コラム
公開 2022.06.17 更新 2022.06.22

MBOを活用した事業承継のメリットについて

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事業承継の手法としてのMBOのメリットは、どのようなものがあるのでしょうか?
MBOの概要や手続きも含め、解説いたします。

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事業承継の現状

昨今の日本では、中小企業経営者の高齢化は深刻であり、後継者不在による廃業の件数も増えてきています。
黒字であっても、後継者の不在等の理由で、廃業に至るケースも多く、廃業の増加による雇用や技術への影響が懸念されています。

中小企業庁:事業継承の種類

もっとも、そもそも、事業承継には、親族内承継(親族に会社の経営権を承継させること。)、従業員承継(「親族以外」の従業員に承継させること。)と、第三者への承継(社外の第三者に株式譲渡や事業譲渡により承継させること。)の大きく3種類があり、親族内に後継者が不在の場合でも、事業承継を実現することは可能です。
最近では、親族内の後継者がいないということで、従業員承継や第三者への承継の件数も増えてきました。
従業員承継には、役員に事業を承継させるMBO(Management Buy Out)と社員に事業を承継させるEBO(Employee Buy Out)の2種類があります。

ここでは、MBOについて詳細を解説していきます。
 

MBOの概要

MBOの概要
MBOとは、会社の役員が、株式の所有者から株式の譲渡を受け、その会社の株主兼経営者となる事業承継をいいます。
MBOを選択するケースは様々ですが、中小企業では、後継者の不在により、MBOを選択するケースが増えてきています。
ある程度の規模のある会社では、本業とは関連性が薄い事業を独立させる場合や、事業を再建する場合などでMBOを選択するケースもあります。

MBOでは、株式の買取り資金の調達が問題となることが多いですが、必ずしも役員が自己資金で資金を準備しなければならないということはありません。
金融機関やファンドから融資を受けることで、株式の買取り資金を調達することも検討ができます。
さらに、株式の買取り資金の調達のためだけの会社を設立することで、役員個人が借入れをしなくても、当該会社が融資を受けることで事業承継を実現することもできますので、自己資金が準備できないからといってMBOを諦める必要はありません。
 
MBOを検討する場合には、株式の買取り資金の準備の段階から専門家に相談をした上で進めるとよいでしょう。

MBOのメリット

MBOのメリットとしては、①会社の所有と経営が一致することや、②役員への承継となるので、事業の承継がスムーズに進められることが挙げられます。

①会社の所有と経営が一致すること

会社の所有と経営が一致することにより、経営者の意向をそのまま会社経営に反映できるようになります。
会社の所有と経営が分離している場合は、株主の意向を確認しなければ、経営判断を行うことができず、経営の意思決定を迅速に行うことができません。
また、経営者の働きにより、企業価値が向上したとしても、必ずしも、経営者の役員報酬が上がるというわけではないので、経営者や従業員のモチベーションが上がりにくいという難点もあります。
さらに、株式に相続が生じると、株主数が増えるなどして、経営に協力的でない人が株主となる場合もあり、安定的な経営が確保できないというリスクもあります。

会社の所有と経営が一致することで、株主総会も実施しやすくなるので、迅速な経営判断が可能となり、経営者の意向を反映した経営戦略をとることができるようになります。

また、経営者が株主総会に参加することとなるため、株主総会で取り扱う様々な企業秘密が外部に漏れるリスクが低くなります。
株主が、経営に参画しない親族や第三者である場合は、株主総会の中で開示されるノウハウ等の流出のおそれがあります。もっとも、MBOを実施することで、これらの開示のリスクをほとんど回避することができます。

②事業の承継がスムーズに進められること

MBOでは、株式の売り手(オーナー)と買い手(役員)との間に信頼関係ができているので、事業承継の話をスムーズに進められることが多いです。
また、買い手が会社のことをよく理解しているので、他の方法と比べると交渉自体にはそれほど時間が掛かりません。
さらに、役員への承継を選択すると、従業員からの理解も得られやすく、事業承継により従業員が離職する事態は生じにくいです。
そのため、MBOを選択すると、交渉から事業承継後に至るまで、スムーズに進むことが多いです。

MBOは、誰に相談すればよいのか

MBOは、誰に相談すればよいのか

MBOを含め、事業承継を検討する場合は、弁護士や税理士等の事業承継の専門家に相談するようにしましょう。
特に、中小企業で多いのは、今までの株式譲渡に関して適切な手続を行っておらず、現状の株主が確定できず、少数株主との交渉がスムーズにいかないケースです。
このような場合は、事業承継に予想外に時間や費用が掛かることになりますので、早めに専門家に相談をすることをお勧めいたします。
事業承継はまだ早いという場合も、社内の法的な整備等を進めておいた方が事業承継を行うときに掛かる時間や費用が少なくて済みます。
そのため、将来事業承継を考えている場合は、早めに専門家に相談をして準備を進めておくとよいでしょう。

まとめ

事業承継の中でも、MBOは、役員が事業を承継しますので、従業員等の不満が少なくスムーズに承継ができる手法となります。 もっとも、資金調達がネックになる場合もありますので、MBOを検討される場合は、早めに専門家に相談をして、資金調達からサポートを受けてスムーズに進めるようにしましょう。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

・将来的な事業承継を検討されている場合に、スムーズに事業承継を行うために準備しておいた方がよいことに関してアドバイスいたします。
・実際に事業承継を行う場合に、資金調達の方法の助言、買い手との交渉や書類の作成等、事業承継において必要な手続を遂行いたします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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