相続が発生し、被相続人の預金からお金を引き出したい場合、どのような方法があるのでしょうか?
相続発生後、すぐに葬儀費用等で金銭が必要な場合は、どのように対応したらよいのでしょうか?
相続に詳しい弁護士が、解説いたします。
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相続発生により、預金は凍結されます!
相続が発生すると、お亡くなりになった方(以下、「被相続人」といいます。)名義の預金口座は、凍結され、しかるべき相続手続をとらなければ、当該預金口座のお金を引き出せなくなります。
相続発生後は、葬儀や入院費用・施設費用の支払い等で出費が重なります。
しかし、被相続人の預金口座からお金が引き出せなくなるため、相続人が立替えて支払ったり、生命保険金から支払ったりすることになります。
ここでは、被相続人の預金口座のお金を引き出す方法について、解説いたします。
預金の相続手続について
被相続人名義の預金は、相続が発生すると凍結されますので、「相続手続」をとらなければなりません。
相続手続をとるには、遺言や遺産分割協議にて、当該預金口座を承継する人が決まることが必要になります。
なお、相続法が改正され、一部の預金であれば、遺産分割協議を経なくても引き出すことが可能となりましたが、こちらの詳細は後述させていただきます。
そのため、預金の相続手続は、以下のような流れとなります。
- 被相続人の預金の凍結
- 被相続人の預金を承継する人が決定する
- 必要書類を準備して、金融機関に提出する
- 被相続人の口座の解約ができ、相続人の口座に被相続人の口座に入っていたお金が振り込まれる
1.被相続人の預金の凍結
相続人等が、金融機関に相続が発生したことを知らせると、被相続人の預金口座は凍結されます。
新聞や自治会、葬儀のご案内等により、被相続人が亡くなったことを金融機関が知った場合は、相続人等からの連絡が無くても、凍結されることとなります。
2.被相続人の預金を承継する人が決定する
遺言や遺産分割協議(遺産分割調停・審判)により、預金を承継する人が決定しなければ、預金の相続手続を進めることができません。
預金を相続する人は、1名でも複数でも大丈夫です。
誰が、いくら(割合でもOK)承継するかが決まれば、預金の相続手続をとることが可能になります。
3.必要書類を準備して、金融機関に提出する
金融機関ごとに所定の相続手続書類がありますので、事前に金融機関より必要書類の案内を取り付けておくと良いでしょう。
金融機関所定の相続手続書類以外の主な必要書類は、以下のとおりです。
実際に手続をとられる際は、必ず金融機関に必要書類を確認するようにしてください。
【遺言がある場合】
- 遺言公正証書(自筆証書の場合は、検認済みのもの)
- 被相続人の除籍謄本
- 預金を承継する相続人の戸籍謄本
- 預金を承継する相続人の印鑑証明書(金融機関により有効期限が異なります)
- 遺言執行者選任審判書(遺言執行者が裁判所に選任されている場合)
【遺産分割協議書がある場合】
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印済みのもの)
- 被相続人の出生から死亡までの繋がりのとれる戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書(金融機関により有効期限が異なります)
4.被相続人の口座の解約ができ、相続人の口座に被相続人の口座に入っていたお金が振り込まれる
3にて必要書類を提出したら、金融機関の担当者が書類に不備が無いかを確認します。
この確認作業に、早くて1週間程度、長いと1ヶ月程度の時間がかかることもあります。
金融機関からお金が振り込まれたら、預金の相続手続は完了します。
遺産分割前に預金を引き出したい場合の制度~仮払い制度~
相続法改正により、遺産分割前の預貯金の仮払い制度が創設され、令和元年7月1日より施行されました。
令和元年7月1日より前は、相続が発生し、遺言が無い場合、遺産分割を経なければ、被相続人の預貯金の引出しをすることができませんでした。
しかし、そうすると、被相続人の預貯金で生活していた配偶者等の生活費が底をついたり、被相続人の債務の支払いを立替え払いしなければなくなる等、相続人の生活を圧迫される事態が発生することも出ていました。
そこで、相続法が改正され、被相続人の預貯金の一部については、遺産分割協議を経ずに、相続人が単独で払戻しを受けることが可能となりました。
遺産分割協議を経ず、相続人が単独で被相続人の預貯金の払戻しを受けようとする場合、既に家庭裁判所に遺産分割の審判や調停が申し立てられているときは、仮払いに関する家庭裁判所の審判が必要になりますが、そうでない場合には、所定の計算式に従い、上限金額の範囲内において、単独で口座の払戻しを受けることができます。
払戻しを受けられる金額は、相続開始時の預金額×法定相続分×1/3、上限金額は1つの金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)につき、150万円まで)となります。
例
相続人は、A、Bの2名で、法定相続分は2分の1ずつ。
被相続人の預貯金は、X銀行:600万円、Y銀行:1,200万円
※Aが、遺産分割協議を経ずに、単独で引き出せる金額は、下記となります。
- X銀行:600万円×1/2(法定相続分)×1/3=100万円
- 100万円<150万円(1金融機関の上限金額)より、X銀行からは100万円
- Y銀行:1,200万円×1/2(法定相続分)×1/3=200万円
- 200万円>150万円(1金融機関の上限金額)より、Y銀行からは150万円
主な必要書類は、下記となります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本又は全部事項証明書
- 相続人全員の戸籍謄本又は全部事項証明書
- 払戻しを希望する相続人の印鑑登録証明書
- その他金融機関所定の書類
仮払いを受けた金額については、遺産の一部分割により取得したものとみなされ、法定相続分の計算に含まれるうえ、仮払いを受けた預貯金を葬儀費用などに充てた場合であっても、金額等によっては「相続財産の処分」とみなされ相続放棄ができなくなることがありますので、ご注意ください。
なお、こちらの仮払いの制度ですが、必要書類を持参してすぐに払戻しを受けられるものではなく、書類の確認に数日かかることが多いです。
払戻しができるまでに数日かかりますので、早めに必要書類を準備して手続きをとるようにしましょう。
被相続人の預金の手続は、専門家に依頼できる?
被相続人の預金の引出しには、上述のとおり、必要書類も多く、金融機関によっては窓口に行かなければならない場合もあります。
戸籍の収集等は慣れないと時間もかかってしまいますので、戸籍等の収集から行政書士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。
また、遺産分割が難航している、遺言書の内容に不満があるなどの場合には、弁護士に相談をして、遺産の分け方についてもアドバイスを受けると良いでしょう。
相続が発生した後は、葬儀費用や施設費用の支払い等で出費が多くなりがちです。
スムーズに被相続人の預金を解約して、引き出すために、専門家に依頼することも選択肢の1つとされることをお勧めします。
まとめ
相続が発生すると、預金口座を解約するのも一苦労となります。
遺産の分け方や相続手続について、分からないことがあれば、早めに専門家に相談をし、スムーズに預金の解約、払戻しを受けられるようにしましょう。
Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること
凍結された被相続人の口座から預貯金を引き出したい場合、遺言や遺産分割協議の結果により決まった預金の承継者に預金を相続させる手続きを行うほか、預金を承継すべき相続人が定まっていない場合においても、遺産分割前の預貯金の仮払い制度を利用して、一定額に限り預貯金の払戻しを受けることができます。
払戻しを行う際には注意点もありますし、必要書類の取得など煩雑な手続もあります。
後々の遺産分割協議を見据え、早い段階で弁護士にご相談いただけましたら、預金の払戻しのために最適な手続きについてアドバイスをし、必要書類の取得等お手伝いさせていただくことで、ご依頼者様のご負担を軽減することができます。
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