相続した不動産を売却する場合、税金は掛かるのでしょうか?また、売却のタイミングによっては、税金を少なくできるのでしょうか。
相続に詳しい弁護士が、相続税の取得費加算の特例について解説いたします。
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不動産の売却時にかかる「譲渡所得税」とは?
一般的に、自己が所有する不動産を売却する場合に、譲渡益が出ると、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税は、以下の計算式にて、算出されます。
ステップ1:課税譲渡所得金額を計算する
譲渡価額―(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)=課税譲渡所得金額
※取得費‥土地や建物の購入金額(建物は減価償却費相当額をを控除)等
※譲渡費用‥不動産の売却に掛かった費用
ステップ2:譲渡所得税を計算する
課税譲渡所得金額×税率=譲渡所得税
所有期間に応じて、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられ、税率が異なります。
- 長期譲渡所得 所得税:15% 住民税:5%
- 短期譲渡 所得税:30%、住民税:9%
※土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合は、「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。
※確定申告の際には、所得税と併せて基準所得税額(所得税額から、所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の金額)に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税を申告・納付することになります。
(参照:国税庁HP「土地や建物を売ったとき」)
上記のように、譲渡所得税の計算には、ステップ1の「取得費」がどの位の金額となるかが重要となります。
それでは、相続により不動産を取得した場合に、「取得費」はどのように計算されるのでしょうか?
以下で解説いたします。
相続不動産の取得費
相続した不動産を売却する場合、「取得費」は、どう計算するのでしょうか?
この場合には、原則として、被相続人の「取得費」を引き継ぎます。
※ただし、限定承認により、不動産を相続した場合を除きます。
※「限定承認」とは、被相続人の債務がどのくらいあるか分からず、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が承継した相続財産の限度で被相続人の債務を相続することをいいます。
「限定承認」の手続を選択する場合は、相続があったことを知った時から3か月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申述する必要がありますので、事前に弁護士に相談されることをお勧めします。
また、相続した不動産については、「取得費」に関し、一定の要件をみたせば、相続税の一部を加算することが可能です。
以下で相続財産の「取得費」の特例を詳述いたします。
相続税の取得費加算の特例
相続又は遺贈によって取得した財産を、相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合は、取得費に一定の相続税額を加算することができるという特例です。
取得費が加算されるため、譲渡所得税が軽減されることになります。
特例の適用を受けるための要件は、以下の3つです。
- 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
取得費に加算する相続税額の計算式は、以下のとおりです。
(参照:国税庁HP「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)
なお、こちらの計算は、譲渡した財産ごとに行います。
計算例:Aさんが、相続不動産「甲」を相続し、相続発生から3年以内に売却した場合
- Aさんの相続税額:3000万円
- Aさんが相続した財産の課税価格+Aさんの債務控除額:3億円
- 「甲」の相続税評価額:1億円
- (取得費に加算する相続税額)
3000万円×1億円/3億円=1000万円
このケースの場合、1000万円を取得費に加算することが可能です。
実際の金額については、税理士に確認してもらうようにしましょう。
相続税の取得費加算の特例の適用を受けるための手続
相続税の取得費加算の適用を受けるためには、確定申告の時に、以下の書類を添付する必要があります。
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]や株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
詳しくは、税理士に相談をし、添付書類や取得費に加算される金額を確認するようにしましょう。
まとめ
以上のとおり、相続税の取得費加算の特例を受けるためには、いくつかの要件を満たさなければなりませんので、事前に税理士に相談しておくことをお勧めします。
また、相続発生後の遺産分割協議の段階で売却を検討している場合には、協議事項等に関し、弁護士に相談しておくと良いでしょう。
Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること
・被相続人が不動産を所有していた場合、今後どのように管理していくのか、あるいは売却するのか、検討する必要があります。弁護士にご相談していただくと、今後とるべき選択肢を具体的にアドバイスすることができます。
・また、相続人間で遺産分割協議を行う場合には、遺産分割協議書の作成が必要になります。弁護士にご依頼していただくと、遺産分割協議書の作成依頼のほか、代理人としてほかの相続人と交渉をしてもらうことができます。
・そのほか、生前対策全体についても弁護士にご相談ください。
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