遺言書に従って弟がすべての遺産を相続するのは納得できない。
- ご相談者Aさん
- 年齢:60代
- 性別:女性
- 続柄:三女
- ご相談者Bさん
- 年齢:60代
- 性別:女性
- 続柄:四女
-
ご相談までの経緯・背景
-
Aさん(三女)とBさん(四女)は、母Cさんが亡くなったことで、母の財産を相続することになりました。
AさんとBさんの他には、Dさん(長女)とEさん(次男)が相続人となりました。すると、突然AさんとBさんのもとに、Eさんの代理人から通知が届いたのです。
通知には、母Cさんは『Eさんに全財産を相続させるとの遺言を残している』と書いてありました。もっとも、Eさんは母の生前、長年にわたって母の預金や保険金などの財産を使い込んでいたことが家族にばれ、返還することを約束していましたが、未だにそのお金が返済された様子はありません。
当然AさんとBさんはEさんの主張には納得がいきません。どうにかできないのか悩んだお二人は当法律事務所に相談にいらっしゃいました。
-
Eさんは生前、家族に使い込んだ母のお金を返還することを約束しており、AさんBさんはこれを考慮してそれぞれの相続を決められないだろうかと考えました。
しかし、このEさんの債務について、債権者である母Cさんは生前、Eさんの債務を免除する旨の書面を書いていることがわかりました。
この書面により、弟Eさんの母Cさんへの債務はなくなり、この債務について生前の相続人への贈与を相続において考慮する特別受益として扱うこともできなくなりました。
しかし、AさんBさんとしては、なんとか、弟が全部相続することは避けたいと思っています。
-
解決までの流れ
-
そこで、弁護士は遺留分減殺請求※をすることを提案しました。
遺留分減殺請求※とは、法定相続人が法律で定める最低限の相続分すら相続できないときに、その最低限の相続分については他の相続人に対して請求できるという法定相続人を保護するための制度です。
AさんとBさんは被相続人であるCさんの子供ですので、8分の1の遺留分が認められています。
そのため、弁護士はAさん、Bさんの他長女Dさんも含めて3名分の遺留分減殺請求※を行いました。
-
結果・解決ポイント
-
結果、Eさんは遺留分として460万円をAさんたちに支払うことに合意し、その旨の合意書が作成されました。
Aさん、Bさん、Dさんは、Eさんに全ての財産を相続されることなく、自分たちの相続分を相続することができました。
このように、全財産を相続させる旨の遺言があるときや相続人間の相続分について極端な偏りがあるときには、法律が保証する最低限の相続分(遺留分)を主張することが可能です。お困りの際は是非、弁護士に相談にいらしてください。
遺留分減殺請求(旧制度)は、法改正により、2019年7月1日以降、「遺留分侵害額請求」に変更となりました。
旧制度では、例えば、遺産に不動産がある場合には、遺留分の割合に応じて不動産の権利そのもの(共有持分)を請求することになっていました。
しかし、それでは、一つの不動産を複数の人で共同して持ち続けることになり、法律関係が複雑になってしまいます。
そのため、新しい制度である「遺留分侵害額請求」では、不動産の権利そのものではなく、その権利の財産的な価値に応じた金銭を請求することができるようになっています。
なお、2019年7月1日以降に遺留分を請求する場合であっても、2019年7月1日以前に亡くなられた方については、旧制度の遺留分減殺請求が適用されます。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問合せはこちら