コラム
公開 2020.10.07 更新 2023.04.04

相続放棄の手続きの手順、期限や注意点を詳しく解説

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相続放棄をするときには、定められた期限内に家庭裁判所で「相続放棄の申述」という手続きをしなければなりません。単に他の相続人へ「相続しません」と言ったり書面を差し入れたりしても意味がないので、注意しましょう。

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1.相続放棄とは

相続放棄とは、相続人である地位を放棄して一切の遺産相続をしないことです。

法定相続人の立場になると、残された資産や負債を法定相続分に応じて承継するのが基本です。
ただ「借金を相続したくない」、「遺産分割協議に参加したくない」など、相続を望まない方もおられます。そういった方は相続放棄すると、「始めから相続人ではなかった」扱いとなり、資産も負債も相続せずに済みます。

他の相続人が全員相続放棄すると1人の相続人へ遺産を集中させられるので、事業承継で後継者に遺産を相続させるために相続放棄が利用されるケースもよくあります。

2.相続放棄の申述手続き

相続放棄するには、家庭裁判所で「相続放棄の申述」という手続きが必要です。
一般に、他の相続人へ「一切相続しません」などと書いて署名押印した書面を差し入れたら「相続放棄した」と思われているケースもありますが、それでは相続放棄の手続きになりません。特に問題になるのが「相続債務」です。他の相続人に「相続しません」と宣言しても債権者へは主張できないので、支払いの請求をされると拒めません。

相続放棄したいなら、必ず期限内に家庭裁判所で「相続放棄の申述」をして受理してもらいましょう。以下で相続放棄の申述手続きの方法を解説します。

2-1.必要書類を用意する

まずは申述手続きに必要な書類を作成・収集しましょう。

  • 相続放棄申述書(書式を使って自分で作成)
  • 相続放棄する人の戸籍謄本(本籍地の市町村役場で取得)
  • 被相続人(亡くなった人)の死亡の記載のある戸籍謄本(本籍地の市町村役場で取得)
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(住所のある市町村役場または本籍地の市町村役場で取得)

孫、親や兄弟姉妹などが相続放棄するときには、上記以外の戸籍謄本類も必要となりますので、事前に必要書類を確認するのがよいでしょう。

相続放棄にかかる費用

  • 収入印紙800円分(相続放棄の申述書へ貼り付けます)
  • 郵便切手(家庭裁判所によって内訳や金額が異なりますが、数百円程度です)
  • 戸籍謄本取得費用(1通450円の小為替)

2-2.家庭裁判所へ相続放棄の申述をする

書類がそろったら、家庭裁判所へまとめて提出します。申述先の家庭裁判所は「被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
家庭裁判所へ持参してもかまいませんし、郵送でも手続きができます。

2-3.家庭裁判所から照会書が届く

相続放棄の申述書類を提出すると、しばらくして家庭裁判所から「照会書」や「回答書」が送られてきます。
照会書とは、家庭裁判所が申述人に対し詳しい事情を確認するための書類です。以下のような質問事項が書かれています。

  • いつ頃死亡を知ったか
  • 生前の被相続人との関係
  • 相続財産としてどのようなものがあるか
  • 既に相続した財産はあるか
  • 相続財産の存在を知った時期
  • 相続放棄をする理由
  • 被相続人の生前の生活状況
  • 被相続人の死亡後3か月が経過している場合、3か月以内に相続放棄の手続きができなかった理由
  • 相続放棄は真意にもとづくものか

回答は、同封されている回答書に書き込んでいきましょう。特に「死亡後3か月が経過している場合」、きちんと理由を説明できないと相続放棄の申述を受理してもらえない可能性もあるので注意してください。
書き方が分からない場合には弁護士に相談しましょう。

2-4.回答書を提出する

回答書を作成したら、家庭裁判所へ返送しましょう。

2-5.相続放棄の受理書が届く

提出書類と回答書の記載内容に特に問題がなければ、家庭裁判所から「相続放棄の受理証明書」が送られてきます。これが送られてきたら、正式に相続放棄手続きが完了したという意味です。

家庭裁判所へ相続放棄の申述書類を提出してから受理通知書が届くまでの期間は1~2か月程度が標準です。

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3.相続放棄の期限

相続放棄の申述をするとき「期限」に注意が必要です。
相続放棄は基本的に「被相続人の相続の開始を知ってから3か月以内」に手続きしなければなりません。この3か月を「熟慮期間」といいます。熟慮期間を過ぎると、相続放棄の申述書類を提出しても受理されず、相続せざるを得なくなります。

なお、次順位の相続人の場合には「先順位の相続人による相続放棄を知ってから3か月」となります。

ただし、相続開始を知ってから3か月が経過していても相続放棄の申述が受理されるケースもあります。それは「相続財産がまったくないと信じていて、かつ、そう信じたことに正当な理由がある場合」です。たとえば生前被相続人との交流がまったくなく、他の相続人の協力も得られずに相続財産を把握できる状況になく、被相続人の相続財産を把握できなくてもやむを得ない場合には、熟慮機関の延長が認められ宇可能性は相当程度あるといえます。

それ以外のケースでは、必ず「相続を知ってから3か月以内」に相続放棄の申述書を提出する必要があります。

なお、遺産内容が複雑、相続人が海外居住などでどうしても相続財産調査に時間がかかる場合など、相続財産を把握するために3か月の熟慮機関では足りない場合には、その旨を家庭裁判所へ申立てることによって熟慮期間を延長してもらえる可能性もあります。

4.相続放棄の注意点

4-1.次順位の相続人に相続権が移る

相続放棄すると、次順位の相続人に相続権が移ります。たとえば子どもが相続放棄したら親、親も相続放棄したら兄弟姉妹が相続人となります。
借金を相続したくないから相続放棄した場合、次順位の相続人はいきなり借金を背負わされる結果となります。相続放棄するときには、次順位の相続人にも事情を伝えて必要に応じて相続放棄を促すのが良いでしょう。

4-2.資産も承継できない

相続放棄すると、負債だけでなく資産も承継できません。資産超過のケースで相続放棄すると経済的に損になってしまう可能性があるので、注意しましょう。しっかり財産調査してから手続きをとるようお勧めします。

4-3.撤回できない

いったん相続放棄すると基本的に撤回できません。後から「やっぱり相続したい」と思っても取り返しがつかないので、慎重に判断しましょう。

4-4.全員が相続放棄したら財産管理しなければならない

相続人になりうる人が全員相続放棄したら、相続財産を管理する人がいなくなります。
それでは困るので、法律は「相続放棄者が相続財産を管理しなければならない」と定めています。管理を免れるには、家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任しなければなりません。
相続財産管理人の選任には費用がかかりますし、相続財産管理人に財産を引き渡すまでの管理にも手間がかかります。

全員が相続放棄するよりも、資産活用などを検討した方が良いケースがあります。状況に応じた対応を進めましょう。

まとめ

相続放棄の手続き自体はそんなに難しいものではありません。ただ「相続放棄すべきかどうか」適切に判断をすること、かかる判断のための相続財産調査をするには専門的な知識やノウハウが必要です。特に死亡後3か月以上が経過していたら、相続放棄の申述が受理されない可能性が高くなるので注意が必要です。

借金、遺産を相続したくない方や、どのような手続きをとればよいか分からない方おられましたら弁護士が相続放棄手続きのサポートを致します。熟慮期間の問題もありますので、お早めにご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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