士の人間関係が続いていくことが考えられるため、対立構造が明確化する裁判より、お互い納得できる結論が得られる可能性のある調停から始める方が望ましいという考え方に根ざしています。
離婚調停を経ていない状態で離婚裁判の訴えを起こすことができないわけではありませんが、相手の所在がわからない場合や調停をそもそも行えない場合などの特殊なケースでなければ、家庭裁判所の職権で訴訟の前に調停に付されることになります。また、家庭裁判所では通常、離婚裁判の訴状とともに離婚調停不成立書の提出を求められますので、現実的には調停後でないと離婚裁判の申し立てはできません。

離婚裁判の流れ

離婚そのものの可否や、財産分与や子どもの親権といった離婚時の条件について調停でも合意に至らなかった場合、離婚裁判で争われることになります。

・家庭裁判所に訴状を提出する

離婚裁判は、当事者である夫または妻の住居地の家庭裁判所に訴状を提出することによってスタートします。

・第1回弁論期日の決定と通知

家庭裁判所に裁判の訴えが認められると、第1回口頭弁論期日が家庭裁判所によって指定されます。口頭弁論期日とは、裁判所が当事者を法廷に呼び出して、双方の当事者が意見や主張を述べる口頭弁論を行う期日です。訴状に不備等がなければ、通常3〜10日程度で第1回口頭弁論期日を指定する連絡が届きます。通常、第1回口頭弁論期日は訴状の提出の1ヵ月ほど後です。そして第1回口頭弁論期日が決まると、相手方(被告)にも裁判所から期日の呼び出し状が郵送されます。

・答弁書の準備・提出

第1回弁論期日までの間に、被告には訴状の写しが送られます。そして被告は、訴状の趣旨や原因について自分の意見を記載した答弁書という書面を準備して、家庭裁判所に提出します。

・口頭弁論で双方の意見を主張

口頭弁論は原告が事実関係の説明や証拠などをもとに、主張の正当性を証明しようとするのに対し、被告側がこれに反論して、自分の主張を裏付ける証拠などを提出します。第1回口頭弁論期日では、訴状と答弁書で食い違う部分などを確認し、裁判官が準備書面という反論のための書面や不足する証拠を提出するよう述べる程度にとどまる場合が多いでしょう。
そして双方の主張と反論を口頭弁論の場で繰り返していくことによって、離婚裁判の争点を整理していきます。
口頭弁論はおよそ1ヵ月に1回程度の頻度で開かれ、裁判官がどちらの主張が法的な観点から見て認められるかを判断できるまで何度も続けられます。
多くの場合、口頭弁論は1年程度続けられるでしょう。

・弁論の終結と判決の言い渡し

口頭弁論を重ねて、判決を下すのに十分な材料が揃ったと裁判官が判断すると、弁論の終結が宣言され、判決言渡期日が指定されます。その指定された期日に判決が言い渡されます。
ただし、その判決が確定するまでには判決送達後2週間の猶予がありますので、もし判決に納得がいかない場合にはこの2週間以内に、裁判の取り消し・変更を求めて上訴できます。

和解離婚となるケースも多い

訴訟の途中で、裁判官から夫婦に対して「話し合いで解決できませんか」などと和解勧告をされることがあります。裁判手続き中に当事者双方が和解に合意し離婚するケースを和解離婚と呼びます。離婚調停までしても解決しなかったのに和解なんて無理に決まっていると思われるかもしれませんが、日本では裁判にまで進んだケースでもその半分程度が、和解離婚となっています。
和解勧告は必ずしも従う必要はありませんが、離婚裁判が長引く中で疲弊してしまい、和解で多少譲歩してでも離婚を成立させたいと考えるのはある意味当然です。また、和解離婚は裁判離婚と違って、当事者双方の合意が必要なため、どちらかの主張が一方的に退けられることがないのも大きなメリットです。裁判の判決では、一方の主張が全面的に退けられてしまう可能性もあります。一方、和解で解決する場合は、当事者双方がある程度の譲歩をして合意に至るため自分の主張が100%退けられることはありません。そのため、お互いにある程度納得した上で、早く離婚が成立するので、裁判にまで進んだケースでも和解を選ぶ人が多いのです。

和解離婚では、和解が成立すると、和解の内容を記した和解調書が裁判所によって作成されます。そして、和解成立後10日以内に戸籍役場へ和解調書謄本と離婚届を提出することによって、和解離婚の手続きは完了します。またこの際、裁判ではなく和解によって離婚したことが戸籍上に明記されますので、再婚など戸籍を見せる必要が生じた場合に相手に与える印象がだいぶ穏やかになるでしょう。

離婚裁判の基本は公開

離婚調停から離婚裁判に進む際に、多くの人が気になる点は、裁判になることによって自分のプライベートな情報がどこまで公開されてしまうのかという点です。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、裁判では公平性を保つために、基本的には公開され、誰にでも傍聴が認められています。離婚裁判もその例外ではないため、非公開とすべき特別な事情がある場合を除き、口頭弁論は原則毎回公開され、誰でも傍聴できる環境で行われます。そのため、自分や相手が陳述した内容や、提出した証拠などが公にされてしまうことを考えなければなりません。特に、証拠には不貞行為を証明する写真など極めてプライベートな内容を含むことが多く、それらを傍聴人に見られたらと心配されることでしょう。

しかし実際には、裁判における主張や証拠の提出は、裁判所と相手方に書面を事前に提出する形で行い、口頭弁論期日では事前に提出した書面を読み上げることはせず、陳述した扱いで進行されます。尋問以外の具体的な証拠などは別途記録の閲覧手続きをしない限り閲覧されませんので、傍聴人などにそういった証拠や訴状、準備書面の内容など全ての情報が事細かに伝わってしまうことはほとんどありません。
とはいえ、離婚というプライベートな問題を、全てではないにしても公開のもとで争うというのは非常に大きな精神的苦痛を伴うことは事実です。

離婚裁判のメリットとデメリットを知って、自分にあった離婚問題解決方法を

公開されるということは離婚裁判の大きなデメリットですが、他にも離婚裁判を行うデメリットはいくつかあります。

【離婚裁判のデメリット】

・多額の費用と時間が必要

離婚裁判のデメリットとしては、第一に弁護士費用などの金銭面での負担が挙げられるでしょう。裁判に勝てると確信できるだけの証拠などがあれば、慰謝料などで支払うこともできるでしょうが、そうでない場合にはやはり金銭的なデメリットは大きいです。
経済的な問題に加えて、準備や裁判そのものに非常に時間がかかってしまうことも大きなデメリットです。1年以上裁判が長引くことも珍しくありませんし、そうなると育児や仕事に大きな影響が出てしまいます。

・心理的負担が大きい

離婚裁判では、どちらの主張が正しいかを巡って法廷で激しく争うことになります。そのため、生活を共にして情もある相手と互いに不利な点を探り合い、主張をぶつけ合う裁判は非常に大きなストレスとなります。長引く裁判で心を病んでしまう人も決して珍しくはありません。

・判決には必ず従わなければならない

どんなに不本意な判決であったとしても、裁判所が下した判決には強制力があるので判決が確定した場合、必ず従わなければなりません。

このようにデメリットばかりが目立ちがちな離婚裁判ですが、場合によってはもちろんメリットもあります。

【離婚裁判のメリット】

・判決には法的な強制力がある

裁判の判決には強い強制力があり、これを守らなかった場合には法的な措置をとることもできます。調停で離婚が妥当という判断になったとしても相手がどうしても離婚に応じないような場合には、離婚は成立しませんが、裁判ですと相手の意向は関係なく、離婚すべきと判決が下されれば、離婚は成立します。法的な強制力は離婚するかどうかだけではなく、養育費など離婚条件に関しても働きますので、養育費を受け取る側であった場合には大きな安心につながります。

・証拠を持っている場合有利である

夫婦で話し合う協議離婚では感情的な面などが優先されがちですが、裁判になった場合に重要になるのは、当事者それぞれの主張を裏付ける証拠の有無です。例えば夫が不倫をしていてそれを理由に離婚を希望しているケースでは、明らかに肉体関係を持っていたことを示す証拠を持っていれば、夫がどれだけ離婚に反対していたとしても、裁判所は法的離婚事由があると判断することが多く、離婚が成立することになります。

このように、裁判にまで進んだ方が良いのか、裁判にまで進んでしまった場合和解勧告を受け入れるべきなのかは、それぞれの状況によって異なります。
特に裁判まで考える段階では、自分一人での解決は難しいので、弁護士への相談を通して、よりよい解決方法を探っていくことが大切です。

記事を監修した弁護士
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