コラム
公開 2021.12.24 更新 2022.09.15

信頼していた社員による着服が発覚。依頼者の要望通りに解決できた事例

信頼していた社員による着服が発覚。依頼者の要望通りに解決できた事例

食品加工会社で、自社の社員十数名が結託し、長年にわたって着服行為を行っていたことが発覚しました。

食品加工会社を経営するA氏は、犯行に加担した社員のうち、主要な3名からの真摯な謝罪と反省を求め、ご相談にお見えになりました。

弁護士がどのように解決へと導いたのかを解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

ご相談までの経緯・背景

食品加工会社を経営するA氏からのある日ご依頼がありました。
その内容は、自社の社員十数名が結託し、長年にわたって着服行為を行っていたことが発覚した、ということでした。
犯行は計画的、かつ継続して行われており、社員を愛し、信頼していたA氏は大きなショックを受けていました。
社内の引き締めはもちろん、ご自身の気持ちの整理のためにも、A氏は犯行に加担した社員のうち、主要な3名からの真摯な謝罪と反省を求め、当所にご相談にお見えになりました。

なお、Authense法律事務所では、不祥事が起こらない環境作りから不祥事発生時の対応まで一貫してサポートする「企業不祥事対応プラン」など、多様な企業法務ニーズに対応するさまざまな料金プランをご用意しております。

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解決までの流れ

着服を行った3名(X、Y 、Z)について、それぞれ次のような対応を求め、ご依頼をいただきました。

Xについて
被害届は提出済みだが、警察が動かない。警察を動かして刑事処罰を受けさせてほしい。

Yについて
自分のしたことを認めているが、弁護士を通したやり取りではなく、直接会社に来て社長に対して謝ってほしい。

Zについて
自分のしたことを否認している。会社の代理人として相手に自分のしたことを認めさせ、謝罪させてほしい。

ご依頼を受け、それぞれ解決に向けて動き始めました。
Xに関しては、警察を猛プッシュして捜査を急がせました。
経済犯罪は後回しにされることは珍しくなく、警察が多忙だとますますその傾向は強まります。
このケースのような着服事件は、証拠の収集や取り扱いが面倒なので、被害届を提出しても突き返されることが珍しくありません。
そのため、連日担当部署に電話をかけ、いつ逮捕するのか、いつ捜査は始まるのかプレッシャーをかけ続けました。
その結果、無事逮捕され、執行猶予付きの有罪判決が下されました。

Yは罪を認め、謝罪はしていました。着服した金額も返しますとも言っていました。しかしその謝罪は相手方の弁護士を通してのものであり、来社して、社長の面前で直接謝ることは拒否していました。
A氏の希望は、直接の謝罪です。通常、互いに感情的になっている被害者と加害者を対面させることはありません。
Yは最後まで来社することを拒んでいましたが、双方の弁護士がその場に同席するから大丈夫、と安心させることで承諾。社長の前で謝罪と示談書への署名を実現しました。

Zは最後まで自身の犯行を否認していました。
実は、この事件の首謀者はZでした。
そこで、Z以外の共犯者を全員事務所に呼び出し、全員に、Zの関与を供述させて陳述書を作成。それらを突き付けて自分の責任を認めさせ、謝罪文を書かせることができました。解決金も支払わせて示談も成立しています。

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結果・解決ポイント

弁護士になる前、検察官として活動した経験が活きた事件でした。
警察に被害届を提出しても動いてくれないというのは、決して珍しいことではありません。
検察官の経験から、警察側の心理は熟知していますので、彼らにどう接すれば動いてくれるのか、先読みしながら進めていきました。

Zに関しても、検察官時代の取り調べの経験を活用しています。
否認する者に対し、どのような証拠を突き付ければ責任を免れられないと感じさせられるかを判断し、共犯者らから必要な事実を聴取して証拠化しました。
証拠を取る、供述調書を書くといった作業は検察官時代に日々行っていたものです。その経験が役に立っています。

企業内不祥事対応は事実の認定から始まります。その前提となる証拠収集能力は、検察官としての捜査経験があってこそだと自負しています。
その経験が企業内不祥事対応に生きていると実感した事件でした。

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