コラム
公開 2021.04.05 更新 2023.04.06

生前贈与へ遺留分侵害額請求できるケースとは?

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高額な生前贈与が行われたら「遺留分侵害額請求」できる可能性があります。遺留分侵害額請求をすると、最低限の遺産取得分をお金で取り戻すことができます。ただし、時効もあるので、請求するなら早めに手続を行いましょう。

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1.遺留分侵害額請求とは

自分以外の他の相続人や相続人以外の人に対して高額な生前贈与が行われた事実が発覚したら、「不公平」と感じ、納得できないと思う方が多いのではないでしょうか。
そんなときには、受贈者へ向けて「遺留分侵害額請求」という権利を行使できる可能性があります。

遺留分侵害額請求とは、一定範囲の相続人に保障される「遺留分」をお金で請求する権利です。
遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められます。

遺留分については、こちらの記事をご参照ください。

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不公平な遺贈や贈与が行われたことが理由で、被相続人と近しい相続人が十分な遺産を受け取れなくなると不合理ともいえるでしょう。
そこで法律は、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限の遺産取得分としての遺留分を認めています。

生前贈与によって最低限の取得分である遺留分を侵害されたら、侵害者(贈与を受けた人)へ向けて遺留分侵害額請求を行い、侵害額を支払ってもらうことが可能となります。

2.生前贈与へ遺留分侵害額請求できるケース

生前贈与へ遺留分侵害額請求できるケース

遺留分侵害額請求の対象となるのは遺贈や贈与です。

ただし、全ての生前贈与が対象になるわけではありません。
遺留分侵害額請求の対象になる生前贈与は以下のとおりです。

死亡前1年以内に行われた生前贈与

遺留分侵害額請求の対象となるのは、原則として、被相続人の死亡前1年以内に行われたものに限られます。
それより前に生前贈与が行われていたとしても遺留分侵害額請求はできません。

遺留分権利者を害すると認識した上で行われた生前贈与

被相続人の死亡から1年以上前に行われた生前贈与であったとしても、当事者が「遺留分を侵害する」と認識していた場合には遺留分侵害額請求の対象となります。
ただし、当事者が「遺留分を侵害することを知っていた」という事実は、遺留分の請求者が証明しなければなりません。

相続人に対する「特別受益」となる生前贈与

相続人に対する「特別受益」と評価される場合には、被相続人の死亡から1年以上前に行われた生前贈与であっても遺留分侵害額請求の対象となります。
具体的には、結婚、養子縁組や生活資金の援助等のために「被相続人の死亡前10年以内」に行われた生前贈与が対象となると考えましょう(ただし、死亡前10年以内に限定されるのは2019年7月1日以降に相続が発生したケースです。それより前の相続においては期間制限がありません。)。

3.複数の生前贈与や遺贈が行われた場合の順番

生前贈与は、複数の人へ向けて行われることもあれば、同じ人に対して何回にもわたって行われるケースもあります。
このように生前贈与が複数ある場合、遺留分侵害額請求はどの順序で行えばよいのでしょうか?

3-1.時期の新しい方から遺留分侵害額請求の対象になる

法律は、複数の生前贈与があるときには、時期の新しい方から遺留分侵害額請求の対象になる旨規定しています。
つまり、被相続人の死亡に近い時期のものから先に遺留分侵害額請求の対象となっていくのです。
同時に複数の生前贈与が行われた場合には、贈与された財産の価額の割合に応じて請求します(民法第1047条第1項第2号)。

3-2.被相続人が順番を指定すると有効になる

被相続人が遺言等で遺留分侵害額請求の順番を指定した場合には、指定された順番で遺留分侵害額請求を行う必要があります。

3-3.遺贈と生前贈与がある場合

遺言書による遺贈と、生前贈与の両方がある場合には、どちらについて優先的に遺留分侵害額請求すべきなのでしょうか?
この場合には「先に遺贈」に対して遺留分侵害額請求を行います。
遺贈が複数あった場合には遺贈された価額に応じて按分して請求する必要があります。
それでも不足する場合に生前贈与について遺留分侵害額請求を行う順序とされています(民法第1047条第1項第1号)。

3-4.遺留分侵害額請求の順番(まとめ)

遺留分侵害額請求の順番に関するルールをまとめると、以下のとおりです。

  • 遺贈があれば、まずは遺贈について請求
  • 次に時期の新しい生前贈与について請求
  • 遺贈が複数あった場合には遺贈された価額に応じて按分して請求
  • 同時に複数の生前贈与があれば、価額に応じて請求
  • 被相続人が順番を指定していれば、指定内容が優先される

遺留分侵害額請求の順番については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

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4.遺留分侵害額請求権の時効

遺留分侵害額請求権の時効

遺留分侵害額請求権には時効があるので、注意しましょう。
「相続開始と遺留分侵害の事実を知ってから1年」以内に遺留分侵害額請求をしなければなりません。
1年以内に請求しないと相手方の時効の主張によって権利が失われ、請求することができなくなります(民法第1048条)。

また、相続開始や遺留分侵害の事実を知らなくても、相続開始後10年が経過したら「除斥期間」によって権利が消滅します。
遺留分侵害額を取り戻したい場合には、早めに請求する必要があるといえるでしょう。

5.生前贈与に対する遺留分侵害額請求は内容証明郵便で!

生前贈与に納得できず遺留分侵害額請求を行うときには、内容証明郵便を使うことをお勧めします。
確実に死亡後1年以内に請求した証拠を残すには、内容証明郵便が最適だからです。
普通郵便では相手方に対して意思表示が到達したという証拠が残らないので、相手方から「時効が成立した」といわれる可能性があります。
ただし、相手方(侵害者)との関係が良好で、内容証明郵便を送ることによってかえって関係を悪化させてしまいそうなケースでは、いきなり内容証明郵便を送るのは控えた方がよいこともあります。

具体的にどのような手段で遺留分侵害額請求を行うべきかについては、弁護士に相談しながら決めることをお勧めします。

まとめ

他の相続人へ高額な生前贈与が行われ、納得できないときには遺留分侵害額請求できる可能性があります。
遺留分侵害額請求の対象となるのは、原則として、「相続開始前1年以内に行われた生前贈与」ですが、相手方が相続人なら相続開始前10年以内のものも対象となる可能性があります。
遺留分侵害額請求権には時効があるので、請求する場合は早めに手続を行いましょう。
親族間で遺留分に関する争いが発生すると、関係が悪化して大きなトラブルになってしまうケースが多々あります。
不公平な遺贈や生前贈与でお悩みの方は、お気軽にオーセンスの弁護士までご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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