DXと同程度あるいはそれ以上に重要な指針にサステナビリティがあります。
サステナビリティは「持続可能性」や「社会的責任を果たす」といった意味合いを持っており、不確実性の高い現代において企業にはサステナビリティが強く求められます。
目次
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DXとサステナビリティの関係性
新型コロナウイルスの感染拡大により、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要性が叫ばれるようになってしばらく時間が経ちました。
DXは、デジタル技術を導入し事業に変革をもたらすことを指しますが、現在では多くの企業がDX導入に力を注いでいるのではないでしょうか?
新型コロナウイルス感染リスク低減のため、対面での業務が削減される傾向を受け、半ば強制的にDXを推し進めざるを得ないという企業もあるかもしれません。
さらに、昨今はミレニアル世代以降のデジタルネイティブが増加し、ビジネスの世界だけでなく社会全体としてデジタル化が進んでいます。
サステナビリティとは
近年、DXと同等もしくはそれ以上に現代の企業に大切な要素として位置づけられているものに「サステナビリティ(持続可能性)」が挙げられます。
サステナビリティとは、「持続可能性」を意味し、こと企業においては企業の存続・発展を意味します。
自社のみならず環境や社会を絡めてサステナビリティを捉える企業もあるため、扱われる範囲が広いテーマと言えます。
以前からサステナビリティは企業にとって必要な指針であると認識されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大により将来の先行きが不透明になり、より不確実性が高まっている現代社会においてサステナビリティの重要性が増しているのです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたとして、業績予想の下方修正(連結・非連結)を発表した上場企業が1,000社以上にのぼり、先行き不透明な状況を踏まえた企業経営の見直しが求められています。※1
DXとサステナビリティのこれまでの関係性
もっとも、従来はDXとサステナビリティは別物として捉えられていました。
デジタル技術を導入して事業改革をもたらすDXには、サステナビリティの要素は含まれないという見方が主流だったのです。
しかし、今やDXやデジタル化の波は、企業のサステナビリティの領域にも押し寄せています。
前述の通り、社会全体としてデジタル化が進んでいる影響から、もはやDXを無視してはサステナビリティを推進できないのです。
企業のサステナビリティにもDXが影響を及ぼしている
不確実性が高まる環境下において、サステナビリティの重要性は確実に高まっています。
最近では、「サステナビリティ・トランスフォーメーション」(SX)の必要性も叫ばれています。
サステナビリティ・トランスフォーメーションとは、企業が持続可能性を重視し、企業の稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との接し方を変革するための経営指針を指します。
2020年8月に経済産業省経済産業政策局が発表した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」の「中間とりまとめ」の中でもSXは触れられています。※2
政府もSXの重要性は認識しており、長期的な存続・成長を目指す企業と短期的な成果を求める投資家との対話を促しています。
この「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」によれば、SXの実現には、「企業のサステナビリティ(稼ぐ力の持続性)」と「社会のサステナビリティ(将来的な社会の姿)」の同期化が必要とされています。
企業のサステナビリティ
企業のサステナビリティとは、企業としての稼ぐ力(強み・競争優位性)を中長期で持続・強化する事業ポートフォリオマネジメントやイノベーションに対する取り組みを通じて、企業を存続させ成長させることを言います。
そして、企業が自身の強みや競争優位性、ビジネスモデルを持続・強化させるためには、DXの導入が不可欠です。
デジタル化の進む社会のニーズに応えるためには、企業自身もデジタル技術を用いてDXを図る必要があります。
何より、競業他社がDXを導入しビジネスモデルの革新に成功すれば、自社は競争に敗れます。
それだけでなく、変化していく社会に取り残されてしまうことで、企業の存続すら危ぶまれるでしょう。
社会のサステナビリティ
もう一つの要素である社会のサステナビリティとは、不確実性に備え、企業としての稼ぐ力の持続性・成長性に対する中長期的なリスクとビジネスチャンスの双方を把握し、経営に反映させることを言います。
中長期的なリスクとビジネスチャンスを把握するためには、現在進行形で変化し続けている社会情勢を取り込まなければなりません。
そして、DXはまさに現代の社会情勢において重要なトピックスです。
社会のサステビリティという側面においても、DXの影響は及んでいると言えるでしょう。
このように、サステナビリティとDXは切っても切り離せない存在であり、これからの企業経営はDXとSXを上手く組み合わせて相乗効果を生み出すことが望まれます。
サステナビリティもデジタル・ファーストへ
SXとDXが密接な関係にあることは前述した通りです。
今後は、サステナビリティ業務もデジタルを前提とする「デジタル・ファースト」な業務への転換が求められています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、非対面によるステークホルダー・エンゲージメントが求められるようになりました。
現に、オンライン形式でのステークホルダー・ミーティングや企業ホームページでのサステナビリティ関連情報の開示など、サステナビリティ業務を、デジタル技術を用いて推進する企業も現れています。
労務管理の面でも、業務をデジタルで管理することで、労働時間の短縮やコスト削減を図ることができます。
これにより従業員のワークライフバランスが改善されれば、企業全体のサステナビリティも実現しやすくなるでしょう。
これからは、業務管理や労務管理、ステークホルダーとの対話に始まり、企業活動のあらゆる面でデジタル化が求められる時代です。
繰り返しになりますが、サステナビリティ業務もデジタル・ファーストが求められるのです。
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サステナビリティに関する企業活動の事例
それでは、実際にサステナビリティに取り組んでいる企業の実例を紹介しましょう。
株式会社ブリヂストン
株式会社ブリヂストンは、「最高の品質で社会に貢献」することを伝統と使命としています。※3
グローバル化に伴うさまざまな課題に対応し、責任ある企業として持続可能な社会の実現や社会課題の解決に向けて取り組む必要があることを認識し、「Our Way to Serve」というグローバルCSR指針を掲げています。
これは、ブリヂストングループが、業界のリーダーとして未来に対する責任を果たすための指針です。
ブリヂストンは、グループ全体として社会からの期待に応え、中長期事業戦略を実現していくために、この「Our Way to Serve」を経営指針として、すべての事業の中核に位置付けています。
「Our Way to Serve」を通じて、企業文化や事業戦略にサステナビリティを融合する取り組みを行っています。
日本電気株式会社(NEC)
NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会を実現したいとの思いから、「NEC Way」というグループ共通の理念を策定しています。※4
この「NEC Way」に基づき、NECは事業活動を通した社会課題解決への貢献、リスク管理・コンプライアンスの徹底、ステークホルダー・コミュニケーションの推進を軸にサステナブル経営を推進しています。
2013年には、社会にとっての価値を創出する社会価値創造型企業への変革を宣言しています。※5
さらに、翌2014年には、この変革に向けたブランドステートメントを発表。
2020年4月に発表した「NEC Way」は、会社の存在意義や行動原則と個人とのつながりを端的に示していると言えるでしょう。
デジタル目線から見るサステナビリティ
デジタル化が進む社会においてサステナビリティを推進するためには、リスク管理や社内組織の整備が不可欠です。
ここでは、「情報セキュリティ」「コンプライアンス」「コーポレート・ガバナンス」の3つの要素に分けて検討していきます。
情報セキュリティ
デジタル化が進み、電子データやクラウドサービスを用いて企業情報がやり取りされる機会が多くなりました。
自社の情報を電子化して保管する企業も増加していると思われます。
クライアントや取引先から取得した情報・自社が有するノウハウや知的財産権等を情報資産として捉え、情報漏洩等が生じないように、情報を保護・管理するための規定や体制を整備する必要があります。
万一、事故が起きてしまった場合は再発防止策を講じなければなりません。
当然、個人情報保護法や不正競争防止法といった情報セキュリティに関する法令の遵守も求められます。
DXにより情報技術が高度化すると、それに伴い情報漏洩のリスクも高まります。
情報セキュリティを厳格化し事故を未然に防ぎましょう。
コンプライアンス
一般的に、コンプライアンスと言うと「法令遵守」を思い浮かべる方が多いかと思います。
法令違反を犯せば企業の損失は計り知れませんから、コンプライアンスでまず要求されることは法令遵守です。
もっとも、デジタル化が進み新型コロナウイルスにより生活様式が一変した現代におけるサステナビリティとしては、役員や社員の価値観・倫理観も不可欠です。
企業ではありませんが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の不適切発言に端を発した問題などは、記憶に新しいと思います。
企業人・社会人として求められる価値観や倫理観を体現し、誠実に行動することで、公正かつ適切な経営を実現し、社会へ価値提供を行うことが企業の存続・発展につながるのです。
コーポレート・ガバンス
「サステナビリティ=持続可能性」というのが一般的な意味合いですが、企業におけるサステナビリティというと、社会的責任を果たすといった意味合いも含む場合があります。
前述のサステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会においても「社会のサステナビリティ」が重要であることが示されていますし、実例として紹介した企業においても社会からの期待に応える、という指針がサステナビリティの軸となっています。
経営の効率性向上・経営の健全性の維持・経営の透明性確保といったコーポレート・ガバナンスに基づき組織体制の整備ができれば、サステビリティを適切に推進できるでしょう。
会社法をはじめとする法令に遵守した堅実な組織体制を実現し、経営が外部にクリアになるようなコーポレート・ガバンスが求められます。
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まとめ
DXとサステビリティに関して、デジタル化が進む現代における経営の在り方について検討しました。
昨今、DXの必要性が重要視されがちですが、企業にはサステナビリティも求められます。
DXとサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)は密接な関係にあります。
DXとSXを両輪として事業革新を推し図ることで企業を存続・発展させることができるでしょう。
とはいえ、サステナビリティ事業にあたっては、セキュリティやコンプライアンスの面で法的専門知識が不可欠です。
SX推進にあたっては、専門家のサポートを受けることを検討してみても良いでしょう。