不動産法務のよくある質問

建物の賃貸管理にまつわるトラブル

私はマンションやアパートを賃貸しているオーナです。借主が騒音等を出し他の入居者や近隣住民から苦情がはいっているのですが、どうすればいいでしょうか。

まずは、騒音の原因を作出している疑いのある賃借人に注意をするとともに、その賃借人側の言い分を聞き、苦情の正当性をチェックしましょう。
仮に、苦情が正当であると断定できるのであれば、その賃借人に改善を求め、賃借人が改善を約束すればそれを苦情を申し入れた者に説明しておきましょう。
再三注意しているにも関わらず、賃借人に改善が見られない場合には、弁護士を代理人に立てて文書で警告することも有効な手段となりえます。
それでも、賃借人に一切の改善が見受けられないのであれば、賃貸借契約の解除を検討するのがいいでしょう。実際に、本件のような事案において、不動産オーナーによる再三の注意にも関わらず賃借人が迷惑行為を継続し、近隣住民の静謐な生活環境を害するに至っているようなケースでは、賃貸借契約の解除もできるとされています(東京地方裁判所昭和54年10月3日判決、横浜地方裁判所平成元年4月13日判決)。

私はマンションやアパートを賃貸しているオーナです。最近、賃借人から、「本来駐車スペースではない箇所に車があるため車を出すことができない」など、駐車場での迷惑駐車に関するクレームがありました。どうすればいいのでしょうか。

まずは、迷惑駐車を発見した場合には、「いつ、どこで、だれが、なにを、どうしたのか」など詳細を明記し、さらに「〇時間以内に車を移動させない場合は、警察に連絡する」といった警告文を最後に書いて、張り紙を掲示しましょう。張り紙をする際に接着剤などを使うと器物損壊になってしまう可能性があるので、注意が必要です。車を傷付けないように、ワイパーなどに紙を挟み、念のため写真を撮っておくといいでしょう。
それでも、迷惑駐車がなくならない場合には、警察に相談してみましょう。ここで、最も気を付けなければならないのは、迷惑車両だからといって勝手に移動などをしてはいけないということです。法には「自力救済禁止の原則」というものがあるので、法の手続きを行わずに、実力で権利を回復してはならず、仮に実力行使をした場合には、反対に違法行為として処罰の対象になる可能性があるからです。

借主の退去後に、ゴミや荷物を残していたのですが、これらが残っていても明け渡しが完了したことになるのですか。

明渡しは、その部屋にある借主の家財道具などを全て片づけて、入居前の状態に戻し、鍵を返還した時に、初めて完了します。
したがって、借主が出て行っても、ゴミや荷物などが残っていると、明け渡しは完了していないことになり、借主が部屋を使用している状態が続いているといえます。
そこで、仮にその状態が継続したまま退去期限を過ぎてしまうのであれば、部屋を使用する権利がないのにかかわらず、借主は、部屋を使い続けていることになります。
なお、このような場合、賃貸人は、賃借人に対して、退去期限から、ゴミや荷物の片付けが完了するまでの賃料相当損害金を請求することができます。

明渡しの際、貸主・借主は、賃貸建物をもとの状態に戻す費用をどのように分担しなければならないのでしょうか。

賃借人は、明渡しに際し、借りていた家屋を原状回復させる義務を負担しています(原状回復義務。民法616条による597条1項、598条の準用)。
ここでいう「原状回復」には、賃借人が通常の使用をした場合に生じる賃借物の経年劣化や通常損耗、畳・クロスの経年による変色等は、原状回復義務の内容に含まれないと考えられています。なぜなら、このような損耗の発生は、賃貸借契約の本質上、当然に予定されていると考えられるからです。
そこで、あくまでも、タバコのヤニで汚れたクロスの張り替えなど、賃借人が通常の使用方法以外の方法により賃借物を使用したことにより発生させた損耗については、それを原状に回復する費用が、賃借人の負担とされます。

賃借人が破損したガラスや壁の穴の修理費を敷金から差し引くことはできますか。

賃借人は、引渡しを受けた賃借物を善良な管理者の注意をもって保管する義務を負い、さらに、賃貸借が終了した場合には、原状に復して賃借物を返還する義務を負っています(民法616条、598条)。
本件では、賃借人がガラスを破損し、また壁に穴をあけたといえるので、特段の事情のない限り、賃借人に保管義務違反の債務不履行があり、賃貸人は賃借人に対して債務不履行にもとづく損害賠償請求権を有するものと考えられます。したがって、これらの修理代金は賃借人が負担すべきものと考えられます。

賃貸借契約が終了したにもかかわらず、借主が1か月間居座り続けています。1か月分の賃料を請求することはできませんか。

何らかの原因で契約がすでに終了しているため、家賃を請求することはできません。しかし、そのような場合にお金を一切取れないというのはおかしな話ですので、賃料相当損害金として請求することは可能です。つまり、居座り続けている借主に対して、家賃に相当する金額の損害賠償請求ができるのです。また、この賃料相当損害金は、家賃の2倍相当程度までであれば、特約で増額できることが多くの裁判例で認められています。

私はマンションやアパートを賃貸しているオーナです。賃借人との賃貸借契約の更新を迎える際に、新しい条件を契約に追加したいのですが、注意事項はありますか。

まず、条件を追加した契約を賃借人の方に同意してもらえるかどうか確認してみましょう。当事者の合意によって賃貸借契約を当事者の合意によって賃貸借契約を更新する場合には、新たな賃貸借契約を結ぶことになります。
ここで、仮に当事者の協議がととのわない場合には、契約期間の満了の1年前から6か月前までに予め借主に対して、更新拒絶の通知をしなければなりません。
もっとも、更新拒絶の通知をしたからと言って、契約期間満了時に契約が当然終了するわけではなく、オーナー様が更新拒絶の通知をしたにもかかわらず、借主が契約期間終了時に建物に居座っている時には、借主に対して、速やかに異議を述べなければなりません。
さらに、この異議には、正当な事由がなければなりません。
これらの要件を満たさない場合、従前の賃貸借契約は法律によって当然に更新されてしまいますので注意してください。
このような事態にならないために、賃借人が賃貸人の求める更新条件に同意しない場合には、なるべく早い段階で交渉を弁護士に依頼しましょう。

これまで継続してきた賃貸借契約が、2020年4月1日以降に更新時期を迎える場合に、更新契約書について、個人の連帯保証人に署名・押印させたほうがよいですか。

2020年4月1日より前に成立した契約について、2020年4月1日以降に合意更新された場合は、更新後の契約には改正民法が適用されます。これを前提とすると、署名・押印させた場合、個人の連帯保証人については、責任限度額である極度額を定めなければ、連帯保証契約が無効とされてしまいます。
改正民法においても、賃貸借契約の連帯保証人の責任は、特に更新合意がなくとも、当然に更新後の契約についても継続するものとされているので、署名・押印させる必要はありません。なお、連帯保証人に責任が継続していることを自覚してもらうために、更新後に、連帯保証人に対して、貸主・借主間で普通借家契約が更新されたこと、更新後も引き続き連帯保証人としての責任が継続することを手紙等の文書で通知するのがよいです。

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