DXとは何か正確に理解している方は少ないのではないでしょうか?ビジネスシーンでよく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)は業務改善や収益アップにつながるとして注目を集めています。DXの意味や導入するメリットなどを、実際に導入した企業の成功事例とともにご紹介します。
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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して製品・サービスやビジネスモデルを変革するとともに、企業文化や働き方にも変革を起こし、企業全体として市場での優位性を確保することです。
製品やサービスといった顧客に見える部分だけでなく、企業文化、働き方や組織の在り方といった企業の内側で変革を起こすこともDXに含まれます。簡単に言えば、最先端の技術を活用して競争力を高めるというイメージです。
経済産業省は、令和元年7月策定の『「DX推進指標」とそのガイダンス』において、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
ちなみに、DXを英語で表記すると「Digital Transformation」です。英語圏では「Trans」を「X」と省略する慣例があることから、「DT」ではなく「DX」と呼ばれています。
DXの登場
DXの概念自体はそれほど新しいものではなく、2004年ころから登場した概念です。しかし、昨今の技術の進歩はすさまじく、人工知能やITが台頭してきたことで、近年改めてDXが注目されているのです。
日本でも、経済産業省による『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』が2018年9月に公表されて以降、日本政府全体が主体となってDXを推し進めています。
IT化との違い
DXを理解するうえで重要なのが、「IT化」との違いを知っておくことです。「IT化」はデジタル技術を活用すること自体を目的とするものです。「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタラゼーション(Digitalization)」もほぼ同義です。
他方、「DX」はデジタル技術を活用して業務変革を起こすことを指します。「IT化」を手段として業務変革を起こすのが「DX」ということです。
最近ではすでに多くの企業がIT化に取り組んでおり、日常生活や市場でもIT化が当然となってきました。IT化が当たり前となった環境でさらに差別化を図り、競争上の優位性を確保することがDXです。
DXが求められる理由
今この瞬間も社会の需要や消費者の行動は変化しており、市場は絶えず変化しつづけています。変化していく市場に対応しようと多くの企業がDXに取り組んでいるため、DXを疎かにしてしまうと変化の流れに取り残されてしまいます。
それだけではありません。「2025年の崖」という言葉をご存知でしょうか?これは、前述の、経済産業省が作成した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』の中で使用されている言葉です。
DXを導入せず、維持費の高い既存システムを使い続けることとIT人材の不足により損失が拡大していき、2025年以降ではこの損失が最大12兆円にものぼることを意味しています。DXへの取り組みを怠ってしまうと、極めて高い確率で大きな損失を被ります。
このように、市場の変化に対応し、既存システムの課題を解決し業務の見直しの必要が迫られていることが、DXが求められる理由なのです。
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DX導入によるメリット
DXを導入することで得られる代表的なメリットは、次の4つです。
業務の生産性向上につながる
デジタル技術を活用して業務を改善し、生産規模を拡大できれば、それだけ生産量も増加します。古いシステムの維持・運用に充てていた費用や人員を他の分野に投入することで利益率の向上も図れるでしょう。
歴史的に見ても、爆発的な生産性向上を果たした産業革命の契機となったのは、進歩した技術です。現代においては、DXが“進歩した技術”として生産性を向上させているのです。
市場の変化に迅速に対応できる
現在の市場には、デジタル技術があふれています。AIや5G回線などがその代表的です。これらが市場に登場するということは、当然、消費行動に変化をもたらします。
消費行動に対応するためには企業自身も変化が求められます。DXを活用し、社会のニーズを満たす商品やサービスを提供できれば大きなビジネスチャンスをつかめるでしょう。
既存システムの維持費を削減できる
前述の2025年の崖という言葉どおり、特に2025年以降は既存システムの維持費による損害が拡大していく傾向にあります。早めにDXに取り組み、古い技術から脱却することができれば無用な損害を被ることもありません。
データ喪失のリスクから解放される
古いシステムを使用しているがために、災害や事故といった不慮の事態にデータが損失し復旧できないというケースも起こりえます。クラウド化などのDXを進めることで、重要な財産である企業のデータを守ることができます。
DXを導入して成功した企業の実例
ウーバー・テクノロジーズ
アメリカのウーバー・テクノロジーズは、飲食店と連携した料理宅配サービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」を展開。デジタル技術を活用し、インターネット上で消費者と飲食店を結びつけることで、飲食店に足を運ばずとも料理の注文や受け取りを可能にするサービスです。
買い手側は手間をかけることなく料理を食べることができ、売り手(ウーバーイーツ配達員)は空いた時間で仕事ができるシステムとして発展を続けています。売り手である配達員は全員が個人事業主として配達業務に従事しており、この点が従来の“出前”との大きな違いです。
ウーバー・テクノロジーズ社は飲食店や配達員を保有していないにもかかわらず、システム一つで大きな収益をあげることに成功しました。昨今の新型コロナウイルスの影響で利用したことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
配達員による交通事故や交通ルール違反といった問題もありますが、DXの面で見れば成功例の代表的な一つと言えます。
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス
「マックスバリュ関東」「カスミ」「マルエツ」のイオングループ3社が経営統合して誕生したユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは、通販などのデジタル小売に対抗すべくDXを導入。2020年度策定の事業計画では、DXを大きな柱としています。
これに基づき、大型店舗での買い物から支払いまでを一元化することでスムーズに並ばずに買い物ができるシステムを整えました。あらかじめインターネットで商品を注文しておき、小型の無人店舗で受け取るサービスも始めています。
顧客のニーズに応えるだけでなく、現場の働き方も同時に変革を進めたDXの成功例と言えるでしょう。
日本郵便株式会社(郵便局)
いまだ実験段階ではあるものの、進化した技術を活用して変革を起こそうとしている会社があります。日本郵便株式会社は、2018年に日本で初めて操縦者から目視できない場所でのドローン(自立型無人航空機)による航空輸送を開始すると発表。
2020年には、東京都奥多摩にてドローンによる航空配送試験を行いました。山間部の多い同地区では陸上通路で長い時間をかけて配送していますが、ドローンの航空配送では約半分の時間で配送が完了しました。配送時間の短縮・配達員の負担軽減と、ドローン導入によるメリットは大きそうです。
元々、通販をはじめとする物流産業に変革をもたらすことが期待されているドローン。離島や山間部など、陸路での配送が困難な状況のソリューションとして注目を集めています。医薬品や輸血液の輸送とった緊急時の実用も期待されています。
日本郵便株式会社は、進化した技術を積極的に取り入れることで業務に変革を起こそうとしている企業の一例です。
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DXを導入するにあたっての課題
DXを導入する際の課題として、主に以下2点を解説します。
既存システムに縛られてはいけない
既存システムの維持予算が高額になると、新しいシステムを導入する予算の工面に苦労することがあり得ます。また、新しいシステムの使用方法に難しさを感じてしまったりデータ移行の時間が取れなかったり、DXへの取り組みにはハードルを感じてしまいがちです。
しかし、手をこまねいていては時代の変化に取り残されてしまいます。
「2025年の崖」を思い出してみてください。これを解決する一つの方法としては、既存システムを活用できる新システムを選ぶことです。既存システムと連携しつつ、少しずつ新システムに慣れていけば、DX導入のハードルも下がります。
将来のビジョンを明確にしておく
DXの必要性が声高に叫ばれる昨今の状況から、少しでも早くDX化したいという思いを抱くかもしれません。しかし、自社の明確なビジョンを持たないまま取り組んでも良い結果は出にくいです。ビジョンが不明確だと、経営層からの指示があいまいになり現場が対応できないからです。
「IoTを活用して新ビジネスを立ち上げよう」と曖昧な提案を受けても、現場は混乱してしまいます。まずは経営層がしっかりと将来のビジョンを明確にし、それを社内で共有することが必要です。このプロセスが、DXの第一歩となります。
DXの今後の展望
前述のとおり、市場は絶えず変化しており、国内外の多数の企業がこの変化に対応すべくDXに取り組んでいます。DXに取り組まなければ、競争力が相対的に下がっていくことは明白です。今後、生き残るためにはDXが不可欠となり、DXはより加速していくでしょう。
また、経済産業省は、2020年5月からDX認定企業制度を開始し、投資家をはじめとするステークホルダーに対し企業の取り組みを見える化しています。上場企業を対象とした「DX銘柄」の選定も行っており、国が率先してDXを推奨しています。
DXはいまや国策として推し進められていますから、社会はますますDXが進んでいくことが見込まれます。今、多くの企業は「2025年の崖」を飛び越えてさらなる躍進を遂げるか、崖に転落してしまうかという瀬戸際にあるのです。
まとめ
DXについて、その意味や必要性、導入した国内外の企業の事例を紹介しました。DX導入によるメリットは大きく、今回紹介した企業以外にもDX導入で成功を収めた企業はたくさんあります。
DXは決して簡単な取り組みではありませんが、今後の競争を勝ち抜いていくためには必要不可欠ですから、ぜひ取り組んでみてください。