コラム
公開 2023.02.07 更新 2023.02.08

日本初「ベスト8」を賭けたワールドカップ死闘の舞台裏
サッカー日本代表 遠藤 航氏インタビュー(後編)

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2022 FIFAワールドカップ日本代表は、多くの毀誉褒貶にさらされたチームでもあった。
勝てば絶賛される代わりに負ければ全否定されてしまう、そんなプレッシャーの中で戦い続けてきた。
特にコスタリカ戦で主力を温存した「ターンオーバー」は、敗北したこともあり国内でも賛否両論が湧き上がった。
チームの中心選手として活躍し、ベテラン世代、若手世代のハブの役割を務めた遠藤選手は、チームをどう捉えていたのだろうか。

取材・文/山口和史 Kazushi Yamaguchi
写真/©️PUMA JAPAN・西田周平 Shuhei Nishida

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「正解」を疑い「最適解」を探す。

- 小学生時代からサッカー部のキャプテンを務め、年代別の日本代表に選出されるようになっても各世代でキャプテンを任された。

ドイツ・ブンデスリーガの古豪、VfBシュトゥットガルトに移っても、監督から直々に就任を打診され、現在キャプテンを務めている。食事も、文化も、なにより言語が違う環境下でリーダーシップを発揮するのは容易なことではない。

遠藤選手がどのようなマインドセットでチームをまとめているのかについては、自著「DUEL 世界で勝つために『最適解』を探し続けろ」に詳しい。

日本におけるキャプテン像とドイツで求められているキャプテン像の違いに悩んだ結果、遠藤選手は「これまでどおりを求められているからこそ自分に打診したに違いない」と確信。戦う姿勢を重視する、自身のキャプテン・スタイルを貫き通している。

著書の中で繰り返し語られるのは固定観念に縛られた「正解」を求めるのではなく、「最適解」はなにかを探し続ける大切さ。日本代表においても、世界のサッカー界で「正解」とされている常識を疑い、新たに生まれた選択肢の中から状況に見合った「最適解」を探し、行動している。

日本代表は森保一監督の元、選手同士のコミュニケーションを重視した。
どうすれば勝てるのか、どうすれば成果が出るのか、選手同士で徹底的に話し合い、その結果をキャプテンである吉田麻也選手や遠藤選手が森保監督に伝えチームの戦い方を探り続けた。

ややもすると監督は放任している、戦術がないといった批判に見舞われる。監督が決め、選手が従うという「正解」を疑い、選手の考え方を引き出してチームの結束を高める「最適解」を出した、これは日本代表にしかない強みだったと遠藤選手は著書で記している。

遠藤 航氏(以下 遠藤氏):日本代表ではコミュニケーションをしっかり取ることが大事だと思っていました。僕も日本代表の主力選手として試合に出るようになり、年齢的にも中堅選手になってきたことを考えると、やはりチーム全体についても気にするようになりました。選手同士でコミュニケーションを取ってどういうサッカーをしたいのか、話しながら聞き取っていきました。

- 遠藤選手が務めるボランチは試合中もピッチの真ん中で全体を見渡している。試合のさなかにチーム内に違和感を覚えたら、すぐに行動に移すことも意識していたという。

遠藤氏:試合中の感情のコントロールはとても重要です。それは味方の選手だけではなく、審判や相手チームの選手とのコミュニケーションも含まれます。

チームメイトが審判と揉めているように見えたらすぐに審判とコミュニケーションを取りに行き場を収める、そんなアクションも必要なんです。そういったことも含めると、コミュニケーションと一口に言っても味方だけではなく、相手選手や審判など自分たちに関係するすべての人たちとのコミュニケーションがサッカーの試合では重要なんです。

遠藤航氏 インタビュー

- 内部の事情を知らないサッカーファンからは批判も受けた森保采配だったが、選手間のコミュニケーションを重視し、選手自身に勝つために自分たちはどうすればよいのかを考える時間を与えた結果、選手たちはさまざまなことを納得してプレイに集中できた。

惜しくも目指していたワールドカップベスト8にはあと一歩及ばなかったものの、現実的な目標となるまでに日本代表は成長している。

日本代表が見つけた「最適解」。この裏には、遠藤選手を中心とした主力選手たちのコミュニケーション力とリーダーシップがあった。

スペイン戦勝利後の熱狂の中にあっても冷静だった遠藤選手らしく、ワールドカップを終えた現在はすでに次の目標に向けて動き出している。見据えるのはもちろん、2026年にアメリカ、カナダ、メキシコの3ヵ国による北中米共同開催となるワールドカップだ。

遠藤氏:4年後、僕もまたワールドカップに出たいと思っていますし、それが目標でもあります。一方で4年後にはなにがあるか分かりません。新たな競争が選手としてスタートするという感覚です。個人的には今のプレイをしっかり見せ続けなければならないと思いますし、さらに成長した姿を見せなければいけません。

今回のワールドカップでの結果を無駄にしないためにも次の大会でベスト8、そしてその先の優勝が見えるくらいにまでチームとして、個人としても成長していくことが目標です。

- 4年後に遠藤選手は33歳となっている。フィジカル、メンタル、テクニック、あらゆる面で脂の乗り切ったアスリートとなっていることだろう。今後の活躍から目が離せない。

<前編はこちら>

<中編はこちら>

Profile

遠藤 航 氏

中学3年時に湘南ベルマーレユースからオファーを受け、高校進学と同時に湘南ユースに入団。
2010年のJリーグデビュー以降、湘南ベルマーレ、浦和レッズで活躍。
2017年には日本代表初選出、2018年にはロシアワールドカップのメンバーに召集され、初のワールドカップメンバー入りを果たし、ジュピラー・プロ・リーグのシント=トロイデンVVへ完全移籍する。
2020年にはドイツのVfBシュトゥットガルトへ完全移籍。
2022 FIFAワールドカップでは日本代表としてチームを牽引した。

  • DUEL 世界で勝つために「最適解」を探し続けろ
  • DUEL 世界で勝つために「最適解」を探し続けろ
    遠藤 航著/SYNCHRONOUS BOOKS刊
    日本代表選手として、ドイツのブンデスリーガの選手として、世界を舞台に結果を残し続けるための秘訣について、余すところなく語り尽くした一冊。

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