相続が発生した後、葬儀費用や不動産の解体費用は、誰が負担するのでしょうか。ここでは、相続発生後にかかる費用にまつわるトラブルやその予防方法について、詳しく解説いたします。
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相続発生後にかかる費用について
相続が発生した場合、相続財産に関する問題だけでなく、相続発生後にかかる費用に関する問題も生じます。
例えば、葬儀費用は誰が負担するのか、また、相続財産の中に不動産がある場合、不動産の管理費用や解体費用は誰が支出するのかなどです。
これらの費用負担を巡って争いが生じ、後々相続争いにつながることも少なくありません。
ここでは、相続発生後にかかる費用について、弁護士が解説いたします。
葬儀費用について
相続発生後の葬儀費用の負担については、どのように考えればよいのでしょうか。
葬儀費用については、相続人全員の合意により負担者が決まれば、その合意が尊重されます。
相続人全員の合意がとれない場合は、「葬儀費用」の負担者が誰になるかについては、学説や裁判例が分かれており、①喪主が負担する、②相続人が法定相続分に応じて負担する、③相続財産から支出する、④慣習により定めるなど、いろいろな考え方があります。
現状では、①喪主が負担するという考え方が有力で、全相続人の合意が得られない場合には、葬儀費用を負担した喪主は他の相続人から立替え分の返金を受けられないという結論になる可能性が高いです。しかし、1人の相続人のみが葬儀費用を負担するという結論をとると、葬儀費用を負担した者とそうでない者との間の感情的な対立を煽ることとなり、その後の遺産分割協議が難航する恐れがあります。したがって、可能であれば、相続人全員で話し合って、相続人全員が法定相続分に応じて負担する、もしくは、相続財産(遺産)から支出する、という形で合意する方が望ましいです。
自分が亡くなった後に、相続人全員が話し合いをするのは難しいと思われる場合には、生前に葬儀社と契約をしておく、葬儀費用分を考慮して相続対策をとるなど、生前対策をしておくとよいでしょう。
生前対策の詳しい方法は、後ほど説明いたします。
なお、葬儀費用については、相続税算定の場面では、「遺産総額」から控除ができますので、相続税申告時には忘れずに申告するとよいでしょう。
不動産解体費用について
相続発生後、被相続人の自宅が空き家となったため、その自宅を解体するという場合、その解体費用の負担はどうすればよいのでしょうか?
相続発生後~遺産分割協議が成立するまでは、被相続人の自宅は相続人全員の共有状態となるため、不動産の解体は、共有物の処分行為に該当しますので、共有者全員の同意が必要となります。(民法251条)
したがって、解体を行う場合には、相続人全員の同意を得た上で行う必要があります。
また、1人の相続人のみが主導して建物の解体を進めてしまうと、後々、他の相続人から、「その解体費用は高すぎる」、「ほかの業者に依頼すればもっと安く済んだはずだ」、「なぜ、他の業者の見積もりを取得しなかったのか」、「そもそも、解体すべきではなかった」などと言われ、立て替えた費用を返してもらえないことがあります。このように後でもめないようにするためにも、解体費用や家の中の荷物の処分費用などにお金がいくらかかるかについてあらかじめ全相続人に説明し、その負担方法についてどうするかについても合意を得ておいた方がよいでしょう。
なお、有効な遺言がある場合で遺言によって特定の不動産を承継した人がいる場合には、当該不動産の相続発生後の管理費用や解体費用、売却にかかる諸費用などは、その承継者が負担することになります。
相続発生後の費用についての対策
相続発生後の費用については、家具類の処分費用や不動産の解体費用など、金額が高くなることも多く、相続人の間で負担割合をめぐって争いになることも多いです。
まずは、このような費用がかかる場合には、できる限り、その金額や負担割合について、事前に他の相続人の合意を得たうえで支出をする方が望ましいと思います。事前に他の相続人の合意が得られないような場合であっても、後で紛争にならないように、領収書など金額が分かる資料を残しておき、使途についても細かく記録しておくようにしましょう。領収書や使途を記録したものが残っていれば、事前に費用の支出について話し合いをしていなかった場合でも、その後の遺産分割手続きと併わせて、比較的スムーズに話し合いが進むことが期待できます。
相続発生後の費用をどのように負担するかという問題は、厳密には、被相続人が遺した財産をどのように分けるかという問題とは別の問題なので、原則として、遺産分割調停や遺産分割審判の手続きでは取り扱ってもらえません。したがって、他の相続人が、費用を支出したことについて納得せず、立て替えた費用を支払うことに合意してくれないような場合で、立て替えた費用を返金してほしいと考える相続人は、他の相続人を被告として別途民事裁判を提起する必要があります。このような手続きには、時間も費用もかかるため、不動産の解体費用などを支出するときは、他の相続人との事前の調整を行うこと、領収書を保存すること、使途を細かく記録しておくことは必須です。
また、相続発生後の費用を考慮して、生命保険金の準備をしておくことも検討しましょう。
生命保険金であれば、受取人として指定された人が、遺産ではなく受取人の固有の財産として、相続発生後、比較的早く保険金を受領できるため、相続発生後の費用にあてることも可能です。
さらに、相続発生後の費用について、相続人に負担させないために、生前に準備をしておくこともできます。
具体的には、「死後事務委任」契約といって、本人が、生前に第三者に対し、相続発生後に生じる葬儀、埋葬、納骨、施設や住居の退去手続き、その他の事務手続きに関する代理権を付与する契約を締結しておきます。これによって、相続発生後の事務手続きは、死後事務契約における受任者が、被相続人から預かっていたお金を使って代行することができます。(ただし、不動産の解体や売却については、相続財産の処分にあたるため、死後事務委任の対象とならない可能性が高いです。)
契約締結時に、相続発生後に生じる様々な手続きにかかる費用を予め当該第三者に預けておくことにより、相続発生後に、相続人が当該手続きにかかる費用を負担する必要がなくなります。
「死後事務委任」は、親族や知人だけでなく、行政書士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。
例えば、相続人が海外などの遠方に住んでおり迅速な対応が難しい場合などは、専門家に葬儀や施設、行政の手続きなどを委任する死後事務委任契約を締結しておくことも多いです。
状況に応じて、相続発生後の費用も考慮しながら、相続対策をとるとよいでしょう。
相続発生後の費用でもめたら
相続発生後にかかる費用は、不動産の解体費用など、予想外に高額になることもあります。
また、相続発生後は、葬儀や行政関係の手続き、相続財産の調査など、相続人が行うべき手続きが非常に多く、余裕がない状況に陥ることも多いです。
そのような状況下で、相続発生後の費用負担についても、相続人間でなかなか話がまとまらないとなると、どうしても感情的になってしまい、その後の遺産分割の話もスムーズにできなくなるということもとても多いです。
相続財産の調査などは、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも可能ですので、少し費用はかかりますが、一度お問合せしていただくことをお勧めいたします。
まとめ
相続発生後の費用については、誰が負担するのか法律上のルールも分かりにくく、相続人間でうまく話し合いができない場合もあります。
このような場合は、無理に相続人間だけで話し合いを進めるのではなく、専門家のアドバイスを参考にしながら、話を進めていくとよいでしょう。
オーセンスの弁護士が、お役に立てること
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