相続が発生し、相続手続きをせずに放置した場合、どうなるのでしょうか?どのようなリスクが生じるのでしょうか?
今回は、期限のある相続手続きを紹介するとともに、相続手続きを放置した場合に生じるリスクなどについて、相続に詳しい弁護士が詳しく解説します。
目次
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期限のある代表的な相続手続き
身内が亡くなると、さまざまな手続きが遺族に降りかかります。
中でも、期限のある手続きはその期限に遅れないよう、期限にも注意しながら手続きを進めなければなりません。
期限のある代表的な相続手続きは、次のとおりです。
相続放棄
相続放棄とは、家庭裁判所で手続きをすることにより、はじめから相続人ではなかったこととなる手続きです。
亡くなった人(「被相続人」といいます)が借金を抱えていた場合、その借金は原則として相続人が引き継いで返済をしていかなければなりません。
しかし、借金が多額である場合など、借金を引き継いでしまっては困る場合もあるでしょう。
その場合には、相続放棄をおこなうことで借金を引き継がずに済むこととなります。
ただし、相続放棄をすると、借金などマイナスの財産のみならず、プラスの財産も一切引き継げなくなる点に注意が必要です。
たとえば、自宅不動産は引き継ぎたいけれど、借金だけを放棄したいなどといったことはできません。
相続放棄の手続きは、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」にする必要があります。
やや表現が難しいですが、通常は亡くなったことを知った日の翌日から3ヶ月以内だと考えておけば良いでしょう。
準確定申告
準確定申告とは、亡くなった人の確定申告です。
毎年の確定申告は、1月1日から12月31日までの所得を翌年2月16日から3月15日までの間におこなうのが原則です。
一方、亡くなった人の確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内とされています。
通常の確定申告とは期限が異なるため、注意しましょう。
準確定申告はすべての人にとって必要なわけではなく、被相続人に申告すべき所得があった場合のみ必要です。
不動産所得や事業所得などがあり、毎年確定申告をしていた場合や、亡くなる直前に不動産など大きな財産を売却した場合などに申告義務があることが多いといえます。
また、申告の義務はなくても、申告をすることで医療費控除などが受けられる場合や、税金の還付が受けられる場合もあります。
準確定申告が必要かどうか迷った際には、税理士などの専門家か管轄の税務署へ確認すると良いでしょう。
相続税申告
相続税とは、被相続人が亡くなった時点で持っていた財産などに対してかかる税金です。
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内にする必要があります。
ただし、相続税は遺産総額に過去の一定の贈与を合計した「課税価格の合計額」が相続税の基礎控除額以下であればかかりません。
相続税の基礎控除額の計算方法は、次のとおりです。
- 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
課税価格の合計額がこの基礎控除額を超える場合や、超えるかどうか不明な場合には税理士などの専門家へ早めに相談してください。
相続登記(2024年度以降)
相続登記とは、被相続人の名義となっている不動産を、相続人などへと変える手続きのことです。
本来相続登記は取得者の権利を守るものであるため、これまで期限は定められていませんでした。
しかし、故人名義のままで放置されるなどした「所有者不明土地」が激増し社会問題となっていることから、相続登記を義務化し期限を設ける法改正がなされています。
これにより、2024年度以降は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記をすべきこととされました。
生命保険金の請求
相続が起きたことで保険請求の対象となった場合であっても、保険請求権は死亡した日の翌日から3年で消滅時効にかかります。
時効にかかってせっかくの保険金が受け取れなくなってしまうことのないように、相続が起きたらできるだけ早期に請求を済ませておくと良いでしょう。
相続放棄を手続きしないで放置した場合のリスク
相続放棄を検討しているにもかかわらず、手続きをしないでいるうちに期限を過ぎてしまった場合には、次のリスクが生じます。
期限を過ぎると相続放棄ができなくなる
所定の期限を超過してしまった場合、原則としてもはや相続放棄をすることはできなくなります。
仮に被相続人に借金がある場合には、原則どおり借金を引き継ぐこととなり、返済していなければなりません。
場合によっては、自己破産なども選択肢の一つとなります。
なお、財産の数が多いなど相続放棄をするかどうかの検討に時間がかかる場合には、あらかじめ家庭裁判所で所定の手続きを踏むことにより、相続放棄の期限を伸長してもらうことが可能です。
検討が間に合わない可能性がある場合には、あらかじめ伸長の手続きをしておきましょう。
準確定申告や相続税申告を手続きしないで放置した場合のリスク
申告義務があるにもかかわらず、申告をしないまま準確定申告や相続税申告の期限を過ぎてしまった場合には、次のようなリスクが生じます。
無申告加算税や延滞税が課税される
本来の申告期限までに申告や納税をしなかった場合には、利息としての意味合いを持つ「延滞税」と、ペナルティとしての意味合いを持つ「無申告加算税」が課税されます。
また、悪質とされた場合には無申告加算税よりも更に重い重加算税が適用されます。
延滞税の率は年によって異なりますが、令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間では下記のとおりです。
- 納期限の翌日から2月を経過する日まで:年2.5%
- 納期限の翌日から2月を経過した日以後:年8.8%
無申告加算税は、その申告時期や金額により本来納付すべき税額の10%から20%です。
また、無申告により重加算税の対象となった場合の重加算税の税率は、原則として本来納付すべき税額の40%となります。
無申告のペナルティはかなり重いものとなっていますので、申告が必要な場合には必ず期限内に申告と納税を済ませるようにしましょう。
期限内に申告すれば使えたはずの特例が使えなくなる
相続税には、税額を抑えることのできる特例がいくつか存在します。
中でも税額への影響が大きなものは、次の2つです。
- 小規模宅地等の特例:要件を満たすことで、土地を最大8割減で評価して相続税を計算することができる特例
- 配偶者の税額軽減:配偶者が相続で取得した財産のうち配偶者の法定相続分相当額か1億6,000万円のいずれか大きな額までは相続税が無税となる特例
ただし、これらの特例は、期限内に申告することが適用要件の一つとなっています。
仮に、1日でも申告期限を過ぎてしまった場合には、もはやこれらの特例の適用を受けることはできません。
期限内に申告しなかったことで特例の適用機会を逃してしまえば、納付すべき相続税が大きく増えてしまう可能性があります。
相続登記を手続きしないで放置した場合のリスク
相続登記は、面倒に感じる方の多い相続手続きの一つです。
すぐに売るわけではない土地や建物であれば、すぐに名義変更をしなくとも実害がない場合も多く、手続きを放置してしまう場合もあるでしょう。
しかし、不動産の名義変更を放置すると、次のリスクが生じます。
登記しようとした際に手続きが難航するおそれがある
不動産を売却したり、抵当権をつけるなどお金を借りる際の担保に入れたりするためには、故人名義のままでは手続きすることができません。
すぐには売却や担保提供の予定がなかったとしても、将来このような必要性が生じた場合には、きちんと名義を正す必要が生じます。
いざ名義変更をしようとした際に、名義人となっている人が亡くなってからかなりの期間が経過している場合には、非常に骨の折れる手続きが必要となるでしょう。
なぜなら、当初の相続人の中に亡くなった人がいれば代替わりが起きており、本来の相続人だった人の子や配偶者などの同意を得る必要があるためです。
また、相続人の中に認知症となってしまった人がいれば、成年後見人などを付さなければ原則として手続きをすることができないためです。
相続人の中には、名義変更の条件として自分の法定相続分をしっかり請求する人もいることでしょう。
このように、年数の経過により代替わりが起きたり相続人の事情が変わったりすると、当初よりもさらに手続きに手間がかかる可能性が高くなるのです。
そのため、相続登記は名義を取得することが決まった時点で、できるだけ早期に済ませておいたほうが良いといえます。
2024年度以降は過料の対象になる
上で記載をしたとおり、2024年度以後は3年以内の相続登記が義務化されます。
施行日以後は仮に特段の理由がないまま期限を超過してしまうと、10万円以下の過料が課される可能性がある点も、相続登記を放置するリスクの一つとなります。
その他の相続手続きは手続きしないで放置しても良い?
相続手続きには、これら以外にも数多くの手続きが存在します。
では、相続財産などの状況からここまでで挙げた手続きが特に必要ない場合には、手続きをしないままで放置しても良いのでしょうか?
少しでも財産があれば遺産分割協議を済ませておくべき
遺産分割協議とは、どの財産を誰が取得するのかを決めるために行う相続人同士での話し合いです。
この遺産分割協議自体には、特に期限はありません。
ただし、上で記載した相続税申告などをするためには、原則として先に遺産分割協議が済んでいることが必要となります。
そのため、こうした期限のある手続きに間に合うように遺産分割協議を行うことが一般的です。
また、少しでも財産があるのであれば、相続税申告など期限のある手続きがないからといって遺産分割協議をしないままで放置することはおすすめできません。
なぜなら、時間が経ってからいざ預貯金の解約や証券口座の名義変更などの手続きをしようとした際に、他の相続人の状況が変わるなどして協議がまとまらず、手続きが難航してしまうおそれがあるためです。
遺産分割協議はできるだけ早期に済ませ、協議の結果をまとめた遺産分割協議書まで作成しておくと良いでしょう。
預貯金や株式の名義変更や解約は済ませておくべき
預貯金の解約や株式など有価証券の名義変更などの手続きには、特に期限はありません。
しかし、手続きをしないことには原則として預金を引き出したり有価証券を売却したりすることはできませんので、早期に手続きをしておくべきでしょう。
株式などの有価証券は原則として故人名義のままでは売却をすることができず、いったん相続人など株式を引き継いだ人に名義変更をした後に売却の手続きをする必要があります。
株価の変動などで急いで売却しようとしても、故人名義のままではすぐに売却ができず、機を逸してしまうかもしれません。
また、預貯金は10年間取引がなければ休眠口座に移行しますが、その後も所定の手続きを踏めば引き出すことは可能です。
ただし、あまり長期間取引がない場合には、手続きがより煩雑になったり、手続きから引き出しまでに時間を要することとなったりする可能性もありますので、注意しましょう。
遺言があればすみやかに検認手続きなどをおこなうべき
亡くなった人が遺言書を遺していた場合の手続きにも、特に期限は定められていません。
しかし、遺っていた遺言書が法務局での保管制度を経ていない自筆証書遺言であった場合などに必要となる検認手続きは、遅滞なくおこなうべきとされています。
検認とは、遺言書の状態を保存するために家庭裁判所でおこなう手続きです。
また、遺言書の種類にかかわらず、長期にわたり他の相続人に開示などの手続きしなかった場合には、遺言書の隠匿を疑われ、場合によっては相続の権利を失ってしまうかもしれません。
さらに、せっかく遺言書で不動産などの財産を取得したにもかかわらず手続きしないままでいると、他の相続人が自分の相続分相当の持分だけを勝手に登記して、その持分を第三者へ売却してしまう懸念が生じます。
このような事態が生じれば、もはや売却されてしまった持分を取り戻すことは困難です。
無用なトラブルを防ぐため、遺言書があった場合にはすみやかに手続きを済ませるようにしましょう。
まとめ
相続手続きの中には、期限のあるものと期限のないものがそれぞれ存在します。
期限のある手続きを期限内に終えるべきことはもちろんのこと、特に期限が定められていない手続きであっても、できるだけすみやかに手続きを済ませておくべきでしょう。
相続手続きでお困りの際や、他の相続人との協議がまとまらず手続きが進められないなど相続についてお困りの際には、Authenseまでご相談ください。
Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること
相続が発生すると、相続人同士での遺産の分け方について話し合いを行う必要が生じるだけでなく、相続に関する様々な手続きをする必要が生じます。
これらの手続きには時間的な制約があるうえ、必要書類(戸籍等)の収集に時間がかかることもあるため、ご自身だけで対応するのが難しいと感じた時には速やかに専門家にご相談されることをお勧めいたします。
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