遺留分の請求に、時効や期限はあるのでしょうか?
今回は、遺留分侵害額請求の時効のほか、遺留分の基本や期限内に遺留分侵害額請求をするためのポイントなどについて弁護士が解説します。
ささいなお悩みもお気軽に
お問合せください初回相談60分無料※一部例外がございます。 詳しくはこちら
オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。
- 24時間受付、通話無料
- 24時間受付、簡単入力
遺留分とは
遺留分とは、亡くなった人(=「被相続人」といいます)の子や配偶者など一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。
はじめに、遺留分の性質について解説していきましょう。
遺留分を侵害した遺言書や生前贈与も有効
遺留分が一定の相続人に保証されているとはいえ、遺留分を侵害した遺言書や生前贈与が無効になるわけではありません。
遺留分を侵害した遺言書や生前贈与も有効です。
たとえば、長女と長男の2名が相続人である場合において、長女に全財産を相続させる旨の遺言書を作成したと仮定しましょう。
生前贈与などは、一切していないものとします。
この遺言書は、明らかに長男の遺留分を侵害しています。
しかし、遺留分を侵害していることを理由に、この遺言書が無効となることはありません。
この遺言書は、他に問題がなければ有効であり、相続が起きた後、実際にこの遺言書を使ってすべての財産を長女に名義変更することが可能です。
遺留分を侵害されたら「遺留分侵害額請求」ができる
上のような遺言書があった場合、遺留分を侵害された長男はどうすればよいのでしょうか?
この場合において、長男は、長女に対して「遺留分侵害額請求」をすることができます。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分に相当する分の金銭を支払うよう、遺言などで財産を多く受け取った人に対して請求することです。
この請求がなされると、長女は長男に対して、実際に遺留分相当額の金銭を支払わなければなりません。
長女が相続で受け取った財産の大半が不動産や自社株など換金しづらいものである場合、遺留分を払えといわれてもすぐには支払えない場合もあることでしょう。
しかし、この場合であっても、支払いが免除されるわけではありません。
一括で支払うことができなければ、分割払いや資産現物での支払いなどを交渉することとなります。
なお、2019年7月1日の民法改正以前の制度は、遺留分「侵害額」請求ではなく遺留分「減殺」請求でした。
現在の遺留分侵害額請求が金銭の請求であることに対し、従前の遺留分減殺請求は、原則として現物の返還を求める制度であった点が大きな違いです。
現物の返還であるため、遺留分減殺請求によって、例えば、不動産が当然に遺留分を請求した人とされた人との共有となる点などが問題となり、改正された経緯があります。
遺留分の基礎知識
遺留分については、誤解している方も少なくありません。
次の点について、正しく理解しておきましょう。
遺留分のある人・遺留分のない人
相続人であるからといって、すべての人の遺留分があるわけではありません。
次の人は、たとえ相続人となる場合であっても遺留分がないことに注意しましょう。
- 兄弟姉妹
- 甥や姪
遺留分がないということは、被相続人が遺した遺言で仮に自分が一切財産を受け取れなかったとしても、遺留分侵害額請求をすることができないということです。
一方、被相続人の子や孫、配偶者、両親などが相続人となる場合には、これらの人には遺留分の権利があります。
遺留分算定の基礎となる財産
遺留分算定の基礎となる財産は、原則として次の1から4の財産です。
- 被相続人が相続開始のときにおいて有していた財産(遺言などの対象とされた財産も含む)
- 相続開始前の1年間に、被相続人が相続人ではない人に対して贈与した財産
- 相続開始前の10年間に、被相続人が相続人に対して贈与した財産
- 2や3以前に被相続人がした贈与のうち、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした財産
被相続人が亡くなった時点で遺っていた財産のみならず、過去に贈与をした一定の財産についても遺留分算定の基礎となる点に注意しましょう。
なお、具体的な遺留分の額を計算する際には、これらの合計額から被相続人の債務(借金など)の全額を控除した金額が基礎となります。
遺留分割合
遺留分の割合は、次のとおりです。
- 被相続人の両親など直系尊属のみが相続人である場合:3分の1
- 上記以外の場合:2分の1
先ほど解説した遺留分算定の基礎となる財産額にこれらの割合を乗じた金額が、その相続全体での遺留分となります。
これに、遺留分がある各相続人の法定相続分を乗じた金額が、各相続人の具体的な遺留分の金額です。
では、各相続人の遺留分割合をケースごとに解説していきましょう。
子2名と配偶者が相続人である場合
子2名と配偶者が相続人である場合、それぞれの遺留分割合は次のとおりです。
- 配偶者:2分の1×2分の1=4分の1
- 子1:2分の1×4分の1=8分の1
- 子2:2分の1×4分の1=8分の1
配偶者はおらず、子3名のみが相続人である場合
被相続人に配偶者がおらず、3名の子のみが相続人である場合、それぞれの遺留分割合は次のとおりです。
- 子1:2分の1×3分の1=6分の1
- 子2:2分の1×3分の1=6分の1
- 子3:2分の1×3分の1=6分の1
配偶者と2名の子がいたが、子の1人が先に亡くなっている場合
被相続人には配偶者がおり、元々子が2名いたものの、子のうち1人は被相続人によりも前に亡くなりました。
その亡くなった子には、3名の子(被相続人の孫)がいるものとします。
この場合におけるそれぞれの遺留分割合は、それぞれ次のとおりです。
- 配偶者:2分の1×2分の1=4分の1
- 子:2分の1×4分の1=8分の1
- 孫(亡くなった子の子)1:2分の1×4分の1×3分の1=24分の1
- 孫(亡くなった子の子)2:2分の1×4分の1×3分の1=24分の1
- 孫(亡くなった子の子)3:2分の1×4分の1×3分の1=24分の1
配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合、遺留分割合は次のとおりです。
- 配偶者:2分の1
先ほど解説したように、兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、その相続における遺留分は、すべて配偶者に割り振られることとなります。
被相続人の両親のみが相続人である場合
被相続人の両親(父母)のみが相続人である場合、それぞれの遺留分割合は次のとおりです。
- 父:3分の1×2分の1=6分の1
- 母:3分の1×2分の1=6分の1
先ほど解説したように、被相続人の直系尊属のみが相続人となる場合には、遺留分割合が例外的に3分の1となる点に注意しましょう。
遺留分侵害額請求に時効や請求期限はある?
遺留分侵害額請求には、請求期限が存在します。
遺留分侵害額請求の時効は、次のとおりです。
遺留分侵害額請求の期限は知ってから1年
遺留分侵害額請求をする権利は、遺留分権利者が次の事実を両方知ってから1年以内に行使しなければ、時効によって消滅してしまいます。
- 被相続人が亡くなって相続が開始したこと
- 遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと
この1年の時効は、これらをいずれも知った時点からカウントが開始されます。
そのため、たとえば被相続人が亡くなってから5年後にこれらの事実を知った場合には、そこから1年間は遺留分侵害額請求をすることが可能です。
相続開始から10年が経つと権利が消滅する
遺留分権利者が、死亡の事実や遺贈の事実を知らないまま時間が過ぎる場合もあるでしょう。
この場合において、あまりにも時間が経過してから遺留分侵害額請求がされてしまうと、経済的な安定性を損ねてしまいかねません。
そのため、たとえ被相続人が亡くなったことや、遺留分侵害の事実を知らないままであったとしても、相続開始から10年が経過した以後は、もはや遺留分侵害額請求をすることはできないとされています。
遺留分侵害額請求を期限内に行わなかったらどうなる?
遺留分侵害額請求をしないまま期限が過ぎてしまった場合には、もはや遺留分侵害額請求をすることはできません。
期限内に請求をしなければ、自動的に遺留分侵害額請求権が消滅することとなるわけです。
そのため、遺留分侵害額請求を希望する際には、必ず期限内に請求をするよう十分注意しておきましょう。
なお、先ほど解説したように、遺留分侵害額請求の期限のうち1年の時効のカウントは、相続の開始と遺留分を侵害する遺贈などがあったことを知った時点からスタートします。
仮にこのカウント開始時期について争いがあり、相手はすでに時効を過ぎていると主張しているものの、自身としてはまだ時効を過ぎていないと考えている場合には、できるだけ早期に弁護士へ相談しましょう。
状況によっては、まだ遺留分侵害額請求ができる可能性があるためです。
遺留分侵害額請求を期限内に行うポイント
遺留分侵害額請求を行う際には、期限を過ぎてしまうことのないよう、十分注意しなければなりません。
最後に、遺留分侵害額請求を期限内に行うためのポイントを3つ紹介します。
早期に弁護士へ相談する
遺留分侵害額請求を期限内に問題なく行うためには、遺留分を侵害されていることを知ったら、できるだけ早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
早期に弁護士へ相談することで、その状況に応じた最適な方法についてのアドバイスが受けられるでしょう。
また、弁護士へ対応を依頼した場合には、弁護士が期限についても注意してくれるため、遺留分侵害額請求の期限をうっかり過ぎてしまう事態を防ぐことが可能となります。
具体的な金額が不明でもまずは請求の意思表示をする
一般的に、遺留分侵害額請求をするにあたって特に時間を要するのは、侵害された遺留分の金額を算定する段階です。
そのため、請求する金額を正確に算定してから遺留分侵害額請求をしようとすると、知ってから1年以内との期限には間に合わない場合が少なくないでしょう。
しかし、期限内に行っておくべきことは、遺留分侵害額請求をする旨の意思表示のみであり、具体的な金額の請求や金額のすり合わせ自体は期限後であっても構わないとされています。
そのため、金額までを完璧に算定してから遺留分侵害額請求をするのではなく、まずは具体的な金額は記載せず、侵害された遺留分を請求する旨の文書の送付のみをできるだけ早期に行っておくとよいでしょう。
内容証明郵便で請求する
法律上、遺留分侵害額請求を行う方法は特に指定されていません。
そのため、たとえば口頭や電話での請求であったとしても、遺留分侵害額請求の効果は発生します。
しかし、口頭での請求では証拠が残らないため、期限内に請求はされていないなどと主張されてしまえば、反証が困難です。
また、通常の郵便では配達された日時や送られた内容の記録が残らないため、これもリスクが高いでしょう。
そのため、実務上、遺留分侵害額請求は内容証明郵便の送付によって行うことが一般的です。
内容証明郵便とは、いつどのような文書が誰から誰に送られたのかということを、日本郵便株式会社が証明するサービスのことです。
内容証明郵便を活用することで、期限内に遺留分侵害額請求をしたことの証明が可能となります。
まとめ
遺留分侵害額請求には時効があり、これを過ぎてしまうと遺留分を請求する権利が消滅してしまいます。
そのため、遺留分侵害額請求をする際には、期限に特に注意をして進めるようにしましょう。
また、期限内に請求した事実についての証拠を残すこともポイントです。
しかし、遺留分侵害額請求をご自身のみで行うことは、容易ではありません。
遺留分侵害額請求自体はできたとしても、侵害された具体的な金額について相手と意見が相違するケースが少なくないためです。
自身で交渉を行った結果、想定よりも低い金額しか請求できない可能性もあるでしょう。
遺留分侵害額請求を検討する際は、相続問題に強い弁護士へ相談することをおすすめします。
Authense法律事務所には、遺留分侵害額請求や相続問題を専門とする弁護士が多数在籍しており、日々問題の解決にあたっています。
遺留分侵害額請求をご検討の際や、遺留分侵害額請求をされてお困りの際などには、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問合せはこちら
ささいなお悩みもお気軽に
お問合せください初回相談60分無料※一部例外がございます。 詳しくはこちら
オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。
- 24時間受付、通話無料
- 24時間受付、簡単入力