コラム
公開 2016.06.20 更新 2023.04.04

遺産分割協議とは?やり方と流れ、いつまでに行うべきか弁護士がわかりやすく解説

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亡くなった人は、もはや財産を所有することができません。
そのため、相続人間で話し合いを行い、遺産を分けることとなります。
この遺産分けの話し合いのことを、「遺産分割協議」といいます。

では、遺産分割協議はどのような流れで行えばよいのでしょうか?
また、遺産分割協議にのぞむ際には、どのような注意点を踏まえればよいのでしょうか?

今回は、遺産分割協議について弁護士がくわしく解説します。

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遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続人全員で行う、遺産分けの話し合いです。

亡くなった人(「被相続人」といいます)の持っていた財産は、被相続人の死亡と同時に、いったん相続人全員での共有となります。
しかし、共有状態のままでは不都合が生じることも多く、被相続人名義のままでは原則として遺産を売ることなどもできません。

そのため、相続人全員で話し合いを行い、「自宅の土地建物は配偶者が相続し、A銀行の預貯金は長男が相続する」など、誰がどの遺産を取得するのか決めることが必要です。
この話し合いのことを、遺産分割協議といいます。

遺産分割協議が必要なケース

遺産分割協議は、どのような場合に必要となるのでしょうか?
遺産分割協議が必要となるケースは、次のとおりです。

ただし、そもそも相続人が1人しかいない場合には、その1人の相続人が遺産をすべて相続することになるため、遺産分割協議は必要ありません。

遺言書がない場合や遺言書に書かれていない財産がある場合

被相続人が遺言書を遺していなかった場合には、遺産分割協議が必要です。
また、遺言書があっても、遺言書で承継先が指定されていない財産があった場合には、その財産について遺産分割協議が必要となります。

遺言書に従わずに遺産を分ける場合

遺言書があっても、遺言書の内容とは異なる内容で遺産を分けることが可能です。
この場合には、遺言書がない場合と同様に、遺産分割協議が必要となります。

ただし、遺言書がある場合において遺言書と異なる遺産分割をする場合には、次の者全員の同意を得なければなりません。

  • 原則:相続人全員
  • 遺言書で相続人以外の者(「受遺者」といいます)に遺産を渡すこととなっている場合:その受遺者
  • 遺言執行者がいる場合:その遺言執行者

遺産分割協議の進め方・流れ

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遺産分割協議は、どのような流れで行えばよいのでしょうか?
基本的な流れは、次のとおりです。

相続人を確定する

遺産分割協議は相続人全員で行わなければならず、相続人が1人でも漏れた遺産分割協議は無効です。
そのため、遺産分割協議に先立って、被相続人の相続人を確定しておかなければなりません。

相続人を確定するために必要となる主な書類は、次のとおりです。
ただし、相続人の状況によってはこれら以外の書類が必要となることもあります。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本など
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • (被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合)被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本

なお、これらの書類は、遺産分割協議の後、各遺産の名義変更や解約をする際にも必要となります。

被相続人の遺産を確定する

相続人の確定と平行して、被相続人の遺産の確定を進めます。
遺産は一覧表などにまとめておくと、遺産分割協議の参考としやすいでしょう。

被相続人の遺産を確定するための参考資料は、次の資料などです。

  • 不動産:固定資産税の納付書に同封されている固定資産税課税明細書、法務局で取得する全部事項証明書など
  • 預貯金:通帳、残高証明書など
  • 有価証券:証券会社の取引明細書、残高証明書など
  • 自動車:車検証など

遺産分割協議を行う

遺産の内容が把握できたら、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議は、相続人全員が合意をするのであれば、必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はありません。
たとえば、配偶者と長男、長女が相続人である場合に、「配偶者がすべての遺産を相続する」という内容で遺産分割協議を成立させることも可能です。

なお、遺産分割協議をする際には必ずしも全員が一堂に会して行う必要はなく、電話や手紙のやり取りなどで行っても構いません。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が無事にまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、誰がどの遺産を取得することになったのか、明確に記載しましょう。

相続人全員が遺産分割協議書の内容に同意していることの証明として、相続人全員が署名と実印での捺印を行います。

遺産分割協議に臨む際のポイント

遺産分割協議に臨む際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
主なポイントは、次のとおりです。

納得できないなら捺印しない

遺産分割協議書は本来、あらかじめ遺産分割協議を行って、合意のうえで作成するものです。
しかし、中には協議を経ないまま一部の相続人が勝手に遺産分割協議書を作成し、署名捺印を求める場合もあるようです。

そのような際、内容がよくわからない場合や、内容に納得がいかない場合には、署名捺印することは避けましょう。
たとえ納得していなくても捺印をしてしまえば合意をしたものとみなされてしまい、その後覆すことは困難となるためです。

そのため、提示された遺産分割協議書に納得がいかない場合には、よく検討し、場合によっては弁護士へ相談したうえで回答することをおすすめします。

法定相続分を理解しておく

遺産分割協議に臨む際には、相続人それぞれの法定相続分をよく理解しておきましょう。
たとえば長男が法定相続分を無視して「自分が家を継ぐのだから遺産はすべて自分がもらって当然だ」との態度で遺産分割協議に臨めば、相続争いに発展する可能性が高いでしょう。家督相続の時代であればこれも通用しましたが、現代ではなかなか受け入れてもらいにくい発想です。
仮に相続争いとなり裁判にまでもつれ込めば、法定相続分をベースに分けることとなります。

そのため、法定相続分についてよく理解をしたうえで、仮に法定相続分とは異なる割合で相続したいと考えるのであれば、他の相続人にそのことを丁寧に説明し、納得を得ることが必要です。

遺産の内容を共有する

遺産分割協議に臨む前に、遺産の内容を相続人間で共有しておきましょう。

たとえば「遺産といっても1,000万円程度だろう」と誤認した二男がすべての遺産を長男が相続することに合意した後で、実際には1億円もの遺産があることが判明すれば、トラブルになる可能性が高いでしょう。

そのため、遺産分割協議に臨む前に遺産の内容を一覧にして共有しておくとよいでしょう。

遺産分割協議の前に別の手続きが必要となるケース

遺産分割協議を有効に成立させるには、相続人全員の合意が必要です。
しかし、重い認知症の人、未成年者や行方不明者などは、自分が当事者となって有効に遺産分割協議を成立させることができません。
そのため、これらの場合にはそれぞれ、遺産分割協議に先立って別の手続きが必要となります。

なお、ここで選任された成年後見人や特別代理人などは、本人の財産を守るとの職責を負っています。
そのため、これらの人がついている場合には、少なくとも法定相続分に相当する遺産を本人が相続する内容でなければ、原則として遺産分割協議を成立させることができないことには注意が必要です。

相続人に認知症の人がいる場合

相続人に重い認知症などで意思能力が欠如している人は、自分で遺産分割協議に参加することができません。
このような状態の人が自分で遺産分割協議に参加すれば、よくわからないままに不利な遺産分割協議に合意させられてしまう可能性があるためです。

そのため、相続人の中に認知症などの人がいる場合には、遺産分割協議に先立って、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらわなければなりません。
成年後見人とは、認知症などである本人のために、財産管理や身上監護などする役割の人です。
成年後見人が選任されると、成年後見人が家庭裁判所の許可を得たうえで、本人に代わって遺産分割協議に参加します。

なお、遺産分割協議をきっかけに成年後見人を選任したとしても、遺産分割協議が終わったからといって成年後見人を解任できるものではありません。
いったん成年後見人が選任されると、原則として本人が亡くなるまで、成年後見人がつき続けます。

相続人に未成年者がいる場合

未成年者は、自分で遺産分割協議に参加することができません。
未成年者が自分で遺産分割協議に参加すれば、よく分からないままに不利な遺産分割協議に合意させられてしまう可能性があるためです。
そのため、一般的には、親権者が本人の代わりに遺産分割協議に参加します。

ただし、未成年者が相続人となる場面では、その親権者と利益が相反していることが少なくありません。
たとえば、父親が亡くなり、母親と未成年の子どもが相続人である場合などです。この場合、母親が未成年者の代理をしてしまうと、母親は、自身も相続人であるため、未成年の子どもと利益が相反してしまうことになり、適切ではないと考えられています。

この場合には、遺産分割協議に先立って、「特別代理人」を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

相続人に行方不明者がいる場合

相続人に行方不明者がいる場合であっても、その人を無視して遺産分割協議を成立させることはできません。
この場合には、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加し、その後行方不明者が受け取った遺産を管理する「不在者財産管理人」という方を家庭裁判所に選任してもらうことが必要です。

なお、単に他の相続人が連絡先を知らないというのみでは、行方不明には該当しません。
不在者財産管理人を選任してもらうには、戸籍謄本や住民票を辿ったものの住民票上の住所地に居住していないなど、一定の調査をして裁判所に報告することが必要となります。

遺産分割協議の期限は?いつまでに行う?

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遺産分割協議は、いつまでに行えばよいのでしょうか?
ここでは、遺産分割協議を行うタイミングについて解説しましょう。

遺産分割協議自体に期限はない

まず、遺産分割協議自体に期限はありません。
ただし、相続が起きる前に行った遺産分割協議は無効であるため、相続開始後に行うことが必要です。

例外1:相続税申告がある場合

遺産や過去の一定の生前贈与の合計が相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税の申告をしなければなりません。
相続税の基礎控除額は、次の式で算定されます。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日(通常は、被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月です。

そして、相続税を正しく算定するためには、申告までに遺産分割協議が成立していなければなりません。
そのため、相続税の申告が必要である場合には、申告期限に間に合うように遺産分割協議を行うことが必要です。

なお、相続争いに発展した場合など、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらないこともあるでしょう。
この場合には、申告期限までにいったん仮の申告と納税を行い、その後遺産分割協議がまとまった時点で申告をし直すこととなります。

遺産分割協議がまとまっていないことを理由に申告期限が伸長されることはありませんので、誤解のないよう注意しましょう。

例外2:不動産がある場合

執筆時点である2023年1月現在、相続登記(相続による不動産の名義変更)に期限はありません。
しかし、これが「所有者不明土地」の増加原因の1つであるとして、社会問題となっています。

これを受け、相続登記に期限を設ける不動産登記法などが改正されました。
この改正法の施行日は、2024年(令和6年)4月1日です。
施行日以後は、相続で不動産を取得してから3年以内に相続登記をしなければならず、正当な理由なく期限を過ぎた場合には、10万円以下の過料の対象となります。

そのため、今後は相続登記の期限も意識しながら、遺産分割協議を進める必要があるでしょう。

遺産分割協議が当事者間でまとまらない場合の対応

当事者間で遺産分割協議をまとめることが難しい場合には、次の方法で解決を図ることとなります。

弁護士に相談する

当事者間で遺産分割協議がまとまらない場合には、弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談することで、その後の交渉の進め方などについてアドバイスを受けることが可能です。

弁護士が代理で交渉する

弁護士へ依頼すれば、弁護士に代理で交渉をしてもらえます。弁護士は遺産分割についての専門知識と経験を有していますので、弁護士が代理して交渉をすることで、解決の可能性を高めることができるでしょう。

また、本人からの連絡を無視していた相手であっても、弁護士から内容証明郵便などを送ると、反応を見せることも少なくありません。

遺産分割調停を行う

交渉で解決がはかれない場合には、遺産分割調停を申立てることも検討が必要です。

遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が双方の意見を調整しつつ解決を図る手続きです。
あくまでも話し合いの手続きであり、調停の成立には当事者の合意が必要です。
また、合意ができるのであれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けても構いません。

弁護士へ依頼した場合には、調停の場へ弁護士に同席してもらうことや、代わりに調停へ出席してもらうことなどができます。

遺産分割審判を行う

遺産分割調停で解決ができない場合には、遺産分割審判へと移行します。
遺産分割審判は、諸般の事情を考慮のうえ、裁判所が遺産分割の内容を決定する手続きです。

なお、遺産分割審判では原則として、法定相続分をベースとして審判することとなります。

まとめ

遺産分割協議とは、相続人全員で行う遺産分けの話し合いのことです。
相続人全員が合意できるのであれば、必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はありません。

一方、遺産分割協議がうまくまとまらない場合や、相続人の一部が話し合いに応じない場合もあるでしょう。
そのような場合には、早期に弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所では遺産相続トラブルの解決に力を入れており、相続問題に強い弁護士が多数在籍しています。
遺産分割協議でお困りの際には、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。
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