相続が発生し、遺産分割協議を行う際に、よくあるトラブルとは一体どのようなものでしょうか。相続に詳しい弁護士が、どのような事情がトラブルに発展するのか、トラブルを防止するために注意すべきポイントについて分かりやすくお伝えいたします。
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はじめに
相続が発生したら、遺言書がない場合は、相続人の間で相続財産の分け方を話し合い(これを、「遺産分割協議」といいます。)、遺産の分け方を決定する必要があります。
しかしながら、この「遺産分割協議」には、気を付けなければならないポイントがたくさんあります。
お亡くなりになった方(以下、「被相続人」といいます。)の相続人が、被相続人の生前は仲が良い場合でも、この『遺産分割協議』をきっかけに仲が悪くなることも少なくありません。
そこで、ここでは、遺産分割協議時のよくあるトラブルと共に、トラブルを防止するためのポイントを解説いたします。
よくあるトラブル~一部の相続人と連絡がとれない~
遺産分割協議には、相続人全員が参加することが必要となります。
そのため、相続人のうちの1人が音信不通で連絡がつかない、相続人のうちの1人が遺産分割協議に全く参加してくれないという場合には、遺産分割協議を行うことができません。
したがって、まずは、相続人全員が遺産分割協議に参加できる状況かどうかを確認しましょう。
相続人のうちの1人が音信不通で連絡がつかない場合は、まずは専門家に依頼をして居処の調査をしてもらいましょう。その者の戸籍の附票を調査すれば、住民票上の住所を確認することができますので、その住所に、遺産分割協議への協力依頼の手紙を送り、遺産分割協議に参加してもらうように促しましょう。
住所を調査しても一部の相続人の居処が不明で連絡がとれないという場合や、一部の相続人の生死が不明というような場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てや、失踪宣告の申立てを行うという手段が考えられます。
以前、弊所で取り扱った案件でも、相続人の一人が、十数年前に日本を出国して海外に移住した後、そのまま他の相続人と音信不通状態となり、この間一度も日本に帰国した記録がなく、外務省経由で現地の大使館に照会をかけても、移住先の国のどのあたりにいるかが全く分からない、日本国内の住所に書面を送っても送り返される、というような案件がありました。最終的に、この案件では、裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てて、無事、裁判所がこれを認めてくれて、遺産分割協議を進めることができましたが、弁護士会をとおして入国管理局や外務省に照会をかけるなど、裁判所に不在者であることを認めてもらうための資料の収集が必要となりました。
したがって、このような複雑な案件は、お早めに弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。なお、家庭裁判所に申立てをすると、申立てをしてから不在者財産管理人が選任されたり、失踪宣告が認められたりするまでに2~4カ月の期間がかかることが多いです。相続税の申告などが必要な場合は、遺産分割協議を速やかに進める必要がありますので、連絡がつかない相続人がいる場合は、すぐに専門家に相談するようにしましょう。
※不在者財産管理人…不在者(従来の居場所を去り、現在の居場所が不明で、容易に帰ってくる見込みがない者)の代わりに財産を管理したり、遺産分割に参加したりする人のこと
よくあるトラブル~相続財産が分からない~
遺産分割協議は、相続財産を分ける手続となりますので、相続財産の把握ができないと話し合いを進めることができません。
また、せっかく相続人全員で話し合って、遺産分割協議が成立したのに、成立後に新たな相続財産が発見されると、分け方について揉めてしまうという可能性もあります。
そのため、遺産分割協議を行うためには、相続財産を正確に把握することが重要です。
相続財産がよく分からないという場合は、被相続人が利用していそうな金融機関(銀行、証券会社、保険会社など)に、被相続人の口座や貸金庫、株式その他の有価証券、投資信託、保険などが無いか確認をしてみましょう。
該当がある場合は、その取引履歴を取得して、支払いや引き落としの履歴を調べましょう。この履歴から他の相続財産が見つかることもあります。
不動産については、被相続人名義の不動産がありそうな自治体の役所で「名寄帳」を取り寄せることにより、課税されている不動産で、被相続人所有の不動産を探すことができます。そして、不動産の場所が分かっている場合には、法務局でその不動産の登記を取り寄せましょう。
また、被相続人宛の郵便や、被相続人の自宅内にあるそのほかの書類についても、確認しましょう。
金融機関や保険会社、役所からは様々な書類が届いていることが多いのですが、そのような書類から、被相続人の遺産が見つかることがよくあります。
ただし、金融機関などへの問い合わせには、被相続人とご自身の関係性を示す一定の資料(戸籍など)が必要になるため非常に手間がかかります。また、相続財産の調査に抜け漏れがあると、相続人の間で後々トラブルになることがあります。例えば、分譲地の前の共有私道などにも被相続人の共有持ち分が入っている場合もありますが、このような財産は、調査が不足しがちになります。
少し費用がかかりますが、手続的な負担を軽減させるため、また、財産調査の抜け漏れをなくすために、弁護士などの専門家に財産の調査を依頼することも検討すると良いでしょう。
よくあるトラブル~相続財産の分け方が決まらない~
相続財産を正確に把握したとしても、相続人全員の話し合いで、相続財産の分け方がなかなか決まらない場合があります。
特に、相続財産の中に「不動産」や「自動車」、「骨董品」など、一定時点の価値が明確に定まらないものがあると、その評価金額で揉めることも多いです。
また、相続人の中に、被相続人から生前贈与を受けた人がいる場合や被相続人の介護をした人がいる場合は、「特別受益」や「寄与分」の問題も出てきます。
そのため、このような場合は、相続人のみで解決しようとするのではなく、弁護士などに、裁判手続においてどのような評価方法をとるのか、「特別受益」や「寄与分」は認められるかなどを相談した上で、分け方を検討することもお勧めです。
※「特別受益」の制度…相続人間の公平を図るため、被相続人から生前贈与などの特別な利益を受けた相続人がいる場合、当該利益を遺産の前渡しとして、相続分の算定をすること
※「寄与分」の制度…被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者がいるときに、その貢献を寄与分として、相続分の算定に反映させること
よくあるトラブル~自宅不動産の価値が高い~
被相続人の相続財産のうち、自宅不動産の価値が高く、他の財産が少ない場合に、相続財産の分け方がなかなか決まらないというケースがあります。
具体的には、以下のようなケースです。
- 相続財産:自宅(評価2000万円)、預貯金1000万円
- 相続人:長男、次男、三男の3名
この場合、長男が自宅を相続すると、長男の取り分(2000万円)、次男・三男の取り分(それぞれ500万円ずつ)となり、不公平が生じることとなります。
この不公平さを解消するためには、以下のどちらかの方法をとると良いでしょう。
①代償金を支払う
長男が相続財産でもらいすぎた分を次男・三男に金銭(この金銭のことを「代償金」といいます。)で支払う方法です。
上記の例ですと、長男・次男・三男の法定相続分は3分の1ずつになりますので、相続財産は1000万円ずつ取得すると不公平となりません。
そのため、自宅を相続する長男が、次男・三男に対し、金銭を500万円ずつ支払うと、
- 長男の取得分自宅2000万円 ― 次男・三男支払分1000万円 = 1000万円
- 次男・三男の取得分預貯金500万円 + 代償金500万円 = 1000万円
となり、長男・次男・三男がそれぞれ1000万円ずつ取得することになりますので、不公平は生じないこととなります。
ただし、この方法は、不動産を取得したい相続人が、代償金を用意できない場合などにはとることができない選択肢ですので、どうしても被相続人名義の自宅を取得したいと考えている方は、被相続人に生前に遺言の作成をしてもらう、被相続人に自身を受取人とする生命保険に加入してもらい、代償金の原資とするなど、生前の相続対策を検討することをお勧めします。
また、不動産の価値を正しく評価するには、不動産に関する専門的な知識が必要になります。実際の事例では、不動産の評価額をめぐる双方の主張が、1000万円以上の開きがでることも少なくありません(取得したい側は安い評価額を主張し、代償金が欲しい側は高い評価額を主張する)。相手方が提示してきた査定書に記載の評価額が、相場に比べて不当に高いのか安いのか、あるいは妥当なのか、これを見極める能力が必要になります。
このような専門的な能力が必要になりますので、遺産分割協議において、不動産の評価をめぐる争いが生じそうな場合には、専門家に相談することをお勧めします。
②自宅を売却し、金銭で分ける
自宅を売却し、金銭にし、当該金銭を法定相続分どおりに分ける方法です。
金銭であれば、3など分にすることができますので、不公平は生じないということになります。ただし、売却が困難な不動産である場合、なかなか成約に至らず長期化することもありますので、不動産業者との相談・連携が不可欠です。
まとめ
以上のとおり、遺産分割協議をするにあたっては、注意すべきポイントがたくさんあります。
そのため、分からないことが出てきたり、手続が面倒だなと感じたりした場合は、ぜひお気軽に弁護士などの専門家に相談してみてください。
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