コラム
公開 2021.10.26 更新 2023.04.06

仮想通貨やNFTなどのデジタル資産は相続できる?相続税はかかる?

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仮想通貨やNFTなどのデジタル資産は相続できるのでしょうか?また、相続税はかかるのでしょうか?

仮想通貨は原則として相続の対象となります。

また、NFTはそれぞれ異なるため個別での判断が必要です。

デジタル資産を保有する際は、相続に関して把握しておくと良いでしょう。

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仮想通貨やNFTなどの「デジタル資産」とは

仮想通貨やNFTなどが話題になるにつれ、こうした資産を保有する人も徐々に増えてきています。
では、仮想通貨やNFTを持っている方が亡くなった場合、これらの資産は相続することができるのでしょうか?

この記事では、相続分野における仮想通貨やNFTの取り扱い、仮想通貨やNFTを持っている人が行っておくべき相続対策について解説します。
まずは、仮想通貨やNFTとは何なのかということから確認していきましょう。

仮想通貨とは

仮想通貨とは、インターネット上でやりとりされるデジタル通貨のうち、特定の国家による裏付けのない通貨をいいます。
仮想通貨は、銀行などを介さない経済的価値のやりとりの方法としてのほか、投資対象としても、近年高い注目を集めています。
仮想通貨の代表的なものとしては「ビットコイン」や「イーサリアム」、「リップル」などが有名ですが、他にもかなりの数が存在し、一説によれば3,000種類を超えるようです。

なお、2021年5月に施行された改正資金決済法では「暗号資産」と呼ばれていますが、一般には「仮想通貨」と呼ばれることも多いため、この記事においては、以後も「仮想通貨」と呼ぶこととします。

NFTとは

NFTは仮想通貨と比べると、まだまだ耳慣れないという人が少なくないと思われます。
NFTとは、Non-fungible Token(非代替性トークン)のことで、一言で表すならば「偽造することができない鑑定書や所有証明書が付加されたデジタルデータ」のことです。

例えば、現実世界にある絵画を想像してみてください。現実世界にある絵画の「現物」は1つしかありません。たとえ、いくら似せて模写したとしても、全く同じものが2つとして存在することはありえません。
一方で、デジタルで描かれた絵画のデータは、複製することで簡単に同じデータを複製することができてしまいます。
そうなると、例えば購入したデジタルアート作品が、正式な手続を経て購入したものなのか、許可なく複製されたものなのかといった証明は困難であり、このことが、デジタルアートの発展の妨げとなっていたのです。

しかし、NFTという技術の登場により、デジタルアートの所有権の証明をすることが可能となりました。
また、所有権が移転した情報も仮想通貨と同じ基盤技術(ブロックチェーン)で記録されるため、安心して取引を行うことが可能となります。

近年、NFTはデジタルアート作品のみならず、ゲーム内のアイテムやゲーム内のトレーディングカードの売買など、さまざまなデジタルコンテンツで活用されています。
少し変わったところでいえば、ツイッター社の創業者が自身の初ツイートを販売し、約3億円で落札されたことでも話題になりました。

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仮想通貨は相続できる?

それでは、仮想通貨は相続の対象となるのでしょうか?

民法上、「死亡した人の財産に属した一切の権利義務」が相続の対象となる(ただし一身専属権は除く)とされていますので、仮想通貨も当然相続の対象となるものと考えられます(もっとも、仮想通貨やNFTについてはまだまだ議論が尽くされていない分野であり、この点について明確に述べた裁判例などもないため、明言は避けさせていただきます。)。

もっとも、日本の法律上相続の対象となるからといって、相続人がその仮想通貨を実際に使用したり、日本円などの法定通貨に交換したりできるとは限りません。

それでは、仮想通貨を相続人が使用したりする法定通貨へ交換したりするためにはどうすれば良いのでしょうか?
故人が取引所を通じて仮想通貨を取引していた場合と、取引所以外で仮想通貨を保管している場合とで手続が異なりますので、2つに場合分けして解説していきましょう。

故人が取引所を通じて仮想通貨を取引していた場合

故人が取引所を通じて仮想通貨を取引していた場合には、相続人が取引所に連絡して相続手続を行うことになります。

仮想通貨が日本の金融庁の登録を受けた取引所で保管されている場合には、比較的スムーズに相続手続ができるケースが多いため安心です。
例えば、「Coincheck」や「bitFlyer」など主要な取引所では、FAQで相続手続について説明が記載してあります。説明に従い、お問い合わせフォームから手続を行いましょう。

また、以前は取引所によって相続手続の方法がまちまちでしたが、現在では金融庁の登録を受けている取引所であれば、通常の証券口座と同じように、概ね次のような流れで相続手続ができると考えておくと良いでしょう。

取引所へ連絡する

仮想通貨の取引をしていた人が亡くなった場合、相続人はまず被相続人が仮想通貨を取引していた取引所へ連絡します。
連絡の方法は、電話などでできる場合もあれば、インターネット上のお問い合わせフォームで連絡をする取引所もあるため、FAQなどを確認すると良いでしょう。

死亡の旨の連絡をした時点で口座が凍結され、以下の手続を踏むまでは出金ができなくなります。

残高証明書を取り寄せる

次に、取引のあった仮想通貨の取引所から、残高証明書の発行を受けます。
残高証明書を確認することで、被相続人がその取引所にどの資産をいくら保有していたのかがわかります。

残高証明書の発行を受けるためには、主に次のような書類が必要となります。

  • 被相続人が亡くなったことがわかる戸籍謄本又は除籍謄本
  • 手続をする相続人と被相続人との関係がわかる戸籍謄本や除籍謄本
  • 手続をする相続人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)

仮想通貨の取引所は、銀行のような窓口がないことが多いため、郵送でやりとりをすることが一般的です。

遺産分割協議を成立させる

残高がわかったら、相続人全員で話し合い、その仮想通貨を誰が相続するのかを決めます。

仮想通貨のみについて話し合うのではなく、被相続人の持っていた仮想通貨以外の資産を誰が相続するのかと併せて、仮想通貨の分け方も決めましょう。

なお、仮想通貨は可分債権であるとして、遺産分割協議をするまでもなく、法定相続分に応じて当然に相続人に相続されるという解釈もあり得ますが、この点に関する裁判実務は確立されていないため、遺産分割協議の対象としておくのが無難であると思われます。

また、被相続人が遺言書を遺していた場合には、原則としてその遺言書に記載された人が仮想通貨を相続することになります。

この場合には、遺産分割協議は必要ありません。

必要書類を提出する

仮想通貨を相続する人が決まったら、必要書類を取引所へ提出します。

必要書類は相続人の状況などによって異なりますが、通常の銀行口座の解約と同様、おおむね次のような書類が必要になると考えてください。

  • 取引所所定の相続届
  • 遺産分割協議書(相続届に相続人全員が署名捺印をした場合には不要となることが一般的です)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本など
  • 被相続人の最後の住所のわかる住民票の除票など
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 手続をする人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)

口座解約後、出金ができるようになる

提出した書類に不備がなければ、被相続人の口座は解約され、代表相続人の銀行口座に出勤されることとなります。

取引所以外で保管されている場合

仮想通貨は上記のような取引所で保管されている場合が多いとはいえ、中にはパソコンやスマートフォン上のウォレット(財布)などで保管されている場合もあります。
現金を銀行などに預けず、自宅の金庫などで保管していたような場合をイメージされると良いでしょう。
仮想通貨は硬貨やお札のように直接手で触れることはできませんので、金庫の代わりにパスワードを掛けたデジタル上の財布で保管するわけです。

こういった場合には、取引所に預けている場合と比べ、手続が難航するケースが少なくありません。
なぜなら、パソコンやスマートフォンなどの端末のパスワードと、ウォレットのパスワードをどちらも解除しなければならないためです。

自宅の金庫の暗証番号がわからなければ、中にある現金が使えないのと同様に、パスワードが解除できなければ、仮想通貨を引き出すことはできません。

相続をする権利があったとしても、使うことさえできなければ、絵に描いた餅となってしまいます。
対策については後述します。

NFTは相続できる?

NFTは相続できる?

では、NFTは相続の対象となるのでしょうか?
結論からお伝えすると、そのNFTによって異なるため、個別での判断が必要です。

先述のとおり、民法上、「死亡した人の財産に属した一切の権利義務」が相続の対象となる(ただし一身専属権は除く)とされています。
一身専属権とは、年金受給権など、故人のみに帰属し、他人による権利行使を認めることが不適切な権利義務のことを指します。
もし、NFTが一身専属的なものであれば、相続の対象にはならないでしょう。そのため、NFTはその性質などにより、相続の対象となるか否か結論が変わってくる可能性があります。

これは、NFTの種類によって単純に分類できるものでもありません。
例えば、「ゲーム上のアイテム」というNFT一つを取っても、単にゲーム上で消費するだけのものや、ゲーム外で換価ができるものなど、その性質は多様です。
前者であれば、そもそも財産的な価値があるとはいえず、相続の対象とする必要性は低い一方で、後者であれば相続の対象とする必要があるでしょう。

そのため、「ゲーム上のアイテムのNFTなら相続の対象とならない」と、一概に言えるものでもありません。

NFTはまだまだ新しい資産であり、その取り扱いが、法律上きちんと定まっていないのが現状です。
NFTは、驚くような高値で取引される場合もありますが、相続できない可能性もある旨も知った上で取引を行うべきでしょう。

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仮想通貨やNFTは相続税の対象になる?

では、仮想通貨やNFTは相続税の対象となるのでしょうか?
ここでは、税務の観点から解説していきましょう。

仮想通貨やNFTの相続では相続税がかかる

仮想通貨は相続税の対象となります。
また、NFTも相続できる性質のものであり資産的な価値があるものであれば、相続税の対象となるでしょう。
仮想通貨やNFTだからといって相続税の対象にならないわけではありません。

なお、パスワードがわからずデスクトップ上の仮想通貨が引き出せない場合であっても、理論上は、相続している以上、相続税の対象となりえます。

相続税を申告しないとどうなる

では、相続税の申告をしないとどうなるのでしょうか?

申告が漏れた場合には、現金など他の財産の申告が漏れた場合と同様、新たに申告すべきとなった額に過少申告加算税が加算されて課される可能性があります。仮想通貨やNFTについてもきちんと申告をするようにしましょう。

終活で仮想通貨やNFTに関してすべきこと

終活で仮想通貨やNFTに関してすべきこと

仮想通貨やNFTには、ここまでお伝えしてきたような特性があります。
ここでは、その特性を踏まえて、仮想通貨やNFTを持っている人が行っておくべき終活について解説しましょう。

相続の可否や相続手続を事前に確認しておく

まずは、ご自身の持っている仮想通貨やNFTに関して、相続ができるかどうかという点や、いざ相続が起きた際の手続について、あらかじめ確認しておきましょう。

場合によっては生前の売却も検討する

相続の可否や手続方法を確認した結果、相続ができないものや、相続できるもののその手続が煩雑になりそうなものがあれば、生前のうちに売却や法定通貨への交換をされることも検討してください。

保有する仮想通貨やNFTをリストにしておく

その上で、売却をしない選択をした仮想通貨やNFTに関して、リストを作成しておきましょう。
リストがなければ、相続が起きた後で仮想通貨やNFTの存在に家族が気がつかない可能性があるためです。

なお、リストの中に記載すべき主な内容は次のとおりです。

  • 保有している仮想通貨やNFTの種類
  • 保有している仮想通貨やNFTのその時点での数量とおおまかな金額
  • 取引所と取引があれば、その取引所の名称
  • ビットコインアドレスなど、各保有資産の口座番号あたるもの
  • 端末上で保管しているものがあれば、端末とウォレットのパスワード
  • 上記で確認をした相続手続の方法と、確認した方法(「コールセンターの〇〇さんに電話で確認」など)
  • 相続が起きた際の連絡先 など

その上で、いざというときに相続人がそのリストを発見できるよう、信頼できる相続人がいれば印刷をして事前に渡しておくか、自宅や銀行などの金庫で保管をしておくと良いでしょう。
パソコンで作成したデータのみの場合には、そのパソコンを開くことができず、リストを見つけてもらえない可能性もあるためです。

まとめ

仮想通貨に関しては、相続についての考え方や手続方法も、取引所レベルでは整備されてきているものの、裁判実務上はまだまだ不確定な部分が多いです。また、NFTについても相続についての考え方や手続方法は確立していないのが現状です。
だからこそ、これらの資産を保有する際には、相続が起きた際に疑義が生じないよう、しっかりと準備する必要があります。

せっかく購入した仮想通貨やNFTを相続で家族に渡すことができなければ、悔やんでも悔やみきれません。
後悔することのないよう、ぜひ早めから対応を検討しておいてください。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

下記のようなお悩みをお持ちの方は、一度お気軽にオーセンスの弁護士にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。
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